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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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この作品は、エヴァ×アビス基本+seed(キラ・ラクス・クルーゼ・カナード他)、ぼかろ(カイト・ミク・メイコ)設定がクロスする混沌クロス作品です。

・碇レンver

・今更ではありますが、時系列及び預言の在り方等諸々について、夥しい捏造が入ります。
 特に創世歴時代の出来事や人物間の血縁関係や交友関係等は、公式設定とは全くの別物だと考えてください。

本来お亡くなりになる方が生存してたり、マルクト・キムラスカ・ダアトへの批判・糾弾や、PTメンバーへの批判・糾弾・断罪表現が入ったりします



CP予定:
・・・キラ×ラクス(seed)
・・・カイト×ミク(ボカロ)
・・・クルーゼ(seed)×セシル(アビス)
・・・被験者イオン×アリエッタ(アビス)
・・・フリングス(アビス)×レン(碇レン)

です。上記設定がお好みにそぐわない、という方はお読みにならないようにお願いいたします。



 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 









ルークは、すでに己の不運を嘆こうという気持ちにもならなかった。

 

(間違いない。俺は呪われてる。)

 

そう確信するだけである。

 

 

 

 

 





ジェイドを加えたルークら一行は、連れ立って森の出口に向かう。その中にはミュウもいた。

途中チーグルの長に取りあえずの報告に立ち寄った時に、怯えつつもなんとか威厳を取り繕った長の命令で、償いのため季節が一巡りするまでの追放を命じられたのだ。ミュウ本人は、一生をルークへ捧げる決意をしているので二度と戻るつもりはないようだが、長の前では愁傷に振舞っていた。信頼を失っても、やはり彼らは仲間である。完全に嫌いになったわけではない。けれど、今までのように共に過ごせる自信もないミュウにとっては、これが今生の別れである。口には出さず、ただ深く頭を下げてルークと共にソイルの木の洞をでる。静かに頭を撫でるルークの指に一つ擦り寄って感謝に代えた。イオンとレンも、ミュウの気持ちを汲んで何も言わずにそんなルークらを見守る。
 

そして口数少なく森の出口に差し掛かったところで、ルークとレンが静かに構える。。
イオンも眉をしかめた。何も気づいていないのはティアだけだ。


あと数歩で開けた場所に出るという場所に小柄な少女が立っていた。昨夜あった導師守護役だ。イオンが声をかける。



「・・・アニス」


「も~イオン様!心配したんですよぉ!
 勝手にどっかいっちゃ駄目じゃないですかぁ!」


「・・・そうですね。すみません。」



優しく返したイオンの内心を、ルークとレンだけが正確に聞き取った。

・・・・このアニスという少女の厚顔無恥さにも呆れて物がいえない。
どこの世界に主から目を離す護衛がいるのだ。勝手に動くなとはどういう意味だろうか。
守護役の仕事をまともにこなしていれば死んでも出るはずのない台詞である。

 


((ダアトって・・・))



ルークとレンの呟きが重なる。

イオンの言動が、今まで知っていた教団関係者からは想像も出来ないほど有能な権力者のそれであったので、さぞ心労も激しかろうと同情してしまった。静かに肩を叩いたルークと労わるように背中を撫でたレンにイオンから力ない視線で感謝が返る。この短い道中で数少ない同士としての絆が深まる三人。・・主に非常識な同行者への愚痴によって成り立った友情である。友人関係はともかく、理由がすごく嬉しくない。

 
 

「(それはともかく、ルーク様、如何なさいますか)」


「(・・・・良い。取りあえずジェイド・カーティスの言い分を聞いてから決める。
 ・・・良い期待は微塵もできねぇだろうが。)」

 
 

そこでジェイドがにこやかにアニスに声をかける。

 


「ご苦労様でした、アニス。それでタルタロスは?」


「ちゃんと森の前に来てますよぅ。
 大佐が大急ぎでって言うから特急で頑張っちゃいましたv」

 
 

そこでイオン・アニス・ジェイドを除いた三人と一匹に槍が突きつけられる。ジェイドの部下であるマルクト国軍第三師団の兵士である。微動だにせずジェイドを見つめるルーク。レンはいつでもルークを守れるように隠し持ったナイフを確認する。ティアは驚いて硬直している。

 
 

「で、どういうことでしょうか」


「そこにいる三人を捕らえなさい。
 正体不明の第七音素を放出していたのは、彼らです。」


「ジェイド!」



厳しい面持ちで叱責するイオン。ジェイドは余裕の笑みでルークらを見ながら答えた。



「ご安心ください。何も殺そうという訳ではありませんから。
 ・・・三人が暴れなければ。」

 


尚ジェイドに何事か続けようとしたイオンを視線で止めるルーク。こちらも冷静に言う。

 


「・・・・仕方がありませんね。では、どうぞご随意に?」

 


ルークは笑みすら浮かべて両手を挙げる。レンもルークに従って構えを解いた。
万が一ここで攻撃されてもルーク一人を守りきる自信はある。
先程のように守る対象が複数ではなく後ろからの奇襲でもない。
今の彼らは最初から警戒対象だ。レンが遅れをとることはありえない。


其れをルークも知っている。

・・・レンが、キムラスカ最強と謳われるキラ・ヤマト准将に、唯一勝ち越せる実力の持ち主であることを。いくらキムラスカでも畏怖と共に囁かれるジェイド・カーティスであろうと、レンの敵ではなかった。
 

何も知らないジェイドは余裕の態度で言い放った。




「いい子ですね---連行せよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



そしてルークは心底から疲れていた。理由は言うまでもない。

ジェイド・カーティス・・・・違えば良いと切望していた思いを裏切って、やはり和平の使者であった彼の言葉に、である。

 


 

「・・・・で?何を仰りたいのでしょうか?」

 


取りあえず連行された取調室で、ルークらを拘束した理由の述べていたジェイドに言った。不法入国が問題だというならさっさと手続きを取ればいい。差し当たっては事情を聴取して国境沿いの軍部に拘束。キムラスカに問いあわせて司法取引すれば良い話である。態々大佐が自ら聴取に当たる必要はない。ならば、他に目的があるのだ。・・・半ば予測しながら聞いてみる。

 
 

「・・・・貴方方のお名前をお聞きしたい。」


「おや、ご存知でしょう?私はルース。彼女はレインです。」


「・・・・偽名でなく、本当のお名前をお聞かせ願いたいのですよ」

 



口元を吊り上げて見下ろすジェイド。

・・・・想定外というわけではないので驚かなかった。
ルークは軟禁されていても、王族の一人として肖像画の数枚くらい出回っている。レンもキラ・ヤマトの補佐官として政治の場に出たこともある。養女であるため、王宮には余り出入りさせてもらえていないようだが、軍部では絶大な人気を誇るのだ。敵国ならば尚更に、国の要人の資料くらいあるだろう。ジェイドは性格行動はともかく頭脳はそれなりである。キラやディストや最近才能を発揮し始めたフローリアンが身近にいるルークから見れば天才などと持て囃す気はないが、記憶力等が優れていることまで否定する気はない。一度でも目を通した資料にルークやレンの絵姿でも混じっていたなら、顔かたちだけで判別するだろうと思っていた。

 



「ま、気づいてるようだが・・・・私の名は、ルーク・フォン・ファブレ。
 キムラスカ国軍元帥クリムゾン・ヘァツォーク・フォン・ファブレが一子だ。」


「私の名はレン・ヤマトと申します。
 キムラスカ王国ハルマ・ヤマト公爵が第二子にございます。どうぞ、お見知りおきを」

 
 

尊大に告げるルークと、優雅に一礼するレン。軍艦の粗末な取調室がまるで王宮の貴賓室かのような雰囲気に支配される。流石に傍若無人なティアも些か気圧されている。ジェイドも僅かな感嘆を視線に載せる。イオンは変わらない笑みで、二人を見守る。気を取り直したように口を開きかけたジェイドの後ろで、アニスの瞳が不穏に輝く。



「・・・キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵のご子息と、かの有名なキラ・ヤマト准将の妹姫というわけですか。」


「公爵・・・・v素敵・・・・v」



硬い空気を物ともせずに身体をくねらせたアニスが呟いた。その瞬間頬が引きつったイオンの罵倒が声なく響く。勿論気づいたのはルークとレンのみである。ティアもジェイドもルークらに視線を合わせて話を進めようとする。
ある意味見上げた図太さだ。・・・なぜ、あのイオンの空気に気づかないのかがわからない。既に隠そうともしていないのに。

 


「それで、何故わがマルクト帝国に?」


「ああ、それはそこの、」



言いながら、何故か横に座っているティアを指し示す。
導師イオンや公爵令嬢であるレンが立っているというのに、無位無官の一平卒が椅子に座っている現状になんら疑問を覚えることもないらしい。ルークも今更指摘せず、怪訝そうな表情のティアを無視して続けた。

 
 

「ティアとやらが、我が屋敷に襲撃をかけてきてな。
 客人である神託の盾騎士団のヴァン・グランツ謡将に切りかかり、間に入った私とレン・ヤマト嬢と接触した際におきた擬似超振動によってこのマルクトまで飛ばされた、というわけだ。」

 
 

その瞬間、イオンの目が大きく開く。一瞬で顔色が白くなり、ティアを憎しみを込めてにらみつけた。
そして、ルークらが偽名を名乗るならと直接話をするのを後回しにした自分を呪う。森で出会ったときにさっさと切り出しておくべきだった。・・まさか、そこまで救いのないことを仕出かしているとは考えが及ばなかったのだ。

そんな己の上司の様子になど気づきもせず、ティアがここで口を挟んだ。

 


「そうです、これは純然たる事故であり、マルクトへの敵対行為ではありません。」

 


唖然、とするイオン。何事かいいかけた唇が中途半端に固まる。
・・・・ティアは、何を言っているのだ。

 


「成る程、国境を越えたのは事故、ですか。
 まあ、そうでしょうね。貴方方に敵意は感じられません。」



ついで考えなしの言葉を放ったのはジェイド・カーティスだ。
イオンの視線が彼に移る。この男も、何を口にしている?

 


「(だろーよ・・・)・・・それだけか?カーティス大佐」


「?何を仰りたいのかわかりかねますが、とにかく貴方方が本意でなく国境を越えてしまったことは理解しました。 そうですね・・・・よろしければ協力していただきたいことがあるのですが」

 
 

イオンの驚愕に心からの同情を捧げるルークとレン。二人にとってティアの自覚の無さは今更であるし、ジェイドの行動を見ていてまともな対応など期待する気もなかったので、そんなところだろうと納得するだけだ。後はジェイドが犯した失態の数々を持ち帰り後々の外交カードとして利用しようと待ち構える。キラの力作である録音譜業のスイッチを入れて証拠確保の準備もばっちりだ。何かの事件に巻き込まれる事があったら犯人特定などの材料を残すために使うと良いといって先日貰ったものだ。これほど早く使える日がくるとは思わなかったが。

 


「・・・」
 

「我々は、マルクト皇帝ピオニー9世陛下の命を受けてキムラスカに向かっています」


「・・・」


「まさか、宣戦布告・・?」


「・・・」


「違いますよぅvルーク様v戦争を止めるために私達が動いているんです」


「アニス、不用意に喋ってはいけませんね、」


「「「・・・・」」」



無言で勝手な会話を傍聴するルーク達。目の前では導師守護役とマルクト軍人と教団最下級兵士が口々に言い合う。怒りを突き抜けて脱力しているイオンにも、流石にフォローの仕様がないレンにも、冷め切った眼差しのルークにも気づかない。


そこでジェイドが再びルークを見下ろす。・・・こいつは首がいらないのだろうか。

 


「これから貴方方を解放します。
 軍事機密に関わる場所以外は、全て立ち入りを許可します。
 まず私達を知ってください。その上で信じられると思えたら力を貸して欲しいのです。
 戦争を起こさせないために。」


「「・・・」」


「協力、ねぇ?先に事情を説明する気はない、と」


「説明して尚、ご協力いただけない場合は、貴方方を監禁しなければなりません。」


「ほう?」


「「・・・」」


「ことは国家機密です。
 ですからその前に決心を促しているのですよ。どうかよろしくお願いします。」


「ルーク様v私ルーク様と一緒に旅がしたいですv」


「「・・・・・・・・」」

 


絶望的なイオンの視線に気づかないアニスもルークに向かってはにかんで見せた。レンがミュウを撫でながら遠くに視線を飛ばす。返事をしないルークに、仕方無さそうに肩を竦めたジェイドが世界情勢を話し始める。再び勝手な論争が飛び交い、ジェイドの視線がルークに戻る。



「・・・・そんなわけで、私どもには貴方の力が、
 ・・いえ、貴方の地位が必要なのです。」


「地位、ね。・・・人に物を頼むときの礼儀もしらない、か。」



「ルーク!!
 そういう態度はやめたほうがいいわ、貴方も戦争が起きるのは嫌でしょう?」



独白のように呟いたルークにティアが反応する。冷静に間違いを諭すように言うが、ティアの言葉は的外れだ。それがわからないのはジェイドとアニスだけである。イオンの視線は既に氷点下をぶっちぎり、これ以上下がりようがない。レンの笑みがどんどん形だけになる。ミュウすらルークへの態度のおかしさに気づいて訝しげに見ている。

 そんなティアの言葉を聞き流し、ルークの言葉に従って跪いてみせるジェイド。
・・・・王族でなくとも、敵国の人間だろうとも、貴族階級の人間相手だと判明した瞬間に取るべき対応だとは全く考えてもいないのだろう。仕方なく頭を下げてやった、という雰囲気を隠しもしない。慇懃無礼を素で体現するジェイド・カーティス。何故、そこで女軍人二人がジェイドを尊敬できるのかがわからない。


 

「・・・どうかお力をお貸しください、ルーク様」


「・・・・成る程、それが、貴殿の答か」


「ルーク。」

 

静かに言ったルークを、促すようにティアが呼んだ。
アニスもジェイドもルークの返事を待っている。

だがレンとイオンには、ルークの答がわかっている。共に溜息を落とす。

 


「・・・・・断る。」


「ルーク!貴方何を考えているの?!」


「ルーク様?!アニスちゃんショックですぅ~~考え直してくださいぃv」


「やれやれ・・・これだから温室育ちのお坊ちゃまは・・・仕方ありませんねぇ」



途端に騒ぐ女軍人二人。馬鹿にしたような笑みで立ち上がったジェイドがルークを見下ろして言った。次いで扉の前の衛兵に命じる。



「衛兵!この二人を拘束しなさ 「ジェイド」・・なんですかイオン様?」



言葉を遮ったイオンに向くジェイドの視線はやはり軽侮の光が宿っている。何故邪魔をするのかと思っているのだろう。・・・限界だった。



「申し訳ありませんが、今回の仲介のお話は、白紙に戻していただきます。これ以上お付き合いできません」



「「イオン様?!」」


「・・・やれやれ、貴方もですか?イオン様、このお坊ちゃまを気に入っているからといって、こんな我侭にまで付き合うとは・・」

 


所詮は子供か、とでも続くのだろう。ジェイドの声にはかけらの敬意も篭っていない。イオンの言葉の意味を、何一つ理解できていない愚劣さを露呈している女軍人二人に劣らずのジェイドの救いの無さ。いくらマルクトに貸しを作るためといっても、こいつを選んだのは失敗だったと心底後悔するイオン。

 
 

「なぜ、ルーク殿が断ったのか、本当に理解できていないのですね。
 そんな貴方をキムラスカに連れて行ったりしたらダアトの威信も暴落します。」


「どういう意味です。」



直接的な嫌味には反応できるようだ。ただし己に向けた物のみで。だがイオンはルークに視線を向けてジェイドを無視した。ジェイドの気配が尖るが気に留める価値もない。



「ルーク殿、レン殿、我が教団の者が大変なご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
 一組織の長としてお詫びの仕様もござません。
 どうぞ、そこの罪人・ティア・グランツはご自由に処分なさってください。
 ダアトは感知いたしません。
 勿論関係者各位の処分もキムラスカの意向に従いましょう。」



深々と頭を下げるイオン。ルークとレンも真摯に返した。

 


「いや、頭を上げていただけるか導師。
 わが国としても、罪人を引き渡して貰えるならば貴国へ悪いようにはしないと約束しよう。
 こちらこそ、今までの無礼な振る舞いはお詫び申し上げる。大変失礼した。」


「申し訳ございませんでした。
 正体を隠すためとはいえ、導師の前で重ねた非礼について、重々お詫び申し上げます。」

 
 

ティアの犯した罪を利用しようと思っていたルークだが、ここまで導師に言わせておいて受け入れないわけにはいかない。イオン個人には好意を抱いていることもあって、あっさりと諦める。罪人引渡しで今回の事件に関しては手を打つことを約束した。

被害者本人であり第三位王位継承者の宣言である。幾ら大臣らが煩く言っても、何とか穏便に処分できるだろう。・・元々教団との軋轢を恐れる人間が殆どだ。真っ当な政治感覚を持っている一部の者へは、教団に対する貸しになるといって言いくるめよう。今後の方針までざっと決めて謝罪を返す。ルークとレンも、導師に対して偽名を名乗るなど礼儀に反する行いをしたのだから、と改めて頭を下げた。

 


「やれやれ、イオン様。
 貴方はそんなにキムラスカに肩入れしたいのですか?」


「も~~イオン様ぁ!アタシ達はピオニー陛下の依頼をうけてるんですよぉ!」


「導師イオン!ルークなんかに頭を下げる必要はありません!!」

 


ひくり、と頬が引きつる三人。
ここまで物事を理解しない軍人が生息している事実に涙が出そうだ。


 

「まあ、イオン様には少し考えていただくとして、衛兵!ルークとレンを連れて行きなさい!!」

 


わからないことは見ないことにしたらしい。強引にルークとレンを拘束させるジェイド。イオンが止めようとするのを、ルークが視線で制した。声には出さず意図を伝える。了解したイオンが気配を収めた。イオンの答えも同じだからだ。



(いくらイザナ様の師匠がいらっしゃる国でも、これを庇うことは出来ませんね。
 ・・・ラクス殿の手腕に期待しましょうか。)



尊敬するマルクト帝国女公爵には申し訳ないが、イオンとしてもジェイドの犯した罪の数々を見逃す気はなかった。それよりも今最優先で考えるべきなのは、ダアトの人間がしでかした事の余波をどうやって穏便に収束させるかである。特にキムラスカへの借りは大きい。インゴベルト陛下とその側近はどうとでも出来るが、ダアトにも名をとどろかすキラ・ヤマト准将が本格的に動き始めたら厄介なことになる。

 
 

(以前お会いした時にはまだ身を潜めておくお積りのようでしたが、もう動き始めてもいい頃だ。)



導師になった後、公式行事のためキムラスカを訪問した際、警備の指揮を執っていた若い准将を思い出す。
彼の名はダアトでも有名だ。主に戦場での武勲に拠るが、一部ではヤマトの領地における政治手腕も評価されている。彼が王宮では余り重用されずにいるのは預言に重きを置かない所為だということで、詠士には余り良い印象を持つものがいないようだが、イオンはむしろ感嘆していた。あのキムラスカで、強く己の信念を掲げ続けるキラの行動は尊敬に値する。その有能さは折り紙付だ。己の被験者であり、兄でもあるイザナであっても勝てるかどうかわからない相手。勿論イザナが劣っているというわけではない。だが、キラを侮ればたちまち足元を掬われるだろう。



(・・・そして、ルーク殿も同じだ。
 今はまだ成長途中のようですが、数年後はわからない)

 
 

先程の態度といい、冷静な判断能力といいルークの言動は既に支配者のそれである。
きっと今のやり取りだって本気の数割も出していない。
イオンでは相手にならないかもしれない。



(・・・アッシュなど比べ物になりませんね。
 イザナ様が言っていたのはこのことですか)



イザナやカナードはイオンの師匠でもある。だが彼らの教育はスパルタで、基本的に知識は己の意思で得るものだという持論を実行している。質問には答えてくれるが聞かれないことは余り口に出さない。
流石に導師としての仕事で必要な情報を秘匿することはないが、知りたいことがあるならまず自力で調べろ、というのが基本方針だ。それは彼らが今遂行中の活動でも同じ事で、共有が不可欠な情報以外は自分の力で得なければならない。別に試されているわけではなく実戦修行ということだ。今の導師はイオンなのだから、その位は出来るようになれ、ということである。
 

そのイザナ達が、珍しくキムラスカのファブレ家子息の話題を振ったことがあった。
ヴァンが剣の師を務めていてとても慕われているという内容だったか。

その後アッシュに会って、あからさまなキムラスカの王族の特徴を持つ彼にまさか、と思っていたのだが・・ルークにあって疑惑が確信にかわった。


ルークとアッシュはどちらかがレプリカだ。あれ程の相似はレプリカ以外考えられない。そして作ったのはヴァン。
普通ならばアッシュがレプリカだと考えるべきだろうが、・・・レプリカはルークだろう。ファブレ家の子息が七年前に記憶喪失になったという話は有名だ。原因まではキムラスカの総力を挙げて隠し通したので知らなかったが、恐らくその時入れ替えられたのだ。

 
 

(・・・・とにかくイザナ様に連絡しなければ。)
 



「イオン様!どうなさいました?」


「イオン様~~?」



何時の間にやらジェイドが居ない。多分ルークらを監禁する場所を指示しにでもいったのだろう。
目の前の軍人二人をみて、疲労が限界に達するイオン。



(・・・・・あれ程はっきり罪人だと言ったのに、本気で理解していないとは・・・・)

 


ルークとレンを拘束したくせに、ティアを放置するとはどういう了見だろうか。


全てを投げ出して一人タルタロスから飛び降りてやろうか、とまで思うイオン。
とにかくこの世間一般の常識を全く解していない人間達から離れられるなら、その位してもいい気がしてくる。

 

 


(カナード・・イザナ様・・アリエッタ・・・・誰でも良いです。
 迎えに来てください・・・・この人たちの相手は、僕の手には余ります・・・)

 

 














「・・・・ルーク様、お怪我は?」

 

一応は王族と公爵令嬢ということで、監禁場所は普通の部屋だった。窓はないが調度も一通り揃っている。
普通に休む程度なら支障なく過ごせる。・・流石のジェイドもルークとレンを牢に入れるつもりは無かったらしい。
ルークと引き離されることも危惧したが、一緒の部屋に通されて安堵するレン。それ程乱暴に連れてこられたわけではないが、念の為ルークに怪我の有無を確認する。返すルークの表情が僅かに顰められる。まさか怪我をしていたのかと身を乗り出そうとしたのを視線で止めたルークが、憮然とした表情でレンの顔を見下ろす。


 

「ないよ、俺よりお前だろ。・・森で負った怪我を全部治しきってねぇな?」


「いいえ、大丈夫です。」


「嘘だな。・・・・左の二の腕と右ふくらはぎを見せろ。」

 


内心で狼狽するが、表情は変えずに即答する。なのにあっさりルークが返した。的確に傷が残る場所を言い当てられて視線が泳ぐ。

 


「ええと、かすり傷なので、動くのに支障がない箇所は取りあえず後でいいか、と思いまして、ただの打撲ですし、すぐ治るかと、・・その、」


「・・・・・レン?」

 


ルークが、ふと微笑む。・・・彼が本気で怒り出すときに浮かべる凄みを帯びた笑顔で。

 


「お・ま・え・は!いい加減にしろよ!いつもいつも他人の事にばっかりかまけやがって!!
 ちったぁ自分のことを優先しろと何度言わせる!!」


「はい!」

 


怒鳴られて身を縮める。ルークの怒りは心配の裏返しだ。
怒り自体への恐怖はないが、申し訳なくなる。守りたい相手に反対に気遣われるなど、情けないにも程がある。本当に守りたいなら、精神的な負担も含めて守るべきなのだ。ジェイドが傍にいる状況に警戒するため、間に合わせの処置で済ませたのだが、そういう行為は悟られたら意味がない。
 

そこまで考えてレンの心が竦みあがった。


優しいルークが、レンを気遣って戦闘から離そうとするかもしれない、という恐怖で、だ。

 



・・・・レンにとって、戦って誰かを守ることは己の存在意義に等しい。



----エヴァに乗らないなら、貴方はここで必要のない人間なのよ。


脳裏に浮かんだのは、”過去”の世界で、初めて父から呼び出された場所で突きつけられた自分の役割。特別な資質が必要な兵器に乗せる為だけに呼んだのだと、冷たく言い放たれた父の言葉。母の命日にしか顔を見ることも叶わなかった父に会えると思っていた自分を一顧だにせず、高みから下された命令。

迫り来る敵を倒さないと世界が滅ぶと言われた。
それが出来るのは貴方だけだと言われた。
だから、貴方をここに呼んだのだと、言われた。
それが出来ないなら、父が自分を呼ぶことは無かったのだと、言ったのだ。


レンは理解していなかったが、その言葉は「敵を倒して、世界を守るのなら、お前を必要としてやる」という脅迫でしかなかった。理解はしていなかったが、感じてはいたのだ。
だから、父の部下であったミサトが、躊躇う自分に言った言葉は、”碇シンジ”の、心に消えない傷となって刻み付けられた。そして、”碇シンジ”が人間ではないものに変化して生まれた”レン”の心にも刻まれたままだった。


----やっぱり”いらない子ども”でしかなかった自分を、誰かに必要としてもらうためには、戦って敵を倒さなければならないのだ、と。


それは殆ど本能的な恐怖。
なんとかルークの心配をなくさなければ、と慌てて口を開きかける。
それを見たルークが眉を顰めた。

 



「・・・おい?レン、お前大丈夫か。顔色が悪いぞ。」


「いえ、そんな事は・・・」


「そんな青い顔で何言ってやがる!とにかくそこのベッドで休め。今医者でも寄越して、」


「いえ!本当に何でもないですから!!」



扉の前にいるはずの見張りに声をかけようとするルークの腕に縋りつく。その必死さにますますルークが表情を曇らせる。



「お前、どうしたんだ?ちょっと落ち着け。・・・何が、怖い?」


「な、なにも、ありません。大丈夫、です。ですから、」



真っ直ぐ瞳を覗き込まれて狼狽する。
ルークは他人の本質を見抜く。隠されたものを見つけるのが上手い。
無闇にそれを指摘したりしない分別もある。
真実を指摘することが、時に誰かの心を傷つけると知っているからだ。


けれど、今は決して見逃してくれないだろう。
それはルークがレンを大事に思ってくれているからだとわかっている。

だけど、駄目だ。知られたら、ルークに嫌われるかもしれない。
ルークが知れば、シュザンヌやカイトやシンクやディストや、新しくできた優しい友人達が知ってしまう。
彼らに、嫌われてしまうかも、しれない。そう思うとますます恐怖に苛まれて身動きが取れない。


 

「レン、こっちをみろ。」



穏やかなルークの声が怖い。


・・・レンの心にのこった、醜い傷痕を、見抜かれてしまう。

 


(キラ、兄さん!)

 


この世界で唯一、レンの過去を知っているキラを呼ぶ。

 

 



ドガァン、と響き渡る轟音。部屋全体が揺れる。咄嗟に傍の家具に掴まってやり過ごす。
揺れが収まってから二人同時に天井を見上げた。


---これはこの艦の主砲が発射された音ではないのか?


ルークが即座に身を翻す。見張りの慌てた会話を聞いているようだ。レンも動揺を無理矢理治めて外を窺う。殺気だった複数の気配が近づく。広く散らばった気配が入り乱れて読み辛い。これは、----敵襲か。



「ルーク様!こちらに、」



「失礼いたします!マルクト国軍第三師団所属トニー二等兵であります!
 神託の盾騎士団が武装してこちらに向かっています。
 戦闘になるかもしれませんので、どうか御二方には避難して頂きたくお迎えにあがりました!」



いいかけたレンの言葉に被さるように、乱暴に開けられた扉からマルクト兵士の一人が叫ぶ。



「神託の盾騎士団?攻撃されているのか?」


「いえ、先程の砲撃はタルタロスのものです。威嚇の為に発射されたものかと、」


「こちらから攻撃したのか?!」



事態を確認するルークに、トニー二等兵がおろおろと答える。その返答に二人同時に顔を顰めた。



(ただ遭遇しただけで先制攻撃は拙い。神託の盾騎士団が動いているなら多分名目は導師の保護、或いは救出か。 ・・・真意が別でも先ずは意図を確認するべきだろーが。攻撃などしてしまったら、相手にも此方を攻撃する口実を与えてやったことになる)


(・・・・これで、神託の盾騎士団がこの艦を占領しても取りあえず言い訳は成り立ってしまう、騒動に乗じて何をされても、 不利なのはマルクトだ。・・先制攻撃がなかったら、武装して国境を侵した神託の盾騎士団を追求する隙もあったと思うけど・・・)


((何を考えている、ジェイド・カーティス!))



ルークと視線が合う。同じ事を考えているのだと知れる。
だがとにかく脱出はありがたい。どちらに転んでも、ここに残るメリットはもう無い。トニー二等兵に向き直ってルークが確認する。



「では、ありがたく退避させていただこう。貴殿について行けばよろしいか」


「は!こちらへ」



振り返ったルークがレンを安心させるように笑う。



「レン、行くぞ」

 


伸ばされた手を反射的にとる。手のひらから伝わる優しいぬくもりに、レンの心を凍らせていた恐怖が消える。



「・・・ありがとう、ございます」



うつむいたまま言ったレンの言葉に答えるように、強く手を握り締めたルークが歩き出す。
その優しさに甘える罪悪感を抱きながら、レンも続いた。


・・・いつかは話す日が来るかもしれないけれど、もう少しこのままでいたかった。


(キラ兄さん・・・・・・・XXア姉さま・・・・)



無意識に、今の家族の名前を呟く。
キラと、もう一人、心に浮かんだ誰かの残像には気づけない。
それでも、縋るように思い浮かべた人たちの姿が、レンの心を宥めてくれた。


(・・・もう少しだけ、皆と一緒に、)



強く目を閉じて、思考を切り替える。まずは、ルークを無事に脱出させなければ。

 


「・・・落ち着いた、か。」


「?すみませんルーク様、今何か・・」


「いや、行くか。早く帰ろうぜ。」


「はい!」



ぽつり、と呟くルークの言葉を聞き逃す。訊ねたレンのあどけない表情に、苦笑したルークがいつもと同じようにレンの頭をかき混ぜながら言った。それに今度こそ安心して元気良く返事を返す。二人で、マルクトの軍服を追ってタルタロスの通路を走る。
 

ルークの悔しげな表情には気づけなかった。

 










 

 

--その頃のマルクト王宮

 

「陛下!!」

 

ひとまず緊急に交代を決定した新しい和平の使者を送り出して、僅かに安堵していたマルクト王宮の謁見の間に、珍しく慌てた様子のラクスが駆け込んだ。駆け込むといっても動作は相変わらず洗練された優雅なものだったが、その表情が強張っている。その姿に、また何か問題が起きたのかと一同に緊張が走る。



「陛下、ジェイド・カーティスに、導師イオンへの和平の仲介を依頼するように指示を出された、というのは本当ですか。」


「あ、ああ。導師が動いてくだされば、多少なりともキムラスカの心象がよくなるかと思ってそう命じたが」


「・・その依頼の仕方について、なにか指示を与えましたか?」


「いや、ジェイドに一任していたが・・・なにか、やったの、か?」

 


先日の恐怖再び。
ラクスの迫力にしり込みする重鎮一同。聞きたくないが、聞かねばならない。

 


「・・・今、ローレライ教団詠士トリトハイムから、抗議文が届きました。
・・・要約しますと、ジェイド・カーティスは、あろう事か導師イオンへの依頼の際、正式な手順も踏まずにマルクト皇帝の名代としての立場を振りかざして謁見をねじ込んだ挙句・・・仲介の依頼を半ば無理矢理受け入れさせて、守護役一人を付けたのみで導師イオンを、連れ出した、と・・・!!これは誘拐されたに等しい、マルクトはダアトに何か含むところがあるのか、と・・・!!」


「「「「「「・・・・・!!!!!」」」」」



声にならない悲鳴。顔色が一瞬で青ざめる。
しかも、ラクスの言葉は終わりではなかった。


 

「さらに、エンゲーブから緊急の連絡が届きました。
 ・・・なんでも、カーティス大佐が乗艦しているタルタロスが、漆黒の翼という盗賊を追うために街道を走りまわっていたと。その盗賊が逃走手段として、ローテルロー橋を爆破したと。」


「「「「「・・・・・・!!!????」」」」



重鎮一同が凍りつく。
そんな重要な報告は来ていない!輸出入含む国交の要であるローテルロー橋が、破壊された?!しかも原因はタルタロスで盗賊を追ったからだと?なぜ勅命で動いているはずの軍人が寄り道などしている?!盗賊を放っておけないならば付近の軍部に連絡して対処を任せればいいだけだろう。タルタロスなどで街道を走ったなどと、その追走劇に巻き込まれた者がいたとしたら、被害者にどう詫びればいいというのだ。

しかもローテルロー橋は決められていた筈の移動経路の一つだ。もし通行が不可になったというなら、真っ先に報告をして指示を仰ぐ必要があったはずだ。皇帝名代の移動経路を、勝手に変更などしていいわけがないのだから。しかし連絡は、なかった。つまり、勝手に経路を変更している、ということか。


・・そこで、ジェイドから、出発してから今日まで、ただの一度も報告が無い現状に思い至ってピオニーは呻いた。
もしかしなくとも、定時報告も、入ってなかった、か。本気でジェイドに名代などを任せた己の愚かさに舌を噛み切りたくなったピオニー。


ラクスの報告は続く。



「さらに、」


「「「「「・・・・(まだあるのか!!!!!?????)」」」」」


「先日、キムラスカから、誘拐されたファブレ公爵家ご子息と、ヤマト公爵家ご令嬢の保護依頼が届いておりましたわね。」


「あ、ああ」


「・・その誘拐とは、擬似超振動によるものだったという報告も」


「・・ああ」



段々と声が低くなるラクス。ピオニーの顔色もどんどん悪くなっていく。

 


「・・・・その擬似超振動の収束先がタタル渓谷付近であるという報告、も」


「・・・・ああ、だから全軍、特にあの一帯には直ぐに公爵子息殿と令嬢を保護するように勅命、を」


「・・・・・・エンゲーブからの報告、で。・・・・・・・・年のころは16,7位の、育ちの良さそうな少年と少女、が、タルタロスの兵士に、槍を突きつけられて、連行されている姿をみた、という報告、が、ございましたわ・・・!!!」


「・・・・・・・・本当、か。」
 

「・・・・・・・・・・・ええ、事実、です。」

 


呻くように問い返すピオニーにラクスが答える。

 


「そう、か・・・・はは、はははははは、」


「ほ、ほほほほほほ・・・・・・」



乾いた笑いが響く。臣下一同の口からも引きつった笑いが漏れた。
・・・笑うしかない状況とは、こういうときに使うのだなぁ、と実感する。全く、嬉しくない。



「陛下?」


「なんだ?」



にっこり、と微笑むラクス。答えるピオニーも満面の笑みだ。何かが突き抜けてしまったらしい。

 


「よろしいですわね?」


「ああ、任せた」


「任されました。では、失礼いたします」



主語無く会話する二人。周りも同意するように深く肯く。
颯爽と立ち去るラクスの背中に揃って深く頭を下げる。・・・もう彼女に任せるしかない。



「・・・・・・・勘弁しろよジェイド。」



最後に呻いたピオニーの独白だけが、謁見の間に響いた。

 

 

 

 

 

 


さらにその頃のキラ・ヤマト率いる捜索隊一行

 

ドッカーン、と景気のいい爆音を響かせて、キムラスカの某所が吹っ飛んだ。進路に立ち塞がっていた魔物たちを一掃する為に放たれたキラの譜術だ。キラは自ら隊の先頭にたって、次々と邪魔者をなぎ払っている。予め街道には一時的な通行規制を敷いているので一般人が巻き込まれる心配はない。しかしそのテンションの高さに、隊員一同は顔を引きつらせている。それでも止めないのは、彼らも捜索対象である二人を心配しているからだ。


 

「キラ、様~~少し、スピードを、出しすぎ、じゃ」



が、限界というものはある。隊の後方に脱落寸前の者がいるのをみたキラの副官が恐る恐る進言してみた。・・・・言わなきゃよかった、と心から悔いる。後からするから後悔とはよく言ったものである。


 

「・・・何か言ったかな。ルーク様と、僕の、可愛い妹、が、待っているんだよ?
 あれからもう何日たったと思う?ルーク様とレンが、見知らぬ土地で心細い思いをしているかもしれないっていうのに、何?スピードを落とせ、って言ったのかな?」


 

辛うじて残る理性でルークの名を先に出しているが、キラの心配がどちらに傾いているか察するのは容易い。「僕の妹」の下りで放たれた譜術が街道の一部を抉った。辛うじて加減されていた筈の譜術が桁外れの威力で魔物を消し去る。脱落しそうになっていた隊員が顔を青ざめさせて必死に持ち直している。・・・ここで遅れたら後々キラの怒りに触れるかもしれないと思って発揮された火事場のなんとやらだ。


 

「いえ!なんでもありません!!
 さあ、急ぎましょう!ルーク様とレン様がお待ちです!!」


「ふふふふふ、そうだよね!・・じゃあ、もうちょっと本気出してみようか!」


「「「「「・・・・・!!!!!」」」」」



輝く笑顔で言い放ったキラの言葉に、一同が声のない絶叫を放った。そんな彼らを尻目に、ぐんぐんスピードを上げるキラ。馬の方も既に瀕死だ。しかし足を止めたときの恐怖を思えば、死んだと思って力を振り絞ったほうがましである。
 

こうして、捜索隊一行は必死の形相で今日もキムラスカの街道を駆け抜けた。


・・・・合掌。





 

 

 

 

 






 

 

 

 

 

 

 



 






 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

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