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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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この作品は、エヴァ×アビス基本+seed(キラ・ラクス・クルーゼ・カナード他)、ぼかろ(カイト・ミク・メイコ)設定がクロスする混沌クロス作品です。

・碇レンver

・今更ではありますが、時系列及び預言の在り方等諸々について、夥しい捏造が入ります。
 特に創世歴時代の出来事や人物間の血縁関係や交友関係等は、公式設定とは全くの別物だと考えてください。

本来お亡くなりになる方が生存してたり、マルクト・キムラスカ・ダアトへの批判・糾弾や、PTメンバーへの批判・糾弾・断罪表現が入ったりします



CP予定:
・・・キラ×ラクス(seed)
・・・カイト×ミク(ボカロ)
・・・クルーゼ(seed)×セシル(アビス)
・・・被験者イオン×アリエッタ(アビス)
・・・フリングス(アビス)×レン(碇レン)

です。上記設定がお好みにそぐわない、という方はお読みにならないようにお願いいたします。











 

 

+++

 


流れてきた大量の記憶が少年の形を壊すほどの勢いで流れていく。
それでも少年自身のカタチは無理やりに囚われたまま力だけが流れ込む。
 

 

そして、知る。


 

すべてが流れるのは鬼神に囚われた少年を媒介に世界と接する母の内
少年を濾過の為の装置に見立てて、純粋な力と知識だけを得ようとしている女


それこそが、女の立てた計画だったと
天才の名に相応しい優れた頭脳で、意識的無意識的に組み上げられた精緻で綿密な全ての道筋が、この計画の真髄だったと、理解する。


母が全ての原因である古文書を紐解いたのも
父が母に執着する心を知って態と希望を残して喪失を突きつけたのも
愚かな老人達の権力を利用するために煌びやかな計画を立てて見せたのも


あらゆる人を、愛情で嫉妬心で敵愾心で好意で憎悪で憧憬で嫌悪で縛りつけ
ただ、己の望みの為の駒へと仕立て上げた純粋で無邪気で狡猾な聖母

 



神殺しの槍に貫かれた鬼神と共に磔られた少年の犠牲の下に、世界を構成する全ての力がたった一人の内へと集まる


生み出されるのは永遠の命と 全ての生き物の知識を有した全知の カミサマ


そのための、女の計画 

 



 

確かに彼女が人間を愛していたのも本当の事だったけど。
彼女が少年を夫を愛していたのも本当の事だったけど。
 

・・・それは、彼女が抱いた至上の望みに置き換えられるほどには、重いものではなかったというだけの、事。



そして、生み落とされたのは、たった一つに寄り合わされた数多の生命の合成体〈キメラ〉


”それ”の中心に己を据えて、全知と全能の、永遠の存在になることが 女の望み


 

 

 

 

+++

 




 

ユイにとって、人類の生きた証を作り上げるという事は、何よりも優先される悲願だった。
 

いつか消えてしまうかもしれない人間が、過去に確かに存在したのだとい証拠を残すという事が、行き詰った人類にとっての希望になるのだと本気で信じていた。いつか滅亡してしまうかもしれないという恐怖を打ち消すことができる光明になりえるのだと考えていた。いつか人類が消えるかもしれない予測があっても、今を生きる為の希望になるのだと本当に思っていたのだ。
 

だからこそ、残される”証”は、完璧なものでなければならなかった。


全ての生命が繋がりあって他者との境界がなくなって、存在する全ての生き物の記憶が一つの意識として存在できるなら、それはまさしく全知の存在になるのだろうと考えた。全ての生命が溶け合って世界全てを構成するエネルギーが一つの”イキモノ”として存在するのなら、それはまさしくあらゆる生命の能力を備えた全能の存在になるのだろうと考えた。全ての力を一つに合わせて生まれたいきものならば、それはまさしく永遠に生き続ける不変の存在になるのだろうと考えた。
 

ならば、その全知にして全能の、不変にして永遠の存在になる”カミサマの器に相応しいのは、人類で最も優れた者だと、考えた。誰よりも優れた者がその器に宿るからこそ、生まれおちる”人類の生きた証”である”カミサマの器”がより完璧なものになる、と考えた。



そして、碇ユイが知る限りで、最も優秀な人間は、まさしく己自身のことだったのだ。

誰よりも優れた頭脳をもって、誰にも優しい慈愛を持って、周り全てに愛された、己こそが誰よりも相応しい、と。



彼女には”人類の生きた証”を作り上げる過程で、終わりを知らされることもなく”カミサマ”の材料として溶かされてしまう一人一人が、自分と同じようにこの世界に生きている人間なのだという認識が欠けていた。彼らがそれぞれ家族や友人や恋人と生きることを望み、それぞれがぞれぞれに違う想いや夢や希望を抱いていることなど知ろうともしなかった。例え将来人類が滅ぶとしても、今ここで大切な人たちと一緒に生きることを望んでいるのだということを考えもしなかった。


 

・・・それがどれほど傲慢で、自分勝手で、他者の心を踏みにじる考えなのか、気づこうともしなかったのだ。


 

だから、作り上げられた”カミサマの器”に宿るのは自分であるのだと欠片の疑問を持つこともなかった。
世界全てを混ぜ合わせて産み落とされる”カミサマの器”は、自身のものであると当たり前に考えた。


そして実際に生れた”カミサマの器”は、碇ユイの為だけのものだった。
 

 

 


 


その事を、鏡を見るたびに、思い知る。


 


・・・なんて、忌々しい。



 

 

 

 


+++

 

 




 


パチリ、と目を開く。


映るのは薄暗い空の色。
感じるのは焼け焦げた土の匂い。
伸ばした手に触れるのはぐちゃぐちゃに踏みにじられた地面の感触。


どの位時間がたったのだろう。真昼であっても暗く霞む空では時間が測りづらくてしょうがない。多少は明暗がある為昼か夜かくらいは分かるし、夕暮れ時には西が赤黒く染まる為大凡の時刻位は推測ができる。けれど、自分がどの位ながく意識を失くしていたのかがわからない為、あれから数時間なのか数日なのか数か月なのかがわからない。・・・わからなくても別に大したことではないが、反射的に考えただけだ。多少の怪我ならともかく、この世界で実体を得てから全身を高熱の炎で焼かれる程の損傷を負ったのは初めてだったため治癒速度がどれほどだったのか判断できない。のろのろと身を起こすが痛みも違和感も全くないことを考えると其れなりに時間がたったのだろうと思う。周りに残されたあの譜術の痕跡が、焼けた大地だけであることを考えても、戦闘の後始末は当の昔に終わっているのだろう。自分がここで起きているなら、別段遺体を回収することもなかったようだが、あの術で形を残せたものなどそう多くなかったはずだ。ならば残りは焼き尽くされて炭化でもしたのか。
 

焦げくさい風に髪を揺らしながらぼんやりと空を眺めて考える。
これからどうしようとか、どこにいこうとか、先のことは考えない。
頑なに遠く霞む王城を視界から外す理由にも意識を向けない。
思考を巡るのはとりとめのないものばかりで、自分の状態を詳しく確認する気も起きなかった。


あの時、感じ取れなった二人の存在を己の内に探ることもしなかった。


もし、二人がいなかったなら?
もし、二人が自分のことを厭ったら?


そう思うと恐怖で身が竦んで視線を動かすことすら怖かった。

 


けど、視界に入る焦土は、自分が作ったも同然なのだ。
幻想でも良いからと、甘い言葉に縋りついて碇ユイの求めるままに協力した研究から生まれた譜術で焼き払われた一面の大地を見る。プラネットストームと呼ばれる音素の供給機関が損傷した現在、これ程大規模な譜術など早々発動させるのは難しい。そのため行き詰りかけた研究が再開できたのは自分に会えたからだとユイは言った。あの時戦場を焼き払った自分の力が、彼女に何かのヒントを与えたらしい。その研究で生まれるものが、戦争で使われるのだと知りながら、彼女に求められてみたくて諾々と従った結果がこれだ。
 

それだけではない。国を護る為に協力してほしいと言われて、戦場に出ることすらした。余り大規模なものではなく殆どユイの護衛のようなものではあったが、自分の意思で沢山の兵士を切った。敵だけでなくこの国の軍人達にも恐れられた。彼らが自分に付けた通り名も知っている。
 

・・・鮮紅の死天使、と呼ばれた瞬間の気持ちはどんなものだったのかはっきりと思い出せない。


大人しく優しげな風貌で、誰よりも多く鮮血を散らす。そのギャップを揶揄したものだ。言い得て妙だなと皮肉気に口元を引きつらす。天使、ときいて思い出すのは紫の鬼神が暴走した時に顕現させた緋色の羽根だ。成程、あれのパイロットであった自分には相応しいだろうと思ったものだ。
 


(ああ、本当に、救いのない。・・・二人に見放されても仕方ない、な。
 ・・・けど、自分を消すなら、あの二人を無事に解放してからじゃないと。


 どうしよう、か・・・・)

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 


 

流れ込んだ母の記憶に壊れそうだった少年の心を、最後にまもったのは二つの魂。
女神と始祖のナカへと還った二人の想いが、消されそうだった彼を救った。


 


少女は、彼を本当に護りたかった。


彼が傷ついた自分を庇ってくれた初めての戦いで
彼が己の怪我を省みず助けてくれた月下の戦場で
彼が心を表す言葉を持たない自分を気遣ってくれた日常で


ぎこちなく差し伸べてくれた手のぬくもりと
はにかむように向けてくれた優しい笑顔と
拙く必死な彼の想いが


本当に大切で、失いたくないものだった



人間でありたい、と願いながら、絆を失うのが怖くて人形として生きていた。ぬくもりを渇望しながら、自分からは動こうとしなかった己の弱さを、教えてくれた人だった。自分が人間であるために、決して失くせない存在だった。本当に大切で、失いたくない人だった。 だから、彼を守る事だけを考えた。


・・けれど、その行動が少年を追い詰めてしまったのだと、今になって思い知る。 

 


(だからこれは、私が今度こそあなたを護るために自分で決めたこと。
 ・・後悔なんてないから。 どうか泣かないで。 碇君 )



 

 

 

 


少年は、本当に彼のことが好きだった。


与えられた資料から窺える彼の臆病で不器用な在り様が
初めて会った時にくれたはにかむような純粋な笑顔が
実際に言葉を交わして知った、彼のぎこちない優しさが


どうしようもなく繊細な魂の美しさと
純粋で真直ぐな好意と
脆くて壊れやすそうに見えるのに決して壊れない彼の強さが


自分に齎した、快い感情の変化が本当に愛しくて大切なものだった。


自分は人間ではなかったけれど、一時であっても人間としての在り方を感じさせてくれた彼のことが、何よりも大切になっていた。 けれど己の本能に逆らう事は不可能だから、せめて彼の手で終わらせてもらえるならば、彼と同じ人間として死ぬ事ができるのだと、思ってしまっただけなのだ。そうすれば人間が滅ぶ事も無く、彼も死ぬ事もないと思っていたから、それを選ぶことを決めたのに。


・・・それが、何より彼を傷つけたのだと、今の自分は知ってしまった。



(ならば、今度こそ君を護るよ。 シンジ君。 ・・だから笑って。)


 

 

 

 

 

 


少年と少女の願いはそれだけだった。
 

ただ、この子どもが生きていること。


それさえ叶うならば、世界が幾つ消えようと、他人がどれ程死んでいこうと、関心すら抱かなかった。


子どもが無事なら、それでよかった。


もう、それだけで、よかったのだ。

 



 

 


+++

 

 

 

 


 

「ねぇ先生。ここがそうなの?一面見事に焦げてるわね~。
 これじゃあ、譜術の痕跡を調べるのは難しいかしら。」


「そうですね、報告では地面に描いた譜陣と備えられた譜業を連動させるそうですから、完全にとはいきませんが・・・ とりあえず残った音素の構成だけでも知れればいいですよ。後はフランシスとナオコに任せましょう。キョウコとヴォルターが 何か新しい情報を持ってくればもう少し詳しくわかるでしょうし。」


「おいユリア、足元を見て歩けよ。こんな荒れた場所でよそ見すんなって!
 お前昨日も薪拾いの途中ですっ転んだろーが!」


「うるさいわよフレイル!
 そんなしょっちゅう転んでるみたいな言い方やめてくれる?!
 まるで私が間抜けみたいじゃないの!」


「みたいもなにも、その通りじゃねぇか・・」


「何ですって?!」


「なんでもねーよ!!」

 



ぼんやりと佇んで空をみていたら、遠くから賑やかな話声が聞こえた。女性が一人と男性が二人。笑い声を交えて楽しそうな口論が少しずつ近づいてくる。こんな場所に何をしに来たんだろうとは思ったが視線は向けなかった。どうせ自分には関係ない。この戦場で死んだ者に関係がある人間ならば、自分に復讐でもするかもとは思ったが、彼らの和気藹々と楽しそうな会話にそんな負の感情は見いだせない。だったら彼らが通り過ぎるのを待てば良い。けれどそこで聞こえていた会話が止まる。次いで感じたのは殺気と警戒混じりの視線だ。まぁ、こんな場所で一人で佇む人影など怪しいことこの上ないかと思ったから特に何を思うでもなく身じろぎもしなかった。


 

「----おい!お前、こんなとこで何をしてるんだ?!」


「ちょっと、フレイル、」


「ユリアは下がってろ!おい!」


 

剣を突き付けられて詰問される。警戒しているから距離は開いているが、譜術でも使えば一瞬で無効化される程度の間合いである。本気で危ないと思うのならば問答無用で切り捨てにかかるか、譜術で昏倒でもさせれば良いのに、と他人事のように考えた。どうせ怪我をしたところですぐに癒える。実際全身が焼き爛れてもこうして五体満足で立っていられるならば、多少殺されかかっても大したことではないだろう。面倒だから、攻撃されたら死んだ振りでやり過ごそうか。埒もない事を無言で考えていたら馬鹿にされているとでも思ったのか、ますますいきり立つ青年が剣を構えた。後ろ手に庇う女性が止めようとするのを煩わしげに振り払っている。傍らの青年は無機質な視線でこちらを観察しているようだ。



「おい、お前!無視してんじゃねぇよ!---っこの、魔王絶炎こっ--」



「待ちなさいって言ってるのが聞こえないの!馬鹿フレイルーー!」



ドゴッ



凄まじい打撲音が響く。流石に驚いて視線を向けた先には、大きなこぶを押さえて蹲る青年が悶絶している。傍らの青年は何を考え居るのか分からない表情でそっと視線を明後日の方向に投げていた。そして蹲る青年の後ろには、振りおろした杖を構えたままの女性が輝かしい笑みで足もとの青年に絶対零度の視線をおとす。



「フレイル?私は前にも言わなかったかしら?見境なく周りに攻撃するのは止めなさいって。
 あった人が皆味方とはかぎらないけど、同時に敵だと断定されたわけでもないのに戦闘を仕掛けるってどういうこと? そのせいで、どれだけ無駄な諍いが起きたか、忘れたとは言わせないわよ。」


「~~~~~~っ!!!でも、ユリア!
 こんな戦場跡に立ってる奴なんか怪しいにきまって、」


「フレイル」


「いや!わかったごめん!悪かった、反省してる!」


「謝る相手が違うわね」


「~~っ、おい、あんた!すまなかった!」


 

反論する青年--フレイルというらしい--に、更に杖を構えた女性--ユリアと呼ばれている--が一段低くなった声音で名を呼ぶ。その声に慄いたフレイルが勢いよく頭を下げた。だがユリアは謝罪するのは自分にではないだろうと促す。その言葉に一瞬気まずげに視線を泳がせるが、勢いよく謝罪を吐き出し頭を下げるフレイル。真っ直ぐな謝罪に些かうろたえていると、ユリアも言葉を継ぐように話しかけてきた。
 


「本当にごめんなさいね。怪我はないかしら?
 あったらすぐに治療するから言ってちょうだい。
 いきなり剣を向けるなんて、本当にお詫びのしようもないわ。
 大丈夫だったかしら?」



申し訳なさそうに眉尻を下げたユリアが優しく微笑みながらこちらの様子を見回している。どうやらフレイルの攻撃が本当に不発だったのか確認しているようだ。怪我がなくても殺気混じりに剣を向けられたなら怯えているだろうと心配しているのかもしれない。安心させるように柔らかな声で話しながら少しだけ歩み寄り、触れない程度の距離で立ち止まる。警戒していないことを教え、相手に逃げる隙を与える位の距離を保って話かけてくれる。優しい人なのだろう、と思った。
 

 

「私はユリア、頭を下げてるのはフレイル、この人はサザンクロス、というのよ。
 ここには前回の戦闘で使用されたっていう譜術の調査に来たのだけど、
 --ええと、名前を聞いてもいいかしら?」


 

自分達の自己紹介とここに来た目的を告げてからこちらの名を訪ねられる。快い声に柔らかく話しかけられると、するすると強張りが解けていくようだ。緊張はなかったが硬くなっていた表情が少しだけ緩んだのを自覚する。それも「戦闘で使用された譜術」の下りで再び強張ったが。それに気づいているだろうに見ない振りで優しく促されて恐る恐る口を開いた。
 


「大丈夫、です。怪我はありません。
 暗い場所でいきなりあったんですから警戒するのは当然ですから気にしてません。

 ・・・私、は・・私の、名前、は・・・」



 

そこで、とまった。
 

名前、と聞かれて、言葉が詰まった。
なんて答えていいのか、本当にわからなかったのだ。

 

(名前?僕・・・私、は、)

 

シンジ、とは名乗れなかった。


この世界にいたシンジの名前を名乗るわけにはいかないという理由もあった。
それに、今の自分は”あの世界”に生きていた”碇シンジ”とは別のものに変質してしまっていることを嫌というほど理解していたからでもあった。けれど答えられなかったのはその二つとは全く別の理由だった。


・・”シンジ”は碇ユイとゲンドウの間に生まれた”息子”の名前だ。


ならば、今の自分はシンジとは名乗れない。


だって今の自分は、



(だって、もう自分はシンジじゃない。
 ・・・この器は、”碇ユイ”の為に用意されたものだったんだから。)

 


・・・・女、の姿をしているのだから。



 だから、シンジではない、のだ。

 

 

 


 


+++

 




”過去の世界”から遠く離れたこの場所で、大切な存在が実体を得てから過ごした日々を見守っている二つの魂は悲しげに心を震わせた。”カミサマ”になった子どもが生きてさえすれば良いと考えた二人にとって、子どもが生きる為になら他の存在がどうなろうと関係なかった。少女と少年にとって、大切なのはこの子どもだけなのだ。子どもが選んだことならば、それがどんな道であろうと内側から見護るつもりであったのだ。


あの世界で確かに自分達はこの子どもに傷つけられた。
けれど、それ以上に自分達が子どもに追わせた傷が深いことを知っていた。


誰よりも優しくて臆病な子どもがどれほど戦いを厭っていたか知っている。それを、人類を護るという名目で追いたてたのは、あの世界に存在した全ての人間たちだった。自分達も、同様に子どもの心を追いつめた。子どもだけを選ぶこともできない癖に、中途半端な優しさで自分達の存在を刻みつけたことこそが、何より子どもを壊してしまった原因だと知っている。誰かに自分の存在を望まれたいと思うのは当たり前の感情だ。けれど”あの世界”で、周りにいた大人達はその想いを利用して子どもを戦場に追いたてた。少女も少年も、そんな大人達の仲間だったのだ。敵を殺すことが出来ないならば、お前の居場所はないのだと思い知らされた子どもが、どんな風に考えるかなんてわかりきったことだったのに、あの時の自分達はそんなことすら気付かなかった。



確かに最後の最後に子どもの存在を選んだけれど、それまで子どもにした仕打ちが清算されるわけじゃない。
今の子どもが何より恐れているのは、他者からの拒絶だ。それを知っている二人にとって、例え別の存在だと理解していても”碇ユイ”と同じであるユイの望みを拒めなかった事が罪であるとは思えなかった。何よりも、子どもがユイの言葉を撥ね退けられなかったのは、この世界のシンジの居場所に存在してしまった罪悪感だと知っている。ならば尚更、子どもの行為を責める気持ちなど起こらなかった。
 

けれど、恐怖に身を竦めて己の行為に怯えている今の子どもに、自分達の声が届いていないことも知っていた。それでも只管に魂を震わせて、子どもへの想いをさけんだ。


 


(碇君、悲しまないで。私はずっとそばにいるから。
 貴方が生きているのなら、それだけでいいから。だから、どうか)


(シンジ君、泣かないで。僕はずっとそばにいるから。
 君が何を選んでも、君が生きているならそれだけでいいんだ。だから、どうか)


 

 

 

 


+++

 



 

 

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自己紹介:
ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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