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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。

なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが空きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・


現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。

*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。

 





 



 

 



 





明るい日差しが差し込み、僅かに開かれた窓から朝特有の涼やかな風が入る。
中庭の木々がこれから暑くなることを告げるように眩しい光が濃い影を作る。
そんな平穏な夏の朝、白い部屋で静かに眠っている二人の少女。



長く美しい朱金の髪と、眠っていて尚見るものにきつい印象を与える白皙の美貌の少女。
栗色のショートヘアと、健康的に日焼けした小麦色の肌が活発な印象を与える可愛らしい少女。


セカンドチルドレンである惣流・アスカ・ラングレーと、フォースチルドレンである霧島マナだ。
彼女達は昨日の戦い--第一次直上会戦と呼称--で、出撃した際に負ったダメージにより戦闘不能に陥り、加療のため病院に収容された。その際使用された麻酔によって、今も眠り続けているのだ。


平和な日常の象徴のように、和やかな喧騒に満ちた廊下から騒がしい足音と叫び声が聞こえる。療養している患者のために、立てられる音を最小限に抑えるよう努めている看護婦達の怒りの声がその騒音を追いかけて響く。その騒ぎに眠りを妨げられたのか、少女の瞼がゆっくりと開かれる。見慣れない白い天井を眺め、何故こんな所に寝ているのかを思い出そうと眉間にしわを寄せる。

微睡みに引き込まれそうになる思考を纏めようとしている彼女の集中を外の騒音が邪魔をする。上手く回らない頭を持て余し、思考を妨害する騒音に対する苛立ちに思わず身体を勢い良く起こすと、枕を掴みドアを凝視する。程なくして開かれたドアの向こうに立っている騒音の主に向かって掴んだ枕を力一杯投げつけた。

 
 

----------- ドガッ  


「「いって(た)~~~~」」

 


病室のドアを開け放つと同時に枕の洗礼をうけた騒音の発生源である二人の少年はよろめいて尻餅をつく。
床に座り込んだまま顔を押さえて唸っていたが、痛みの原因であろうお目当ての少女の同室者に文句を言うために大きく口を開いて顔を上げ-----

 


「なにしやがるっ こんの凶暴おん----- あ。」
「ひどいよ~~------ ぉ?」

 


凍りついた。二人の少年が見上げた先には凄まじい形相でこちらを睨む少女の顔が。
そこで、右手を振りぬいた姿勢のまま肩で息をしているのは、いつも高飛車な物言いと実力行使であらゆる言い分を周囲に受け入れさせる朱金の髪の少女ではなかった。殺人的な威力で枕を投げつけてきたのは、自分達が静寂を尊ぶ病院内の禁忌を犯してまで全力疾走で会いにきた栗色の髪の少女のほうだったのだ。

 
 

「ム・サ・シ?」
「は、はい!!」


「ケ・イ・タ?」
「はい!!」

 


鬼のような顔から一転静かな無表情で、ことさらゆっくりと呼ばれた名前に恐怖が煽られる。
反射的に立ち上がり背筋を伸ばして、恐る恐る彼女の方を伺う。少女の背後に蟠る影は見間違いではあるまい。・・・・・彼女の寝起きの悪さを失念していた少年達の落ち度であった。

 
 

「ここは、病院よね?」
「はい!その通りですっ。」


「病院内は、静かにしなければいけない。・・子供でも知ってることよね?」
「仰る通りでございます!!」

 


優しげに問いかける少女の静けさがひたすら怖い。答える声が震えているのは他人に確認するまでもない。
緊張の余り言葉遣いがおかしくなっているのを直す余裕もなかった。

 


「・・・そう。なら、ワタシが何を言いたいのか、分かるわね?」


「「はい!!」」

 


少女の問いかけに、直立不動で答える。彼女の気が済むまで耐え続けるしか現状を脱する方法など存在しない。

 


「そっ。 なら遠慮なくv
 ・・・・・・・そぉの落ち着きのない行動を矯正しろって何度言わせれば分かるのアンタ達はぁ!!!!!」


 バグッ ドカッ 


「「はぅ!!」」

 


神速で踏み込んできた少女の拳を視認することも出来ず、廊下の壁に叩きつけられる少年の体。
勢い良く殴り飛ばされた割には、二人とも口の端を切った程度の怪我しかしていない。・・・・慣れとは恐ろしいものである。

 


「ほんとにもうっ!!仕方ないんだから。」

 


軽く手を払って陽射しの下に立つ少女の姿は、健康的で生気に満ちて美しかった。・・病院の検査服でなければ。廊下に倒れる二人の少年とその前に仁王立ちする少女。中々シュールな光景である。


今まで眠っていたとは信じられない程に確かな足取りで少年達に歩み寄ると、軽々と二人の襟首を掴み上げ病室へと引きずっていく。その後姿に声をかけることが出来るものは一人も存在しなかった。 患者の目覚めを知った医師と看護婦でさえ。遠巻きに見守る群衆の目の前で、静かに扉が閉められ、静寂のみが残る。

 
 

人類の存亡を賭けた戦いの直後とは思えない、平和な日常風景であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陰気な闇に満ちた部屋にぼんやりと浮かび上がる立体映像。
国連の中で、実質的な最高決定権を持つネルフの上位組織、人類補完委員会の会議である。委員会は議長キール・ローレンツ(独国)を始め、米国・仏国・英国・露国の代表者5人で構成され、人類補完計画の推進、特務機関ネルフの予算確保や監査などを主な業務としている。

 
 

「使徒再来か、あまりに唐突だな」
「十五年前と同じだよ。災いは何の前触れもなく訪れるものだ」


「幸いとも云える。我々の先行投資が無駄にならなかったという点においてはな」
「そいつはまだわからんよ。役に立たなければ無駄と同じだ」


「左様。僅かとはいえ公開されていたネルフの保有するエヴァンゲリオン。使徒の襲来予測及びその威力と性能。 半信半疑であった国連始め世界中が注目している。適切な情報操作・世論の誘導・ネルフの運用 ・・・すべて迅速に処理してもらわんと困るよ」


「その件についてはすでに対処済みです。ご安心を」


「ま、その通りだな」

 


口々に言う委員会メンバーに対し、髪一筋ほども表情を動かさず答えるゲンドウ。
そのふてぶてしさが気に入らないのか、更に声を高くして言い募る。

 


「しかし、碇君。ネルフとエヴァ、もう少し上手く使えんのかね」


「零号機に引き続き、君らが初陣で壊した弐号機と参号機の修理代、開発途中であった武装ビル。国が一つどころか二つ三つ傾く程度では済まん」


「なんの為のチルドレン候補育成計画かね。」

「十分に訓練を積んでいたはずの先任チルドレンは役に立たなかったそうではないか。」


「聞けば、全くの素人である筈の君の息子が動かした初号機が使徒を殲滅したとか。」


「どういうことかね。」

「我らへの報告に虚偽があったのかね?」


「そのような事実はありません。」


「本当か?」
「それ程たやすく成し得るものではあるまい」


「初号機の性能が想定よりも優れていただけのことでしょう。コアが過剰に反応したことも考えられます。」


「ま、それは良かろう。 君の仕事はこれだけではあるまい。」

 


委員の一人の言葉と共に手元のモニターに映し出される報告書。
『人類補完計画 第17次中間報告』

 


「人類補完計画。これこそが君の急務だ」
「左様。その計画こそが、この絶望的状況下における唯一の希望なのだ。我々のね」


「計画を妨害する者もいる。事には慎重かつ的確にあたってもらわねばならん。」


「いずれにせよ、使徒再来に於ける計画スケジュールの遅延は認められん。予算については一考しよう」


「では、後は委員会の仕事だ」
「碇君。ご苦労だったな」

 


消えていく立体映像。ぼんやりとした光に照らされていた部屋に暗い闇が戻る。
最後に一人残っていた議長が重々しく告げる。

 

「碇。後戻りは出来んぞ」

 


最後の映像も消えるのを待って、小さく呟く。



「・・・わかっている。人間には時間が無いのだ。 そして我らにも・・・・・・。」

 

 










ネルフ本部内は、何処も彼処も戦後処理の為の慌しい雰囲気に満ちている。大きな音を立てるものは居ないが、通路を歩むものは誰もが何かしらの書類やデータを抱えて足早に通り過ぎる。その中を悠然とした足取りで歩く金髪の白衣の女性。理知的な相貌と目元の黒子が特徴的な美女。E計画担当博士、技術部部長を務める赤木リツコである。
 

彼女はとある部屋の前で立ち止まると、部屋の主が在室しているのを確認してベルを鳴らすと扉を開ける。

 


「ミサト、入るわよ--- って、貴方何をやっているの。」

 


リツコの目に入ったのは、部屋中を覆い尽くす書類の山と紙の底に埋もれる黒髪の女性。ネルフの作戦部長葛城ミサトだ。彼女は昨日の戦いの戦後処理の為の書類や、壊されたエヴァ弐号機・参号機の修理の為の報告書及び始末書その他に埋もれて息も絶え絶えになっていた。

ミサトは部屋に誰か入ってくる気配に顔を上げたが、それが大学以来の友人であることを認めると、再び力尽きたように机に突っ伏した。

 
 

「あ~~~~リツコぉ。 も~う勘弁してよう。これ以上は無理。本当に死ぬわ・・・・」

 


情けない声でぼやくミサトに、こめかみを引きつらせて答えるリツコ。額には青筋が浮いている。

 


「何を言っているの。全部自業自得でしょう。
 貴重なチルドレン候補の迎えに遅刻してその命を危険に晒す。
 初陣にも関わらず作戦部長の不在。初戦闘で弐号機と参号機を壊す。

 ・・・・・貴方、何のためにネルフに居るの? 」

 


情け容赦の無いリツコの言葉にぐうの音も出ないミサト。上目遣いでリツコの顔を窺ってぼそぼそと言い訳を始める。

 


「だぁって~。 しょーが無いじゃない、一昨日は夜勤だったんだし。あんな早く起きれないわよ~。
 それでも出来る限り急いだし、結果的にはシンジ君は無事だったし・・
 それに、弐号機と参号機は日向君の指揮で壊したんでしょ~私が悪いんじゃ・・・」

 


子供の様な言い分に眩暈を覚えながらも、理路整然とした言葉で返すリツコ。
青筋の数が増えている。ミサト以外の人間なら、あまりの恐ろしさに即座に逃げ出すだろう。

 


「子供なの貴女は!!チルドレンの迎えは貴方が無理に奪い取った物でしょう!!
 自分のスケジュール位前もって把握してから予定を立てなさい。
 

 それに部下の不始末は上司の責任よ。彼が指揮を執らざるを得なかったのは貴方の遅刻のせい。
 自分の尻拭いを押し付けておいて、その言い草は何なの!!もっと責任をもった発言をなさい!!


「ううっ・・ わかったわよぅ。 ごめんってばリツコ~~。」

 


余りの剣幕にやっと己の不利を悟ったか、素直に謝罪するミサト。しかも涙目になっている。

 


「(全然分かってないわね、これは・・)はぁ~~~もういいわ。
 それよりも、霧島さんが目を覚ましたそうよ。若干の記憶の混乱が見られたそうだけど・・」


「まさか、精神汚染?!」


「いいえ。その心配はないわ。精神に異常なし。
 フィードバックに因る擬似火傷と多少の打撲は有るけど生命に別状はないわ。二・三日で湿布も必要なくなるでしょうね。」
 

「そう・・」

 


あからさまに安堵して、肩の力を抜くミサト。
その様を冷ややかに見詰めて真面目な顔を崩さないリツコ。

 


「何よ?リツコ。 それだけなら電話で十分よね?」


「ミサト、貴方・・・・シンジ君との事どうするつもり?
 理由に察しは付くけれど、どうにか信頼を得られないと本当にまずいわよ。」

 


冷たく告げられた内容に嫌なことを思い出した、とばかりに顔を顰めるミサト。逃避も兼ねてか、思考の隅に追いやっていたようだ。

 


「それも分かってるわよ・・・な~んであんなに嫌われてんのかしら。」

 


本気で呟いているミサトの様子に、更に暗鬱な気分に陥るリツコ。
同時にミサトとシンジとの関係の改善はほぼ絶望的だと悟る。
 

普通に考えれば、当たり前である。

迎えに来ると言いながら、数時間の遅刻。
その間戦場に置き去りにされ、それに対する謝罪も無い。

親しみやすいといえば聞こえが良いが、初対面から馴れ馴れしく振舞う。
これは明らかに子ども扱いして軽視しているとしか思えない。 


つらつらと考えて、昨日見た仮面のような愛想の良い微笑みと冷ややかな瞳の色を思い出す。
口調は一応敬語であったが、本当に敬意を払われているとは思えない。台詞に混ぜられていた皮肉からもそれは明らかだった。


そうしてリツコは昨日のことを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第一発令所は暗い沈黙に覆われていた。
人類の希望を背負って出撃した、ネルフ保有のエヴァンゲリオン弐号機と参号機が使徒に返り討ちにあったのだ。巨大なモニターには無残に破壊され、倒れ伏す弐号機と参号機の姿が大きく映し出されている。使徒は出撃した二機に受けた傷を癒すためかその場に蹲って動かないが、再度の侵攻は時間の問題である。しわぶき一つ立てる者無く、沈鬱な空気に支配される発令所。死の覚悟を決めたか、恋人や家族の名を呟く者もいる。


静寂を日向の声が破った。

 


「司令。B級以下職員の退避と本部自爆の許可を。」

 


最早他に手は無し、と使徒を誘いこんで本部ごと爆破しようと進言する。
その言葉に更に空気が重くなる。固唾を飲んで司令の言葉を待つ一同。

 


「・・・・・・初号機とサードを、出撃させる。」


 ざわっ



重々しく告げられた宣言にざわめく発令所。承服し難かったのか反論する日向。

 


「なっ 待ってください司令!! サードは到着したばかりで、初めて乗るんですよ!!
 二機がかりで勝てなかった敵を相手にしてまともに戦えるとは思えません!!考え直してくだ---- 」

 


言い募るがゲンドウは聞き入れようとしない。威圧的な視線で全ての反論を封じる。
納得しきれない顔で口を噤んだ日向に、冬月が言葉を重ねる。

 


「今、本部を自爆させたところで確実に倒せるとは限らないだろう。
 しかもそこで倒れている二機と、中にいるチルドレンも諸共に死なせるつもりかね。
 初号機を出して使徒の気を惹いている間に、二機を回収すれば戦況を立て直すことも可能ではないのかね?」

 


希望的観測が混じった言い分ではあったが、落ち着いた冬月の言葉に発令所が僅かに活気を取り戻す。
苦々しくその様子を見回した日向は、もう一度最上段を見上げて組織TOPの意思が変わらないことを悟ると低い声で復唱した。


「・・・了解、しました。 初号機の出撃準備を始めます。」

 

 

 

 

 

 

 





 

弐号機と参号機が敗退する少し前


N2の余波で吹き飛ばされた後、全力で車を走らせ驚異的な速さでジオフロントに到着したミサト。運転中に見たエヴァンゲリオンの出撃に気が急いているのか、シンジ達に話しかける事も無くいそいそと車を降りて足早に進む。本部正面入り口に着いたミサトは、やっとシンジ達の存在を思い出して快活な口調を作ると二人に話しかけた。

 
 

「えーっと、シンジ君?お父さんからID貰ってないかしら?あれが無いと本部に入れないのよ。
 あっシオンちゃんには今来客用の仮ID発行してるから少し待ってね。 」

 


ただ無言で着いてくるシンジとシオンの様子に気まずくなったのか、早口で捲くし立てるミサト。対するシンジは愛想良く微笑みながら無言で手紙とカードを差し出した。ミサトと会ってから笑みを絶やさないシンジをそっと見やり冷や汗をかくシオン。飄々とした空気を纏い丁寧な口調で対応していたが、この状態のシンジは凄まじく不機嫌で在る事を知っている彼女は、いつ爆発するかと不安で仕方が無い。
今はまだ、台詞に軽い皮肉を混ぜる程度で済んでいるがこれ以上機嫌が下降しようものなら見境無く暴れかねない。

 
 

----- 怒ってる・・しかもすっごく。 さっきまでは機嫌がちょっと悪い程度だったのに~~
   

「し、シンジ・・? あの、」

 


話しかけようとするシオンには本当の笑顔を向けるが、その目が「何も言うな」と語っている。気圧されて口を噤むシオン。最早彼が切れたときのストッパー役を務められるよう気を配るしか出来ることがない。密かに呼吸を整える。そんなシオンの様子を見ながら、内心で際限なく罵倒の言葉を吐き続けるシンジ。

 
 

-----セキュリティカードが無いと入れないような重要施設に呼ばれた理由については一言も無しか。本当に何も知らないままなら、俺はいきなりエヴァに乗せられたってことか?道中の話題はどうでも良い世間話ばっかりだったし、あんな大衆向けのパンフ一部だけで誤魔化して、チルドレン就任についてこの先どう話を運ぶつもりだよ。話す権限がないならないで、重要な機密に触れることになるから程度のことは言っとけよ。仮にも作戦部長が、素人の子供に対する配慮の一つも出来ないってどれだけ無能だ。
   しかも、数時間も遅刻しておいて一言の謝罪もないし。あそこで一歩間違ったら俺らが死んでた可能性について考えも及ばないってか。その癖 親しげな口調で”フレンドリーなお姉さん”でも気取るつもりか?あざとすぎて気持ち悪いんだよ。
 

「いえ、お気になさらず。 どうぞ」
  



小揺るぎもしない表情は既に恐怖しか生まない。気付いていないのはミサトだけである。仮IDを持ってきた警備員すら冷や汗を浮かべてシンジを見ている。

万屋稼業で培った対外用の完璧な愛想笑いに黒い空気がにじみ始めている。海千山千の裏社会の住人含む依頼人達相手に交渉スキルを上達させた今のシンジが、内心はともかく見て分かるほどに感情を表に出すなど滅多に無いことである。それだけに感じる恐怖も一入であった。

 
 

「あ、ありがとーv って、手紙も一緒についてるけど、見ても良い?
 (あの司令が息子にどんな手紙送ったのか気になってたのよねーv) って、はぁ?!これだけなの?」


 

送られてきた封筒ごとカードを渡されたミサトは、一緒に入っている手紙に興味を示し伺いを立てる。シンジの了承を得て、嬉々として手紙を開いたミサトの目が点になった。さもありなん、書かれているのは単語と名前だけである。昨今、幼稚園児でももっとましな手紙を書くだろう。いや、手紙と呼ぶことも失礼な代物であった。

 
 

「(こ、これは・・・・いくらなんでもどうかと思うわよ?司令って・・・)
 あ、あはははは・・個性的な手紙ねぇ?


 あっ シオンちゃん!そのカードをスリットに通せばゲートが開くから。 は、早く行きましょうか? 時間も無いことだし。 ははっ  」

 
 

手紙を開いた瞬間感じた寒気を誤魔化すように、乾いた声で笑ってゲートをくぐるミサト。
反射的に殺気を撒き散らしたシンジが無言の笑顔で続き、シオンがその後を小走りに追いかけた。



 


しばらく無言で歩む三人。寒々しい空気が周囲を取り巻いている。
重苦しい雰囲気に耐えられなくなったのか、ミサトが携帯を取り出しどこかに掛ける。

 


「もしもし、リツコ?今、本部に着いたわ。戦況はどうなってるの?---- え?何、聞こえないわよ?リツコ?」

 


どうやら相手は初号機の整備を行っている筈のリツコのようだ。喧騒に紛れたのか聞き取りにくくなった言葉を聞き返すミサト。その間にエレベーター前にたどり着く。”過去”では本部内で迷子になっていたミサトも、流石に配属されて数ヶ月経っている今迷うことはなかったようだ。そっと安堵の息を漏らすシオン。


と、目の前のエレベーターが開き、中には白衣を着た金髪の妙齢の美女が立っていた。
彼女は、ミサトを認めると深い溜息を漏らして冷たい視線で睨みつける。

 
 

「--- 葛城作戦部長? 何をしているのかしら?」

「あ、えーと、ほら、そうそう!!大事なサードチルドレン候補を迎えに行ってたのよ!やっぱ、戦力増強は最優先で配慮されるべき事項だもんね!」

 
 

氷のような冷たい視線に怯えたように一歩退いたが、虚勢を張ってシンジを前に引っ張り出す。引きずられたシンジは変わらず完璧な笑みを浮かべているが、雰囲気に加えて瞳の温度も数度下がった。それを恐々と見詰めているシオン。内心でミサトの無謀さを罵っている。



----- ミサトさん!!勘弁してくださいよ~~



シオンの内心など知らぬ気に進められる会話。
リツコの視線がシンジを捉える。

 


「その子が例の男の子、ね。」


「そお!マルドゥックから選出されたサードチルドレン、碇シンジ君よ」

 


張り切った声で紹介するミサト。ミサトを見ずに自己紹介するリツコ。観察するように上から下まで見回した視線がシンジの顔で止まる。笑顔の下に潜んでいる不機嫌さに気付いたようだ。漂う雰囲気に僅かに尻込みながらも表には出さず、冷静な表情を保つ。

 
 

「そう。 私はE計画担当博士、技術部長も務めている赤木リツコよ。
 よろしく。リツコと呼んで貰っていいわよ。」


「よろしく。碇シンジです。・・赤木さん。」

 


シンジの返答に軽く眉を上げたリツコだが気にせず肯き返す。それを聞いていて黙っていられなかったのがミサトだ。

 


「そぉ言えば、私もミサトで良いって言ってんのに、なんで呼んでくれないの~?」

 


少し不満そうに声を上げるミサトを見て冷ややかな口調で答えるシンジ。笑顔とのギャップが怖い。

 


「いえ、別に。強いて言うなら、数時間も人を待ちぼうけさせて置きながら一言の謝罪も無い人に対する親しみなど、欠片の持ち合わせも無いからでしょうか。」


「うっ!? それは悪かったわよぅ。ごめん、シンジ君。
 で、でもほら、結局皆無事だったんだし。さっぱりと水に流して~~」

 


反省の欠片も見せずに口先だけで謝るミサトに疲れた溜息をこぼすリツコとシンジ。
気を取り直して顔を上げたリツコの視界に、会話から取り残されて立ち尽くす少女の姿が映る。

 


「貴方は?ここは部外者の立ち入りは禁止の筈よ。」

 


問いただすリツコの声にシオンの肩が揺れる。そのシオンを庇うように前に出るシンジ。横ではミサトが必死に言い訳をしている。

 
 

「あ、そうそう。赤月シオンちゃん、シンジ君のガールフレンドよ。
 まあ、いいじゃない。シンジ君も知らない場所で一人になるより安心できると思うし。
 (シオンちゃんが一緒じゃないと来てくれないって言うんだもの。しょうがないでしょ~?
 部外者なのは自分も同じ筈だからって。)」

 



ミサトの言葉に更に深い溜息が零れる。今日一日だけで一生分の幸福が逃げて行きそうだ。最早下がりようも無いほどに凍りついた視線でミサトを睨んで、そのままエレベーターに引き返す。扉を開けたまま立ち尽くしている三人を促すと、目的の階のボタンを押した。

 

 

 
 

 

 

 

 

 


第一発令所では絶望的な現状を打破すべく、残された最後の切り札、エヴァンゲリオン初号機の出撃準備が行われていた。先程渋っていた日向も気持ちを切り替えたか、目の前の作業に集中している。

その様子を見下ろしていたゲンドウが、机の端にあるモニターを確認し突然立ち上がる。

 


「・・冬月、後を頼む」



常と変わらぬ重苦しい声で言い、司令席の後ろに設置されていた昇降用のリフトに乗り込んだ。
唐突な行動に驚きもせず静かに見守っていた冬月はゲンドウの姿が見えなくなると小さな声で呟いた。



「10年ぶりの対面、か。」

 

 

 

 

 

 






 

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