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*本編前の過去編
*ナルトは出てきません。
*碇レンと二人の幼馴染(うちはイタチと惣流アスカ(♂))でスリーマンセル時代の日常風景
*シリアスほのぼの半々位
*三人とも自分の家に対して辛口です。
*時々木の葉にも辛辣です。
・・・・雨が、降っている。冷たい、雨が。
”過去”の世界で、幼少時お世話になった先生のお家。自慢気な子どもの声。
息子達には優しい奥さんの言葉。自分のいない場所で繰り返される忌々しげな繰言。
一度も振りかえらなかっった父の背中と真夏のホーム。
暗い帰り道、土手の影に見つけた自転車。
捨てられた自転車と、捨てられた自分。
その時も、雨が、降っていた。
一年中夏である日本では珍しく、酷く冷たい雨が。
「(雨、・・・あの時、拾いたかったのは、自転車、じゃなくて)」
夜の交番。暗い外に見えた傘の色を認識した時、自分は最初、何を考えたんだっけ。
「(今更、だなぁ。本当に、今、思い出すことでもないのに。)」
それでも、”あの時”呼ばれたことが嬉しかったのだ。本当に。
無人の改札と、無人の街の向こうに見たのが、怪獣映画さながらの、戦争風景だったとしても。
「(”父さん”と、父上は、違う人なのに、・・・似ているよ。本当に)」
例え、父が望んでいるのが、自分に移る母の面影だけでも構わなかったのだ。
「(少なくとも、今回忍になると決めたのは、自分の意思だもの。)」
・・・・本当に?
「だー!くっそ、んでこんな場所で雨なんか降りやがるか!」
「騒いでも仕方がないだろう。どう頑張っても人里まで間に合わない距離なんだ。」
「わかってるっての!・・・こんな場所じゃ天気が読めてもどうしようもねぇな。・・・なあ、・・おい?」
「へ?」
「どうしたんだよ。いつも以上にボケてるぜ?」
サバイバル訓練を兼ねた比較的遠方へのお使い任務の帰り道、里への近道にと普通の旅人は使用しない森の中で降られた雨に足止めを余儀なくされたレンたちは、目に付いた大木の下で雨宿りをしていた。
下忍班の任務には基本的に教師が同行するのが規則だが、実戦経験をつむという名目で多少の放任が許可されることもある。特にレンもイタチもアスカもその実力は高く評価されている”注目株”だ。次回の中忍試験に向けての修行も兼ねて、近場の任務ならば時々三人だけで請けることが増えた。まあ、完全に三人だけというわけではなく気配を消した教師がきちんと監視に就いた上でだ。幾ら担当教師が上忍であっても、三人はある意味里の最高水準の教育を受けたサラブレッドである。何せ里が誇るうちはの嫡男と、血継ではなくとも旧家として歴史を重ねた家の出だ。上忍相手といえど、気配を察知するくらいは容易い。だから、今も監視中の教師の位置を把握した上で行動している。それに安心して気を抜くという愚を冒すこともないが、任務中の行為の許容範囲を図る目安に丁度良い、と言っていたのはアスカだったか。
今回もそんな任務の帰りだったのだ。若干早く目的地にたどり着いたお陰で早めに里に戻れると思っていた矢先の事だ。多少落胆しても仕方がない事だろう。どう見てもしばらく止みそうにない雨に苛立たしげに舌打ちしたアスカが横で同じように空を見ていたレンに話を振った。だが答がなかった事を怪訝に思ったアスカが、ぼんやりと黙ったままのレンの顔を覗き込む。そこでやっとアスカに話しかけられていたことを認識したレンが間抜けな相槌を洩らした。任務帰りの安心感から気を抜いて、埒もない事をぐるぐると考えていた為彼の言葉を聞き流してしまったようだ。済まさそうに苦笑してアスカを見上げるが、その様子を見たアスカとイタチは眉を顰めた。
「どうした、寒いか?」
「火でも起こすか。どうせこの分じゃ後2刻はやまねぇし。
ここなら問題ねぇだろ。」
「・・・あ、や!ごめん、ちょっと凄い雨だなって思っただけだから!」
無表情ながら穏やかな視線でレンを気遣うイタチと、既に乾いた枝を拾い始めたアスカを見て慌てるレン。幾ら帰路の途中で比較的安全といっても森の中で火など起こすのは躊躇われる。敵に追われるタイプの任務ではなかったが、人里はなれた森の中に潜んでいる状況で居場所を誇示する行動は誉められたものではない。
「平気だろう。この木の大きさなら根の影になって光は漏れにくい。
雨が降って暗いとはいえまだ午前中だ。多少ならば目立たん。」
「ここで風邪ひくのも馬鹿らしいだろ。俺も服湿らしたままは勘弁して欲しいしな」
「えと、・・・・・ごめん。ありがとう」
「べ、別にっ。俺が嫌なだけで、お前の為じゃねぇよ!」
「(素直だな。)」
「(素直じゃないなぁ。)」
逡巡して、此処は素直に二人に甘えるべきかとお礼を言うと、途端に顔を赤らめたアスカが動きを速めて言い捨てる。そのあからさまな照れ隠しを目撃したイタチが微笑ましげに瞳を細めて携帯燃料を取り出す。レンもくすくすと笑いながら焚き火の準備をてつだった。レンとイタチの言葉は正反対で心情は一致した内心の呟きに気づいたのか更に顔を赤くするアスカが何事か言い募ろうとする。が、何を言っても墓穴を掘るだけだと思ったのか結局舌打ちにとどめて火の傍に乱暴に座り込んだ。
「で、何考えてたんだよ?」
「あ、えと、・・や、大したことじゃ、」
「大したことがないなら言えるだろ。」
気を取り直したアスカがレンに問い直す。以前から、この幼馴染が雨を苦手とする事には気づいていたが任務帰りとはいえ、解散してない内に声を賭けるまでぼんやりするなどということは無かった。普段は本気で鈍臭い奴だが公私は分ける。公である任務中に気を抜く瞬間があったというだで十分心配の種である。口調を強めて問いかけるアスカ。案の定否定しようとするレンに、眉を吊り上げて凄む。押しに弱いレンは困ったように視線を泳がせるが、向かいに座ったイタチも気になるのか助け舟は出さない。
「・・・・ホント、大したことじゃないんだけど、」
「だが、気になる事があるのだろう。」
「いいから言えって!」
まだ迷う口ぶりのレンに、イタチとアスカが話を促す。幼馴染二人の心配を含んだ視線に負けたレンが情け無さそうに眉を下げてポツリと話しはじめた。
「・・・届け先の村で、市がたってたでしょ?」
「ああ?まぁ賑やかではあったな。」
「そこで、さ。小間物屋さんが集まってる一角で、
・・・お母さんに、新しい傘、を買ってもらってる子が、いた、の」
「まあ、この時期なら珍しくもねぇだろ。」
相槌を打つアスカに頷くレン。実際目にしたのはもう直ぐ梅雨に差し掛かるこの時期ならば、珍しくもない当たり前の光景だった。
小さな子どもが、新しい傘を買ってもらって、母親に満面の笑みでお礼をいっていた。・・それだけだ。
「そう、だね。」
「・・・で?」
「や、それだけなんだけど。」
怪訝そうに続きを促したアスカに気まずそうに応えるレン。イタチは黙って聞いている。
「はぁ?んな事で、お前があんな気ぃ散らすわけねぇだろ!いいから全部言えっての!」
「あ、と、・・・ふゎあ?!」
言いよどむレンの頭を隣のイタチが突然撫で始めた。遠慮のない力で、髪が絡まるのもお構い無しにぐりぐりと。
「・・・てめ、何してんだ突然!!」
「ちょ、イタチ?!どしたの!」
「レンの頭をなでているんだ。」
レンの要領を得ない話に早くも苛立ち始めていたアスカが、イタチの奇行に怒りの矛先を変えて怒鳴る。レンも目を白黒させて、イタチを見上げる。当のイタチはしれっと答えて、尚も掌を動かし続けた。更に声をあげるアスカの怒りなど全く気にした素振りも見せない。
「見りゃわかんだよ、んな事は!じゃなくて、何でそんな事してんのか聞いてんだ!」
「ふむ。」
「イタチ?」
そこで、また唐突に動きを止める。そして絡まってしまったレンの髪を丁寧に梳き始める。労わるように、ゆっくりと。その優しい仕草に安心したように、レンが肩の力を抜いた。ぎりぎりと睨みつけるアスカを横目に、イタチがぽつりを呟いた。
「・・寂しがってる子どもは、甘えさせてやるものなのだろう?」
「は、」
「え、」
何を当然の事を、とでも続きそうな口調でイタチが落とした爆弾発言に、レンとアスカが固まる。一瞬の間を置いて、顔を真っ赤に染め上げた二人。立ち上がってイタチの胸倉を掴みかからんばかりの剣幕のアスカと、慌てて身を乗り出したレンが反論する。
「だ、な、・・てっめ、何恥ずかしいこと言ってんだ!」
「子どもって、私のこと?!」
レンとアスカに同時に詰め寄られたイタチが、更に首をかしげて答える。何故反論されるのか分からない、と雰囲気が言っている。
「レンが言った事だろう。前に、子守任務で。」
「え、と。いや、言ったけども!」
「ありゃ、ちっさい餓鬼の話だろ!こいつは俺らと同じ年だぞ!確かにあの時の餓鬼のほうがしっかりしてたが!」
「ちょ、アスカも酷いから!あの子ってまだ5歳よ?!私もう9歳!」
「大して変わらん上に、お前が餓鬼なのは事実だろうが。」
「アスカも同い年でしょ?!」
「お前と一緒にすんな。このアスカ様が餓鬼なわけねぇだろ。」
「なにその自信?!」
イタチの発言に反論するアスカ。更にアスカの発言で五歳児よりも子どもだと断言されてレンが食ってかかるが鼻先であしらう。売り言葉に買い言葉で言い合いを始めた二人の様子を眺めながら続きを口にするイタチ。
「だが、寂しかったんだろう?お前は、その仲の良い親子を見て」
「・・・・!」
その、言葉に、レンが絶句する。
・・・図星、だったのだろう。イタチに言われて、初めて気づいたかのように唖然とするレンが段々と顔を俯ける。そのレンの表情で、イタチの言葉が核心であると悟るアスカ。複雑な表情で口を噤んでレンを見下ろした。
アスカ自身も、両親には思うところがあって、”仲の良い親子関係”などとはほぼ無縁だった。そこから考えれば、レンが何を考えてぼんやりしていたのか、推測できるきもした。勿論本当にあっているかは分からないが、瑣末事だと斬り捨てて良い内容ではないだろうと思う。だがレンは違ったようだ。段々と恥ずかしさが込み上げたのか顔を伏せたまま耳を赤く染めるレンが、漸う口を開いた。
「なんで、分かるの。」
「お前は、分かりやすい。むしろ何で気づかないと思うかの方がわからんが」
淡々と語るイタチを一瞬睨み上げてから、レンは深々と溜息を吐いた。
「ごめん。情けないね、この位で気を散らすなんて。」
本気で申し訳無さそうにイタチとアスカに謝罪するレンの表情に、黙っていたアスカが再び怒鳴る。
「お前は!そこで謝るんじゃねえよ!」
「だって、任務中に、」
「だが、俺もアスカも謝られることはされていない」
本気で怒っているアスカに言葉を重ねるレンを宥めるようにイタチが重ねて言った。諭すように続ける。
「謝ってくれるのなら、気を散らした事ではなく、悩みを素直に打ち明けなかった事のほうにしてもらいたいな。」
「お前が言ったんだろ!俺達は三人でスリーマンセルの仲間だろうが!協力できる事は協力しあって、支えあえる事は三人で支えあおうって言ったんだろ! そのお前が、勝手に一人でうじうじして自己完結してんじゃねー!気がかりがあるなら言えってんだよ!」
荒々しく言い切ったアスカと、重々しく頷いて同意を示すイタチに、視線を往復させてぽかんとするレン。その表情に驚愕が張り付いている事に気づいた二人がそれぞれ眉を顰めて、同時に動いた。
「って、いひゃいいひゃいいひゃい!」
そして両側から、レンのほっぺたを引っ張り始める。手加減はしているが、容赦なく、むに、っと。
途端悲鳴を上げるレンが必死に両手で抵抗するが巧みな力加減に中々外せない。とうとう涙目になったレンをみたイタチの合図で、舌打ちしつつも手を離すアスカ。赤みは残らない程度とはいえ忍として鍛えた少年二人の攻撃である。痛みの残る頬を擦って涙目で睨むレン。
「~~~~!酷くない?!手加減してよ!」
「してやったろうが」
「加減はしたぞ?」
同時に返った答えはにべもない。
「お前が下らないことをぐちぐち気にするからだろうが!どうせ内罰思考で袋小路に嵌るだけだろ! だったら素直に吐きやがれ。」
「一人で思い悩むより、何でもいいから口にして見れば良い。
誰かに話してしまえうだけで解決することは意外と多いぞ?」
アスカとイタチが其々に言った。轟然と腕を組んで見下ろすアスカの自信に満ちた表情と、淡々と話すイタチの穏やかな表情に先ほどとは違う意味で赤くなった頬を隠すレン。蚊の鳴くような声で、ぼそぼそと答えた。
「・・・・ありがとう。」
そのレンに、殊更大きな溜息を吐いてみせるアスカが乱暴に座りなおし、素っ気無く頷いたイタチが焚き火を掻き回す。
「ったく、だから馬鹿レンだっつーんだよ。今更な事言わせやがって」
「お前は一人ではない。俺達がいるだろう」
レンに視線を向けずに呟かれた言葉をかみ締めて、赤いままの顔を伏せて膝を抱えた。
焚き火だけではない暖かさに、いつの間にか雨音が気にならなくなっていた事に気づく。
まだ雨は苦手だけれど、先ほどまで頭を占めていた事は消えていた。
「(大丈夫。大丈夫。今度は、間違えない。きちんと考えて、選ぶ。・・選べる。)
ありがとう。」
雨が、そろそろ止み始める。
三人で、里に帰らなければ。
明日は、きっと良く晴れるだろう。
大丈夫だと、無邪気に信じたがっていた、子ども時代の初夏。
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お題配布サイト「age」(管理者吟様)
http://pick.xxxxxxxx.jp/ より
「さるしばい家族の10題」 1:傘が欲しい
03 | 2025/04 | 05 |
S | M | T | W | T | F | S |
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書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)
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