忍者ブログ
Admin / Write / Res
主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
<< 03   2024/04   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30     05 >>
[30]  [29]  [28]  [27]  [26]  [25]  [24]  [23]  [22]  [21]  [20
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

この作品は、エヴァ×アビス基本+seed(キラ・ラクス・クルーゼ・カナード他)、ぼかろ(カイト・ミク・メイコ)設定がクロスする混沌クロス作品です。

・碇レンver

・今更ではありますが、時系列及び預言の在り方等諸々について、夥しい捏造が入ります。
 特に創世歴時代の出来事や人物間の血縁関係や交友関係等は、公式設定とは全くの別物だと考えてください。

本来お亡くなりになる方が生存してたり、マルクト・キムラスカ・ダアトへの批判・糾弾や、PTメンバーへの批判・糾弾・断罪表現が入ったりします



CP予定:
・・・キラ×ラクス(seed)
・・・カイト×ミク(ボカロ)
・・・クルーゼ(seed)×セシル(アビス)
・・・被験者イオン×アリエッタ(アビス)
・・・フリングス(アビス)×レン(碇レン)

です。上記設定がお好みにそぐわない、という方はお読みにならないようにお願いいたします。


 

 
 


全ての力と知識を喰らって、うみおとされたカミサマの器が一つ。
 

内に宿るはずだった女は消されて、消えるはずだった少年が残った。


少年を護った二つの心は満足気に彼の中に溶け込んで、誕生したのは強大な力と優しくて臆病な心を抱えた子どもがひとり。


優しい願いに護られた子どもが世界を渡って新しい命を手に入れ
女の記憶に嘆いた彼の拒絶が、死に逝くだけの世界を消し去る


 

そうして、残ったのは、巨大な空ろの世界が一つ


それすらすぐに虚無へと変わり ---- 後には何も 残らなかった 

 




+++ 

 


--大丈夫だよ、心配しないで?
 
 ねぇ、大好きよ?だから笑って---

 

 

(けど、そうだね。本当はずっと一緒にいたかったよ。
 いつか貴方が寿命を終えてしまうまで、その傍にいたかった。)
  

 

 

 

 

+++

 


世界の狭間を彷徨いながら、あの瞬間に流れ込んだ記憶を思考の隅で繰り返し思い返した。

痛みも絶望も楽しさも嬉しさも辛さも憎しみも快さも安らかさも悲しみも切なさも。
全て自分の意思と行為が選んだ結果でしかないことは、誰よりも知っていた。

それでも、知ってしまった母の記憶と、世界から読み取った過去の事情は、自分の怒りと憎悪を増すだけのものだった。


・・・もう二度と、他人と関わりたくないという恐怖から生まれる後ろ向きな思いが過り。
・・・もう一度、誰かと生きることができるなら、今度こそ大事だと思えた人を守れるような存在になりたいという願いがくるくると思考を巡る。
 

自分が望むのはどちらだろう、とほんの少し考えた。

もしかしたら、それが原因だったのだろうか。

 

 

 

 


+++

 

 


 

穏やかな光に満ちる産院の一室で、幸せそうに微笑みあった夫婦の会話を、覚えている。


「ふふ、もう名前は決めてくださいました?」
 

「ああ、・・・男ならシンジ、女の子ならレイ、というのはどうだ。」


「シンジ、レイ・・ 良い名前ですね。
 ねぇ、あなたのお父さんが、素敵な名前をくれましたよ。
 早く元気に生まれてきてね。」




夫の言葉に嬉しそうに微笑んで腹部を撫でた彼女の姿は、優しく美しい母親のものだった。

その時の彼らの幸せも愛情も、本心からのものだった。
真実、慈しみと優しさだけに、彩られたものだった。

・・何一つ偽りなど無く、それも事実だったのだけど。

 

 
 


+++


 

 

 


彷徨っていた世界の狭間で、まどろむ様に色んな世界を垣間見た。
知っている顔が生きている世界もあったし、”過去”によく似た過程を辿る世界もあったし、自分が知るどんな歴史とも全く違う文化を築く世界もあった。時折零れるように触れてくる色んな世界の住人達の感情が、時に快く、時に悲しく、時に苛立ちを、時に切なさを、柔らかな殻に籠った意識に波紋を投げて行く。その感触は決して嫌なものではなかった。他者の心をのぞき見るような後ろめたさもあったけれども、拒絶しているくせに心のどこかで望んでいるかもしれない触れ合いを間接的に思い出させてくれる感覚だった。だからその時も、特に深く考えもせず零れてきた感情の滴に触れた。瞬間、流れ込んだ深い深い絶望と何より強い渇望に、意識の全てが占領された。


そして、自分は世界に落ちた。




赤黒く染まった空と、燻ぶる炎に焦げ付く大地と、
濡れた剣を掲げる兵士と、無残に踏みにじられた人の破片と。


そこは、戦場だった。
残酷で、醜悪で、凄惨な。


呆然と辺りを見渡して、その視線を足もとに落とす。
視界に入ったのは、短い黒髪を血で汚し、手足を本来あり得ない方向に捻じ曲げられて、力なく肢体を大地に投げだす12・3歳くらいの小柄な少年。確かめるまでもなく、自分をここに引きずった感情が彼のものだと理解していた。そして、彼がこの世界では”過去”の自分と同じ立場に存在している、もう一人の自分であることも理解した。流れ込んだ感情と共に彼の記憶が自分の中に押し寄せた。それを見て、成程これが並行世界というものか、と呑気に考えた。
 

目の前で、倒れる彼が死んだからこそ、違う世界の存在である自分がこの世界に存在できている。その事実を理解するのを拒む様にひたすら平坦に感情を保とうとする。彼が世界の狭間にまで届く程の強さで絶望を抱いた、その理由を決して読み取ることがないように流れ込んだ記憶を厳重に封じるように違う事を考え続ける。彼の死によって空いた隙間に入り込んだというその意味を、決して意識に登らせないように我武者羅に思考を外す。
 

それが現実逃避であることは分かっていても、突然実態を持って存在してしまった現実に恐れ慄いている自分を宥める為にもようにつらつらと思考を巡らせた。



戦いが終わっていない戦場で、ぼんやりと佇む人間など絶好の獲物でしかない。
ほっそりと小さな影に気づいた兵士が殺気をみなぎらせて向かってくるのは当然の成り行きだった。
自分の思考に没頭して立ち尽くしていた事に気づいたのは、目の前で大きく剣を振り上げた兵士が当に自分の首を落そうと刃を閃かせた瞬間だった。その時殆ど何も考えなかった。怖いとか嫌だとか死にたくないとか、そんなはっきりとした思考など全く浮かんでは来なかった。


ただ、目の前の兵士は、自分の敵だと、それだけを理解して、そして、


 

 

 

 

 

 

 

+++

 
 


暖かな闇越しに聞いた、優しくて強くて、少し狂った、母の言葉を、覚えている。

 


「この、計画を成功させれば、人は、神により近い存在になれる。
 --- 進化に行き詰った人類にとっての、明るい未来は もうこれしかないのだから。」

 

人気のない薄暗い研究室で、作りかけの神のレプリカを見詰めながら溢された、女の言葉を。
狂気を宿して尚美しく人を魅了する聖母の如き彼女の笑顔を。


それ、を見て、この身を焼きつくした激しい憎悪を、覚えている。


 

 

 

+++

 


 

碇ユイの想いに、悪意は一片も存在していなかった。
ただ彼女は確かに人間を深く愛して、これから先の未来を憂いていただけだった。
夫への愛情も、子供への愛情も、本心からのものだった。
友人や家族や同僚にむける優しさも本当に心からのものだった。
彼女は確かに優しくて愛情深く、誰よりも愛されて愛することができる人間だった。
 

だからあの世界を終りに導いた計画も、本当に真剣に、彼女にとって大切な人たちの未来を護る為に何をすればいいのか考え抜いて作り上げたものではあったのだ。彼女は本気であの計画を成功させさえすれば、人間の未来を希望で彩ることができるのだと信じていたのだ。希望こそが人間を救うことのできる唯一で、それを守ることが何より正しい道なのだと。



・・けれど同時に、彼女にとっての正しさが、他の誰かにとっては違うかもしれない、という事を理解しようともしなかった。



彼女は誰よりも優秀な己の頭脳を知っていた。
他者の思いを読み取る力にも長けていた。
実際に天才という賞賛が、彼女以上に相応しい人間は存在しなかった。
東洋の三賢者と呼ばれる後の二人も、彼女の能力には僅かながら及ばなかった。


それを、誰よりも冷静に受け止めて熟知していた彼女にとって、己の考えこそが最も優れたものである、という確信が間違えているなどという事は絶対にありえないことだったのだ。


・・だからこそ、あれほど自分本位で、他者の想いを全て踏みにじる様な計画を、至上のものであるように掲げることができたのだ。

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

赤い世界を蹂躙する力の全てが収束し、記憶の螺旋に翻弄されていた少年が、巨大な力の中心に飲まれた瞬間の、こと。


上下も左右も光も闇も 何一つ確かなモノのない空間で

女神に還った少女と 始祖に還った少年と 鬼神に溶けた母親と 出会う


現とも夢とも判じきれぬ魂のみの邂逅の場で、少年は、確かな愛しさを伴う歓喜と、憎しみを伴った絶望を、知る。

 

柔らかく微笑んだ少女と少年の瞳が伝える真直ぐな好意と優しさと想いは、少年を癒し

美しい聖母の笑みで手を差し伸べる母の手を取った瞬間己の内に流れ込んできた彼女の記憶は、少年の絶望を深めた。

 


知ってしまった母の願いに、全てを拒絶した少年は世界からはじき出された。
力を手に入れた己の意思に従って、世界が一つ消えた事を感じ取っても、安堵しか感じなかった。
罪悪感はあったけど、”過去”の世界を惜しむ心はうまれなかった。
世界と世界の狭間を流されても不安はあまり覚えなかった。
 

ただ、あの瞬間に、自分を選んでくれた大切な二つの魂が、己の胸の奥深くで息づいているのを感じるだけで少年は安心していた。自身がどんな風に変質したのか、それさえもどうでもよかった。二つの魂を感じ取れる。それだけで、よかったのだ。


 

 

 

 


+++

 

 

気がついたら、目の前に存在していたはずの戦場は跡かたもなくなっていた。

兵士も武器も燻ぶる黒煙も大地を埋める遺体さえ。
ただ、広がっているのは草木すら存在しない広い焦土と、変わらずに赤いままの空。

その真ん中にぽつりと佇む自分の影を、虚ろな意識で見下ろして。
そこに、先ほどまで確かに見ていたはずの黒髪の少年が居なくなっていることを確認して。


それから?

 

 

 


+++

 

 

 

白い病室で、柔らかな月の光を浴びながら、優しげに微笑んだ母の表情を、覚えている。

 

「ふふ、私の可愛い息子。
 あの人と、私の血を宿したこども。
 --- そして、計画の成功のために不可欠の、子。

 貴方に、人類の明るい未来を見せてあげる。 必ずかなえるわ。必ず。」

 

まるで至上の理想の具現のような慈母の如き微笑みで、決して子ども自身をを見る事はなかった母の眼差しを。溶け合った世界の記憶が見せた、過去の情景から拾った光景に、感じた虚しさを、覚えている。

 

 

+++

 

 


碇ユイにとって、己の息子は、計画を成功させる為の駒でしかなかった。
それは、息子へ向ける母親としての愛情と相反しながら並立して存在する明確な事実だった。
彼女にとってその矛盾は、決して無理なく存在する本心だった。
 

だから、息子が将来何をすることを義務付けられるのかを知っていながら、己の願いを貫けたのだ。


”碇ユイ”という存在は、そういう人間なのだと今の自分は知っていた。
だから、彼女の愛情をどれほど確信できても、決して信用も信頼もしてはいけないのだと知りぬいていたはずなのだ。少なくとも自分が望むような類の愛情は決して返って来ないことを思い知っていたはずなのに。


 

落ちた世界は、”過去”とは違う場所なのだから。
出会う人たちは、”過去”の知人とは同姓同名のよく似た他人であるのだから、


・・だから、大丈夫なのだと、そう思ってしまったのだろうか。

 



(本当に、目先の望みに眩んでは盲目的に他人に依存する癖は変わっていない、なんて。

 ・・・・何処までも自業自得、かな。・・・ 情けないっ・・・ )



 

 


 

+++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りを闇が覆う頃、物々しい一団が武器を構えたままやってきた。
多分自分が消した軍隊の消息でも探りにきたのだろうとぼんやりと考える。
焦土にかわった戦場で、一人きりで立つ自分がどれほど怪しい存在なのかなんて考えるまでもない。
自分を見つけた軍人が荒々しく槍を突き付けてきても何も感じはしなかった。
腕を折らんばかりに両手を縛りあげられても痛いとも思わなかった。
このまま首でも落とされればまた狭間に戻れるだろうかとは少しだけ考えた。
けれど、それがはっきり思考を占めることもなく、無感動に地面を見ながら兵士の後ろを歩く。

 

「シンジ?」


兵の向こうから聞こえた声にのろのろと視線を上げた。周りを囲む兵の隙間から柔らかな光と細い女性の影が見えた。その女性は常はきっちりと整えられているだろう服を僅かに乱れさせて息を弾ませて立っていた。少し後ろから地位の高そうな軍服を着た壮年の男性が追いかけてくる姿も見える。二人の視線が、こちらを見ているのを知って僅かに辺りを見回した。その自分にむかって、はっきりと意識を向けた女性がまろぶように駆け寄った。周りの兵士が僅かに動揺して身を引き、拘束はそのままに女性の行動を妨げず場を開ける。どうやら彼女は身分か地位が高く、兵士が無条件に従うような立場の人間なのだろうと考える。そんな思考を断ち切るように女性から力強い抱擁を受けた。驚愕する暇もあればこそ。勢いよくまくし立てられて、間の抜けた表情で女性を見上げた。

 


「シンジ!ああよかった。無事だったのね?
 もう心配してたのよ。戦場が原因不明の爆発で吹き飛ばされたと聞いて生きた心地もしなかったわ!無事だったなら、どうしてすぐに帰ってこないの!ああ、それとも怪我でもしたの?!すぐに治療しなきゃ・・

 ・・あなた!この拘束を解きなさい!まったく何を考えているのかしら、・・」
 

「待ちなさい、ユイ」


「何ですか。シンジが無事だったんですよ。嬉しくないんですか?」


「待ちなさい」

 



かけられた言葉の半分も理解できないうちに女性は何やら兵士に抗議している。戸惑うように女性の後ろに視線を投げる兵などお構いなしに自分の拘束を解こうとする彼女に追いついた男性が静かに制止の声をかけた。間近に見て、反射的に叫んで仕舞わなかった自分の理性を珍しく褒めた。二人は、”両親”と同じ存在だったのだ。声も姿も話し方さえ、何から何までそっくりで、それでも”両親”とは違う存在だと、心が教えた。迸りそうになった激情を無理やり宥めて、再び世界に落ちた直後と同じ事を再認識する。・・・成程、これが、並行世界か。


そこで再びかけられた声に視線を上げた。見下ろす男性の視線を無感動に見返す。理解してしまえば感情を動かす必要もない。(動かしてしまえば、自分が保てなくなるのだと、無意識に理解していた。だから殊更感情を麻痺させているのだとは、気づかなかった。)



「君は、何者だ。あの戦場を潰したのは君か。」


「あなた!何を言ってるんです!この子は--っ」


「ユイ。現実逃避は止めなさい。
 シンジは、死んだ。あの場所で生きていたのはこの子だけだ。
 そして、この子どもは、シンジではない。・・・わかっているだろう。」



「嘘です!シンジは帰ってくるわ!あの子が、死ぬわけありません!
 この子は、-----シンジでしょう?!」

 


女性の声が不自然に罅割れる。無理やり浮かべられた笑みは酷く引きつり、瞳の奥には不安定な炎が揺れた。彼女は、自分の子供の喪失を認めたくないのだ。それを見返す男性の視線に苦味が混じる。それに痛みを感じ取れぬ程に鈍くはなかった己の洞察力に忌々しい思いを抱いた。・・・どうして、この二人が子どもを失って悲しむ姿など今更見なければならないのだろう?彼らは---”彼ら”ではないのに!!!
 

 

二人を見つめる自分はそんなにひどい表情だったのだろうか。

詰問する口調を隠しもせず冷徹な声で続けられた言葉が、突然ほのかな熱を帯びた。”過去”の父にもかけられたことのない温かみを感じてしまった自分に動揺する。女性が揺れる体を男性に抱えられたまま浮かべられた痛んだ笑みに交る気遣いにも心が揺れた。続けられた二人の言葉を拒絶する力は、湧かなかった。


 

「この子は、私達が預かる。構わんね?
 ・・・君、事情は後で聞こう。よければ来なさい。酷い格好をしている。」


「そう、そうね。ねぇあなた、家にいらっしゃい。顔が真っ黒だし服も泥だらけじゃない。
 お風呂に入って着替えをしなきゃね。」


 

女性が見ているのは死んだ息子だ。彼女は自分が返ってきた息子だという幻想を捨てきれていない。名前こそ呼ばないがそれがわかってしまう。それでも、”過去”で自分は、母に、こんな風に話しかけられてみたかったのだと、思ってしまった。怪しい人物を解放することに渋る兵士に圧力をかける男性に、まるで”父さん”に庇われているみたいだと考える自分の弱さに自嘲する。それでも縋ってしまった。幻想でも良い、と思ってしまった。

 


 


・・・・何度、同じ間違いを繰り返したんだろう。あの戦いで散々思い知ったはずなのに。

 

 

 

 

 

遠く仰いだ王城を見つめて自嘲の笑みを零す。

ゲンドウが自分に優しかったのは、戦場を一人で叩き潰してしまえる程の自分の力に目をつけたからだとわかっていた。ユイが、自分を傍に置いたのは亡くしてしまった息子を投影する者が欲しかったからであると知っていた。

 


そして、この状況が、シンジが死んだ時と同じものなのだということも、知っていた。

 

見たくないからと厳重に封じたはずのシンジの記憶が鮮やかに再生される。
彼が事実を知った瞬間の驚愕と怒りと憎しみと諦めと、・・・何より大きな絶望も。
 

自分が錯覚で良いから、とユイの手をとった感情は、シンジが抱いていた感情でもあった。
驚くほどに自分と重なる気持ちが、成程自分を引きこんだ理由の一つかなと考える。


だって、この世界のシンジはまだ12歳だった。
そんな幼い少年を戦場に出したユイの姿が、”過去の世界の碇ユイ”に重なる。
あの時息子の喪失を拒絶して嘆いた彼女の想いは確かに本物だったけど。
面影を見出して自分を生きて帰ってきた息子だと言い張った彼女の混乱は本当だったけど。
・・彼女は、まだ12歳でしかないシンジを、国を護るためだからと言って戦場に放り込んだのだ。


その矛盾する彼女の想いが。
愛情を望んで、振り向いて欲しくて必死に望まれた立場に身を置いて、
それでも自分の望むものは返ってこないと思い知った瞬間の失望が。


人類の為だと嘯き、子供達の未来の為にと微笑み、生きてさえいればどこでも天国になると囁き。
そして彼女の作り上げた計画が自分に強要した痛みと辛さと喪失が。
 

世界の為だと嘯き、貴方達が生きる未来を残す為だと微笑み、国民を護りさえすればこの国は生きていけるのだと囁き。彼女のつくった譜業と譜術で、敵兵ごと殺されると悟った瞬間の絶望が。


ぴったりと寸部の狂いもなく重なって、彼と自分が、確かに同じ存在なのだとわかってしまう。


そして、本来彼が居る場所なのだと理解しながら、代わりでもひと時の幻でも良いからと、ユイとゲンドウの優しい言葉に縋りついた自分の愚かさも。彼の居場所を勝手に借りているのだと知りながら、ありえない夢にしがみつく為に、与えられた大義名分を翳していたのも


”あの世界”でチルドレンとして呼ばれた時に、ミサトさんがくれた「家族」という言葉に縋ったのも。父さんの「よくやった」という言葉に浮かれて、12番目の使徒戦で闇の中にのみ込まれたのも。この世界で、あの夜貰ったぬくもりに縋りついたのも。
 

全部同じ理由だった。


そして、”それ”に縋って、”あの瞬間”に、空で神殺しの槍に貫かれたように、
此処で、敵ごと味方の筈の軍が放った大規模な譜術で殺されそうになっている。


あきれる程に進歩がない。


結局自分は、与えられた存在理由に固執して、初めて好きだと言ってくれた友人を殺した弱い子どものままなのだと思い知る。最後まで自分を守ってくれた二人が、今の自分を見たらどう思うのだろうと考えて、弱弱しく頭を振った。
 

 

 

 

 

 


 
 

+++

 

 


あの魂の邂逅の場で、四人で一部を溶け合わせた一瞬の交流を、覚えている。
 

女神と始祖に還った二人が、少年の願いは何かと聞いた。
鬼神に溶けた母親は、美しい笑みを浮かべて少年がこたえた願いを”見せた”


そして見た。


赤い空と赤い海。
血の匂いに満ちた無音の世界には少年と少女が二人きり。


全ての人が溶けた海の傍らで、決して還らぬ人々を待つ絶望を。
もう二度と取り戻せない過去の日常を直視する痛みを。


決して自分を見ない赤い少女の首を締め上げた時の激情を。
少女が唯一つ残した拒絶の言葉に、我に帰った瞬間の恐慌を。


これが補完の外にいると言う事ならば、もう自分も溶けてしまおうと決めた時の、虚しさを。


赤い海に沈んだ少年を抱きしめたの母の腕の温もりを。


暖かい腕の中で、ただ消えようとした少年に流れ込んできたのは、大量の記憶と力



そして、母の、記憶

 


 

+++

 

 

 


 

(ああ、けど。こんなところで死んだりするのは、無責任すぎる、ね。)

 

迫る膨大な第5音素が、地面に着弾した時に起こす反応も、連鎖して発動する地面に仕込まれた譜陣の効果も、此処にいる誰よりも熟知している。だってこれは、自分が協力していた研究を利用して碇ユイの作り上げた攻撃譜術だ。譜陣と譜術と味方の軍に配備されている筈の譜業と、三つが連動して初めて戦場を根こそぎ焼き尽くすほどの効果を生み出すものだ。三つの内どれが欠けても効果が半減するが、捨て駒を厭わないなら少数の犠牲で敵国の軍勢を一掃できるほどの効果があった。


だから、発動を止めるのはもう間に合わないが、どれか一つを欠けさせてしまえば少なくともここで死ぬ犠牲を半分には抑えられるのだ。せめてその位はするべきだろうと考えて、迷わず足元に刻まれた譜陣に剣を突き立てる。音素と呼ばれる世界の力の一片を、譜陣に込められた力を相殺するような形で流し込む。途端輝きを失った譜陣を確認して、隠しもったナイフを、配備されていた譜業の動力源に向かって投げる。過たず刺さったナイフを視認した瞬間に、飛来した第五音素が、爆ぜた。
 

炎が跳ねる。熱が広がり戦場で切り結ぶ兵士を燃やした。
地面が沸騰して、散らばっていた遺体ごと武器すら溶かす。

それをやっぱり他人事のように遠い意識で見渡す自分も、足元から這い上げる熱に焙られて全身が焼け爛れる。
 

痛い、熱い、痛い、熱い、痛い、熱い、痛い!!!


言葉を成す思考はそこで途切れた。後はただひたすらに炎と熱と爆風にかき混ぜられながら、戦場が消し飛ばされる光景を視界に映しながら闇に沈む。


 

それでも、自分はきっと死ぬ事はないのだろうな、とそれだけを理解した。

良いとも悪いとも嫌だとも嬉しいとも感じずに、ただ、その事実だけを思考に浮かべて、



・・・胸の奥にいてくれるはずの、二人の存在はわからなかった。

 

 








拍手[1回]

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret(管理人のみ表示)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



二次創作サイト様に限りリンクはフリーです。ご自由にどうぞ。








このサイトを少しでも気に入ってくださったらぽちっと押してくださると嬉しいです。
また、何か御用が御座いましたらメール代わりにご利用ください。返信は雑記でいたします


現在の拍手お礼:一ページのみ(ティアに厳しい。ちょっと賢く敵には冷酷にもなれるルークが、ティアの襲撃事件について抗議してみた場合:inチーグルの森入り口)
カウンター
フリーエリア
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
P R
アクセス解析
Copyright ©  鶴群の一鶏 All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]