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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。
なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが開きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・
現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。
*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。
常に薄暗い闇に覆われた陰気な部屋に、氷河期も斯くやあらん冷たい空気が満ちていた。
天井に描かれたセフィロトの見下ろす下で、シンジとゲンドウが向かい合っている。
完璧な愛想笑いと鉄壁の無表情。どちらも顔の表情だけならば他者に内心を気取らせない完全なポーカーフェイス。リツコに案内され司令室に通されてから早十数分。冷え冷えとした雰囲気の中で互いに無言で見詰め合う。そこに友好的な空気など微塵も存在していなかった。
シンジと共に呼ばれたシオンとゲンドウの横に立っているリツコと冬月の冷や汗の量だけが時間と共に増加し続ける。張り詰めた雰囲気に口を挟むことも出来ず無言の対立を傍観するしかない三人。
何か切欠の一つも投げ込んだほうが無難だろうか、とシオンとリツコが身じろいだ瞬間。やっとゲンドウが口を開いた。
「・・・・何だ。」
「ご挨拶ですね。昨日の依頼の報酬を受け取りに来たんですよ。
この時間を指定されたのは貴方のほうでしょう?
それとも御年のせいで失念しておられる?」
口を開きはしたが、会話をする気が全く無いことを窺わせる単語のみ。その言葉に軽く眉を上げて答えるシンジ。笑顔を浮かべてはいるがその種類が変わる。あからさまな嘲笑と侮蔑の言葉。真っ向から喧嘩を売るシンジに傍らのシオンが慌てて袖を引っ張る。ゲンドウの横にいる冬月も余りに子ども染みた態度に呆れて小声で咎める。
「(シンジ?お、落ち着いて。ね?)」
「(おい、碇。気に食わんのは解らんでもないが此処で喧嘩を売ってどうする。あまりみっともない真似はするな。)」
シンジが昨日すぐに面会を強行しなかったのは、時間を置いて冷静さを取り戻すためだったのだがあまり意味が無かったようだ。対するゲンドウもシンジの姿を直接目にした瞬間、昨日の屈辱をありありと思い出し怒りを抑えて平静さを保つことが出来なくなったらしい。顔を合わせた瞬間、互いへの負の感情が噴出し緊迫した空気を生み出したのだ。
放って置けば何時までも話が進まないことを悟る三人。ゲンドウに任せては昨日の二の舞になりかねない為冬月が代わって話し始める。
「あー、依頼の報酬の話、だったね。」
「ええ、昨日は時間が無いことを考慮して戦闘後相談に応じる、ということだったのですが。
・・・・・事前に交渉もしませんでしたし、不可抗力という面があったのも事実ですからね。
今回に限りサービスということで・・・・そうですね、十億程度で構いませんよ。」
「じ、十億?!それは・・・」
にこやかに告げられた法外な金額に汗を浮かべて反論しようとする冬月。シンジはそれを遮って続ける。
「突然無礼な手紙で呼び出された挙句、訳の解らない因縁を突きつけられたり、暴力を振るわれたり、 丸腰で戦場に放り出されたことに対する慰謝料を含めれば安すぎるくらいだと思います、よね?」
全く目が笑っていない笑顔で見詰められて口を噤む冬月。無言で何時ものポーズを崩さないゲンドウを睨んでからシンジの言葉を了承する。
「わ、わかった。すぐに用意させよう。
それでだね、これからの事についてなんだが。・・・・シンジ君、エヴァに乗ってくれないかね?」
単刀直入に本題に入る。回りくどい言い方をしていては何時までも話が終わらない。
「それは、どういった意味で?
戦闘代行を依頼するということですか?チルドレンとしてネルフに所属しろ、ということですか?」
冬月の要請に淡々と返すシンジ。聞き返された冬月は慎重に答える。
「できれば、チルドレンとして所属してもらえるとありがたいんだが・・・」
穏やかに笑いかけてシンジの表情を確かめる冬月。対するシンジは
「お断りします。」
にべも無く撥ね付けた。シンジに断られる事は解りきっていた為話を続ける。
「では、依頼としてなら受けてくれるのかね?」
「内容によりますね。」
「内容、とは?」
シンジの返答に怪訝な顔をする冬月。シンジは構わず静かに続ける。
「まず確認したいのですが、ネルフの目的は使徒を倒すこと、で宜しいんですよね?」
「ああ、その通りだよ。ネルフはその為に存在するのだからな。」
冬月の返答に肯きながら続ける。
「その場合、僕がエヴァに乗るとしても依頼の条件が幾つか存在します。
まず、貴方方が望むのは、昨日と同じ様に戦闘の代行者としてエヴァに乗れということですか?
エヴァのパイロットの一人としてネルフの行う作戦に参加しろ、ということなんですか?
それとも、数の足りないチルドレンの代わりを務めろ、ということでしょうか。」
「それは・・・・」
「”レイン”として受ける依頼に原則的には制限はありません。内容と報酬に納得できれば何でもします。
ですが、昨日のような対応をする組織に、自分の命を預ける気にはなりません。
・・・・・それは理解していただけますね?」
真直ぐに見据えられて肯く冬月。ネルフ側に反論の余地は無い。何も知らない少年を武装した男達に襲わせて無理やり戦場に出そうとしたのは事実だからだ。もし、シンジが普通の中学生であったなら本当に大怪我、もしくは死んでいた可能性もあるのだ。ゲンドウらには勝算があったのは確かだが、(シンジの命に危険が
迫れば初号機に眠るユイが目覚めて息子を護るためにエヴァを暴走させるだろう、という確実な根拠の存在しない推測だらけの計画を勝算と言うのもおこがましいが)それを告げるわけにもいかない。先程までとは違う硬い空気が司令室を支配する。
「ですから、依頼の内容を確認しているのですよ。
まあ、最もチルドレンの代わりなんて死んでも御免被りますが。・・で、どうなんです?」
問いかけられて逡巡する冬月。シンジを初号機に乗せることが第一目的ではあるが、使徒戦に彼の戦力が有効なのは実証済みである。彼を戦力に加えないのは愚の骨頂だ。だからといって、余り好き勝手されるわけにもいかない。どうしたものかとゲンドウとリツコに目配せする。
そこで今まで黙っていたゲンドウが口を開いた。
「エヴァのパイロットとしてネルフの作戦に協力してもらいたい。」
「へえ?」
「ネルフの存在意義は使徒の撃退とサードインパクトの阻止だ。その為にエヴァンゲリオンとチルドレンがいる。
使徒はまだ来る。稼動するエヴァを遊ばせておく余裕などない。 だが、エヴァを動かす為には特定の資質が必要だ。そして、初号機を動かせるのはお前しかいない。 同時に、組織としての体面もある。余り自由に動かれても困る。ならば、協力者辺りが妥当だろう。」
冬月とリツコが注視するなか焦らすように間を置いたシンジが口を開く。
「-------- いいでしょう。
幾つか条件を整えさせて頂けるのなら、その依頼を受諾いたします。宜しいですね?」
「わかった。・・・・・条件とやらは冬月と赤木博士に任せる。」
「承知いたしました。では---- 」
「もう一つ。・・・・ネルフは”クラウド”にチルドレンの護衛を依頼したい。」
答えるシンジの声を遮ってゲンドウが言葉を挟んだ。
その瞬間穏やかさを取り戻しつつあった空気が再び凍りつく。笑顔を固まらせて冷たい光を瞳に宿すシンジ。シオンを同伴させた目的を悟って歯噛みする。ネルフと直接関わらせる事は避けようと思っていたのに、先手を取られた。恐らく自分に対する人質にする積りだろう。更にチルドレンと共に行動させる事で危険人物でもあるシオンの監視と行動の規制を兼ねるということか。 彼女の実力なら簡単に危害を加えられることは無いと思うが、安心は出来ない。彼女の弱点はその優しさと甘さだ。今は良いが、それに気付かれれば躊躇無くつけこもうとするのは目に見えている。
ゲンドウへの忌々しさにこめかみを引きつらせるが、シオンがこの依頼を断らないことも理解していた。護衛を引き受ければ綾波レイや渚カヲルとの接点が容易に出来るのだ。
ゲンドウの傍らに立っていた冬月とリツコも予想外の台詞に驚愕している。
まさか、警戒対象にネルフの機密でもあるチルドレンの護衛を依頼するなど思っても見なかったのだ。
周りの心情など気にも留めず同じ台詞を繰り返す。
「”クラウド”にチルドレンの護衛を依頼したい。・・・・・受けるか?受けないか?」
「・・・了解しました。 ですが私一人で全員を護るのは不可能です。
ですから、任務の範囲には条件をつけさせて頂きます。それでも宜しければ依頼を受諾致します。」
「いいだろう。それも冬月達に任せる。」
シオンの返答に重々しく肯いたゲンドウは冬月とリツコに後を任せる。ゲンドウに真意を質したいがシンジ達の前で問い詰めるわけにはいかない。仕方なく了承するとシンジ達を促して退室する。これから副司令執務室で細かい条件を整えて契約を結ぶのだろう。俄かに騒がしかった部屋に再び静けさが戻る。その中で一人残ったゲンドウは、ただ暗がりを見詰めて歪んだ笑みを溢し続けた。
もうすぐ日付が変わる夜更け。ジオフロント内に在るネルフ職員用の宿舎の一室でシンジとシオンはくつろいでいた。今日交わした契約で臨時の協力者としてネルフに所属することになった為、対外的には正規のチルドレンに準じる扱いを受ける事になる。その一環として住居が提供されることになっているが、まだ荷物の手配も出来ていないためもう一晩此処に泊まることになったのだ。
昨日今日と精神的な消耗が激しく疲れきっていたが、何と無く寝付けず二人で備え付けのソファに並んで窓の外を眺める。此処で見られる空はすべて人口的な映像ではあるが、それでも美しい星空に心が癒される。
穏やかな沈黙が続くなかシオンがそっと口を開いた。
「シンジ。・・・ありがと」
静かな声で言われた言葉にシオンの顔を覗きこむ。
シオンはふわりと微笑んでシンジの瞳を見返した。
「私が、今ここに立っていられるのは、シンジが居てくれたからだよ。だから、ありがとう。」
ネルフもゼーレも強大な手強い敵だ。
それでも世界の終末を変えるためにはこの戦いに勝利しなければならない。
必死に走り続けてやっと此処まで来たのだ。あらゆるカードを駆使して勝ち抜いて見せる。
そしてきっと皆の未来を護る。 護ってみせる。 そうしたら・・・・
穏やかに言うシオンの笑顔に儚さが重なる。
どうしようもない不安に駆られたシンジは、少女が確かにここにいることを確かめたくて強く抱きしめる。
彼女はいつもそうだ。これ程近くにいるのに目を離せばすぐに消えてしまいそうになる。
その度に自分の傍に繋ぎ止めたくて必死になるのに、まるで水のようにするりとこの手の中から逃げ出す。
彼女が傍にいることこそが望みなのだ、と告げてしまえばずっと共に生きてくれるのだろうか?
激情が溢れ出すのを止めるために殊更軽い口調で返事を返した。
「何言ってんだか。これからが本番だろ?」
「わかってるよ。
ただ一人だったら此処に着く前に起きれなくなってたかもな、っ思って。
そしたらお礼が言いたくなったの!」
抱きしめられたまま額を軽く弾かれて頬を膨らませるシオン。
先程までの消えてしまいそうな空気が無くなっている事に密かに安堵するシンジ。
静かな夜更けに少年と少女の明るい笑い声が響いた。
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