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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。

なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが空きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・


現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。

*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。

 



 









静寂が支配する暗い部屋。
光の差さぬ漆黒の闇に満たされた場所。


「黒き月」と呼ばれる女神の寝所の階上に建設された巨大な四角錐の建物の最上階
ネルフ本部総司令室。


天井に描かれたセフィロトが見下ろす下で、陰気な闇に満ちた中
言葉を交わす二人の男がいた。


ネルフ総司令碇ゲンドウと副指令冬月コウゾウである。



国連直属の非公開特務機関である対使徒迎撃組織ネルフの2TOP。
ネルフの前身は南極で発見されたアダムの研究及びエヴァの開発・第七世代コンピューターの開発運営を目的として設立された研究機関で在ったが、2010年、第七世代コンピューターMAGI完成を機に、特務機関ネルフとして発足。 MAGI完成当日自殺した赤木ナオコの後任に、娘である赤木リツコが就任した以外はゲヒルンメンバーが留任する形で始動した。
 

 

そして今年使徒襲来まで後二年となった2013年。


原因不明のレイの素体消失によって不可能となったダミー製作。
正体不明の敵に襲撃された秘匿研究施設の喪失による必要な技術開発の遅延。
それらによって遅々として進まぬ人類補完計画のための準備。


彼らは様々な障害によって修正を余儀なくされたシナリオについて話し合っていた。

 

 

 

「碇、どうするつもりだ。
 現状で従来のシナリオを遂行することは不可能だ。老人達も焦っているようだ。」


「・・・・・・わかっている」



焦燥を感じながらも穏やかな口調で問う冬月に常と変わらぬ重苦しい声で返すゲンドウ。
両手を組んで口元を隠すポーズも何時もどおりであるが、その内心は思うとおりに進まぬ事態に腸が煮えたぎるような怒りを押し殺していた。

 


「シナリオの修正については老人達から通達が来た。


 ----- レイの素体消失によって頓挫したダミー計画については提出した人口知能プラグ作成案を許可するとの事だ。 ただし、使用するチルドレンについてはファーストのみでは心許ないという理由で、あらたにチルドレンを選抜して予備を確保。使徒迎撃におけるエヴァの必要性を承認させるためにネルフを半公開組織に変更。使徒及びエヴァンゲリオンについての情報の秘匿性を下げ、存在を世間に認知させる。

 それに伴って、予備チルドレンとして適正を持つ者を公に育成。 人工知能プラグ作成のための収集データサンプルはその内から適正の高いものを複数使用し、並行して開発しろと言ってきた。



 ・・・・・・・とにかくエヴァによる使徒迎撃の態勢を整えた上で、計画遂行の下地を作ってしおうというのだろう。
 第三者にその意義を認めさせてしまえば、計画を邪魔するものが何者であれ、実行者たる我らに手を出すのは困難になる、ということだろうな。」 

 


淡々とした声で命じられた内容を冬月に伝えるゲンドウ。
だが内心の苛立ちは隠し切れず奥歯をかみ締める音が漏れる。
対する冬月も苦々しい思い露呈する。

 


「レイへの干渉に今まで以上の注意が必要になるな・・・・外部の第三者による我らの監視も兼ねるということか・・」


「だが、最終目的が違っても補完計画の遂行は必要だ。
 こんな所で頓挫させるわけには行かない」


「ああ・・・・・しかしまさかゼーレに歯向かう者が現われるとはな。
 計画についても全て知られているのだろうか?」


「何所まで知られているかは判らん。 だが大筋は掴んでいるだろう。
 だからこその研究所の襲撃だ。 それも計画において重要なものを中心に殲滅されている。
 ・・・・・・老人達の手駒では正攻法での防御は不可能だと判断したのだろう。
 
 何者なのだ・・・・・!!」

 


己の計画に対する邪魔者に苛立たしげにつぶやくゲンドウ。
共感する思いをねじ伏せて他にも残っている懸念事項を問う冬月。
怒りを消すことは出来ないが、計画遂行には必要なことである。
激情を抑えて続けるゲンドウ。

 
 

「ゼーレの情報網、実行部隊の実力をもってしても 判っているのは ” スクルド ”というコードネームのみ。とはな。 まあ、それはひとまず置こう。現状では老人達の案が最適だろう。賭けの要素が強いことは否めないが計画を始動することが最前の目的だ。
  
 チルドレンの育成成果についてだが、セカンドは順調だそうだ。ドイツは上手くやっているようだな。
 ファースト・・レイも問題あるまい。素体の消失は痛恨だが、ダミー製作に関する実験が無いならチルドレンとしての訓練のみだ。お前のとの絆に固執している。ことさら誘導せずともお前への依存心が深い。
 

 問題はサード候補 ・・お前の息子だが、どうする?
 心の拠り所を得た今。当初の予定通りの欠けた心の子供には育たん。
 自立心も強く孤独をばねに強靭な精神を鍛えたようだな。
 

 今からでも手元で育てて誘導するか?」

 



冷酷なことを平然と話す冬月。
温和な紳士然とした外見に反して、ゲンドウの腹心に相応しい救い難い外道のようだ。
冬月の報告に眉一つ動かさず冷然と応じるゲンドウ。
実の息子に対する情など欠片も存在していないことを再確認させる姿である。


 

「問題ない。手は打った。 所詮は子供だ。どうとでもなる。
 今はそんな瑣末事に関わっている余裕など無い。」



吐き捨てるゲンドウに冬月は彼が何をしたのか大体を察したが、口には出さずに目の前の書類に意識を集中させた。その傍らで相変わらず組んだ両手で隠した口元を僅かに歪めて、睨み付けるように視線を来るべき未来に向けるゲンドウ。


陰気な暗い部屋に書類を繰る音のみが残った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八月の長期夏期休暇が終わった九月の初め。
相変わらず暑い日が続く常夏の日本。
第2新東京市。


 

シンジは退屈な学校を自主休校して、懇意にしている施設『美月園』の厨房で職員の一人であり、主に園の食生活を取り仕切っている山中アオイさん(58歳)と共に豪勢な晩餐の準備に忙しく動き回っていた。彼女は園長婦人のミノリさんの高校時代の後輩でインパクト以前は有名レストランでチーフコックを勤めていた。だがセカンドインパクト後の騒乱で勤め先のレストランを焼失し、路頭に迷って途方に暮れていたところ、ミノリさんからの誘いを受けて『美月園』に来たそうだ。恰幅の良い身体で常に忙しそうに動き回り、誰に対しても向けられる朗らか笑顔と栄養バランスの取れた美味しい料理で子供達にもなつかれている。シンジも彼女の明るい性格に何度も支えられてきた。今は彼女の弟子として料理を習っている。そして今作っているのは新しく里親を見つけて園から巣立っていく子供達のお別れパーティーのためのご馳走である。

 
 

『美月園』は新藤アキラ園長がセカンドインパクト後の騒乱で後遺症の残る怪我を負い、自衛隊武術指導官を退任したことを切欠に路頭に迷っている孤児達に暖かな生活をあげたい、という理念の基設立された。施設は廃校となった小学校を改築し、職員は新藤園長夫妻、園長夫人の元後輩の山中アオイ、アキラの元部下でアキラ退官時に一緒に辞めた元自衛隊射撃担当指導員三島コウイチとその妻であり元自衛隊情報管理室チーフオペレーター三島カナ夫妻の5人で常時8人から15人の子供を預かっている。創立当初から既に若くはなかった園長夫妻は孤児達を預かっても出来うる限り里親を探し出して子供達を送り出してきた。無論この園から独立した子もいるが創立から10年では数人程度である。 そして今年で62歳になる新藤園長は新しい子供を預かるのを止め、今園に住む子達も出来うる限り相性の良い里親を探して送り出すことにしたのだ。 シンジがこの場所に通い始めた当初暮らしていた15人の子供達も大半が新しい里親を見つけ巣立っていった。今日開
かれるのは、今園で暮らす5人の子供達を新しく見つかった里親の元へと送り出すためのパーティーである。

 


「それにしても今日で子供達が皆いなくなるとなると寂しくなるねぇ。
 園長先生は出来るだけ子供達に養い親を探すようにしていたから子供達が入れ替わるのは割りと頻繁に在ったことだけど・・・」


「そうですね。 僕が此処に来るようになってからもう二年ですけど・・・あの子達と一緒にいられなくなると思うと・・・」

 


忙しく手を動かしながら言葉を交わすアオイとシンジ。
明るい口調ではあるが寂しさは隠しきれない。



「でも、まぁ子供達にとっては新しい家族が出来る、おめでたいことだしね! 笑顔で見送ってあげなきゃね!」



朗らかに続けるアオイ。
その言葉を聞いて僅かに苦笑するシンジ。



「そうですね。 ・・・・・・・家族か・・・」



相槌を打ちながらも、ふと脳裏に過ぎった血縁上の父の顔に、暗い感情が噴出して顔を強張らせるシンジ。
硬質の雰囲気を纏ったことに気付きながらも明るく話しかけるアオイ。



「ほらほら、手元がお留守になってるよ。今日はパーティーなんだからね。 まだまだ忙しくなるよ!!」



シンジはそんなアオイの気遣いに感謝して目の前の料理に意識を戻した。

 

 

 

 

 


午後6時から始められた子供達の門出を祝うお別れパーティーは賑やかに過ぎ、アオイ&シンジの合作料理はあっという間に皆の胃の中に消えた。最後の思い出を刻むようにことさらはしゃいでいた子供達も部屋へと引き上げた夜更け。シンジは静まった食堂と厨房を往復して宴の後始末をしていた。園長を始めとする職員の面々もこれで子供達がいなくなるという寂しさを紛らすように、皆でご馳走に舌鼓を打ちながら、普段は滅多にでない大量の酒を用意して浴びるように飲みまくったのだ。子供達が騒ぎ疲れて自室へと引き上げた後も、シンジが追加する摘みを食べながら全員が酔いつぶれるまで宴会は続けられた。 酔いつぶれて雑魚寝している大人たちに毛布を掛けたシンジは、散乱した宴の残骸を手際よく片付けていった。

 
 

綺麗に片付いた厨房と、床に雑魚寝する職員の姿以外はきちんと整えられた食堂を一通り確認すると、園に泊まるときに何時も使用している空き部屋に向かった。この温かい場所で彼らと一緒に過ごすのもこれで最後かと思うと寂しさを感じるが一生あえなくなるわけではないのだ。子供達がいない以上園は閉鎖することになる。園長夫妻は北海道で知人の経営する牧場に呼ばれていると聞いた。アオイさんは旦那さんに先立たれて一人で小さな食堂を切り盛りしている古い友人の所へ行くという。三島夫妻は此処とは別の施設で職員として採用されたらしい。
 

二年前此処に初めて訪れたとき、伯父を始めとする周りからの冷たい視線と、誰も自分を助けてくれない孤独な環境の中で、周りの全てを憎悪していた幼い自分。 全てを拒絶して視野が狭まっていた自分に、裏の無い優しさを注いで、いろいろな事を教えてくれた人達。彼らとの生活は、自分にとって何よりの救いだった。ここにくることが無ければ、あのまま周囲に存在する全ての他人を無作為に拒絶し続ける永遠の孤独の中で生き
ていっただろう自分。 彼らにはどれほど感謝しても足りない。離れてしまうのは寂しいし、今までのように気軽に会うことは出来なくなる。 しかし例え遠く離れていても、手紙を送りあうことも電話で話すことも出来る。すぐには無理でもいつか会いに行くこともできるのだ。 ならもうこれ以上暗く考える必要はない、と沈みそうになる感情を再び浮上させると、いつの間にか静かに降り出した雨の音を聴きながら、ベッドに入って眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

 

 


『美月園』の面々が寝静まった頃、高台に建つ孤児院へと続く細い道の入り口に、白いワゴン車が静かに停まった。しばし辺りを窺うように停車したまま動かなかったワゴンから様々な武器を持った男達が降り立った。そして無言のまま肯き合うと、音を立てずに四方へと散らばる男達。ワゴンの運転席に残った男の下に幾つかの信号を伝える僅かな機械音が鳴る。それを確認した運転席の男は手に持った通信機のボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 


白いワゴンが『美月園』に着く数分前。
静かに降る雨の中、暗い闇の中走り続ける影があった。
細い身体を漆黒の上下に包み、白い顔の半分を覆うバイザー。
風に靡く艶やかな黒髪は首元で一つにくくられている。体型から恐らく若い女性であろう。
その姿を見かけたものが居てもはっきりと視認できるものなど居ないだろうと思えるほどのスピードで走り続ける人物。身長は150程の小柄な影は人気の無い深夜の道を、必死になって目的地に向かって足を進めていた。
 

「間に合って・・・・・!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

住人が寝静まって穏やかな静寂が支配していた『美月園』に突然門扉をぶち破る大きな音が響き渡る。
騒音に飛び起きる園長たちやシンジ、そして子供達。酔いつぶれる程飲んだ酒のせいか数瞬思考が停止していた園長たちは、窓から園内に荒々しく踏み込んできた武装した男達に理性を取り戻すと行動を起こす。現役を離れて久しいとはいえ元自衛官として実戦を生き抜いた兵士達である。即座に状況を判断するとアキラとコウイチは不測の事態に備えて隠してあった武器をとり、闖入者たちを足止めに向かう。その間にミノリとアオイ子供達を逃がすために居住区へと走り出す。カナは子供達を外へ連れ出すために、緊急用の車を止めてある隠し車庫へと向かう。ここで部屋に備え付けられていた銃を持ったシンジがアキラ達に合流した。



「先生!!」


「シンジ!!」



慌てて走りよりながら小声で呼びかけるシンジを引っ張って侵入者達が向かってくる玄関に通じる廊下の影に身を潜める三人。



「シンジお前は子供達のほうに向かえ。此処はコウイチと二人で足止めをする。
 一応カナが警察を呼んでいるが間に合うとは思えん。 あの子達を頼む。」


「でも、それは!!」



アキラの言葉に反論しようとしたシンジを遮ってコウイチが続ける。



「シンジ聞け! あの連中の装備からいって恐らくプロの戦闘集団だろう。
 今のお前のレベルじゃ、あの連中を相手に戦ったところで足手まといにしかならん。
 それよりも、あの子達を何とか安全に逃がすことが第一だろう。」


「ミノリとアオイとカナの三人だけでは心もとない。シンジ頼む。」



アキラとコウイチの言葉に悔しげに唇かみ締めるて俯くが、すぐに青ざめた顔をあげて二人を見据える。



「わかりました。・・・死なないで、くださいね。」


「当たり前だ。・・頼んだぞ。」

「奴らを始末してすぐ追いつくからな。」



アキラもコウイチの優しい嘘に強張りかけた口元に無理矢理笑みを浮かべたシンジがぎこちない動作で頷く。
そして身を翻すと子供達が向かったはずの避難用の隠し通路へと向かった。
 

シンジが行ったのを確認した二人は、無言で手の中にある愛銃の感触を確かめると体勢を整える。そして、視界の中に建物内に進入しようとする男達の姿を認めると同時に彼らに向かって弾丸を叩き込んだ。

 

 

 

 

 

一方ミノリとアオイは子供達を連れて、車庫へと通じる隠し通路へと急いでいた。

侵入者の目的が何であれ、子供達を危険な目に合わせるわけにはいかない。侵入者の撃退に向かった夫のことは気になるが、まずは足手纏いでしかない自分達が外へと出ることが先決である。ことさら冷静に思考を巡らせながら子供達を引き連れてカナの待つ車の処へと足を速めるミノリ。視界に車庫へと通じる扉が見えた彼女達は思わず安堵の息を漏らしながら、扉を開いた------

 


鳴り響く爆発音

 



逃げ出そうとする園の者達がこの隠し車庫を利用することを読んでいた侵入者達が仕掛けておいた爆弾が、開かれる扉と連動したスイッチによって爆発したのだ。 辺りに積み上げられていた木箱や整備用のオイルに引火して勢いを強める炎。止められていた数台の車に飛び火して次々続く爆発。地下に造られていた車庫は爆発の衝撃で崩れ落ちた。





アキラとコウイチに背を押されて子供達の下へと向かっていたシンジが、車庫に着いたとき目にしたのは、崩壊した通路と車庫。そして墨のように黒ずんだ遺体の欠片と彼女達を蹂躙する激しい炎。未だに続く小さな爆発音。

車に乗り込んで子供達を待っていたカナも、
子供達を連れて車庫に入ろうとしていたミノリとアオイも、
彼女達に手を引かれていた子供たちも、

激しい炎に焼かれ、崩れた瓦礫の下敷きとなって、原型も留めていなかった。



呆然と目の前の惨状を眺めているシンジの前に、侵入者達と同じ格好をした男達が立ちふさがる。
現われた敵の姿に自失から還ったシンジが構えようとするが、遅く。男達の放った弾丸がシンジの腹を撃ち抜く。腹を押さえて崩れ落ちるシンジ。 激しい痛みに意識を失くしそうになるが、自分を孤独から救ってくれた優しい人たちを殺した奴らへの怒りが、痛みすら凌駕してシンジの身体を突き動かす。だが、相手はプロの戦闘集団である。子供の足掻きなど鼻で笑って、さらに容赦なく足や腕を撃ち抜く。堪えきれずに己の血溜りのなか倒れこむシンジ。 もう此処で死ぬのか、という思いと、大切な人たちを守ることが出来ずにむざむざと死なせた悔しさが、男達への憎悪となって身体の奥を焼き尽くす。それでも指一本動かすことの出来ない現状では奴らに報いることなど不可能だと判っていた。 

こんな奴らに殺されるのか、と歯軋りしながらも固く瞳を閉じて、訪れるだろう衝撃と死を齎すだろう痛みを待つ。 が、なぜかそれ以上の攻撃がこない。

 
 

いぶかしく思って失血のせいで霞む視界を無理やり凝らし、周りの状況を確認しようとしたシンジの目に映ったのは、事切れた男達の中心に佇む小柄な人物。黒ずくめの服に顔の大半を覆うバイザーを身に着けている。視界が利かないため良くわからないが、体型から判断すると女性のようだ。



彼女は燃え盛る炎の中で、戦闘の途中で銃が掠りでもしたのか罅割れたバイザーを炎の中に投げ捨てると、強い光を放つ深紅の瞳で、倒れ付す男達を睨みつけている。数秒間、微動だにせず男達を睨み据えていた彼女は、硬質な雰囲気を一変させると周囲の状況を一通り見廻して悲しげな吐息を漏らす。そして、静かな足取りでシンジの方へと近づいてきた。



シンジは、近づく女性の (ずいぶんと若い。自分と同年代の少女のように見える。) 姿をその視界に納めた瞬間、彼女に見惚れた。



美しい黒髪、闇を紡いだかのような漆黒で、柔らかく風に靡いている。
身体にぴったりと添った服から窺える肢体は、幼いながらも伸びやかな若木のような瑞々しさを感じさせる。
その肌は白絹のように美しく、小さな輪郭の中に小さな薄紅色の唇と、すらりと通った鼻梁と美しい柳眉と、
頬に影を落とす長い睫と、その下の吸い込まれそうな深い光を湛える深紅の瞳がバランスよく納まっている。


その美しくも愛らしい造形は、まるで神話の中で神が己の技術をつぎ込んで創り上げたという最高級の女性を思わせる。

そして何より、彼女の顔に浮かぶ表情。



泣くのを我慢している様な揺れる瞳で、
怒られるのを恐れる子供の様に不安げに口元を歪めて、
渇望していたものを目前にしているかのような隠し切れない歓喜と
何よりも大切なモノを永遠に失ってしまったかのような絶望を湛えた


笑顔にも泣き顔にも見える、仮面のような凍りついた表情で、
ことさら静かな足取りでシンジも元へと近づいた。

 


この時のシンジの中には、今の自分になる為の切欠をくれた大切な人たちを殺し、温もりを与えてくれた掛替えの無い場所を奪った男達への怒りも、未だに血を流し続ける傷が与える激しい痛みも存在していなかった。ただ、彼女がそんな顔をすることは無いのに、と考えて。押し寄せる睡魔に従って、その意識を闇に沈めた。

 

 
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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