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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。

なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが空きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・


現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。

*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。

 





 

 



 

発令所は静まり返っている。


最初の敗退時のような絶望に満ちたものではないが、そこに居るものを支配しているのは畏怖と恐怖。誰もが呆然と見詰めるモニターに映るのは、悠然と立つ紫色の鬼神。・・そう、正しく鬼神と呼ぶに相応しい姿であった。

 

 

 

 

 



「シンジ君!まずは歩いてみて!」



敵と対峙している初号機に指示をだすミサト。シンジはあからさまに呆れた表情を見せたが取り合えず従って一歩を踏み出す。依頼されたのは敵を倒すことだけなのだから命令に従う義務はないが、初めて動かす以上確認も必要かと考えたのだ。内心でこんなに敵に近い位置に出したミサトとネルフを罵っていたが。

 

 

----- 動作確認の必要があるって解ってるんならこんな場所に出すんじゃねぇ。
   期待はしてなかったがやっぱり無能か?指揮官としての優秀さは望めないな。
   他の奴らも研究者上がりばっかりだけあってフォロー出来る奴も皆無、と。
   本当にどうしようもないな。




シンジが心の中で辛辣な評価を下している事など知らない発令所の面々は、起動成功時以上の歓声をあげてモニターを注視している。初号機の出撃に唯一反対して見せた日向すら見入っている。湧き上がる発令所を見回して呆れるシオン。”過去”でよく生きていられたものだと僅かな感慨に耽る。もちろんほんの数瞬のことだ。すぐにエヴァとシンジに意識を戻す。

 
 

その時、使徒が動いた。
出来損ないの人形めいた巨体の上位中央に在る仮面が光る。同時に発せられるビーム。僅かに体勢を傾けて避ける初号機。使徒は避けられた事が悔しいのか次々とビームを放つ。その全てを避け切る初号機。シンジは完全に攻撃を見切っている。その滑らかな動きに更に感嘆する発令所。最早単なる野次馬である。




{こいつの弱点は?}

 



夢中でモニターに見入っていた者達がシンジの冷淡な声に我に帰る。
慌ててデータを確認するオペレーター達。リツコも気まずそうな顔で居ずまいを正して問いに答える。




「あ、ああ。えーコホン、
 目標の前面中央部に見える赤い球体--コアと呼称される部分が弱点と推測されるわ。
 目標の攻撃方法は仮面からのビーム、肩にあたる部分からの光槍。
 現在確認されているのはそれだけだけど、同時に発射する事が可能のようね。
 あと、目標はATフィールドと呼ばれる防御壁を展開して攻撃を防ぐけど、エヴァでならそれを打ち破ることができるわ。」

 

 

弐号機と参号機の交戦データを確認しつつ説明するリツコ。シンジはシオンに聞いて知っていたが、そ知らぬ顔で質問を続ける。

 



{で、こちらの武器は?あと、そのATフィールドとやらを破る方法を}

 



その言葉に気まずい顔をしてトーンを落として答えるリツコ。他のオペレーター達も居心地が悪そうな顔でシンジをちらちらと見る。

 



「・・・武器は無いわ。さっき出撃した二機が全部使ってしまってストックが無いの。」


{--- はぁ?!}

 



流石に全くの丸腰で放り出されるとは思っておらず、素で驚くシンジ。
壁際に退いて戦いを見守っていたシオンも今の言葉が信じられず、強張った表情でリツコを凝視する。


前後から感じる視線に居た堪れない気分に陥るが、言葉を続ける。




「ATフィールドなんだけど、エヴァでも展開することが出来るわ。・・理論上は。
 それを目標のATフィールドにぶつければ中和することができる。・・・筈よ。」


{・・・その”理論上”とか、”筈”ってのはなんなんです?}

 



余りにも頼りない返答に氷点下の視線で睨みつけて聞き返すシンジ。リツコは更に気まずそうに目を逸らす。

 



「・・今まで展開に成功したチルドレンが居ないのよ。だからエヴァのATフィールドに関してのデータが全く存在しないの。」

 



予想通りの答えに深い溜息を吐くシンジ。ネルフが頼りにならないとは思ったが、これ程とは。怒りを通り越して呆れしか生まれない。シオンに出逢うことがなかったら一体どんな目に合わされていたのか・・・絶望的な想像しか浮かばなかった。

 

 

{もういいです。集中の邪魔になりますので通信は切らせて頂きます。}


「ちょ、待ちなさい!!」




リツコが説明している間も使徒の攻撃を鮮やかに避け続けていた初号機の姿に、指示らしい指示も出せずに歓声紛いの野次を飛ばすだけであったミサトがシンジの言葉に我に返って制止する。しかし通信は既に切られた後だった。立場も省みずに罵声を撒き散らすミサト。見るに耐えない友人の姿に呆れ返ったリツコが冷たい言葉で狂乱を止める。

 

 

「うるさいわよ、ミサト。私達が何の役にもたってないのは事実でしょう。大体彼が私たちの命令に従う必要も義務も無いのよ。 」


「は?何言ってるのよリツコ。彼がエヴァに乗ってるってことはチルドレンになったんでしょう?なら、私の指揮下で命令に従うのは義務じゃないのよ。」

 



言われた内容に呆気に取られて聞き返すミサト。シンジが依頼を受けた時気絶していた為経緯を知らないのだ。リツコは冷えた視線でミサトを見据えてゆっくりと言い聞かせる。

 



「いい?シンジ君は侵攻中の敵性体との戦闘代行の依頼を受けてエヴァに乗ったの。
 だから、チルドレンになる事を承諾したわけでも、ネルフに所属したわけでもないのよ。
 従って命令に従う義務も必要も存在しないわ。敵を倒してくれさえすればいいのだから。


 それに貴方、最初の「歩け」の後何か指示らしい指示を出したの?
 さっきから口にしていたのは「そこ!」とか「よけて!」とかただの野次じゃないの。
 作戦を伝えることも、攻撃を指示することもしていないでしょう。文句を言う資格なんか無いわよ。」



「そ、それは・・で、でもいきなり通信を切っていいことにはならないわ!!
 こっちから情報を伝えることも出来ないじゃないの。死んだらどうする積りなのよあいつは!!
 大体依頼ってのはなによ?あんなガキの戯言聞き入れたっての?」

 



整然と述べられてやっと己の失態に気付くミサト。不利を悟ったが悔し紛れに納得できなかった部分を聞き返す。

 



「貴方、一撃で倒されたのに良く言えるわね。・・・・・シンジ君はね、あの”レイン”なのよ。
 彼が本気で逃げたら捕まえることは不可能よ。譲歩して依頼を受けてくれただけでも僥倖じゃないの」


「はぁ?!嘘でしょ?!」


「本当よ、多分ね。確認は出来てないけど、”レイン”の名を知っていてそれを騙る者が居ると思う?情報を洩らそうとしたり怒りに触れた人間の末路、知ってるでしょう?」

 


ぎりぎりまで顔を近づけて小声で告げるリツコ。周りに聞こえないように話していたが、更に用心して声を落とした。その真剣な目をみて認めざるを得ないことを悟るミサト。頷きあう二人の耳に一際大きな報告が入る。

 

 

「パターンオレンジ!発生源は・・初号機です!!初号機、ATフィールドを展開しました!!」


「「なんですって?!」」

 



ユニゾンで声を上げるミサトとリツコ。モニターを凝視した二人の目に、使徒の展開したフィールドごと肩の部分を手刀で切り落とす初号機の姿が映る。どうやら使徒の防御を一瞬で掻き消す程のATフィールドを発生させて攻撃を加えたようだ。ミサトはリツコに、リツコはマヤに詰め寄る。

 

 

「どういうことなの?!なんで初めて乗った人間が展開できるのよ?!」


「マヤ!!データは?!」

 



リツコとミサトの鬼気迫る表情に怯えながらも報告するマヤ。

 



「は、はい。初号機のATフィールド、強度・・使徒の約三倍です!!」


「なっ!ありえないわ!!レイやアスカも展開に成功していないのよ?!」

 



発令所を再び驚愕が襲う。混乱する大人たちを醒めた目で見回して疲れきった溜息を溢す少年と少女。
音声を切っても画像から伺えるネルフの騒乱を見て、落ちるとこまで落ちている信頼と評価を更に地に潜り込ませるシンジ。目先の事に囚われて直に状況を忘れるミサトとリツコの醜態を生温い視線で眺めるシオン。


二人はモニター越しに目を見交わすと同時に肯き合い、彼らの存在を心から切り離した。

 














最早一欠片の関心も向けることなく戦闘に集中するシンジ。シオンにレクチャーを受けておいたATフィールドの発現も成功した。コアの精製とシンクロも上手くいった。打ち出されたパイルとビームを避けながらであった為止めを刺せなかったが、コツは掴んだ。後は敵を殲滅するだけだ。

 
 

「(さっさと片付けるか。計画第一段階目も成功したことだしな。)」




口の中で呟いて攻撃のために精神を集中させる。武器が無い以上エヴァの身体能力とATフィールドを利用するしかない。先程使徒の肩口を切り落とした時と同じように右手にフィールドを収束させて強度を高める。絶え間なくビームを打ち込んで牽制してくる使徒を見据えてタイミングを計る。

 

 

「(ATフィールドは心の壁、ね。要は存在を信じること、その形を強く思うこと・・想像と確信。

  ----- 想いの強さに比例する!!)」




   ザンッ 

 



その瞬間、何が起きたのか理解できたものは一人しかいなかった。


気付いたら使徒と初号機の位置が入れ替わっている。互いに背を向け合って動かない二体。
何事かと誰もが食い入るように見詰めるモニターの中で、使徒の巨体が二つに分かれて地に落ちる。大質量の物体が落下した衝撃に揺れる天井都市。崩れた瓦礫から大量の砂塵が舞い上がって初号機と使徒を隠す。砂塵が晴れた後には悠然と佇む初号機の姿が映し出される。



MAGIが管理する監視モニターの映像ですら追いきれない速さで動いた初号機が、使徒の身体をコアごと二つに切り裂いたのだ。それを悟った発令所の者達の心を支配したのは、勝利の喜びでも危機が去った安堵でもなかった。訓練されたチルドレンが二機掛かりで敗北した敵を、初めてエヴァに乗った少年が武器も使わず瞬殺したのだ。初号機の鬼を思わせるフォルムも手伝って、本物のバケモノを見るよう目で凝視する。


音一つ立てる者無く静まり返る発令所。誰もが凍り付いて動けない。
 

その様子を悲しみと憤りを込めた視線で見回すシオン。無理やり兵士として利用しようとして置きながら、想定以上の力を見せられると途端に手の平を返す。人間が異端を殊更排除する種族である事は理解もしているし、自分がいつか排除の対象になるだろう事は覚悟もしている。

だが、シンジに危機を助けられておいて負の感情を向けるネルフの面々に対する怒りが募るのを止めることは出来なかった。思わず声を荒げて罵りそうになる衝動を抑える。今最も気に掛けるべきなのは自分の感情でもネルフの反応でもないのだ。
 

 


「シンジは無事なんですか?敵は倒されたんでしょう?」




凛とした少女の声が響く。落ち着いた声で問われたオペレーターが我に返ってデータを確認する。呆然としていたリツコとミサトも慌てて指示を出し始めた。




「パターン青消滅!生体反応、ありません。使徒、沈黙しました!!」
「初号機、損傷ありません。」
「サード、身体データに異常なし。」

 



そこで切られていた通信が再び繋げられる。




{敵性体の殲滅終了。どこから帰還すれば宜しいですか?}


「回収ゲートを開いて。・・前方に開いたリフトに乗ってくれるかしら」

 



少年の言葉に上の空で答えるリツコ。シンジへの恐怖よりも科学者としての好奇心が勝ったようだ。
モニターに映るシンジの様子を細かく観察しつつデータをチェックして、彼に確認すべきことを嬉々として書き留めている。

その横ではミサトが僅かな敵意を混ぜた目でシンジを見ている。自分が使徒との戦いに関われなかったことが不満なのだろう。口に出せばリツコに窘められる事が解っている為無言でいるが、隔意を隠し切ることは出来ないようだ。

シンジも自分に向けられる視線に含まれた感情には気付いていたが意に介さず端的に返した。





{了解。}

 



初号機がリフトに固定されて降りていくのを確認し、騒がしくなった発令所を尻目に出て行こうとするシオン。それに気付いたミサトが声をかける。




「シオンちゃん、何処に行くの?あまり歩き回られると困るんだけど」


「シンジを迎えに行くんですよ。今回の私の役目はシンジのサポートです。 戦闘が終わった以上此処にいる意味がありませんから。」




言い捨てて出て行こうとするシオン。先程の不快感が言葉から抑揚を奪う。少女の不機嫌に気付くことなくミサトが同行を申し出た。

 



「ああ、それなら私も一緒にいくわ。案内を付けずに歩かせるわけにはいかないし。」


「そうね、私も聞きたいことがあるし同行してもいいかしら?直接確認しなければいけないこともあるしね。」

 



あれ程の適正の高さを示した少年をネルフが放置することは無いだろう。無条件に陣営に加えられる相手ではないが、エヴァに乗るよう働きかけることは確実だ。ならば己の不快感を押さえ込んでも、作戦部長としてあの少年と友好を深めることは必要だろうと考えたのだ。初対面の時からミサトが重ねた暴挙と非礼な振る舞いを自覚することが出来れば不可能だと解りそうなものだが、自分の失態については都合よく消去されているらしい。 明るい声で少女に笑いかけて着いて来ようとするミサト。更にはリツコも一緒に歩き出す。

二人の思惑が手に取るように理解できてしまったシオンは何を言う気にもならず、無言でケージに向かった。

 

 

 

 

 



 

 

 


「碇、本当に問題はないのか?あれは異常だぞ。」


シンジのパートナーを名乗った少女と作戦部技術部のTOPが連れ立って出て行くのを見送りながら冬月が問いかける。




「シンクロ率が高ければエヴァの動きも比例する。
 性能が良いのなら使徒戦に有効だ。敵はまだ来るのだからな。」


「そう簡単なものではないと思うがな・・・」




淡々と答えるゲンドウの言葉に疑問を返す。モニターで見ていたケージでの一件を鑑みるに、シンジがあれ程高いシンクロ率を出すとは思えなかった。母を求めるどころか、傍らに寄り添っていた少女以外の人間に対する関心など全く無いように見えたのだ。最もネルフへの隔意に関してはこちらに非があることを自覚していたが。




「どの道、使徒は倒さなければならない。しばらくは有効に活用してやればいい。所詮は子どもだ。」


「お前は二年前もそう言ったな。」




ゲンドウの言葉にシンジの育成に関する報告をあげた時の事を揶揄する。
あの時余計な事をしなければ、彼を見失うことも、イレギュラーな存在になることも無かったのでは、と思ったのだ。


皮肉交じりの言葉など気にした素振りも見せず立ち上がるゲンドウ。冬月も答えないことは分かっていた為無言で後に続く。彼らはこれから委員会への報告や戦後処理の雑務があるのだ。無駄な時間を費やす余裕など無かった。

 

 

 

 

 


 

 


 

 

シオン達がケージに着いた時、丁度シンジがエントリープラグから出てくる所だった。搭乗前の光景が忘れられないのか緊張を隠せず無言で点検を行っている整備員達。発令所のモニターで無事なのは確認していたが、やはり直接姿をみると安心する。笑顔を浮かべてシンジに声を掛けようとしたシオンに気付かずミサトとリツコが前に出る。




「シンジ君、よくやってくれたわ!ご苦労様!」


「シンジ君、少し話を聞きたいのだけどいいかしら?検査もしなくちゃならないし。」




プラグから降りてシオンの笑顔を見つけたシンジは彼女の元へ歩み寄ろうとしたが、間に入ったミサトとリツコに遮られる。少女の姿を隠されて不快気に目を細めるシンジ。戦闘中のネルフの不手際に対する不信も手伝って再び機嫌が危険域に傾きそうになる。どうやら落ち着いて見えるのは表層部分のことだけらしい。些か好戦的な思考に偏っているようだ。それに逸早く気付いたシオンが彼に駆け寄って笑顔で宥める。

 

 

「シンジ!お疲れ様。痛みや気分は?大丈夫?」


「大丈夫だよ。」




腕に感じる少女の温もりと向けられた笑顔に穏やかに返すシンジ。綺麗に無視されたミサトとリツコは少年と少女の会話を無言で聞いている。リツコの方は性急過ぎた自分の言動に気付いて自嘲交じりに苦笑していたが、ミサトの方は僅かにこめかみを引きつらせる。二人の様子に気付いてはいたが、あえて無視して言葉を続けるシオン。

 

 

「それと、お帰りなさい。・・・護ってくれて、ありがとう。」




心のこもった優しい笑顔と純粋な感謝の言葉。
言われたシンジは、一瞬呆気にとられて無防備な顔をさらす。
少女の言葉が脳に浸透すると、少しだけ顔を赤くして照れくさそうな笑みで返事を返した。




「・・ただいま。」

 



目の前で展開される微笑ましい光景に、緊張していた整備員達や顔を引きつらせていたミサトも毒気を抜かれたようだ。ケージに心なしか穏やかな雰囲気が漂う。横でそわそわと成り行きを見守っていたリツコがシンジとシオンの会話が途切れたのを見計らって再び声を掛けた。




「シンジ君、少しいいかしら?エヴァに乗っている間の事なんかで幾つか質問があるのだけど。精密検査もしなければならないし。」


「・・・・・・・まあ、いいでしょう。
 どうやらネルフは保有兵器についての十分なデータすら揃っていないようですし。
 次も同じような状態では、こちらも命が幾つあっても足りませんからね。」

 



無粋な横槍に僅かな不満を感じてリツコの顔を無表情で見詰めていたが、仕方なさそうに了承するシンジ。
リツコの要求に応える義理はないが、無闇に撥ね付けるのも大人気ないかと考えたのだ。


この先も今回の戦闘時のような頼りない対応を続けられては困るのも事実だ。言葉に皮肉を混ぜることも忘れなかったが。戦闘に出る前に纏めた思考を心の内でもう一度反復し、どの程度の情報を提供するか考えながらリツコとミサトに向き直る。

 



「って、シンジ君これからも乗ってくれるの?!」




リツコの静かながらも鬼気迫る勢いに気圧されて黙っていたミサトがシンジの言葉に反応する。
彼の戦闘能力は実証済みだ。ネルフの戦力に不安が残るのも事実なのだ。彼が此れからもエヴァに乗ってくれるならこれ程心強いことはない。並々ならぬ熱意を込めてシンジに詰め寄る。対するシンジはゲンドウと交渉した時と同じ営業用の笑顔を浮かべて淡々と返した。

 

 

「それはこれからの交渉しだいですね。司令が再び依頼をするかどうかもわかりませんし。 ところで、今回の報酬について司令とお話をしたいのですが?」


「申し訳ないけれど、司令も副司令も戦後処理に追われてすぐには時間が取れないのよ。 多分明日以降になら空くと思うけど・・」


「まあ、仕方が無いですね。仮にも国連組織の一端ですし。解りました。では貴方からのお話とやらを伺いましょうか。」


「ありがたいわ。ではまず検査に行ってもらえるかしら?その後私の執務室に・・・・」

 



早くシンジからの話を聞きたいリツコはミサトを押しのけて会話に加わる。
不満そうな顔をするミサトも今のリツコに逆らうほど無謀ではないらしく大人しく様子を見守っていた。

 



「検査はお断りします。異常は特に無いようですし、信用できない相手に無防備に身体を任せる気はありません。 話の方は構いませんが、その前にシャワーをお借りしたいですね。質問がお有りでしたらその後に、という事で構いませんね?」

 

 

有無を言わせず遮るシンジ。リツコも検査については拒否されることも考慮の内だったので特に気にせずシャワー室へと案内させる。だが横に立っていたミサトはシンジの言い様に辛うじて浮かべていた愛想笑いを消して熱り立つ。

 

 

「ちょっと!!ネルフが信用できないってどういうことよ!私達は人類を護るために戦ってんのよ?!」

 



睨みつけるミサトの視線を上辺だけの笑みで受け、冷えた口調で答えるシンジ。ミサトの傍らではリツコがこめかみを揉み解して溜息を吐いている。

 



「信用を得たいと言うなら其れに相応しい根拠を示して頂きたいですね。
 貴方達の今までの対応を振り返ってからモノを言って下さい葛城さん。」


「ちょっ!!」


「ミサト、やめなさい。
 彼に私たちを無条件で信用しろという方が無理よ。力尽くでエヴァに乗せようとしたことを忘れたの?」

 



冷たく言い放ってシオンと共にケージを出て行くシンジ。その背中に言い募ろうとしたミサトをリツコが止める。止められたミサトはリツコにも食って掛かる。

 



「それは、・・ちょっと強引だったかもしれないけど。仕方が無いじゃない!!
 シンジ君が乗ってくれなきゃ、私たち皆死んでたかもしれないんだから!!最初から素直に乗っててくれれば・・・・」


「いい加減にしなさい。貴方がそんな調子だからやり込められるのよ。少し頭を冷やすことね。
 シンジ君の話は私だけで聞いておくわ。貴方も戦後処理で忙しい筈でしょ。早く仕事に戻りなさい!!」

 



ミサトの余りに自分本位な言い分に呆れた口調で窘めるリツコ。作戦部が戦後処理で忙しいのも事実の為、渋るミサトを無理やり発令所に戻らせる。

これからもあの調子が続くとなれば他のチルドレン達との間も齟齬が生じかねない。技術部長としての仕事以外にも山積みになっている問題の多さに一つだけ深い溜息を吐いて、気持ちを切り替えるとこれからの事に思考を向けた。

 

 

 

 

 

 

 


 

更衣室の中は子ども達の賑やかな話し声に満ちていた。使徒の襲来を告げられ待機を命じられていたが、戦闘が終わって解散を許された候補生達だ。最も第三新東京市内は使徒によって破壊された瓦礫を撤去しなければ収容されている建物を戻すことも出来ない。今夜はチルドレン用の仮眠室に泊まる事になる。それでも子ども達の心を満たすのは、敵が倒され危機が去ったことに因る安堵と自分達がいつか乗るかも知れないエヴァが実際に出撃した興奮。

未だシンクロする事が出来ず直接戦闘に関する情報に触れていないからこそ、ただネルフが勝利したことにのみ意識を向けていられるのだろう。喧騒の片隅で不安な表情を晒す二人の少女に気を払う者は居ない。





「アスカ・・・」「マナさん・・」

 


計らずも重なる呟き。隣り合って着替えていたヒカリとマユミが顔を見合わせる。互いの瞳に同じ感情を見て取って同時に頷くと服を着るスピードを速める。周りで楽しげに語り合う候補生達にお座なりに暇を告げて足早に更衣室をでる。向かう先はネルフ内で最も顔を合わせる訓練の指導官でもあるミサトの所だ。

すれ違う職員は無言で通路を突き進む少女達に怪訝な目を向けるが、特に気を払うことなく抱えている仕事に集中する。初めての戦闘を経験し皆が皆慣れない戦後処理に気が急いていて、最もフォローが必要な筈の子ども達への対応が等閑になっている事に気がつくものは居なかった。




次の角を曲がれば発令所に着くという所で横の通路から飛び出して来た影とぶつかる。勢い良く跳ね飛ばされて尻餅をつくヒカリとマユミ。飛び出して来た影の方も反対側に転んだようだ。腰の痛みを我慢しながらマユミを助け起こしつつ謝罪するヒカリ。




「ご、ごめんなさい!急いでいたものだから・・・・って、あっ!!」


「い、いや。こちらも前を見てなくて・・・」




立ち上がりながら顔を向けた先にあったのは良く見知っている相手だった。待機を解かれプラグスーツをから制服に着替えたムサシ・ケイタ・トウジ・ケンスケだ。予備チルドレンである彼らの待機場所も更衣室も、候補生達が使用する場所からは離れていたため会わなかったが、発令所に向かう途中で行き合ったらしい。
親しい友人でもある彼らと出会って強張っていた表情を少しだけ緩めるヒカリとマユミ。ヒカリにとってトウジとケンスケは小学校からの同級生だし、マユミにとってムサシとケイタはマナを通じて知り合った友人である。辺りを取り巻く張り詰めた雰囲気に緊張を隠せなかった二人は肩の力を抜いた。

 

 

「鈴原・・相田も。ちょうど良かった。ねえ、アスカとマナがどこにいるか知ってる?」
「そ、そうです!!二人は無事なんですか?!」


「ちょ、ちょっと待って。落ち着いて。」

 



ヒカリの言葉に発令所に向かった目的を思い出して近くに立っていたケイタに詰め寄るマユミ。不安と焦りが彼女の落ち着きを取り払う。掴みかかる勢いで迫られたケイタは慌ててマユミを宥める。

 

 

「イインチョか。わしらもどうなっとるのか聞きに行こうと思っとるトコや」


「ああ、待機してた部屋のモニターも途中で映らなくなってな。多分使徒の攻撃でどっか回線がショートしたんじゃないかと思うけど。」




トウジとケンスケが答える。戦闘の様子は待機場所に設置されていたモニターで見ていたが、使徒の攻撃で回線が破損し途中で映らなくなったらしい。
ヒカリとマユミに説明している少年達を尻目に発令所に歩き出すムサシ。情報も得られず部屋で待機が解かれるのを待つことしか出来なかった為苛立ちを募らせていたようだ。それを見て慌てて着いていく五人。例え勝ったにしても無傷とは限らない。自然と口を噤んで足早に進む。




たどり着いた発令所は他の何処よりも慌しい喧騒に満ちていた。オペレーター達も指示を出すミサトも、戦闘中のデータ整理を始め様々な業務に忙殺されていて殺気すら感じる。その様子に怯みはしたが、アスカとマナの状態を知りたい欲求には勝てなかった。恐る恐るミサトに近づく。




「あ、あのー。・・ミサト、さん?」


「何?!・・・・て、あなた達。どうしたの?解散していいって言われなかった?」

 



シンジに冷たくあしらわれリツコに追い返された苛立ちから殺気立っていたミサトが勢い良く振り返った。その目に映ったのは恐々とこちらの顔色を伺う六人の子ども達。一瞬ばつが悪い顔をして誤魔化すように明るい笑顔を浮かべると優しく問う。何時も通りのミサトの態度に安堵してアスカとマナの安否を尋ねる。

 

 

「はい、それは聞いたんやけど・・」
「聞きたいことがあってきたんです。」
「控え室のモニターが壊れて途中から様子が分からなくなったもので・・」


「マナは無事なんですか?!」
「使徒には勝ったんですよね?!二人に怪我は・・」
「アスカ達に会えますか?今何処にいるんですか?!」




口々に言う六人。特にムサシ・マユミ・ヒカリの三人は鬼気迫る勢いだ。詰め寄られて仰け反るミサト。アスカ達の様子を思い返して僅かに言い澱む。

 



「あ、うーんとねぇ。まぁ生命に別状は無いと思うわ。今は病院で検査を受けているはずだけど・・」


「怪我したんですか?!」
「二人ともですか!?そんなにひどいんですか?」

 



歯切れの悪い言葉に数人が身を翻そうとする。それを慌てて止めるミサト。その場に留まっている子達も真剣な表情で凝視している。




「ちょ、ちょっと待ちなさい!!今行っても会えないわよ!!」


「どうしてですか!!」

 


引き止められて勢い良く噛み付くムサシ。同じく止められたケイタは無言だが不満気に顔を歪める。マユミとヒカリは不安そうにミサトを見詰め、トウジとケンスケは静かに言葉を待っている。




「ふぅ。 今二人は麻酔で眠っていて目覚めるのはまだ先よ。
 早くても夜中か明け方でしょうね。起きていたところで検査があるからどの道顔を合わせるのは無理。 ・・・今日のところは大人しく部屋に帰って休みなさい。明日になったらお見舞いに行っても良いから。」




優しく言い含められて渋々了承する六人。発令所を重い足取りで出て行く子ども達を見送って、苦々しく呟いた。

 



「(チルドレン、か・・・・。でも、仕方が無いことなのよ。他に方法は無いわ。)」

 



ひたむきに友人の安否を心配する子供達の姿に僅かに心が痛んだが、必要な事なのだと割り切って仕事に意識を戻すミサト。


「仕方が無いこと」だ、とネルフに籍を置く者は大なり小なり皆がそう考える。だがその傲慢ともいえる態度こそが、シンジの反発の最たる理由であることに気付くことが出来れば、あれ程忌避されることも無くなるだろう。しかし、思考を打ち切ってしまった今のミサトが、自ら気付く可能性は殆ど無い。ミサトが溢した呟きも発令所の喧騒に紛れ、誰の耳にも届かず消えた。

 

 


















 

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ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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