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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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この話は、所謂仲間厳し目小説です。

ティア・アニス・ガイ・ジェイドに大変厳しい表現を含みます。
加えて六神将全員・ヴァン・モース並びに、キムラスカ王国とマルクト帝国自体への批判的な表現があります。
(でも、アリエッタ・シンク・ディストには後に少し贔屓が入ります)

ルーク至上ですのでルークは保護対象で。一応原作の環境で成長したルークです。
(彼が少し冷静に疑問を疑問として口に出した場合はどうなるかというコンセプトもあります)

で、この話のイオン様は最初は原作どおりですが、途中で真っ黒属性の実力行使も辞さない最強導師様に転身なさいます。

そしてイオン×ルークのCP表現があります。

 


上記諸々踏まえた上で、そういう捏造改編批判他が嫌な人は今すぐこのサイトの存在自体を忘却してくださるようお願いしたします。


読了後もしも御不快になったとしても文句は受け付けることはできません。
それを念頭に置いた上でそれでも興味がある、という方がいらっしゃいましたら、どうぞご覧下さい。

 

*すみません、どうやら手違いで以前upしたものが消えていたようなので再upしました。

 

 

 




 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「頼む導師イオン!この女を引き取ってくれ!!!」

 

マルクト帝国誇る世界一の食糧生産地であるエンゲーブの村長宅にて、朱金の髪と鮮緑色の瞳の青年が勢いよく頭を下げた。青年の前には困惑した表情の、緑の髪と翡翠の瞳の少年が佇んでいる。初対面の青年に、いきなり土下座せんばかりの勢いで懇願されてどうしたらいいか分からない少年--導師イオンは、心底困った顔で室内を見回す。その先には、イオンと同じように困惑した顔の守護役であるアニス。何を考えているか分からない表情でこちらを傍観するジェイド・カーティスマルクト国軍大佐。直立不動ながらこちらの様子をうかがっている護衛のマルクト軍人達。青年の突然の行動に驚いているらしきローレライ教団の軍服を纏った女性。少年と青年を見比べているエンゲーブ村長を務めるローズ夫人。立ち去るタイミングを逃して対往生している村人数人がそれぞれの表情で、青年の姿を見守っている。
 

誰にも助け船は期待できないと思ったのか、とりあえず話を聞こうと青年に問いかけるイオン。すると途端に顔を上げた青年が怒涛の勢いでまくし立てた。

 
 

「ああ、悪い、俺はルーク・フォン・ファブレっつーんだ。で、こっちの女はティア。
 で、ティアはダアトの軍人だって言うんだけどよ、導師ってダアトで一番偉いんだよな?!
 つまりダアトに所属してる奴らは皆導師の部下なんだよな?!

 だったら、頼む!!この女を引き取ってくれ!! 
 これ以上こいつと一緒に行動するなんて御免だ!!!!!」
 

「あ,あの、ルーク?あ、そう呼ばせてもらいますね。僕もイオンで結構ですから。

 で、それでですね、その・・・彼女を引き取る、というのは・・・・」



優しげな笑みを心なしか引き攣らせつつも、なんとか詳しい事情を聞こうとするイオン。二年前に被験者イオンが亡くなった後挿げ替えられたレプリカである為にずっと監禁されていて、同年代の友人などアニスしかいなかったイオンは、内心で青年が落ち着いたら少し親しく話でもして見たいと思いつつ先を促す。感情表現が素直で率直な物言いが聊か青年を幼く見せる。真っ直ぐに合わされたルークの鮮緑の瞳に浮かぶのはただ言葉の通りの懇願で、裏表のない正直な人柄を偲ばせた。今までは腹に一物ある様な相手にしか会ったことのなかったイオンにとって、初めて安心して会話ができそうな、しかも同年代の青年である。あわよくば友人になれたら、と考えが浮かんで期待が膨らむ。

そのためにはまずルークを落ちつかせなければならない。引きつりかけた頬を緩ませ、優しい笑みで言葉を待った。心なし声がウキウキしているイオンに気づかない周囲の者達も、とにかくルークの言い分を聞こうと思っているらしく無言で次の言葉を待つ。そもそも一般人である村人や高が護衛のマルクト兵士が、ローレライ教団の最高指導者である導師の言葉を遮るなど、あってはならない不敬であるため口など挟めなくて当然だったが。だがそんな常識を思考の隅にも置かずに思ったまま発言する無礼者が存在した。誰であろう、返品を希望されいる本人のティアである。



「ちょっと、ルーク!あなた何のつもり?!
 私を不良品か何かみたいに引き取れですって?!あなたと一緒に行動するのが嫌なのは私もよ!!けど、貴方を家に送る義務が私には・・」
 

「うっせーよ!一々口はさむなよ!!お前だって一緒にいたくねぇんだから丁度いいじゃねぇか! お前に送ってもらう位なら一人で帰った方が万倍マシだっつーの!」
 

「な、貴方本当に失礼ね!これだから、」

 


今までの短い道中で散々浴びせてきた蔑みの視線を向けてルークを見下すティア。


事情が分からないままながら、周囲にいるうち、エンゲーブの村人や護衛の兵士は殆ど恐慌状態といっても過言ではない心理状態だった。皆が皆この事態をどうしたらいいのかと落ち着きなく視線を交わしあっている。深く考えなくても当然だ。
 

青年は、ルーク・フォン・ファブレとなのったのだ。
赤毛に緑目がキムラスカ王族の証であることは、貴族階級の事情など知ることができない一般階級の子供でもしっている。名を聞く前は、王族の隠された庶子か親族に王族の血縁者でもいる一般市民かと考えていたのだが、かれははっきりファブレと名乗った。つまり彼は、ファブレ公爵子息であり、ナタリア王女の婚約者で、第三位王位継承権を持つキムラスカ王族で、さらには将来ナタリア王女と結婚して王位につく筈の、実質的な隣国の次期国王だということだ。
 

そんな相手に、見たところ未だなんの階級も得ていないらしきダアトの一兵卒があからさまに見下した発言をしているのである。その場でルークに首をおとされたところで文句など言いようもないほどの不敬であった。



そんな彼らの焦りを余所に口論は続く。



「失礼ってお前にだけは言われたくないね!」


「私のどこが失礼なのよ!」


「どこもかしこも全部だよ!お前が今まで、何時俺の前で礼を守った行動とったよ?! 俺ん家に不法侵入してナイフを振り回すわ、俺を外に連れ出すわ、なんであんなことしたのか聞いても個人の事情だから話せないとか言いやがって。 個人の事情って言い張るんなら他人を巻き込むんじゃねー!! 個人の事情ってことは、お前とヴァン師匠の問題ってことだろ! だったら二人ともダアトの軍人なんだからダアトで話付ければいいじゃねぇか! なんで月に数回、一日に数時間しか家に来てもらえないってのに、お前なんかに稽古を邪魔されなきゃなんねぇんだよ!」


「そ、それはっだから!」


「そもそもお前、なんか変な歌で家の騎士達も眠らせやがっただろ?! なんで家にあんなに一杯騎士がいたと思ってやがんだ! ”せいてき”とか”しかく”とかいう奴らから母上達を護る為にいるんだぞ?! 騎士が寝てる間に母上が襲われたりしてたらどうしてくれんだよ?!

 母上は只でさえ体が弱いのに、この上怪我でもしてたら・・・・!!

 母上だけじゃねぇ!メイド達はもちろん戦えないし、ラムダスやペールは爺さんだぞ! それにいくら強くったってヴァン師匠やガイや騎士達だって寝てる時に襲われたりしたら抵抗しようもねぇじゃねぇか!」
 

「それは悪かったと、謝ったじゃない!」


「謝ってすむか!!家に入ってきた時だってお前許可なんかとってないだろ!! 俺だって母上の部屋を訪ねる時はちゃんとメイドに言って母上の許可貰ってから会いに行くっていうのに、 何で他人のお前が許可も取らずに俺ん家に勝手に入ってこれんだ!!そういうの不法侵入っていうんじゃねぇのか?!

 キムラスカじゃ王族や貴族の家に不法侵入した奴らは、軽くて鞭打ち悪くて死刑だって法律があるって聞いたぞ! 家に来てた服屋がメイドと話してた時言ってたからな!つまりお前犯罪者じゃねぇか!!」
 

「な、な、な、」


「その上”ぎじちょうしんどー”だか何だか知らねぇが、お前のせいでこんなとこまで吹っ飛ばされた俺に、偉そうに説教なんかくれやがって。

 ああそうだな俺が屋敷から出たこともない世間知らずだってのも、口が悪いってのも認めるさ!! だがな、それをお前に注意なんかされる筋合いなんかこれっぽっちもねぇんだよ! なんで俺が不法侵入者の襲撃犯なんかに礼儀云々言われなきゃならねぇんだ!!」
 

 

話の内容を理解してしまった周囲はすでに顔面蒼白である。多少なりとも世間一般の常識をしっているならこちらが正常な反応だ。今一世情に疎いイオンでさえ、ダアトの軍人であるティアがしでかした事の大きさに気づいてうろたえている。先ほど少し浮上した気分が一気に下がる。青年との交流への期待どころではない。顔色も赤や青を行き来して如実に混乱を表す。その場で卒倒できればどれ程楽かと思いながらも必死で話しを纏めようと努力する。



(それはつまり、あからさまにダアトの軍人であるとわかるティアが、キムラスカのファブレ公爵の屋敷に襲撃した、と。そういうことでしょうか?!  で、でも、何か事情があるなら・・・。・・・・!?歌ってことは譜歌でしょうか?!するとティアの譜歌の所為でファブレ公爵家は一時的に無防備状態になったと?!

 確かファブレ公爵夫人はインゴベルト陛下の妹君だったと・・・キムラスカでナタリア王女に次ぐ高貴な女性を命の危険に晒したってことでは?! ・・・ダアトの軍人が、ファブレ公爵家へ利敵行為・・いえ、明確な敵対行動をとった・・キムラスカから宣戦布告されてたらどうしたら?! 疑似超振動で飛ばされた?!それは事実上の誘拐?!
 誘拐された被害者のルークに対する謝罪と反省どころか、なんでこんなにどうどうとしてるんでしょうか・・・?!)



・・・・いっそ、言葉が理解できないでいればどれ程幸せだろうか。


次々明かされる驚愕の事実にイオンの内心は大変な事になっている。 
只でさえ体力に恵まれず線の細い印象が、血の気が下がって青白くなる顔色と相まっていっそう儚げな風情だ。

マルクト軍人達の罪人捕縛の許可を懇願する必死な視線に気づかないジェイドや、呆然と勢いに圧倒されるだけのアニス、ルークに面と向かって罵倒されて尚どれだけの罪を犯したのか気付かず反論しようとするティアの態度こそ異常というべきだ。そんな周囲の状況など視界に入る余裕もないのか激高したルークの弾劾は続く。

 
 

「しかもお前、俺を「責任持って家まで送る」っていった先から魔物の前に押し出して、 後衛専門の自分を護れとかいいだしやがったじゃねぇか! 後衛だからなんだっつーんだ!お前軍人なんだろ?!ダアトの軍人ってのは時々稽古をつけてもらってるだけの実戦経験のない 俺に守られなきゃ戦えねぇくらい弱いってのか?!ヴァン先生みたいな軍人になるには今よりもっと沢山修行しなきゃなれない って師匠も言ってたのに、その軍人が俺より弱いってのはどういうことだよ!?それともお前が軍人だってのが嘘なのかよ?!」
 

「私は情報部だから・・」


「「責任持って家まで送る」ってのもどんな意味だったんだ?!
 俺は「送り届ける」ってのは、人とか物を目的地まで安全に辿りつかせるって意味だと思ってたんだがな?!
 それともキムラスカの外じゃ言葉の意味が違うのか?!ダアトでは「送り届ける」ってのは、送られる側の人間が、送るっつった方を護る事を言うのかよ?!だったら最初に説明しろよな!!お前俺が七年前にマルクトに誘拐されて言葉を分からないくらいの記憶喪失になったせいで七年分の記憶しかないことも、それから一回も屋敷から出たことない世間知らずだってことも知ってんだろうが!!

 お前は情報部の軍人で、俺よりずっと世界を知ってるんだろ!?
 そういう風に見下してきやがったもんな!」


「見下すって、あれは貴方が!」



「今俺がこんなところに居るのも全部お前の所為だろ!どの口で戦い方を指導するとか言えんだよ! 飛ばされる前にヴァン師匠に切りかかったときだって、師匠の前にでた俺にもナイフ向けただろ?! あん時”ぎじちょうしんどう”が起きてなきゃ、俺のことも切ってたんじゃねぇのか?! そんな奴をどう信じろってんだ!!」


「あなた、いい加減に・・・・!!」

 

 

 

 

 


「待ってください。・・・・・・それは、本当ですか、ルーク。」

 

 



それまで、あまりに突っ込み所が多すぎて、どこからどう口を挟んでいいものか分からずに口論を聞くしかなかったイオンが、平坦な声音でルークに問いかけた。満足に反論の言葉も言えずにルークに詰られて我慢が切れたのか、声を張り上げようとしたティアの言葉を遮ったイオンに、そこにいた全員の視線が集まる。

その静かな問いに、周りが見えなくなっていたことに気づいたルークは顔を赤らめながら頷いた。



「お、おう。本当だ。」


「そう、ですか。・・・ティア?」


「は、はい。ルークを巻き込んだのは事実です。ですが!」



「そう、事実なのですね。

 つまり、ティアはあろうことかファブレ公爵家に襲撃し、公爵家の警備を無力化し、神託の盾騎士団の主席総長であるヴァンに襲い掛かり、公爵子息であるルークも巻き込んで刃傷沙汰を起こした揚句、 疑似超振動によりルークをマルクトまで誘拐。さらにはキムラスカの王位継承者であり民間人である公爵子息を前衛に立たせ、 今当に不敬を重ね続けている。と、しかも襲撃の際、ルークにまで刃を向けた、ということは、彼に対する殺人未遂も加わりますね。
 

 ・・・それらが全て、嘘いつわりのない事実であると。 

 そういうこと、なのですね?・・・・・・・アニス。」

 

「は、はい!!」


ルークとティアの肯定をうけて、イオンは深い深いため息をひとつ吐き出すと、貼り付けた能面のような笑みでアニスを呼ぶ。今まで一度も聞いたことのないような温度のない声に、顔を引きつらせつつ返事を返したアニスに、イオンは、はっきりと告げた。



「ティアを捕えなさい。
 彼女はダアトで査問にかけて事実を確認した後キムラスカに送ります。
 ああ、ジェイド、兵と牢を貸してくれますね?」


「---はい。では、そこのお前!彼女を牢に!譜術士のようですから専用の拘束具を---」


「な、お待ちください!導師イオン!カーティス大佐!」
 

「黙りなさい。貴方は自分のしでかした事の大きさが本当に理解できていないのですか!」

 



イオンの命でティアを押さえつけるアニス。イオンが初めてみせる冷酷な怒りの表情に気圧されたのか普段の慇懃無礼な軽口もなく大人しく罪人捕縛の指示を出し始めるジェイド。その様子を威圧たっぷりに見護るイオン。そこまで来てようやく自分がどういう立場に立たされたのか理解したらしいティアが慌てて声を上げた。イオンの笑みの温度が更に低下する。アニスやジェイドは巻き込まれたくない一心で口を閉ざしてひたすら手足だけを動かした。最初からティアを罪人としてしか認識してなかった周囲の人間達は言わずもがなである。


背後に纏うブリザードを無視さえできれば何時もどおりといえる優しげな笑みを浮かべたイオンがティアを見据えて口を開いた。



「何です、罪人を捕縛するのは当然でしょう。
 高が罪人如きが許可なく口を開かないでください。
 言いたいことがあるのなら査問会議で言いなさい。
 どう言い訳したところで極刑は確実でしょうが。
 ああ、もちろんダアトが貴方を庇うことはあり得ませんよ。
 

 ・・・あなたのお陰でダアトはキムラスカからいつ宣戦布告されても文句の言えない立場に立たされているんです!」

 

 


そこまで言われて尚反抗的な眼で睨んでくるティアを見下ろしたイオンは理解した。


この世界には、同じ言語を使いながら、決して言葉の通じない輩が存在することを。


理解と同時に、今まで刷り込みされたとはいえ、まるで本のページに乗っている絵のように実感の薄かった被験者イオンの記憶が怒涛のように脳裏を駆け巡る。そうやって今一度思い起こせば被験者もそんな輩の処分に
苦労していたようだ。そして被験者が行っていた対処法も思い出した。


・・・こういう異種生物は、実力行使で黙らせるに限る。と、いうわけで。

 


「アカシック・トーメント!」

 

 


問答無用で秘奥義を繰り出して罪人を黙らせる。
その顔に浮かぶのは、これまた一度も見せたことがないほど、すがすがしい笑顔だった、とローレライ教団唱師A嬢は後に語った。


そしておもむろに振りかえったイオンは、今度こそ正真正銘優しい笑みで、一連の出来事について行けずに固まっているルークを見上げた。

 


「ああ、ルーク。本当に申し訳ありませんでした。
 罪人はきちんと処分した後キムラスカに護送しますし、勿論弁護なぞ致しません。
 どうぞお気の済むように処分なさってください。
 御迷惑をおかけしたファブレ公爵並びに王家の方々にも正式に謝罪文を送らせていただきます。
 貴方の事もきちんと送って行きます。勿論、今までのように闘ったりする必要はありません。
 あなたの身の安全は、僕が保障します。・・・・では、ジェイド。おわかりですね?」

 

「は、勿論です。ルーク、様、とイオン様はどうぞこちらへ・・」


「あ、え、ま、待って下さいよぉ!イオン様ぁ!」



表情を変えず声音もいつも通りのものではあるが、常時標準装備の慇懃無礼な言葉が一言も出ないあたり、
明らかに動揺しているジェイドが自国の皇帝にすら使ったことがないほど丁重な態度と言葉でイオンとルークを
案内する。確かにティアを引き取れとは言ったが、まさかこんな事態になるとは思っていなかったルークがイオンの顔を伺いながらおずおずとついて行く。そんなルークの年齢より幼い仕草に庇護欲が刺激されたらしいイオンは満面の笑みでルークをエスコートしてゆく。後ろを慌ててついて行くアニスに目もくれずに甲斐甲斐しくルークの世話を焼こうとするローレライ教団最高指導者の姿に先ほどとは違う意味で視線を彷徨わせる周囲の人々。気弱で天然な心優しい少年導師は、この度華麗にクラスチェンジを果たし、魔王属性腹黒最強権力者様に転身なさったご様子。

・・・もう誰にもイオンを止めることは出来ない。

 

 


「ええ、ありがとうございますジェイド。アニスも早く行きますよ。

 ではルーク、行きましょうか。
 大丈夫ですよ。もう何の心配も要りません。全て、僕に任せて下さい。」


「あ、ええと・・・あ、ありがとう?で、でも、あの、ティア、は・・・・?」


「あはは、ルークは本当に優しい方ですね。
 先ほども御自分よりも母君や使用人の方々を心配していましたし。

 ・・・ですが、貴方のその優しさを、あのような罪人にまでくれてやる必要などありませんよ。
 さあ、過去の忌まわしい出来事はまとめて忘却してこれからのことを話し合いましょうか。」

 



声が弾んでいる。周りには花でも飛びそうだ。他の誰に言葉をかける時でもルークから視線が離れない。
その視線も砂糖の様に甘いもので見ているだけで胸やけがしそうだ。どうやらイオンはルークの事が本当に気に入ったらしい。いや最早”愛”の域だろうか、これは。恐らく今ルークに何か粗相でもしでかせば、先ほどのティア同様導師様の秘奥義の錆にされること間違いない。


それを悟ったジェイドやアニスは、最早自分は貝であると自己暗示をかけつつイオンの指示に諾々と従う。何時もの調子でルークを軽んじる言葉を吐いた日には、そこで己の人生が強制的に終了させられる確信に冷や汗が背中を伝う。



・・マルクト帝国皇帝陛下からの親書を預かる和平の使者御一行が、ローレライ教団の導師イオン率いるルークの護衛部隊に生まれ変わった瞬間であった。

 

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

で、その後の彼らがどうしたかというと。

 

 

 

 

「導師イオン、我々と来ていただきましょう。抵抗なさるならば、力づくでも・・・」
 

「黙りなさい、ラルゴ。貴方は幾ら六神将の一人とは言え、一介の軍人にすぎません。
 それが、何の権利があって導師である僕に命令などしているのです!」  とか。

 



 

「導師イオン、さあ大人しく・・」

「貴方もですかリグレット。師弟及び同僚共々本気で己の身の程を理解できていないようですね。
 良いですか、どんな事情が絡んでいようと、”今”の導師は僕なんですよ。つまり貴方は僕の部下です。
 偉そうにふんぞり返って僕に指示などだせる身分かどうか、よくよく考えてからモノを言いなさい!」  とか。

 

 

「人を殺すのが恐いなら、剣なんざ捨てちまいな!!」


「ああ、もう、六神将は揃いも揃ってこの世界の常識である身分制度とか各々の職責とかが全く理解できていない人間ばかりですか! 守られて当然の公爵子息であるルークが、戦いを恐れて何が悪いんです!
 アッシュ、貴方は訓練を受けた軍人でしょう!貴方はそれが義務ですが、ルークは民間人なんです!」  とか。

 

 



「ルーク、あまり我儘言わないで、お前も戦えって。俺一人じゃ前衛が足りないし・・」


「ガイ、貴方はルークの使用人のようですが、何を考えているんです。
 貴方の主人が、誘拐された揚句無理やり戦わされたりしたんですよ!
 それに対して抗議するならともかく、一緒になって戦えなどと・・! 彼は守られるべき王族でしょう!その彼に剣を持たせて自衛を促すだけでは飽き足らず、自分達のことも護れと?!」とか。

 

 

 
 

 

 

「さて、旅券をどうしましょうか。」


「ちょっと待ちなさいジェイド。まさかこれから和平の親書を届けるという重要任務の為の準備を何一つしてなかったってことですか! 旅券がなければ国境を越えられないことなど子供でもしってる常識でしょう!それとも無許可で国境を無理やり通るつもりだったとでも?!」  とか。

 

 



「きゃぁvルーク様ぁv心配してたんですよーv」


「アニス・・ルークを心配したことはまぁいいでしょう。けどね、貴方の役職は僕の守護役ですよ! 職務を果たすつもりがあるなら、上辺でもいいからまず僕の無事を確認しなさい!」  とか。
 

 

 

 


「おお、ルーク探したぞ。」


「・・・・ティア・グランツといいリグレットといいその他の六神将といい。 ヴァン。 貴方部下や妹の教育に手を抜きすぎじゃないですか? しかも貴方自身も常識を理解しきれてないようですね。
 
主席総長といえど、高が軍人が王族であるルークを敬称なしで呼び捨てることが許される思うのですか!身の程を知りなさい!」 とか。

 

 

 

 

 


「………整備士長はアリエッタたちが預かった、です。
 返して欲しくばコーラル城までイオン様と………えっと、ルーク・フォン・ファブレ、が来い………です。


「アリエッタ・・、貴方自分が何をしてるのか分かっていますか?
 これはダアトがキムラスカに宣戦布告したと同じ事ですよ!
 貴方も、僕の顔に泥を塗る気ですか。知らなかったでは済まされません。
 今すぐ貴方のお友達を引かせてキムラスカへ出頭なさい!」  とか。

 

 

 

 


「ちょっとなにしてるのさ、アリエッタ!あんなトコで待ちぼうけさせるなんて・・」


「丁度いいですシンク。貴方もですよ。
 聞けばディストと二人で、ファブレ公爵の私有地であるコーラル城に入り込んで何やらやっていたようですね。
 ・・・今、此処で、音素に還されたくなかったら、さっさとディストをとっ捕まえて僕の前に連れてきなさい。あくまで抵抗するというなら、貴方の同僚全員揃って反逆者として処分するだけです。・・・何をしているんですか。早くしなさい!僕はもういつ理性が切れるか自分でも把握しきれませんよ!」  とか。

 

 



「な、何の用です!私はこれでも忙しい・・」


「ディスト?教団最高責任者である、この、僕が、呼んだんです。 それを拒否できる立場だとでも?・・背任行為に横領・反逆その他諸々!あなた方六神将は揃いも揃って教団を潰したいようですね!」とか。

 

 
 

「な、何を言うか! マルクトは戦争を望んでおると、確かに……」


「モース。貴方が教団での職務を放棄してキムラスカで何をしているのか、この場では聞きません。 ですが、いつから貴方は国王であるインゴベルト陛下や、導師である僕に、許可もなく話しかけられる身分になったのです。いくら大詠士といえど、貴方も教団の一員で、僕は貴方の上司です。 貴方には僕に従う義務があります。

それでも反抗するつもりなら、後と言わず今すぐこの場で、何を企んでいるのか聞きだしてもいいんですよ。逃げようとすればどうなるか・・・わかっていますね?」     とか。

 

 
 

 


喉元すぎて熱さを忘れたのか、ちょっと時間を置くたびに失態を繰り返す同行者や、ダアト除く両国への宣戦布告といわれても弁解のしようのない不始末を重ね続ける六神将。己の部下も制御できてないどころか、あからさまに黒幕の匂いをプンプンさせている主席総長や、職分も忘れて傍若無人に振舞う大詠士。それらの愚か者達を、時にダアト式譜術に沈め、時に純黒な魔王の笑みで脅し、何が起ころうとひたすらルークを護ることを優先しつつ、たまった心労は純粋無垢なルークの笑顔で回復させながら道中を進んだイオン様。エンゲーブを発った早々に同行者達の実力その他への期待を捨てて自分で動くことに決めたらしい。レプリカ故に劣化している筈の体力は気力と根性でカバー。

(ふっ、僕のルークへの愛があれば奇跡の一つや二つ!)というちょっとアレな感じではあるがとにかく再開した旅路にて。


いつキムラスカとマルクトから宣戦布告されてしまうのかと、胃痛を抱えていたというのに、蓋を開ければキムラスカは預言を重用しすぎて生まれて二年間監禁されていたイオンですら気付いた事態の重さに全く気付かず罪人を免罪するわ。ならばと思えばマルクトも、外交センス0どころかマイマスのジェイドを使者に立てただけあって今一実情を把握できてない様子で、ダアトからの戦艦襲撃その他諸々の問題を総スルーという現実がまつとは、全く考えていなかったイオン様。
 

最早この世で信じられるのは自分とルークだけであると悟る。

被験者イオンは病死だと聞いていたが、もしや過労が原因ではと脳裏に過らせつつ、幸せな未来のために世界改編ための暗躍開始。



秘預言を探り、ヴァンらの反逆者どもを始末しつつ、預言に盲従する愚かさを実例(アクゼリュス崩落によるマルクト国民喪失とか、戦争の果ての惑星滅亡とか)付きで説明し、ユリアシティの存在を暴露し、限界を超えた外郭大地を降ろし、さっさと取り込んだディストに命じて疑似超振動発生装置を使って瘴気を中和し。被験者ルークであろうと実際に六神将であった事実を突き付けて手伝わせたアッシュと、被験者イオンの記憶を自分の物としたイオンによって教育され、どこに出しても恥ずかしくない公爵子息へと成長したルークによってローレライ解放がなされて。

 
 

そんなこんなで一年後。

 


 

 

 


「ルーク様。イオン、様。お茶が、はいりました、です。」


魔物に育てられ、ヴァンによる偏った教育で人間世界の常識に疎かったという事情を鑑み、イオン発案の作戦に護衛として従事することで罪が軽減され保護観察処分になったアリエッタと。

 
 

「ちょっと!なんで僕ばっかりこんなに荷物押し付けられるわけ?! アンタも持ちなよ死神!」



やはり実年齢と生まれた当初からの環境を鑑み、アリエッタ同様イオンらの護衛に従事することで罪を軽減され保護観察処分となったシンクと。



「無茶言わないでください!こっちだって手一杯なんですよ!
 それに私は薔薇ですよ、薔薇!死神っていうなって何回言わせるんですか!」



実際に襲撃などの直接的な行為には関わらず、その技術を駆使して諸々の作戦に貢献したため特別に罪を軽減され保護観察処分となったディストと。

 


「あ、あの、私も手伝いますから!」



作戦中、町の私財を投じて作り上げた飛行機関アルビオールを提供してくれたシェリダンの技術者の一人で、アルビオール二号機の専属操縦士であるノエルと。

 


「大丈夫ですかシンクの旦那!オイラが半分持ちますよー!」



同じくアルビオールの操縦士としてノエルと二人で作戦中の移動を助けてくれたノエルの兄であるギンジと。




「もー!はやくー!僕お腹すいたー!」



作戦中に見つけたもう一人のレプリカイオンであるフローリアンと。

 


「ああ、待てって!すぐ行くからよ!・・・・イオン!」


 

怒涛の勢いで過ぎた一年の間に明かされた様々な事実に傷つき悩み、それでも友人たちの支えで乗り越えて成長したルークと。

 



「はい!待って下さい、ルーク!」

 


皆で一緒に笑い合えることが本当にうれしくて、黒さなど微塵も感じさせない満面の笑みでルークに駆け寄るイオンと。

 


世界を変える為の旅の中、苦楽を共にして絆を作っていった新しい友人たちと
一緒に生きていける今日の日に。

二千年前の姿を取り戻した本来の大地の上で、美しい青を取り戻した空の下で、
また明日を迎えることができる幸福に。

 


深く深く感謝して、彼らは笑って生きている。

 

 

 






 

 

 

 

 

 

 

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ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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