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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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この作品は、エヴァ×アビス基本+seed(キラ・ラクス・クルーゼ・カナード他)、ぼかろ(カイト・ミク・メイコ)設定がクロスする混沌クロス作品です。

・碇レンver

・今更ではありますが、時系列及び預言の在り方等諸々について、夥しい捏造が入ります。
 特に創世歴時代の出来事や人物間の血縁関係や交友関係等は、公式設定とは全くの別物だと考えてください。

本来お亡くなりになる方が生存してたり、マルクト・キムラスカ・ダアトへの批判・糾弾や、PTメンバーへの批判・糾弾・断罪表現が入ったりします



CP予定:
・・・キラ×ラクス(seed)
・・・カイト×ミク(ボカロ)
・・・クルーゼ(seed)×セシル(アビス)
・・・被験者イオン×アリエッタ(アビス)
・・・フリングス(アビス)×レン(碇レン)

です。上記設定がお好みにそぐわない、という方はお読みにならないようにお願いいたします。






 

 

少し戻って、一路タルタロスを目指す神託の盾騎士団の幹部連中は、空の上で激論を交していた。議題は勿論、タルタロス制圧の手段について、である。

 
 

「---ええい!まだるっこしい!相手は導師を誘拐した連中だろう!
 纏めて始末してしまった方が手間がかからん!」



現導師がレプリカであると知っているが故に、普段敬意など払いもせずに慇懃無礼に振舞っているはずのリグレットが言い放った。他の団員に聞かれる可能性を考えての建前だろうが、それがまるで導師を傷つけたものへの怒りを燃やす忠臣に見えるようで兵士らが尊敬の視線を向ける。苦々しく表情を歪めて抑えにかかるカナードは既に繰り返され続ける論争に疲れきって口調が崩れてきている。

 
 

「リグレット師団長、導師が誘拐されたという証拠はありません。仮に誘拐されていても、タルタロスの兵を皆殺しはやりすぎです。」


「だが、それではマルクトに見縊られはしないか」



横からラルゴも口を挟む。そちらにも顔を向けてカナードが根気良く続けた。



「ラルゴ師団長も、お二人はそれ程マルクトとの戦争をお望みか。
 例え導師が無事にお戻りになっても、その為に戦が起きることになったらさぞ悲しまれるだろう。」


「ぐだぐだうっせぇな、大人しく投降しねぇなら全員潰すだけだろうが!」



苛立たしげに吐き捨てたアッシュに、カナードが言い聞かせる。



「では、アッシュ師団長。投降した兵士はくれぐれも殺したりなさいませんようにお願い申し上げる。 ・・・・・これ以上各国との関係が拗れても、後々面倒が増えるだけですから。グランツ謡将がキムラスカに拘束されている以上、マルクトまで敵に回すのは得策ではありません。理解していただけますね?」


「「「・・・・・了解」」」



やっと、言質をとることに成功する。ヴァンが今現在キムラスカで罪人として囚われている以上、確かにマルクトと悶着を起こす余裕はない。そう考えるに至ったリグレットが苦々しげに承諾し、ラルゴも矛先を収める。
アッシュは舌打ちして眉間に皺を寄せるが、それ以上の反論はしなかった。かなりしぶしぶでも、一度言ったからには努力くらいはするだろう。プライドだけは高いから、簡単に前言を撤回することはない、と思いたい。

 
 

(取りあえず、全員殺したりしなきゃ、交渉は可能なはずだ。・・・イオンを誘拐紛いに連れ出したのは事実だからな)

 


目的地に着く前に疲れているカナード。後はもうイオンとイザナに任せようと思考を放棄する。移動の為にお友達を貸した後、捏造した任務で誤魔化してイザナに報告に戻ったアリエッタが羨ましい。

 
 

(イオン、イザナ。後はよろしく。俺は肉体労働専門だからな)

 


嘆息したカナードの眼下にタルタロスの影が見え始める。
一斉に降下する兵士。 

戦場はすぐそこだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


同時刻、草原を失踪する青い影が叫んだ。

 


「あ、あれがそうか!待っててくださいね、マスター!」

 

譜業人形としての能力を駆使して不眠不休で駆け抜けたカイトである。ある程度の距離に近づけばマスターの気配を感知することが可能な彼は、一路タタル渓谷を目指していたのを、急激に方向転換した。何故か途中でマスターの気配が大幅な移動を始めたからだ。物凄く嫌な予感がしてさらに走るスピードを上げる。結局キラに合流できなかった為預かった資料を持ったままだが仕方ない。ルーク達を保護した後、帰路につけば直ぐに会えるだろう。それよりも、マスターの気配を感じるのが、よりによってマルクトの戦艦の中から、といのはどういうことだろうと思いつつ遥かな距離を隔てて遠くに見える影に向かう。普通の人間なら、未だに点すら見えない距離だ。流石のカイトもあと数時間は必要だろうか。ともかく必死に駆け抜ける。


合流地点まで、後・・・

 

 

 

 

 

 

 ここにも、魔物につかまって空を飛ぶ男が一人。
・・・ファブレの使用人、ガイ・セシルである。

本来一介の下男如きが、大事な公爵家嫡男の捜索などに加えられるはずがない。だが、ルークの悩みを知っていたシュザンヌが、密かにガイを向かわせたのだ。

・・・もしも、ルークを見つけ出し、共に帰国するまでの間にルークがガイに真実を話すと決意できたなら良し。矢張り信用しきれない、というならばすっぱりと斬り捨てるつもりで与えた最後の機会である。たった一人で向かわせたガイが、恐らくヴァンから提供されている情報や移動手段を利用することは、この場合に限り目をつぶることにしたシュザンヌ。そんな裏事情などしらないガイは、複雑な心境でルークの元に向かっていた。



(ルーク・・・・。)



最初は、ファブレ公爵によって滅ばされたガルディオス一族の復讐のために使用人として潜り込んだのだ。ホド戦争の際、ファブレ公爵率いるキムラスカ軍によって無惨に殺された姉や使用人たち。その無念を晴らすために、ガイを連れて逃げてくれたペールギュント・・ペールと名乗って庭師をしているガルディオスの騎士と共に機会を窺っていた。いつか、己の一族と同じようにファブレを滅ぼすことを誓って。ルークに近づいたのもその為だった。

姉を母を殺された自分と同じ思いを公爵に味合わせてやろう、と公爵子息の傍付きになった。昔のルークは良くも悪くも典型的な貴族の子息で、憎悪と殺意が消える日はなかった。日々何時果たしてやろうかと考える日々だった。


・・・それが変化したのは、ルークが一度誘拐されて戻ってからだ。


帰ってきたルークは”ルーク”ではなかった。小憎たらしい尊大さで日々ガイの憎悪を煽る公爵子息は、まるで生まれたての赤ん坊のようになっていた。言葉もわからず、歩くこともできず、なにも知らない。ただ感情のままに、笑い、泣き、怒って、ガイを振回す。身体は10歳の少年のものでありながら、癇癪をおこして手加減なしに暴れるルークを抑えるために全身にあざを作ったこともある。

けれどそんなルークへの感情は、その場では腹が立つことがあっても、それは憎しみとは別のものだったのだ。ガイは、ルークの面倒を見るうちに己の憎悪が少しずつ薄くなっていくことに気づいていた。必死に否定しようとしたが、ルークと向かい合う時に浮かぶのは、ただ彼の面倒を見るための思考ばかりで、復讐など思い出しもしなかった。認めたくなくても、きっとガイは、今のルークが好きなのだ。けれど、復讐を捨てる決意は出来なかった。
 

だからガイはルークを見ると複雑な気持ちになる。
カイトという名の人形が、ガイの変わりにルークの従者になってからは尚更に。
たった半年強の間面倒を見ただけなのに、未だにルークに刃を振り下ろしきれない自分がいる。ルークも、一線を引くような態度をとりながら、気まぐれのように普通に話すことを許したりすることもある。その真意はわからない。けれど悪意はない。もしかしたら好意かも知れない。その位曖昧な、関係。


(だけど、もう決着をつけなきゃな・・・)


それが、ルークの葛藤と同じであるとは知らないガイは、まっすぐルークの元へと向かっていた。


決断をしなければならない。・・お互いに。

 



 


そして、タルタロスの中。
 

ティアは苛立っていた。
ルークとレンが拘束されて連れて行かれたあと、ティアはイオンの傍に残った。流石に監禁は可愛そうかとも
思ったが、ルークの我侭には辟易していたのでいい薬かと思って放って置いた。まさか殺されたりはしないだろうから、後で大佐に相談すればいい。そう思って、取りあえず導師をお守りできれば、と考えたのだ。


まさかその後タルタロスが襲撃されるとは思っても見なかった。
突然戦場に放り出された恐怖。周りに充満する殺気と血の匂い。

それでも必死に戦っていたティアの前に再びルークとレンが現れた。どうやら親切な兵士が、監禁されたままでは危険だからと避難させる途中だったらしい。正直イオン様を守る戦力が一人でも多く欲しかったのだ。何しろ、先程遭遇した六神将黒獅子ラルゴを撃退する最中に、親書を隠すためにアニスが離脱してしまった。だから安心したのだ。
なのにルークからはまた不遜で傲慢な台詞が帰ってきた。こんな非常時になっても、我侭な振る舞いを続けるつもりなのだろうか。これだから甘やかされた貴族の子どもなんて、と思いつつ諭す。少し口調が荒くなってしまったが、その位は多めに見て欲しい。
 

・・・ティアは、自分が正しいと信じていた。だから堂々と言い放つ。
 彼女にとっての”正しい知識”をルークに与えた。


戦場で死にたくないなら、自ら刃を持って戦うべきなのだと。
それが出来ないなら殺されても文句は言えない。
殺したくないなどと、甘えるのもいい加減にしろ、と。


そう説得したティアに、返ってきたのは、正しいことを教えてあげた感謝ではなく、馬鹿にするかのような侮蔑の視線。まだマシだと思っていたレンも、ルークを戦わせないなどと言い出し、それに導師イオンすら同意する始末。何故、ルークをここまで甘やかす人間が集まるのだと、怒りが募る。カーティス大佐はきちんとわかってくれるのに。
 

・・・・・どこまでも己の正当性を疑わないティアと、ルーク達の意見が相容れる日が来る可能性は今のところゼロに等しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

折角親切なトニー二等兵のお陰で、ストレスの原因から解放されるかと思って意気揚々と通路を走っていたルークは、己の境遇に涙した。今日の自分の運勢は間違いなく大凶だと確信する日なんて、一生訪れなくても良かったのに。
 

・・・なぜ、ここでまたこいつらと再会するのだろうか。


取りあえず脱出を優先しようと、レンへの心配や、自分では彼女の支えにはなり切れない悔しさを押し込めて気持ちを無理矢理でも浮上させたはずなのに。



(ああ、俺は、確かに呪われている)



遥か遠くに視線を合わせるルークに、労わりを向けてくれるレンとイオンの存在だけが、心の癒しであった。

 

 

 

「よかった!ルーク、レンも。無事だったのね。」


「おや、トニ-二等兵、二人を避難させていたのですか。ご苦労様です。」


「は!」



ジェイドも取りあえず部下を労う。襲撃中の艦の中で部屋に閉じ込めておく危険性を考えれば、監禁を解いたのは正解だと思ったのだろう。そこまでは良い。普通の再会の挨拶だ。・・が、その後の話の流れがよろしくなかった。


 

「ああ、二人とも無事でよかった。それで、



イオンが安心したようにルークとレンに笑いかけた瞬間、ティアが堂々と言い放った。曰く



「ルーク!調度いいわ、今神託の盾騎士団にタルタロスが襲撃されているのよ。貴方もイオン様をお守りして頂戴」


「「「・・・・・」」」


「え?・・」


「ああ、そうですね。前衛が足りないところだったのですよ。調度いい。」


「「「・・・」」」


「た、大佐?」



トニー二等兵が戸惑っている。そりゃそうだ。監禁は、まあ普通の部屋だったし、他国の人間に軍事機密を見せるわけには行かないとかいわれれば二等兵如きに反論の余地はない。元々下級兵士は上司の命令に逆らう、という思考を持たないように教育されるものだ。だからトニー二等兵も、ルークとレンを部屋に閉じ込める事に関しては、命令だから、と完結させていたのだろう。だが、二人が王族と公爵令嬢だと知らされている彼が、戦闘に参加させる、という話を聞いて戸惑わないほうがおかしい。・・・目の前に、そのおかしな人間が二人も存在する現実があったりするが。



「あ~取りあえず。トニー二等兵、ここまでの案内感謝する。ありがとう」


「ありがとうございます。お陰で閉じ込められたままにされずに済みました。」


「ああ、貴方は持ち場に戻って良いですよ」



お礼をいって笑うルークとレンに、敬礼を返したトニー二等兵。横から、ジェイドも指示をだした。戸惑うトニー二等兵をこんな非常識軍団の中に残すのもかわいそうなのでルークが促してやる。



「私達の心配は要らない。ここには導師もいらっしゃるからな。」


「そう、です。貴方はどうぞいってください。」



ルークの意図を察したイオンも口を挟む。そこで、やっと安心したのかトニー二等兵が敬礼して去っていった。



「は!お気遣いありがとうございます。では、自分は任務に戻らせていただきます!」

 



その背中を見送ったルークとイオンが一瞬視線を交した。その中に互いの苦労を見て取って無言で労う二人。レンがそっと二人の肩を撫でてくれる温もりに癒しを見出して気合を入れなおす。静かにしろ、というルークの命令に従って道具袋の中で丸くなっていたミュウをレンの頭に乗せる。せめて癒しアイテムを少しでも増やしたかったルークの抵抗だ。小動物と可愛い妹のようなの幼馴染。大抵のことなら乗り切れる筈の最強アイテムの効果も薄まるような、手ごわい敵に立ち向かった。


 

「・・・で、お前達は、俺とレンを戦闘要員に数えているわけだが、それがどういうことかわかっていて口にしてるんだろうな?」


「何を言ってるの。ここは今戦場なのよ。
 殺らなければ、殺られるだけ。いい加減覚悟を決めて頂戴。」


「そうですね、それに私達がこのまま先に進まなければ、戦争が起きて今度は子どもや老人のような戦えない人たちがたくさん死ぬことになるのです。」


「普通に暮らしてたって、盗賊や魔物に襲われて死ぬこともある。自分の命を守るために、皆武器を持ったり傭兵を雇ったりして 安全を確保する努力をしているの。戦える力があるのなら、子どもでも戦うことがあるわ。そうしなければ生きていけないから。」


 

口々にいう。
一見厳しい現実を子どもに教える大人のような態度。だが、ルークがいいたいことは全く理解していない。イオンとレンが諦念を込めて2人を眺めた。ルークは根気強く続けてみる。


 

「・・俺は王族、レンは公爵家の姫君だ。
それを前衛にして、軍人のお前らが後衛になることに、疑問を感じないのかと聞いてるんだ。」


「何度も言わせないで、私は譜術とナイフが専門だし、大佐だって本職は譜術士なのよ。我侭ばかり言わないで聞き分けて頂戴。」
 

「やれやれ、そんなに戦うのが怖いんですか?さすがお坊ちゃま。」

 


どこまでもルークを格下扱いする本職軍人が二人。内1人が自分の部下である事実に視界が歪むイオン。傍らのレンが背中に添えてくれた手のひらと、肩の上で必死に頬を撫でてくれるミュウがいなければ本当に泣いていた気がする。



「・・・すみません、私はルーク様を戦闘に出すつもりはありません。
 勿論私も、ルーク様とイオン様のお二方しか守りません。
 貴方方は、軍人でしょう?自分のみは、自分で守ってください。」



そこでレンが言い切った。積もり積もった彼らの勝手な言い分に、いい加減我慢の限界が来ていたのか、普段と比べて厳しい口調で告げる。まさか大人しいレンが反論するとは思ってなかったらしい2人が一瞬呆気に取られる。それを恥じるように視線を尖らせて、今度はレンに矛先を移す。



「貴方ね、ルークを甘やかすのはやめて頂戴。だからこんなに我侭なことばかり言うのよ?」


「やれやれ、お姫様は余程お坊ちゃまが大切なんですねぇ?
 ですが、そういうお飯事はお家でやってくれませんか。」

 


反論しようとしたレンを制して、今度はイオンが言ってみる。


 

「いい加減になさい。ティア。ジェイドもですよ。
 本来王族も貴族も守られて当然の立場です。戦いは貴方方軍人の仕事でしょう?
 それなのに、レン殿は貴方達の負担を減らすために自衛だけで良いと言ってくれてるんですよ。感謝こそすれ、罵倒する権利などありません。むしろ職務をまっとうできない力不足を恥じなさい。」



しかし厳しい口調のイオンにも表情を変えない2人。


・・・・本気で面倒くさい。なんでここまで言ってもわからないんだろうか。



(なあ、レン。・・・今度こそ、こいつら始末して構わないんじゃないか?)


(あ~~~と、流石に、フォローはし辛いんですけど・・
 ・・カーティス大佐は、一応和平の使者ですし。始末は拙いんじゃないでしょうか・・)


(僕は構わないと思います。
 何なら導師として証言します。むしろさせて下さい)



小声で囁くルークに、レンが制止をかけた。が、そこにイオンまで加わる。しかも積極的に非常識人の始末を推奨している。誘惑に負けそうになる。むしろ負けてしまいたいルーク。


そこで、更なる頭痛の種が降ってきた。



「アイシクルレイン!!」


「---!失礼いたします!!お二人とも、お下がりください!」

 


頭上から氷の矢が降り注ぐ。ティアが直撃を受けて気を失う。避けはしたがジェイドが余波を受けて顔を歪める。いち早く気づいたレンが、素早くルークとイオンを引っ張って攻撃をかわす。勿論二人に結界を張ることも忘れない。


 

「戦うのが怖いなら剣なんざ捨てちまいな!!」

 


次いで、罵声と共に人影が降ってきた。ティアとジェイドの状態を横目で確認しつつ、その人物にナイフを構えるレン。ティアが倒れているのは気になるが、取りあえずジェイドが横にいるので大丈夫だろうと前方に集中する。


そこで、ルークとレンが目を見開いた。



((なんで、ここに?!))



立ち塞がったのは、鮮血のような鮮やかな紅い髪の男。---六神将鮮血のアッシュ。ルークの被験者だ。
確か陛下とファブレ公爵の命令でダアトに籍を置かせておように命じられたとは聞いていたが、シュザンヌが秘密裏に連絡をとって、ルークが影武者を務めることとアッシュがダアトに残らなければならない理由は説明したと聞いていた。流石にキラ達の計画は話せなかったが、取りあえず預言から身を守るために立場を偽る事に関しては了解してる、と言っていたはずだが

・・・・アッシュの表情を改めて見つめたルークとレンは首を傾げた。


アッシュは、ぎらぎらと憎しみを込めた目でルークを睨んでいる。
先程の譜術にも確かな殺気が篭っていた。

元々アッシュはレプリカを蔑視していて、ルークのことも嫌っているとは聞いていた。仕方ないとはいえ、自分の振りをしているルークへ与えられている高い評価が気に入らないらしい、と。

しかし、何故こんなに憎しみを向けるのだろう。



(ルーク様、ええと、お心当たり、は?)


(いや、ない、と思うが。
 ・・・母上から、最低限の説明は受けているはずだが。)


(では、ええと、)


(レプリカ、が純粋に嫌いなんじゃねぇか?
 いつもいつも俺への罵倒を繰り返して、自分の居場所にいるのが気にいらんとか言ってるらしいし。これはシンクからの情報だが。)
 

(それは、・・・八つ当たり、では?)


(だな、さすが自ら亡命しただけはある。恥を知らんらしい)


(あの・・・怒ってらっしゃいます、か?)


(はは、・・・・わからないか?)

 


ふ、と嘲笑を浮かべたルークが声を大きくして言い放った。

 


「これはこれは、高名な六神将の一人、鮮血のアッシュ殿。
 随分物騒なご挨拶ですね?
 こちらには導師もいらっしゃるというのに、行き成り攻撃譜術で奇襲、ですか。」


「うるせぇよ!気安く話しかけんじゃねぇ!
 ・・・導師をこちらに渡して貰おうか」

 


荒んだ口調で怒鳴りつけるアッシュ。レンとイオンが眉を顰める。
・・・柄が悪い。本当にルークの被験者なのだろうか?

 


「お断りします。」

 


ルークの前に進み出て静かに宣言したレンに剣を突きつけるアッシュ。
それを見たルークの気配が鋭さを増した。イオンも音叉を構える。ミュウがルークの肩に移動して大きく息を吸い込んだ。其々が攻撃に備える中、一応こちら陣営の軍人が空気のまま突っ立っているが、邪魔しなければ良いと放置する。



「は!女になんか守られやがって、これだから・・・
 誘拐された導師を取り戻しに来ただけだ。さっさと寄越しやがれ!」


「信用できない相手に、導師を預けることは出来ない、と申しております。」

 


激昂するアッシュに答えるレン。
眉間の皺を深くするアッシュが苛立たしげに舌打ちする。

 


「ぐだぐだとうっせぇな!導師!こっちに来い!」


「・・アッシュ!!貴方たちは何を考えているんです!僕は誘拐などされていません!
 すぐに攻撃をやめて引きなさい!」



導師にも怒鳴りつけるアッシュ。レンとルークの眉間に皺がよる。軍人でありながら、上司にむかって命令口調。ヴァンが傍に置いたまま、ということはイオンがレプリカだと知っているのだろうとは思うが、そこまで己の立場を理解しない言動を繰り返すとは。・・・よもやまさか、ヴァンに本気で協力している、のか?


 

(キラの計画を知らんのなら、完全な仲間ではないと思ってはいたが・・・今でもヴァンに従ってる、わけじゃねぇ、よな?)


(ええと、ヴァンについているのは、振り、だと、思ってたん、だけど・・・本気、なの?)

 


不安が増すのを抑えられないルークとレン。イオンも厳しい表情を崩さない。

 


「これは、導師としての命令です。今すぐ神託の盾騎士団を引かせなさい。
 聞けぬというなら、貴方方を---」

 

「導師イオン!!」

 


ガゥン、と銃声が響いた。


最後通告、とばかりに宣言しようとしたイオンを遮るように発砲したのは、アッシュが先程飛び降りた階の一つ上に隠れていた女性。六神将の一人、第4師団長、魔弾のリグレットだ。その場にいる全員の視線が、発生源であるリグレットに集中する。次いで弾痕を確認したレンが眉を寄せた。・・・ティアの間近に小さな穴が穿たれている。あの距離で、この精度。次にルークかイオンを狙われたら両方は庇いきれないかもしれない。優先するのはルークだが・・アッシュに気をとられて接近を許した己の失態に顔を歪めた。
 

そこでリグレットが声を張り上げる。



「動かないで貰おうか!次は当てる。・・・アッシュ!導師を連れて行け!」


「ちっ、おせぇぞリグレット!・・・導師、来てもらおうか」


「お断りしま--- ガゥン! 「動くな。」

 


それでもイオンを庇おうとしたレンの頬を銃弾が掠めた。速い。あの距離で間近にアッシュがいる状況で二人纏めて倒すのは、無理、か。レンが何とか隙を見つけようとするが、難しい。緊張したままルークを庇い続けるレンの頬から血が流れる。

それを目にしたルークがリグレットを射殺さんばかりに睨む。イオンが眉間に皺を寄せて身じろいだ。ジェイドは無表情で状況を眺める。ティアは倒れたままだ。・・・手詰まり、か。


 

「お前達には牢に入っていてもらおう。アッシュ、導師を。
 そいつらを捕らえろ!」


「やめなさい!!」

 


集まってきた神託の盾騎士団兵の気配は感じていたが、身動きが取れないまま囲まれる。

リグレットの銃口を警戒してルークの前を動けないレン。イオンが制止するが、聞くものは居ない。ルークも、アッシュを牽制しつつリグレットの銃撃を避けきるのは無理だと悟る。幾ら直前まで始末を検討していたとしても、気絶しているティアを見捨てるのは気が咎める。ジェイドと連携をとる事も考えたが、この至近距離で作戦会議は出来ない。ルークが仕方ないとばかりにレンを抑えて拘束を受け入れる。アッシュに引っ張られながら振り返ろうとするイオンには、心配いらない、と首を振るルーク。しぶしぶ歩き去るイオンを見送る。

ティアを担ぎ上げられて、一行は牢へと連行されるしかなかった。

 






 

 

 

 

 

「ラクス様!発見しました。タルタロスです。
  どうやら神託の盾騎士団と交戦中のようですが、如何なさいますか。」


「・・・すでに戦闘が始まっているのですね?
 ・・・では、艦を隠せる距離を置いて待機。通信を試みて下さい。」


「は!」



艦橋に座ったラクスが難しい表情でモニターを睨む。此処は、クライン家の施設研究所で開発した陸上装甲艦エターナルの中である。とにかく先ずはジェイド・カーティスを確保して事態を少しでも穏便に片付けようと急いでいたのだが・・・


 

「神託の盾騎士団、ということは、導師誘拐の件でしょうね。
 ・・・使者の一行はいまどちらに?」


「は!使節団の方々に連絡がつきました。
 すでにこちらに向かってくださっているそうです!一時間以内にはお着きになるかと」


「それは陛下のご命令ですか」


「は!カーティス大佐との一刻も早い交代を、と仰られまして、」


「わかりました。では、タルタロスにいらっしゃる筈の導師及びキムラスカのお二人の保護を最優先に」


「了解しました!失礼いたします!」



足早に去る兵士の後ろを見送って前方に視線を戻す。



(・・・神託の盾騎士団がぶつかる前に確保するつもりでしたが・・・イザナに笑われそうですね)



年下の友人の皮肉気な笑みを思い浮かべて、大きな溜息を落とす。



(まったく・・・)



マルクトで最も苦労人な女公爵の憂鬱は、まだまだ続いていた。

 

 

 

 

 


「う、う~~ん・・・・ここ、は?」


「目が覚めましたか」


小さく呻いたティアが瞼を開く。近くに座っていたレンが覗き込んだ。



「ここはタルタロスの牢の一つだ。
 お前が気絶してる間に神託の盾騎士団に捕まって監禁中」


「そう、そうだったわ。ごめんなさい、足を引っ張って」


「それは構わねぇよ。今更だ。・・・で、どうするつもりだ」



起き上がりながら、直前の記憶を思い起こしたらしいティアが謝罪する。
それには肩を竦めて答えたルークが、反対の壁に背を預けたジェイドに話を振った。

 


「そうですねぇ。・・・ところで貴方方は戦力に数えて良いんですね?」


「(・・こいつは本当によ・・・)あーはいはいはい、
 取りあえず外に出るまでは協力してやってもいい。」


「、お待ちく、」



変わらない薄笑いでルークとレンを見比べるジェイド。無駄な労力を使いたくないルークがお座なりな返事を返す。その答えに声を上げかけたレンの口を塞いでジェイドを見る。途端ティアが眉を吊り上げた。



「ルーク!貴方大佐にその態度は失礼よ!」


「うっせーなぁ。良いだろどうでも。協力はしてやるっつってんだからよ。」


(ルーク様!それは承服いたしかねます!)



口を押さえられて喋れないレンが視線で訴える。それには同じように視線で答えるルーク。此処まできたら後はどっちに転んでも同じことだ。再び論争を繰り返して体力を消費することはない。・・不満げな表情だが、いいたい事は伝わったらしいレンがしぶしぶと力を抜いた。それを確認して手を外するーく。


 

「・・・で、作戦は?」


「先ずは艦の動きを停めましょう。」



ルークに答えながら立ち上がったジェイドが近くの伝声管に顔を近づける。

 


「 死霊使いの名によって命じる。作戦名『躯狩り』始動せよ」



途端、タルタロスが大きな振動を立てて停まる。艦内の気配が慌しく乱れた。
静かに気配を探っていたレンがルークに肯く。それを確認したルークがジェイドに聞いた。



「で?」


「予め登録しておいた非常停止機構です。復旧には少々時間がかかる筈、この隙に逃げます。」


「凄い・・」



ティアが尊敬の眼差しでジェイドを見る。ジェイドの満更では無さそうに説明を続けた。



「これが働いている間は左舷昇降口しか開かなくなりますので、そこへ行きましょう。
 どうやらどこかへ連れて行かれたらしいイオン様もそろそろ戻るでしょうし、待ち伏せが出来ますね。」


「じゃあ、行くか」

 


すたすたとルークが牢を出る。その後ろにレンが続いた。その後姿を一瞬呆然と見送ってから、慌てて追いかけるティア。ジェイドが最後に残る。



「おい?早く出ろよ。導師イオンを助けて逃げるんだろ。」

 


無表情で眼鏡を押し上げたジェイドが牢を出た。
今まであらゆる意味で注目しか浴びたことの無かったジェイドに、ルークのスルー攻撃が意外なダメージを与えたらしい。その背中に、僅かな哀愁が漂っていた、とはレンとルークだけの面白おかしい秘密であった。

 

 

 

 

 

一方連れ去られたイオンは、創世暦時代の遺産である、古い扉の前に連れてこられていた。


「で?ご希望通り封印は解きましたが?何のために必要なんです?この先にはパッセージリングしかないはずでしょう。」


「うるせぇよ。言われたとおりにやれば良いんだよ。おら、帰るぞ。」



(本当に柄が悪いですねぇ・・・被験者よりレプリカが劣化するって、眉唾なんじゃないですか?)



アッシュの背中を見ながら内心で呟くイオン。ダアトの機密であるパッセージリングへの通路を振り返る。リングの状態を確認するために定期的にダアトの人間が入ることはあるが、それはまた数年後だったはず。



(・・・本当に、何でこんな事を?わざわざ急いで僕を連れてくる必要が・・・)



ヴァンはまだキムラスカに拘束中だ。
何を企んでいても、今は実行できないと、思うが・・・



(イザナ様にはすぐ伝えておくべきですね。・・・アリエッタは戻っているでしょうか。)

 

アッシュが待機していたリグレットにイオンを押し付ける会話を聞きながら呟いた。


・・・嫌な、予感がするのだ。

 

 

 

 

 


カナードは苛立たしげに髪を掻き毟る。言い出した人間が捕虜の面倒を見ろ、と言われてマルクト兵士の管理を押し付けられていたのだ。タルタロスからの先制攻撃で血を上らせた兵士達に、皆殺しだけはするなと抑えて回り、何とか生存する捕虜を集めて艦内の統制を取る。途中瀕死の傷を負って倒れるラルゴを発見して更に慌てる部下に激を飛ばす。真っ先にイオンの元へ行くつもりだったカナードが、疲労困憊しつつひと段落つけた時にはイオンの姿がなくなっていた。近くに居た兵に聞けばアッシュとリグレットが、どこかに連れて行って艦内にはいないという。思わず壁を殴りつけたカナードが、怯える兵士に更に詰め寄ろうとした瞬間タルタロスが急に停止した。

天井を見上げると照明も消えている。伝声管で確認すれば艦橋も混乱していて事情を把握している人間が居ない。



「あ~~~~~っとに、ふざけんな!」



動力が動いていないため開かなくなった扉を、力任せに蹴り開ける。



「くっそ、なんで俺がこんな、」



艦の外に出るために走るカナード。



「あんの鬚、全部終わったら毟らせやがれ!」



取りあえず苦労する破目になった原因その1への悪態を突きながら出口へ向かう。

・・・ここにも苦労人が一人。
詰め寄られていた兵士も思わず同情するほど哀愁漂う背中だったらしい。







 

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