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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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この作品は、エヴァ×アビス基本+seed(キラ・ラクス・クルーゼ・カナード他)、ぼかろ(カイト・ミク・メイコ)設定がクロスする混沌クロス作品です。

・碇レンver

・今更ではありますが、時系列及び預言の在り方等諸々について、夥しい捏造が入ります。
 特に創世歴時代の出来事や人物間の血縁関係や交友関係等は、公式設定とは全くの別物だと考えてください。

本来お亡くなりになる方が生存してたり、マルクト・キムラスカ・ダアトへの批判・糾弾や、PTメンバーへの批判・糾弾・断罪表現が入ったりします



CP予定:
・・・キラ×ラクス(seed)
・・・カイト×ミク(ボカロ)
・・・クルーゼ(seed)×セシル(アビス)
・・・被験者イオン×アリエッタ(アビス)
・・・フリングス(アビス)×レン(碇レン)

です。上記設定がお好みにそぐわない、という方はお読みにならないようにお願いいたします。












そして左舷昇降口のルーク達。
途中開かなくなっている扉の代わりにと爆薬で壁を抜いての荒業で移動したため最短距離でこれたらしい。外を窺っていたジェイドが振り返る。



「どうやら間に合いましたね。現れたようです。」



ルークも見れば、リグレットが訝しげにタルタロスを見上げる姿が。確かにその後ろにイオンが立っている。どうやらアッシュはいないようだが、途中で別れたのだろうか。



「で、奴らが扉を開けると同時に不意打ち、で良いんだな?」


「はい、残念ながら詠唱は間に合いませんし、ラルゴにかけられた封印術で私の譜術では・・」


「レン、頼む」


「はい、・・・・・タービュランス!」



確認したルークに何事かいいかけるジェイド。だがルークはすぐにレンを振り返って指示する。肯いたレンが、扉を見つめ、開いた、と同時に中に入ろうとしていた兵士を吹き飛ばした。中途半端な表情で固まるジェイド。ティアも目を開いて止まる。二人には目もくれずにルークとレンは外に出る。素早くナイフを抜きながら、再び発動する譜術。


 

---此処は屋外だ。そして守るべき対象は後ろにいる。
導師も傷つけるわけにはいかないが、要はリグレットの周りだけ外せばいい、

飛び降りる一瞬の間にそこまで考えて、レンは譜術を解放した。
 

「----アイシクルレイン!!」

 


氷の矢が神託の盾騎士団に降り注ぐ。本来広範囲への攻撃術であるため、個体への精度が低い筈だが、レンの放った譜術は的確に兵士一人一人の攻撃を封じる。次々降り注ぐ氷の矢が神託の盾騎士団兵士の足元や武器を構える手元を凍らせて行動を制限する。それを満足げに見たルークが、こっそり唱えていた詠唱を完成させる。


 

「----エクスプロード」

 


轟音、熱波が周囲をなぎ払う。静かになったその場に立っているのは、ルーク達と、リグレットと導師イオンのみ。リグレットがつれていたはずの兵士は、残らず倒れ伏して随所に焼け焦げた痕が見える。唖然呆然と固まるもの達を尻目に、ルークが呑気な口調で慌てて自分を振り返ったレンを労う。


 

「おお、流石だなレン。」


「ありがとうございます!・・・いえ、そうではなく!」


「上出来上出来。久しぶりに間近で見たけど、もうキラでも敵わないかもな~」


「ご冗談を。・・・ってルークさま、な、何を、」

 


反射的にルークの言葉に返事を返しつつ、何事か問おうとするレンの言葉をわざと遮って朗らかに笑うルーク。レンに向ける瞳は優しいが、それが兵士たちを見回す瞬間は強い怒りを宿す。一瞬リグレットに向いた時には、憎憎しげな舌打ちまでしていた。その様子で一番譜術をぶつけたかったのが誰か知れる。が、後ろに押さえられているイオンの存在にしぶしぶ諦めたのだろう。・・・監禁される前に、レンを傷つけられた事への報復行為か。

次いでその目が呆然と突っ立っているジェイドに向くと、呆れた口調で言い放った。



「作戦はどうした?」

 


そこで僅かにぎこちないながら素早く槍を取り出してリグレットに突きつける。我に返って譜銃を構えようとしたリグレットよりも一瞬速く動きを制することに成功する。そこで何時もどおりの皮肉気な調子で告げる。



「・・・武器を捨てていただきましょうか」


「・・・っち、中々やるな、温室育ちのお貴族様が」

 


明らかな虚勢で吐き捨てるリグレットを無視してルークとレンがイオンに近づく。ティアは未だに固まったままだ。

 


「すごいですねぇ、お強いとは思っていましたが、これほどとは。」
 

「お褒めに預かり光栄です。それよりもご無事のようで安心しました。」


「ありがとうございます。
 導師イオン、お体に大事はございませんか?ご気分が優れないということは・・・」


 

やっと行動の自由が許された開放感で、イオンが楽しげに笑って二人に話しかける。ルークが優雅に一礼して導師の賛辞を受け取り、次いで柔らかな笑みで言葉を返す。レンは素早く導師の様子を見回して怪我などしていないかを確認する。親しい知人同士の再会の雰囲気でほのぼのとした空気が流れた。


それを故意に見ない振りで、こちらはシリアスな空気を取り戻そうとするジェイドとリグレット。取りあえず作戦を完遂させようと思ったらしい。

 


「さあ、早く。もう抵抗する意味もないでしょう?」


「・・・さすが、ジェイド・カーティス。これはお前の作戦か。譜術を封じても侮れないな」



やりを突きつけられながら冷静そうに言うリグレット。八つ当たりを兼ねた嫌味だろうか。その台詞に微妙頬を引きつらせて視線を泳がせるが、すぐにいつもの薄笑いでジェイドが返した。


 

「・・・お褒めに預かり光栄ですね。さあ、武器を捨てなさい。ティア、譜歌を!」

 


後ろでルークとイオンが笑う。レンは再び周りを警戒しているが、眉が緩んでいる。

 



「ティア・・?ティア・グランツ、か。」

 


ティアの名に反応するリグレット。冷静沈着な女性の表情が僅かに崩れて、固まっている少女を見た。ティアも、ジェイドの指示を忘れてリグレットを凝視する。先程は気絶していたためリグレットが襲撃に参加していたことを知らなかったのだ。


 

「リグレット教官!」


「・・・お前は、」



視線を鋭くしたリグレットがいいかけた時、タルタロスの壁をぶち抜いて影が乱入した。

 



「てめぇ!リグレット、ッ・・・師団長!いい加減にしろ、・・てください!
 人に面倒ごと押し付け・・・いや職務を放棄して!・・・導師に何をさせてやが、・・・るんですか!おま、・・貴方方は!・・・って、本当に何してるんですか」


 

苛立ちの余り素の口調に戻りかけているのを必死に取り繕うカナードである。どうやらどこの出口も開かないことを悟って無理矢理譜術で穴を開けて出てきたらしい。出た先で展開されていた状況に怪訝な表情を浮かべるカナード。その隙をリグレットが突いた。


 

「お前達、奴らを抑えろ!」

 


響き渡る指笛。途端空から魔物の群れが降ってくる。・・・神託の盾騎士団が移動に使っていたグリフィンだ。ルークとイオンに向かうグリフィンは、レンが譜術でなぎ払う。レンの肩に乗っていたミュウも必死に炎を吐いて応戦する。が、今まで槍を構えていたジェイドと、突っ立ったままだったティアが押しつぶされて地面に臥した。
そこで余裕の表情を取り戻したリグレットが言い放った。

 


「・・形勢逆転、か?」


 

取り押さえる事はかなわずとも、周りを十重二十重に囲まれているレンとルークを睨むリグレット。二人の余裕の表情は子どもの虚勢か、と判断して要求する。



「さあ、導師を返してもらおう。その数を倒すのは幾らなんでも無理だろう?」


「・・リグレット!・・師団長!導師に何を・・」



未だいい辛そうにリグレットに問いかけたカナードへ命じた。

 


「カナード、さっさとそいつらを拘束して導師をお連れしろ!」


「止めなさい!カナード!」



そこで鋭く命令したイオン。カナードは、戸惑った表情でリグレットとイオンを見比べる。

 


「(おいおいおい、その二人ってキムラスカの王族と公爵家の姫だぞ。まじで勘弁しろ。)・・・で、ですが、」


「(流石カナード、・・イザナ様の親友だけありますねぇ)・・カナード!」

 


状況を判断して演技し始めたカナードに感嘆の視線を送りながら呼びかけるイオン。ここの会話で、マルクトとダアトの優劣が決まる。・・・ちらり、とタルタロスが停止する草原の周囲に視線を走らせたイオンが、怒りの表情で言葉を続けた。しかし一瞬瞳が楽しげに煌いた。それを見逃さなかったルークが再び感心したように瞳を細めた。勿論ばれる様なへまはしない。
 


「貴方方は自分が何をしているかわかっているんですか?!
 突然マルクトの艦を襲撃などと・・・!!」


「・・それは、ですが!!
 (イオン・・お前ちょっと生き生きしすぎじゃねぇのか?ばれてもしらねぇぞ)」



そこで苛立たしげにリグレットが叫ぶ。

 


「ええい!カナード!何をしている!・・・そちらも何がおかしい!お仲間は動けず、お前達も囲まれてるんだぞ。」

 


押さえつけられながらリグレットを見上げるジェイドとティア。だが、睨まれた当のルークとレンは態度を変えない。カナードの一瞬の表情とイオンの視線で事の次第を悟って傍観していたが、リグレットに話を振られて面倒そうに答えた。

 

 

「期待通りの反応じゃなくてすまないな。だが・・・・」


 

ルークとレンが同時に上を見上げた。そこに振ってくる影が、二つ。

 


「ガイ様、華麗に参上。・・・ってね。」


「マスター!お待たせしました!」



金髪の男がジェイドを抑えていた魔物を切り裂く。瞬間音素に帰るグリフィン。
青い青年はリグレットを蹴り倒し、振り返りざま放った投げナイフでティアの上に乗っていたグリフィンを倒した。
そして二人の青年は、其々の表情でルークに笑いかけた。


ガイとカイトだ。


どうやら、ほぼ同時にタルタロスに追いつき、艦上部の窓から中を窺おうとして居たところにルーク達が出てきたのだろう。その気配に気づいていたルークとレンは、ただ必要な瞬間に彼らの攻撃の隙を作らせればよかったのである。


 

「ガイと、カイト、か。」

 


それぞれを見てルークが笑う。
ガイとカイトも取りあえず、ルークを守るように立ち、武器を構えた。


そんなルーク達を横目に、再び自由を取り戻したジェイドが、腹を押さえて蹲ったリグレットに槍を突きつけた。

 


「形勢、逆転ですね?・・・では先ずは魔物達と一緒に中へ入ってください。・・・そこの、貴方も、」

 


薄く笑いながらリグレットをタルタロスに押し込むジェイド。倒れている兵士達は放置するが、魔物達も全員が中に入ったことを確認して、先程壁をぶち破って出てきたカナードにも指示する。だがカナードはジェイドを無視してイオンの傍に歩み寄った。イオンも、カナードの方へと歩いてゆく。
 

怪訝に眉を顰めたジェイドが何事か言う前に、カナードが跪く。

 


「カナード。貴方は何をしているんです?」


「は!先ずは遅参いたしました事をお詫び申し上げます。
 神託の盾騎士団特務師団副団長、カナード・パルス、導師をお迎えにあがりました!」



イオンの前にたどり着くや、出てきたときとは打って変わって完璧な礼儀作法で導師の前に跪いた。咄嗟に前に出ようとしていたレンも、その様子と先程のイオンとのやり取りで敵ではないのだと確信して見守るに留める。


 

「顔を上げて立ってください。発言も許可します。
 ・・・あ、ジェイド、カナードは大丈夫です。取りあえずその扉は閉めてください。」

 


そして槍を構えたままのジェイドに、リグレットたちを閉じ込めさせてからカナードに視線を戻す。

 


「迎えにきてくれてありがとう、カナード。
 すみません手間をかけて・・・ですが、この惨状は一体何事か、説明してください。」


「は!私どもは、大詠士モースから命じられまして、その、マルクトに誘拐された導師を奪還しろ、と。」

 


立ち上がったカナードの言葉に、成り行きにおいていかれていたジェイドが眉を吊り上げた。苦々しく告げる。



「何を言うんです。私達は、導師イオンに協力を依頼して一緒に来ていただいているんです。勝手に連れ出してなど、」


「・・・貴殿が導師を誘拐した犯人か。」



ジェイドを鋭く睨むカナード。さり気無く立ち位置を変えて、イオンを庇っている。その隙のない動作に感心するルーク。ガイとカイトには取りあえず武器を納めさせて控えるように手振りで指示する。レンはイオンの守り手が現れた事に安堵する。ティアはただ口を開けたまま突っ立って周囲を見比べている。ミュウがころり、と転がってレンとルークの間に下がった。


 

「誘拐とは何のことです。私は、」


「貴殿はマルクトのジェイド・カーティス大佐、だったか。導師が教団を離れなければならない場合、大詠士か主席総長の承認、或いは詠士3人以上の承認が必要な事位ご存知だろう?そして守護役を最低でも10人はお付けするのが通例だ。・・・にも拘らず、大詠士も主席総長も不在の折に、詠士の誰一人知らないうちに、、最下級の守護役一人をつけたのみで導師を連れ出した行為が、誘拐でなくなんだと言うのだ。」


 

だがカナードはばっさりと斬り捨てる。


その言葉を聞いたルークとレンは唖然とする。確かに誘拐の疑いが、とは聞いていたから何か連絡の行き違いかでもあって混乱が起きたのかと思っていたが、ジェイドがそこまでの無理を通してイオンを連れ出していたなど。・・・まあ、イオンが気づいていないはずはないから、マルクトに貸しを作るためにジェイドに付き合ってやったというところだろうが・・・マルクト側は、大打撃ではないのか?


 

「そして、そこのお前、所属を名乗れ」



次いでカナードは突っ立っているティアに視線を向けた。何事か反論しかけていたジェイドは完全無視である。言葉の接ぎ穂を失ってカナードを睨むジェイドが苛苛と姿勢を揺らす。その横柄な言い方に眉を寄せるティアがしぶしぶ名乗る。


 

「神託の盾騎士団モース大詠士旗下情報部、第一小隊所属、ティア・グランツ響長であります。」


「・・・成る程、お前がファブレ家ご子息とヤマト家ご令嬢を攫った恥知らずか。」


「な!!私は誘拐などしていません!!
 二人を連れ出してしまったのは純粋な事故です!」
 

「黙れ!お二人を連れ去った擬似超振動の原因は、お前がファブレ公爵家に襲撃した所為だと聞いている。どこが事故だというんだ?!」
 

「襲撃って、私はヴァンを狙っただけよ!」


「襲撃ではないか。他家に不法に侵入してその家の人間に危害を加えようとする行為のどこが襲撃じゃないっていうんだ。お前のお陰でダアトはキムラスカから宣戦布告される可能性もあったというのに。」


「そんな!あれは個人の事情で仕方なく!」


「だから、貴様は・・・!」


「カナード」



そこでイオンが止める。そしてルークとレンの元に行こうとする。それに気づいたルークが、主の無事を喜んで何やら言い募る二人の青年を控えさせて、レンと共にイオンの傍へ歩み寄った。


 

「(ティアには言っても無駄です。
 今は人手が足りなくて拘束したら身動きがとれませんから。
 ・・・・それに、気づいているでしょう?彼らに協力していただきましょう。

 ルーク殿、あの罪人はキムラスカについたらその場で正式に引き渡すということでよろしいですか。)」
 

先程のイオン同様ルークも周囲の草むらの影に視線を走らせてからにこやかに応える。



「(勿論です。お気遣い痛み入ります。
 どうかカナード殿も御気になさらず、既に導師には丁寧な謝罪の言葉を頂いておりますし。)」


「(は、畏まりました。
 ルーク・フォン・ファブレ様の寛大なお心に感謝いたします。)」



そこで普通の声量に戻す。



「カナード、こちらがルーク・フォン・ファブレ殿とレン・ヤマト殿です。
 僕も道中大変お世話になりました。ルーク殿、レン殿、こちらは神託の盾騎士団特務師団副団長を勤めるカナード・パルス響士です。」

 


イオンの言葉を受けてお互いに挨拶を交す。

 


「ああ、私はルーク・フォンファブレ、ファブレ公爵クリムゾン・ヘアツォーク・フォン・ファブレが一子だ。
 こちらこそ、導師イオンには親しくして頂きました。」


「私は、レン・ヤマト、ヤマト公爵ハルマ・ヤマトが第二子にございます。
 こちらこそ導師イオンには大変親切にして頂きまして、感謝の言葉もございません」
 

「改めまして、私は神託の盾騎士団特務師団所属副団長を勤めておりますカナード・パルス響士であります。」

 


にこやかに自己紹介するルークとレンに、カナードも礼儀正しく敬礼で応える。そこでルークも己の従者二人を呼び寄せた。

 


「ガイ、カイト、こちらへ・・・導師イオン、パルス響士、
 こちらは私の従者であるカイトと、ファブレ家で使用人をしているガイ・セシルです。
 二人とも、こちらは導師イオンと神託の盾騎士団特務師団副団長を務めておられるカナード・パルス殿だ」



「ご尊顔を拝謁できて光栄です導師イオン。
 主から紹介に預かりました、カイト、と申します。」


「初めてお目にかかります導師イオン。
 ファブレ家で雇っていただいております、ガイ・セシルと申します。」


「はじめまして、お二人ともどうぞ楽になさってください。」


「初めてお目にかかります。カナード・パルス響士です。」

 


穏やかに挨拶を交す。取りあえず危機は去ったものとして、友好的な雰囲気が流れる。一時で良いから気を休めたかったルークとイオンは殊更良い笑顔で面々を眺める。レンも、カイトが追いついてくれたことでルークを守る手が増えたことに安堵する。カナードは内心を悟らせない真面目な表情でイオンの後ろに控える。ガイは何も気づかずただ爽やかに笑う。カイトが満面の笑みでマスターの傍に在れる事を喜んでいる。

ミュウがころり、と転がってルークの足に擦り寄った。



「ご主人様うれしそうですの!!」


「「「チーグルが喋った・・・・」」」



今まで緊迫した状況が続いていたから大人しくしていたが、やっと解放されたと思ったのか無邪気な笑顔でルークを見上げて転がるミュウ。何やら人懐こいチーグルだと見下ろしていた新参の三人が声を揃える。それに小さく笑いながらルークがミュウを拾い上げる。イオンとレンも微笑ましげにルークとミュウを眺めた。



「ああ、これは創世暦時代の遺産であるこのリングの効果らしくて、どうやら万能の通訳装置らしい。一応チーグル一族の宝だという事だが。」


「それはそれは」

「へぇ」


「・・創世暦時代の?」



感心したようなカナード、チーグルと主の戯れに笑うカイト、リングの説明に瞳を輝かせるガイ。それを見たルークが釘を刺す。



「・・ガイ、お前が音機関好きなのは知っているが、これは一応借り物だ。手を触れるなよ。」


「・・はい。畏まりました・・。」



すごく、残念そうだ。それでも使用人としての立場は弁えて大人しく返事をする。


そこで割りこむ声。苛立たしげに腕を組んだジェイドである。
傍らには眉を吊り上げたティアもこちらを睨んでいる。

 


「やれやれ、お友達同士の挨拶は済みましたか?ならば先を急ぎましょう。
 戦争は待っていてくれませんよ。」


「そうよ、何を呑気に話し込んでいるのかしら。私たちは和平のために急がなければならないのよ」

 


諦めの境地に至ったルークたち三人とただ突然の敵意に戸惑うガイは無言で聞き流す。だが、此処で殺気だったのはカナードとカイトだ。



「・・・貴様ら、誰に向かってそのような口を聞く。高がマルクトの佐官と神託の盾騎士団の最下級兵士如きが、導師やキムラスカのお二方に向かって礼も取らず許しも得ずに直接話す等、許されることではない。・・・・この場で斬り捨ててくれる」
 

「随分な言い様ですね?・・・わが主を侮辱することは許しません。」

 


今にも目の前のなんちゃって軍人二人を斬り捨てんばかりの殺気をまとって剣を構えるカナード、ルークの前は動かないが物騒な気配は治めないカイト。一触即発の雰囲気に、萎縮したミュウが小さく丸まってルークの服にしがみ付く。レンは相談するようにルークを見た。イオンも深く溜息を吐く。一人ガイだけが状況に置いていかれている。


そこで無謀にも再び話し始めるジェイドとティア。・・・無謀というより馬鹿なのだろうか。
己の立場を理解しないのは今更だが、面と向かっての殺気にすら気づかないというのは本当に軍人としてどうなんだ。

 


「私はマルクト皇帝ピオニー陛下から和平の使者を任され----」

 

 


「-------そこまでです」

 


嫌味くさい笑みで言おうとしたジェイドの言葉を、新たな第三者の声が遮った。一斉に視線が集まる先には、桃色の髪を高く結い上げ凛々しい装束に身を包んだ美しい女性がマルクト兵士を従えて立っている。---ラクス・クライン公爵である。
 

エターナルでは近づけぬと判断して、隠密行動に切り替え周りを包囲させていたのだろう。先程からイオンとルークが気にしていた草むらから、一斉に姿を現すマルクト軍が静かにタルタロスを取り囲んでいる。無論遠方に姿を現し始めた。エターナルが照準を合わせているのも視認する。



何時もは穏やかな笑みを浮かべているはずのラクスが険しい視線でジェイドを睨んだ。



「ジェイド・カーティス。・・・これ以上マルクトの恥を晒すのは止めていただきましょう。」


「やれやれ、こんなところで何をしているんです?クライン公爵。」



ラクスに向き直って眼鏡を押し上げるジェイド。ラクスの後ろの兵士が殺気立つ。カナードとカイトはとりあえず攻撃は控えて事態を見守る。ルークとイオンとレンが視線を交して安堵の息を吐いた。ミュウも三人の表情に危険はないのだと悟って力を抜く。ガイは未だに目を白黒させる。ティアも同様に呆然と立っている。。


 

「あら、おわかりになりませんか。」


「わかりませんね。私たちは急いでいるのですよ。つまらない用事なら・・・」

 


ふ、と小さく息を吐いたラクスが、凛、と命じた。

 


「----捕らえなさい」

 


殺到するマルクト兵。あっという間に地面に押さえつけられるジェイドが険しい表情でラクスを見上げた。

 


「何の真似です!!私は陛下の名代を----」


「貴方は、もう名代ではありません」

 


そこで新たな声が加わる。青を基調とした礼服に身を包んだ銀髪の青年---アスラン・フリングスである。その姿を認めたジェイドがアスランの事も同様に睨み上げる。それを無視したラクスとアスランがルークたちの前に進み出る。警戒するカナードとカイトの険しい視線にも気分を害することなく、立ち止まるとそこで跪いて頭を下げた。



「御前をお騒がせして申し訳ございません。
 私はマルクト帝国ピオニー・ウパラ・マルクト9世陛下より、公爵の位を戴いております、ラクス・クラインと申します。導師イオン、ルーク・フォン・ファブレ様、レン・ヤマト様には、わが国の者が大変なご迷惑をおかけいたしました。」


「失礼致しました。
 私はマルクト帝国ピオニー・ウパラ・マルクト9世陛下より、侯爵の位を戴いております、アスラン・フリングスと申します。お三方には我が国の軍人が働きました無礼について心より謝罪いたします。 大変、申し訳ございませんでした。」

 


二人の謝罪を受けたイオンとルークがにこやかに答える。


 

「どうか、お顔を上げてください。」


「そうです、お二人のお気持ちは良くわかりましたから。」

 


その言葉には強く首をふったラクスとアスランが続けた。



「いいえ、今更何を、とお思いかも知れませんが、わが国がこの度申し込むつもりでありました和平への心に偽りはございません。お三方に無礼を働きました者には相応の処分を致します。ご命令とあらば、私の首を捧げる覚悟もございます。勿論導師イオンとルークさま、レン様の安全も保障いたします。ですから、どうか和平だけはお聞き届け頂きたく」
 

「加えて、この度、私アスラン・フリングスが、こちらのジェイド・カーティスに代わって新たに使者に任じられました。 派遣途中での交代など、礼を失した行為である事は承知ではありますが、どうかお許しいただきたくお願い申し上げます。」

 

 

マルクト帝国最有力公爵と侯爵が揃って頭を下げている。その誠意溢れる姿勢に、カナードとカイトの視線が和らいだ。危険はないと判断して静かにイオンとルークの後ろに控える。レンとミュウとガイも勿論後ろで礼をとった。

 
 

「・・・・どうぞ顔を上げてください。
 お気持ちは良くわかりました、和平の仲介は引き続きお受けしましょう。」


「「ありがとうございます!!導師の寛大なお心に感謝いたします」」

 


柔らかく笑んだイオンが再度顔を上げるように言ってから、了承する。その応えにラクスとアスランが更に頭を下げた。次いでルークも応える。

 
 

「・・・承知いたしました。貴方方を信じましょう。
 私共が貴国に許しなく足を踏み入れてしまったことは事実ですから、むしろ手間をおかけして申し訳ない。お詫びといってはなんですが、私も和平には協力させていただきます。 ・・ただ私は未だ爵位も戴いていない身です。ですから、使者の方々を陛下にお取次ぎする位しかして差し上げられませんが、その程度でよろしければ・・・」



レンも一歩後ろで控えながら、丁寧に答えた。



「こちらこそ、不可抗力とは言え、貴国をお騒がせ致しましたことお詫び申し上げます。私も多少の口添えしか出来ませんが、それでもよろしければお手伝いいたしましょう。」

 


「勿論でございます。ルーク・フォン・ファブレ様とレン・ヤマト様のお慈悲に感謝いたします。」


「ありがとうございます。どうぞ、よろしくお願いいたします」

 

 

とりあえず身の安全は保障された、ということでラクスとアスランの言葉を受け入れる。元々使者の人柄しだいで和平に関しては積極的に対処しようと思っていたのだ。相手がジェイドでは問題外だが、ラクスとアスランを見る限り、かなり信用できる人物だと判断する。ならばここで相手にも好印象を持ってもらって、じっくりと見定める時間が欲しいルークとレンが、取次ぎを約束する。
予め連絡した上ならその位は可能なはずだ。・・・そろそろキラもこちらに近づいているはずだし、カイツールに知らせを届けておけば、段取りを付けておいてくれるだろう。



(後は母上にも伝えて置けば、陛下と父上が最悪の対応をすることは、・・・ない、よな?)



母のことは信頼できるが、その上を行く暗主である国王と公爵を意識せずにこき下ろすルーク。日々植えつけられる不信感に、不安も増大するが取りあえずは、マルクトだと考えて、ラクスとアスランに微笑みかける。
ルークとレンに向き直ったラクスとアスランも再び丁重に頭を下げる。


そこで、イオンが控えめに問いかける。

 


「それよりも我が教団の者が、マルクト軍の方々に為した事についてなのですが・・・」


「その件に関しましてはわが国といたしましても遺憾なのですが、
 ・・教団のトリトハイムどのから文書を受け取っております。
 導師にご助力いただく身でありながら、負担をお掛けする教団の方々への誠意が足りず、不要な混乱を起こした事、お詫びの仕様もございせん。結果的に両国の軍が交戦する事態になってしまいましたが、神託の盾騎士団の皆様のお怒りはご尤もです。こちらの被害は、」

「カナード、タルタロスの被害はどの程度ですか」

「は、実は衝突の折にタルタロスの主砲に威嚇射撃され事もあり、死者が全くないわけではないのですが、なるべく投降するよう呼びかけましたので、割合としてマルクト側は三割、我が軍は二割程度、かと。もちろん重軽傷者を含めればもっと増えてしまいますが。」

「承知いたしました。・・もともとこちらの不手際に拠る誤解から生じたものですので、無事な将兵を解放していただけましたら、」

「・・では、タルタロスとの交戦については、」

「は!わが国への誤解を解いていただけましたら、それで、」


「わかりました。ありがとうございます。
 ・・・カナード、済みませんがマルクトの方々と共に中に戻って神託の盾騎士団を引かせてください。」


「了解いたしました。では、よろしいですか」

 


神託の盾騎士団の襲撃について確認するイオン。それにはラクスが答える。受け取っていた抗議文の中身と合わせてジェイドが重ね続けた不敬があるマルクトが強く出れるわけがない。細かい調整は後々の交渉しだいだが、取りあえずはお互い様という形でこの場では片をつける。それにイオンも同意してカナードに指示をだした。カナードの言葉に、アスランが答える。



「勿論です。ではそこの者と一緒に撤退と解放をしていただけますでしょうか。」


「お願いしますねカナード。」


「は!では導師をよろしくお願いします」

 


そしてカナードが一時はなれた。

 


一応この場ではこれで決着か、と思ったその時、


またもや無粋に割り込んだ人間が、二人。・・言わずと知れたジェイドとティアだ。

 


「やれやれ、貴方たちまで、そんなお坊ちゃんを甘やかすなど、何を考えているんです?
 クライン公爵、あなたは仮にもわが国の議会の主席まで務めながら、そのような・・・」


「そうです!!カーティス大佐は和平の使者なのでしょう?!
 なのに、こんな事するなんて、間違ってるわ!!」

 
 

その場の全員の頬が引きつった。ラクスやアスランは勿論、イオン、ルーク達からマルクト兵士までが一寸のズレも無く同じ事を思う。

 


(((((((こいつらは、今の話の何を聞いていたんだ?!)))))))

 


低い、低い声で、ラクスとアスランが起立の許しと御前を騒がせる詫びを入れる。ルーク達キムラスカ組みは同情の眼差しで応えて後ろに下がる。イオンは、いっそ自分も参加しようかというような殺気混じりの目でティアを睨みながら、言葉を添える。

 
 

「・・・すみません、その罪人も捕らえていただけますか。
 できればキムラスカに護送するまでの人手もお借りしたいのですが。」


「ええ、勿論ですわ、導師。
 ・・・キムラスカより、お二方を連れ去った痴れ者の捕縛も依頼されていることですし。」



柔らかな声で答えるラクス。だが、その瞳には一片の慈悲も見当たらない。
命令に従った兵士が力任せにティアを縛り上げる様を、優雅な笑みで見守っている。
 

ルークとカイトがそんなラクスをみて冷や汗を流した。


((・・・母上(シュザンヌ様)属性か・・・・しかもレベルも既にMAX。
  もしかしてキラ(様)に張れるんじゃないか(でしょうか)?))


ルークとカイトの知る中で最強の地位を保持し続ける二人と、同等かもしれない人物。・・・味方にはならなくても敵には絶対回したくない相手だ。しかも傍らのアスランも、見た目の温和な雰囲気に誤魔化されそうだが、確実にラクス属性。・・だって、なんだそのイイ笑顔。



「では、お言葉にあまえまして、失礼いたします。」



そして、麗しい笑みの般若が、二人。簀巻き状態の罪人の前に立った。

 


「・・・・・いい加減にして頂けるかしら、マルクトの恥さらしが。
 誰の許しを得てそのような戯言をほざいているのです。」


「カーティス大佐・・・いえ、軍位はすでに剥奪さえれているはずですからジェイド・カーティスと呼びましょう。あなたこそなんのつもりですか。」



先ずは自国の膿から切り落とすことにしたらしい二人がジェイドに言った。

ティアはさらに猿轡まではめられている。
入軍半年程度の新兵の抵抗など抵抗にもなりはしない。元々軍人を生業にしていながら、木刀しかもっていなかったルークと、訪問用のドレスを纏った一見無力な令嬢であったレンに、戦う術をもっているなら後衛専門自分を守れと言い放ったティアがまともな抵抗など出来るはずもない。口を開くまもなくあっと言う間に完全拘束終了。その手際の良さに密かにイオンが拍手した。神託の盾騎士団の無法ぶりを身にしみて実感させられた後だけに、統率の取れたマルクト軍を若干羨ましそうに見る。 
 

「何、といわれましても、私はピオニーから和平の使者を、」


「それは既に変更されている、と先程も言ったはずです。
 貴方はもう名代ではない。」


「な、なぜですか!」



改めて告げられて、やっとアスランの言葉を理解したらしいジェイドが反問する。それに応えたのはラクスだ。

 


「まあ、当然ではありませんの。元々貴方が名代など任されるほうがおかしいのです。
 ・・まあ、この辺りの事情は後ほどゆっくり教えて差し上げます。・・・冥土の土産に。


それを別にしても、和平の使者という大任を任されながら、貴方が犯し続けた失態に大罪の数々。とてもではありませんが、庇いきれるものではないのですもの。・・・この場で首を切られることなく裁きを受けさせて差し上げる慈悲に感謝して欲しいくらいですわ。」



さり気無く恐ろしい発言を交えつつラクスが言った。



「私が、どんな失態を犯したと、」


「まず、第一に、・・・貴方方、途中で盗賊を追いかけてタルタロスを走り回らせていたそうですね。・・しかも、盗賊には逃げ切られ わが国の国交の要であるローテルロー橋を破壊されたとか・・・これについて、どの様な言い開きができまして?」
 

「・・目の前に現れた犯罪者を見逃せとでも?」



言い逃れようとするジェイド。深々と溜息を吐いたラクスとアスランが代わる代わる答えた。



「・・・陛下からの勅命を受けて行動中の軍人が、任されている役目から逸脱した行動を取るなど、それだけで軍法会議ものでしょう。 与えられた命令には忠実且つ迅速且つ確実に。・・・入軍した人間が一番最初に教えられる基本中の基本です。
・・で、いつから貴方の役目が盗賊の討伐に変わってたんです?」


「しかも、結局盗賊には逃げられて、マルクトの国交の要であるローテルロー橋を破壊されるなど!例え貴方が命令違反を犯していないとしても、之ほどの失態がありまして?どちらにしても任務失敗の責任をとって軍法会議ものではありませんか」
 

「それを報告もせずに勝手な行動をとった人間が、どの口で言い逃れなどするつもりです。大体、正式な国からの使者が予め決められていた筈の移動ルートを変更するなど、越権行為もいいところでしょう。異常があっても無くても義務付けられる定時連絡を怠ったばかりか、それ程の緊急事態の報告もしないとは・・・貴方は軍人として今まで何を学んできたのですか。」
 

「その命令違反の最中にも、タルタロスで平時の街道を走り回るなど・・・。
 その付近にお住まいの方々が巻き込まれていたりしたら、どう責任を取るおつもりでしたの?タルタロスの走行に接触したりしたら、怪我程度では済みませんわ。」




「・・・・あ、そういえば私達が乗ってた辻馬車も危うく轢かれそうになりましたよね」




うっかり洩らしたレンの言葉に勢い良くマルクト貴族の二人が振り返った。それを見て口を押さえるレン。ラクスとアスランの連携のとれた口撃に、感心するあまり気が緩んでいたらしい。不用意に零した己の言葉に動揺して視線を泳がせる。気持ちはわかるルークとイオンが苦笑して宥めるように背中を叩くが、レンは既に涙目だ。



「失礼致しました! (すみません、ルーク様!)」


「失礼しました。お邪魔をして申し訳ございません、どうか、お気になさらず。」

 


にこやかにルークが誤魔化すが、ラクスもアスランも聞き逃せる話ではない。



「申し訳ございません、レン様、ルーク様。詳しくお聞きしてもよろしいでしょうか。」


「あ、いえ、大した話ではないのですが・・」


「まあ、どうぞ、ご遠慮なさらずに。
 お手間を取らせてしまって申し訳ないのですが、是非」

 
 

・・迫力に負けるレン。恐る恐る説明する。



「いえ、実は私どもが飛ばされたのが、タタル渓谷だったのですが、近くで偶然会った辻馬車に乗せていただく事になりまして。 その馬車でエンゲーブに向かう途中、すれ違った盗賊が乗った馬車を追いかけていたタルタロスが、辻馬車の間近を走り抜けたことがあったな、と。」


「・・・成る程、よくわかりました。ありがとうございます。
 重ね重ね、この痴れ者が申し訳ございませんでした。」


「い、いえ、こちらこそ不躾にお話を遮ってしまって申し訳ございません!」

 


ジェイドを氷の視線で一瞥したアスランが安心させるように微笑んでレンに謝罪を重ねた。対するレンは本気でうろたえて深々と頭を下げる。

幾ら気が緩んでいても、公爵家の娘でしかないレンが、マルクト帝国の公爵と侯爵に名を連ねる二人の言葉を遮って良いわけがない。しかもこの場には導師イオンと、自国の王族であるルークがいるのだ。自分如きが許しなく言葉を発するなど不敬も良い所である。情けなさにどんどん落ち込むレン。ルークとイオンがフォローしようとする。
 

そんな三人の様子を見たアスランが、年若い少年少女の微笑ましい繋がりを見て取って、柔らかく笑う。そして本心から労わるように、レンの顔を見つめて言葉を続けた。



「どうか、お気になさらず。
 レン様のお陰で、当時の事情が詳しく判明したわけですから、却って助かりました。」



ラクスも優しく微笑んでレンに視線を合わせる。
見たところ普段は礼儀も完璧に守っているであろう少女が、少し気を緩めて失敗してしまった程度のことに目くじらを立てるつもりなどない。それよりも、この程度のことを失態だと感じる少女の生真面目さに微笑ましい気持ちが先立った。ラクスは、まるで幼い妹を見守る姉のような気持ちで、おろおろと落ち込む少女を気遣う。とりあえず、少女がこれ以上気にしなくていいようにこの場から離すことにする。穏やかに微笑んで三人に向き直った。

 
 

「まあ、それよりも皆様をこのような罪人の尋問にたち合わせるなど、大変失礼いたしました。
 もしよろしければ、あちらのエターナルにお部屋を用意してありますので、どうぞお体を休めてくださいませ。そのままセントビナーまでは、エターナルで送らせていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」


「勿論です。お気遣いありがとうございます。
 では、失礼させていただきますね。(レン殿、大丈夫ですから)」


「ありがとうございます。クライン公爵、フリングス侯爵。
 お言葉に甘えさせていただきます。(・・・レン、ほら)」


「ありがとうございます!本当に申し訳ございませんでした!!」

 


居た堪れなさに身を縮める少女を、その場の面々が優しく促す。再び深く頭を下げたレンと一緒に、兵士が用意してくれていた小型の馬車に乗り込んだ。エターナルまで少し距離があるからと、タルタロスの包囲後に準備させていたのだ。 
 

穏やかに笑うイオンと、優雅に礼をとったルークが、項垂れる少女を連れて離れていく様子を見守る。その後ろには、騎乗した護衛の兵士と、カナード、ガイ、カイトが続く。主の傍を離れるわけにはいかないだろうと、タルタロス解放を手早く指示して戻ったカナードと共にカイト達も一緒にいくよう促したのだ。
 

彼らが走り去る様子を、穏やかに見守っていたラクスとアスランが、一転して威圧たっぷりの笑みを浮かべる。


 

「・・・さて、ジェイド・カーティス、此処まで説明されて尚、何か釈明はありますか。」


「まさか、未だに理解できない、なんてことはありませんね?」

 


見下ろすジェイドを押しつぶさんばかりの殺気。今は侯爵でも元少将であったアスランはともかく、所詮は貴族のお嬢様と見下していたラクスの威圧感に冷や汗が浮かぶジェイド。悔しげに視線を逸らして口を噤み続ける。

 
 

「本当に強情ですわね。悪い事をしたなら謝る、失敗したなら反省する。
 ・・その程度のことも出来ませんの?
 まったく三歳の幼い子どもでも知っている常識でしてよ。」


「どこまで落ちぶれれば気が済むんでしょうね?
 こんな恥知らずが元同僚であったなんて、・・・・」



呆れた口調で言うラクス。まるで小さな子どもに言い聞かせるような言葉に、ジェイドの自尊心がずたずたに引き裂かれる。ついでアスランが語尾を濁して落とした溜息に、更に塩を塗りこまれた気分だ。


そこで業とらしく手を叩いたラクスが告げた。



「あら、また気がつきませんでしたわ。
 失礼、アスラン・フリングス侯爵、貴方は先にエターナルに戻っていただけるかしら。
 導師イオンと、ルーク様、レン様のお三方に、新しい名代として正式に挨拶しませんと。
 まあまあ、また失礼を重ねてしまうところでしたわね。」



その言葉に目を見開いたジェイドを無視してアスランが応えた。



「そうですね。私とした事が、かの方々に無礼を働いた罪人を捕らえた事で気を抜いて失念するところでした。先程のような略式の挨拶だけで了承を得ようなどと、厚かましい振る舞いなど許される事ではありませんから。」


「ええ、では此処は私に任せて急いでいただけますか。」


「は、ではお先に失礼いたしますクライン公爵。どうぞよろしくお願いいたします。」


「はい、では、おねがいします。」

 


にこやかにラクスが見送る。アスランもラクスに一礼すると、兵士が用意した馬に乗って駆け去ってゆく。それを見ているしかなかったジェイド。その呆けた表情をゆっくりと見下ろすラクスが、笑う。

 
 

「----さて、と。では、ジェイド・カーティス。お話の続きをいたしましょうか。 ですが、皆様の足を止めるわけにはいきませんから、先ずはエターナルに移動してからにいたしましょう。

 エターナルの、牢で、お話を伺いますわ。・・・ゆっくりと。」

 



その笑みを、力なく見上げるジェイド。


・・・・既に彼女に抵抗する恐ろしさを痛感しつつある彼に、反抗の意思は、殆ど残ってはいなかった。

























 

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web拍手で教えてくださった方ありがとうございます!
こんにちは暁です。
拍手から記事の重複投稿を教えてくださったかたありがとうございました。
すみません、投稿エラーが重なって三回upしてしまってたみたいです。
大変しつれいいたしました。
2009/11/30(Mon)11:47:29 編集
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書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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