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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。
なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが空きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・
現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。
*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。
蒼い少女は夢を見ていた。
淡い月の光が差し込む白い部屋で、昏々と眠る美しい少女。
身じろぎ一つせずに静かに眠るその様は、まるで月光を削りだした精巧な人形のようだった。
忙しなく流れる日常の中を、淡々と過ごす少女にとって意味を持つのは、何も持たずに生まれた少女に初めて絆をくれた男の言葉だけだった。
流れる月日も、その上に積み重ねられる記憶も、自分の過程を記録するための記号としてしか捉えられない虚ろな少女は、正しく男の人形だった。
少女は初めて得た絆に執着するあまり、自ら世界を閉じていることに気付こうとしなかった。ただその絆の主の望みのままに、心を封じ、耳を塞ぎ、目を閉じて生きていた。感情を表さない仮面の表情で、周囲に満ちる喧騒の中を無機質な機械のように生きる少女が、夢を見るのは三度目だった。
一度目は、自分の代わりであったはずの空の器が消えた時。
身が裂かれるような激しい痛みに喪失を感じ、闇へと引きずり込む重圧が消えた喜びに解放を知った。
己の主であった強大な魂が何処かへと飛び去り、分けられていた魂の欠片がこの身に還った。
強制力をもって己を引き寄せようとする引力が消え、ただ一人の存在になった喜びに魂を飛び回らせた。
浮き立つ心が求めるままに様々な所へ飛び回る
そして惹かれる様に向かった先で見つけた光景
冷たい雨が降り注ぐ瓦礫の中心。
虚ろな視線で空を眺める幼い少女。
小さな身体は弱弱しいものなのに、一目でその身に宿る力の強さに恐怖した。
本能の命ずるままに己の身体に逃げ帰り、鼓動を沈めるために冷えた体をかき抱いた。
二度目は、エヴァンゲリオン零号機の起動実験の夜。
己に最も近しい存在。強大な力をもつ全ての母から生まれた鬼神。
それとシンクロすることは最も安らぐ時間の筈なのに、何かがそれを妨げた。
制御を離れて暴れる機体。抵抗虚しく放りだされるエントリープラグ。
激しい衝撃に身体の中が掻き回される。
脳裏に響くのは幼い自分の激しい泣き声。子供の身体を縛める無数の鎖。
それが何か分からぬままに、ただ恐怖から全てを拒絶し殻に篭った。
そして三度目。嵐の天使が降り立つその日。
人気の無い真昼の駅で、苛立たしげに周囲を見回す黒髪の少年と、少年に寄り添う少女を見つけた。
今の自分を見つけるものなど無いはずなのに、少女の瞳は自分を捉えた。
その瞳は澄んだ深紅。
翳りを帯びて尚美しいその瞳に、吸い込まれそうな感覚に陥る。
彼女の笑顔に懐かしさを感じ、憂いを秘めた瞳に心が痛んだ。
触れられないと知りながら、手を伸ばそうとした瞬間。
目の前に落ちてきた戦闘機に、その姿が見えなくなった。
少女の姿が隠れたことに微かな落胆を感じながら、己の身体に心を戻した。
白銀の少年は夢を見ていた。
窓一つ無い薄暗い小さな部屋で、粗末なベッドに横たわる少年はまるで天使のように美しかった。
古い遺跡を改造して造られた、地下深くの研究所の一室。そこが少年の牢獄だった。
関わる人間は爬虫類じみた研究者と機械のような警備兵。時折映像越しに顔を見せる濁った瞳の老人が数名。自我を持って目覚めた時からただの一度も外へ出ることは許されず。毎日毎日繰り返されるのは、執拗な検査と人の社会に関する一般教養を学ぶための授業。唯一与えられた娯楽は古いオーディオとクラシックのCDが数枚。ただ己が生み出された目的と意義を刷り込まれ、惰性のように生きていた。
彼は、周囲の者達が己に求めるものが何であるのか正確に理解していた。しかしそこから思考が進むことはなく、全てに価値を見出せなかった。
その少年が見る夢は、始祖たるアダムの欠片の記憶と、己の分身たちの目に映るものの残像だけだった。 自分の細胞から生み出された分身たちが見る研究者達の姿は醜悪で、人に嫌悪を抱くには十分なものだったが、誰かを憎悪するには彼の執着心は薄すぎた。ただ、生きることにも死ぬことにも関心が薄れていくだけだった。
そして少年は夢をみた。
赤い液体が満たされた水槽に漂う、己の分身たちが見詰めていた光景だった。
暗い研究所に突然警報が鳴り響く。
陰鬱な部屋の其処彼処に派手なライトが点滅し、慌しく研究者達が逃げ惑う。
それをただ見詰めていた幾つもの紅い瞳に、一人の少女の姿が映った。
彼女は鮮やかな身のこなしで醜悪に蠢く研究者達を切り伏せて、水槽の前までやってきた。
ほっそりとした身体を覆う漆黒の上下。 右手には鋭く輝く細身の刀。
あれほどの人間を切り伏せながら、返り血一つ浴びることなく其処に立つ少女は凛として美しく、少年の心を惹き着けた。
少女は顔の半分を覆うバイザーを外すと、悲しみに翳る深紅の瞳で、水槽に漂う沢山の少年を見詰める。しばらくそのまま立ち尽くしていた少女は、誰かに呼ばれたのか後ろを振り返って一つ肯く。再び水槽の中に視線を戻すと、両の手を水槽のガラスに翳して澄んだ紅い光を生み出す。少女が僅かに手を振ると、紅い光は少年達の体を包み込む。
それを揺れる瞳で見詰めた少女は、最後に一つ静かに呟き、その力を弾けさせた-------
そこで見ていた光景が途切れた。
白銀の少年の心に残ったのは、悲しげに揺らめく深紅の瞳と。
静かに呟かれた少女の言葉と、最後に見せた憂いを秘めた笑顔の残像。
「-- またね。 か。 ------------- 」
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