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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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これは以前書いていたメイン連載のエヴァンゲリオン逆行連載です。
逆行女体化シンジのお話でした。

なかなか続きが書き出せないうちに時間だけが開きまして、もう最後まで書ききる自信がなくなってしまったので封印してたんですが、実は思い入れが一番強いものなので、ちょっと載せてみようかな~と思って蔵出ししました・・・・


現行強シンジ×逆行女体化シンジです。
スパシンです。

*ネルフメンバー・ゼーレには優しくないです。チルドレンにも一部優しくない時があります。最終的には子供達は和解させる予定でしたが。

 












技術部長執務室でリツコとシンジが向かい合っている。
エヴァに関する事は高レベルの機密情報も含まれるためシオンに聞かせられない事も有る、と言われ彼女を近くの休憩所に待たせて話をしているのだ。シンジ個人としても、話の展開しだいで彼女には見せたくない面も晒す可能性を考慮して好都合だと思い了承した。まずは差しさわりの無い質疑応答を幾つか繰り返して互いの腹を探り合う二人。まさしく狐と狸の化かしあい。見ているだけで胃に穴が空きそうな光景である。



エヴァに乗った感想、シンクロ中に感じたこと、動作についての違和感など、細かく質問を重ねるリツコ。特に理論限界値を叩き出した高いシンクロ率についてをしつこく聞かれたが小揺るぎもしない笑顔でするりとかわすシンジ。リツコの方も納得しきれる答えではなかったが、エヴァのシンクロシステムについての真実を説明するわけにはいかない以上深く突っ込む事が出来ない。シンジの笑顔の下に隠された真意を探ろうと一挙一動に目を光らせ、答えから得られる考察と推測をファイルに書き綴る。取り合えず質問が一段落ついて、執務机の上のディスプレイに表示されるデータと抱えているファイルを見比べて勢い良くペンを走らせていたリツコがいよいよ本題に入ろうと再び顔を上げた。

 

 

「--- さて、それじゃあATフィールドについて聞きたいわね。そうね・・まずどうやって展開したのかしら?」


「どうやって、ですか?-- そうですねぇ。 取り合えず様子を見ようとして一撃入れてみたら使徒がATフィールドで防御して。」


「それで?」


「あれがそうかと思ってですね。 確か・・接触した感じでは攻撃を防がれた、というよりも弾かれた、という感じで・・」


「弾かれた?」

 



真偽を交えて淡々と話すシンジの言葉に身を乗り出して相槌を打つリツコ。
既にシンジの言葉の内容だけが思考を占領しているのだろう。抱えているファイルが力の入れすぎで歪んでいることにも気づいていない。

 



「ええ、それでですね。 なんというか・・あれは、自分の領域を護る・・他者を拒絶、でしょうか・・するようなものかな、と。」


「拒絶?」



「そうですね・・普通の壁、というのは境界を示し、中と外を区切る物。
 人が壁を造るのは中にあるものを護る為、ですよね?物理的なもの心理的なもの問わず。
 その壁の主が受け入れなければ中に入ることは許されない。つまり他者を拒絶するためのもの。

 ・・・ですから、ATフィールドはそれをもっと感覚的にしたもの、という感じかな、と思って。」


「壁・・拒絶、境界を示す?」

 




事前に見知っていたことを悟らせないように説明していく。対するリツコは戸惑い気味だった目に理解の光が浮かび始める。その様子を確認しつつ話を続けるシンジ。この先他のチルドレンと複数で迎撃にあたる場合もある。ATフィールドの展開も出来ないようでは只の足手纏いにしかならない。全ての使徒相手に一人で勝ち続けられると思うほど自惚れてもいない。さっさと戦力を整えてもらわなければ、使徒に負けてサードインパクト、という可能性が無いわけではないのだ。その為に必要な情報を不自然にならない程度に提供しておくことは、最初の計画の内でも決めて置いたことだった。これ程基本的なデータすら揃っていないとは思ってもいなかったが。

 



「ええ、それで自分・・というかエヴァの、ですけど。周りに他との境界を強くイメージしてみたら・・」


「ATフィールドを展開できていた、と?」


「そうです。一度展開してしまえば後は応用ですから。
 攻撃に使用したのは、展開したフィールドを右手に収束させて掌を刃に見立てて。」


「で、使徒の身体を真っ二つ・・・・・凄まじいわね。初めてで其処まで・・・」

 



好奇心を満たされて満足げな吐息を溢すリツコ。恐らくその脳裏ではこれから行われる実験のスケジュールが組まれているのだろう。どこか恍惚とした表情でデータに書き込んでいる。予定通りに話を運べたが、目の前のリツコの雰囲気に僅かに怯むシンジ。殺気や威圧になら対応する術を心得ていても、こういう些か危うい熱気には苦手意識が払拭しきれないようだ。

嬉々としてペンを走らせていたリツコだがシンジの視線に今の状況を思い出すと気まずそうに咳払いをする。




「あ、えーコホン。 ありがとう、参考になったわ。これで他のエヴァでもフィールドを展開できる目処が立ったわね。」


「それはよかったですね。こちらとしても助かりますよ。」




冷静になったリツコの様子に内心で安堵して調子を取り戻すシンジ。愛想良く微笑み告げる。その笑顔に先程まで忘れていた疑念が再び蘇る。




「シンジく --- 」


「では、もうよろしいでしょうか?他に話が無いのでしたら休ませて頂きたいのですが。」

 



リツコの言葉を遮るようにシンジが席を立ちながら告げる。その瞳の色を見て、もう何を聞いたところで答えが無いことを悟るリツコ。強制が出来ない以上受け入れるしかない。諦めの溜息を吐いて許可をだす。

 

 

「ええ、疲れているところを悪かったわね。もういいわ。
 職員用の宿舎に部屋を用意したから今日はゆっくり休んで頂戴。
 食堂なんかの施設は自由に使ってもらって構わないわ。何かあったら部屋についている電話で聞いてくれればある程度の便宜も図れるわ。」


「どうも。お気遣いありがとうございます。・・・ああ、明日は何時頃伺えばよろしいですか?」


「そうね・・多分昼頃までは空かないと思うわ。だから、一時位にこの部屋に来てもらえるかしら?」


「一時ですね、了解しました。では、失礼します。」

 



シンジが部屋を出るのを見送って脱力したように椅子に背を預けるリツコ。
充実したデータを得ることが出来たのは喜ばしいが、最後の短い会話だけで数倍の気力を使い果たした気分に陥る。

 



「碇シンジ・・ユイ博士と司令の息子。
 ・・”レイン”・・・並外れた戦闘能力・・・イレギュラーな存在・・
 サードチルドレン・・依り代の第一候補・・・・・・・・無理ね。今のままでは計画通りに動かすことなんて。」




好奇心に裏打ちされた熱狂が去ってしまえば容易く蘇る恐怖。
ある程度時間が経っているため、ケージで感じたほどの強い感情ではないが完全に無視できる物でもなかった。


それでも、ゲンドウの命令に逆らうことは出来ないのだ。
人類補完計画の遂行者としての役目と技術部長としての役目。

それぞれに課せられた職責に思いを巡らせながら、少しだけ目を閉じて体と心を休ませた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




「-------- コ?」

「-------ツコ」


「リツコ!!」

 



「は、はい!!って、何よミサト。そんなに大きな声で怒鳴らないで頂戴」

 



昨日の顛末を思い起こしている間に思考に没頭しすぎたようだ。目の前ではミサトが面白そうにこちらを見ている。普段冷静すぎる程に理性的な友人の滅多にない取り乱した姿が可笑しかったのだろう。気恥ずかしさを誤魔化すために素気なく言い放ったが、ミサトの視線は変わらなかった。

 

 

「なーによ。ぼ~っとしてるから起こして上げたんじゃないのよ。難しい顔して何考えてたの?」




ミサトの言葉に回想前の事も思い出して溜息を吐いた。

 



「・・・・昨日の事よ。貴方、本気で考える気があるのかしら?
 シンジ君と司令の交渉の内容次第では初号機が貴方の指揮下から外れる可能性も在る事を理解しているの?」



「なっ!!・・・・・・わかってるわよ。
 だけど昨日のはしょうがないじゃないの。あんまり邪険にするから思わずむきになったというか・・・」

 



相も変らぬミサトの言葉に頭痛すら伴う眩暈を抑えることが出来ない。最早司令の交渉能力に期待するしかないかと考え、ミサトの暴走を抑える役目だけに徹することを決める。シンジが訪問する前に、ミサトが落ち着いているようなら交渉の場に同席させることも考えて来てみたが止めた方がよさそうだ。適当に話を終えて執務室に戻ることにする。

 

 

「もういいわ。取り合えずその書類を確実に片付けることを考えなさい。じゃあ、私は部屋に戻るから。」


「ちょっと、リツコ~~?」




背中にかけられた声は無視して執務室を出る。未だに昼前だというのに激しい疲労が全身を支配している。
悠然とした足取りは変わらないが、その背中には哀愁が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 


常に薄暗い闇に覆われている広い部屋。人類補完委員会の会議を終えたゲンドウが冬月からの報告を聞いていた。




「昨日のうちに命じておいたシンジ君のDNA調査の結果だが、間違いなく彼は碇シンジ本人だ。
 まあこれは初号機にシンクロ出来た以上ほぼ確信できていたことだがな。
 次に行方が知れなくなってからの足取りを洗いなおさせているがこちらの報告はまだだ。
 昨日の今日だからこれは仕方がないな。時間を掛けたからと言って実際に収穫があるとは限らんが。
 それと、一緒にいたあの少女のことなんだが--- 」


「どうした。」



途中で言いよどむ冬月を促す。



「--- MAGIに情報が無いんだ。
 念のために死亡者含めて過去20年ばかり情報を洗ってみたが該当者がいない。
 セカンドインパクトの混乱期にデータを消失したのかもしれんが、全く何の痕跡もないとなると。
 可能性としては、生まれた時から裏の世界で生きて最初から公的なデータに接触したことがないか ・・・それでもMAGIのネットワークから逃れるなど至難の技だろう。特に今の社会では。 自ら全てのデータを消したか・・・これも考え難いがな。赤木博士に気付かれずMAGIに侵入・操作しているなどと。


 後は、そう・・レイのように人工的に生み出されて存在を秘匿されていたか・・ネルフよりも上位の組織に 」



「・・・・ゼーレ、か?」

 



ゲンドウの答えに黙って肯く。最も避けたいが最も可能性が高く思える。


ネルフが誇る第七世代コンピューターMAGIは東洋の三賢者の一人赤木ナオコの最高傑作である。ナオコの技術が全て注ぎ込まれ、娘であり後任を務めるリツコが全ての力を持って改良を繰り返してきたMAGIは既に世界中の情報を網羅していると言っても過言ではない。特に今の社会はあらゆる物をコンピューターが管理する。買い物一つとってもカードのように情報端末を使用するのだ。生まれた瞬間からその全てのコンピューターを避け続けて生活してきたなど考え難い。裏の世界に関わる人間が素性を隠すために、戸籍上は死んだ事にしたり他人の戸籍を乗っ取ることは珍しくも無い。それならそれで死亡もしくは出生のデータの痕跡くらいはありそうなものである。にも関わらず見つけることが出来ないという事は、ネルフの権限が及ばない上位者によって秘匿されていた、というのが最も自然な答えだ。



実際には、シオンのデータが全く無いわけではなかった。確かにMAGIに何度か侵入してある程度の情報を削除したが、それもリツコに見つからないようにほんの少し痕跡を誤魔化す程度のことだ。MAGIの操作方法をマスターしているといっても、情報を読むだけなら兎も角リツコに全く気取られないように情報の書き換えを行うのは至難の技である。最終戦が終わるまでにはなんとかしたいと思ってはいるが、今すぐには無理だ。

だから”蒼山シオン”としての戸籍まで自ら消したわけではない。ただ、今のシオンのデータと残されているデータが一致しなかっただけである。冬月は今のシオンのデータを入力してMAGIに検索させたのだろうが、MAGIに残されているシオンのデータは彼女が出生してから誘拐されるまでの間のものだ。研究所に連れ込まれアダム細胞の移植や投薬などの実験、果てには消滅から逃れるためにリリスとの融合を果たした過程でシオンの身体は遺伝子レベルで変化させられた。さすがに使徒の力を持っていることを知られるわけにはいかないため人間の身体に擬態しているが、それでも元のデータとはかなりの差異が生まれている筈である。その為にMAGIはデータの中に該当者無しと判断したのだ。
 

そうとは知らない冬月は難しい顔でゲンドウに相談する。

 


「どうする。もし彼女がゼーレの手の者なら、シンジ君をネルフに入れるのは危険ではないか?」


「・・・・・・・・・初号機を目覚めさせられるのはシンジだけだ。」


「それはそうだが・・・・今のシンジ君では計画の依り代にはならんだろう。あれ程強靭な精神を砕くのは容易ではないぞ。」

 



冬月は渋面を崩せない。武力行使が出来ず、ゼーレの関わりも疑える相手ともなればそれも仕方が無い。だが、ゲンドウは表情すら変えず続ける。

 



「シンジはあの娘に執着している。・・ならば、あの娘を利用すれば良い。
 それはあの娘自身にも言える。互いが互いに対する鎖になるだろう。」


「なっ!・・・確かにあの少女は彼のアキレス腱だろうな。だが、そう上手くいくか?」


「初号機を目覚めさせることが出来さえすれば良い。
 いざとなったら計画の依り代にはセカンドも居る。それまでは精々役にたって貰うさ」

 



ゲンドウの非情な言葉に驚いて見せたが、同時にシナリオを遂行する事を優先するならばそれが妥当かと考えていた。ほんの少しだけ擡げた罪悪感に形ばかりの反意を示してみただけだ。所詮は同じ穴の狢かと自嘲するように首を振り、持っていた報告書に印を押すと書類箱に放り込む。そして具体的な指示を出すために上げられた資料を手に取りこれからの予定を考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 


 

ネルフの通路を凄まじい形相で突き進む少女がいた。後ろには三人の少女と二人の少年が追いかけている。早朝の病院で、逸る心のままにマナに会いにいって寝起きの彼女に折檻されたムサシとケイタ。その騒ぎに目を覚ましたアスカが、昨日の戦闘の経緯を知ろうとネルフに行く為病室を出たところで行き会ったヒカリとマユミを引き連れて歩いているのだ。


アスカの心を支配しているのは不様に敗北した自身への怒りと自分が得るはずだった勝利の栄光を横取りした誰かに対する嫉妬。一体の敵に二機がかりで向かったというのに勝つことが出来なかった屈辱。

使徒を倒したのがマナでも他の予備チルドレンや候補生でもないなら、恐らくは欠番であったサードだろう。ずっと訓練をしていた自分を差し置いてエヴァに初めて乗っただろうサードに助けられた悔しさが複雑に交じり合いマグマの様に煮え滾る。ヒカリやマナの心配する声が聞こえていないわけではないが、答える余裕など無い。ただ熱く燃えるような感情に従って勢い良く歩き続けた。

 
 


  バンッ!

「-- ミサト!!」

 



たどり着いた執務室の扉を許可も取らずに開け放ち、大きな机を叩きながら怒鳴りつける。
行き成り乱入した少女の勢いに目を白黒させるミサトの様子などお構い無しに迫るアスカ。高く積み上げられた書類の山が崩れるのを目の端に確認しながら答えるミサト。入り口付近では、アスカをただ追いかけるしかなかった子ども達が所在無げに立ち尽くしている。

 

 

「な、なによ。どうしたのアスカ?」


「昨日の戦闘データを見せなさい!!アタシには見る資格があるわよね?」

 



ミサトの言葉には答えず更に迫るアスカ。眼前に迫るぎらついた青い瞳に気圧されるミサト。
何があったのかと後ろに居る子供達に視線で問いかける。代表してマナがアスカの迫力に慄きながら小さく答える。

 



「あ、あの、昨日ワタシたち使徒に負け-- ひっ!
 い、いえ途中で気を失って何があったか分からないので、出来れば教えて頂けないか、と」

 



「負け」という言葉に敏感に反応したアスカの視線に慌てて言い直すマナ。他の子供達も無言で肯く。今のアスカに逆らう愚か者は居ない。


そのやり取りを見て考え込むミサト。確かにアスカの気性なら、誰が使徒を倒したのか知りたがるだろうと思っていた。それが自分の敗北した敵であるのなら尚更。彼女に戦闘の映像を見せるのは簡単だ。作戦部でも資料の一環としてデータディスクを受け取っている。ヒカリとマユミはともかく、マナ・ムサシ・ケイタの三人も問題ないだろう。
 

・・・・だが、昨日の初号機の戦闘を見せて、彼女達はショックを受けないだろうか?あの初号機の動きは現存のチルドレンたちの誰のものも超越している。今までは名実ともにチルドレンのトップであったアスカでさえだ。その事実にプライドを傷つけられたアスカが如何出るか?彼女のチルドレンとしての自負はかなりのものだ。
彼女の存在意義と言っても良い・・・・・



無言で考え込むミサトにアスカが痺れを切らした。

 



「あーー!!もうっ!!何でも良いから早く見せろってんのよ!!」


「・・・・わかったわ。ただしこれは一応機密事項よ。
 アスカ・マナちゃん・ムサシ君・ケイタ君の四人は許可します。
 悪いんだけど洞木さんと山岸さんは席を外してもらえるかしら?」

 



ミサトの真剣な表情をみて居ずまいを正す。ヒカリとマユミはアスカとマナをちらりと見てから大人しく肯いて執務室を出て行った。残った四人はミサトの滅多に無い真面目な態度に背筋を伸ばした。

 

 

「さて、それじゃあ見せるけど、ここで見たものを外部に洩らすことは禁止します。たとえ候補生であってもよ。
 鈴原君と相田君には本人の希望があるなら私が教えるからあなた達が話す必要は無いわ。 ・・・・わかったわね?」


「わかってるから早くしてよ。」


「「「了解しました」」」

 




改めて告げられた言葉に肯く四人。思い思いの場所に陣取ってミサトが用意するモニターを注視する。そして再生される昨日の戦い。

 




勢い良く射出される二機が武器を構える。事前に伝えられた作戦通りにまず弐号機がパレットガンと武装ビルからの射撃によって使徒の注意を惹きつける。その隙に後ろから参号機が攻撃を加える。だが使徒の動きは意外と素早く、背中からコアを貫くことは出来ない。何とか片方の腕を半ばまで切り付けるが使徒に振り払われて武器が弾き飛ばされる。慌てて距離を取ろうとした参号機に向かって使徒がパイルを放つ。前方から攻撃しようとした弐号機にもビームを打ち込み牽制している。同時に両方の攻撃が出来るとは思っておらず、体勢を崩す参号機。だが使徒の方も弐号機からの攻撃でそれ以上参号機に追撃できない。エースパイロットを自負するのは伊達ではないと言うべきか、アスカの苛烈な攻撃に翻弄されて使徒は後ろを気にする余裕が無い。だが致命的な攻撃を加える事も出来ていない。その隙に新しく出されたソニックグレイブを持って攻撃に加わる参号機。未だ修復が終わっていない片腕に斬りつけてパイルを封じる。一度距離をとって必殺の攻撃を繰り出そうと構えていた弐号機が再び斬りつける。誰もが勝利を確信した瞬間。


甲高い音を立てて弐号機が持っていたソニックグレイブが真っ二つに折れ飛んだ。使徒のATフィールドに防がれたのだ。驚愕から一瞬自失するも直に飛び退る弐号機。それをみて参号機は弐号機が武器をとる時間を稼ぐために後ろから斬りかかる。だがこちらは片腕からのパイルで牽制されて満足に攻撃も出来ない。絶え間ない攻撃に体勢を崩した瞬間避け損ねたパイルに手と足を撃ち抜かれ、痛みに武器を取り落とす参号機。倒れた時の衝撃と腕と足の痛みでマナもすぐには動けない。あわや、という所で弐号機がソニックグレイブで斬りつける。フィールドを張り損ねて残っていた片腕を切り落とされる使徒。今度こそ勝利を確信し、返す刃でコアに斬りつける弐号機。もう少しでコアに届く、という所で、再びATフィールドに防がれる。舌打ちして間合いを取ろうとした弐号機にフィールドを張ったままビームを打ち込む使徒。敵の攻撃がフィールドを透過するとは思わずビームが直撃して弾き飛ばされる弐号機。今度は参号機が加勢しようと後ろからナイフで切り込む。が鈍った動きで使徒に十分なダメージを負わせることが出来ず、使徒のビームにナイフを構えている腕を焼かれて激しい痛みと衝撃に意識を手放す。何とか立ち上がり痛みを堪えて攻撃に移ろうと構えたところで、使徒のビームが撃ち込まれ再び昏倒する弐号機。弐号機も参号機も見るも無残に壊されて、崩れたビルの残骸の中に倒れ伏している。その脇で自己修復を始める使徒。


 

弐号機と参号機が撃破される場面をみて、アスカが忌々しげに歯軋りの音を漏らす。マナは固く両手を握り合わせて画面を凝視している。ムサシとケイタは想像以上に激しい戦闘に固唾を飲んで見詰め続ける。

 
 

そして初号機の戦闘シーンに差し掛かる。

 



モニターを睨むように見詰めていた子ども達の雰囲気が変わった。


アスカなど自分が倒せなかった敵をどう倒したのか見てやろう、という虚勢交じりの侮蔑さえ含まれていたというのに、今彼女を支配しているのは自分より遥かな高みに居る者への激しい嫉妬と圧倒的な実力への畏怖。愕然とした表情を晒して呆けたようにモニターを凝視している。


他の三人も似たようなものだ。
最も非合法な少年兵として、耐え切れなければ容赦なく生命ごと切り捨てられる軍事訓練を経験した三人はそれ程悔しいとは思わなかった。命がけの実力主義社会に身を置いていた事もあり、圧倒的な初号機の戦闘能力に感じたのは嫉妬というよりも絶対的な強者への畏怖と憧憬の方が強かった。それを正直に口に出すほど無神経な者も居なかった為、ただ黙ってアスカの様子を窺う。


映像が終わっても誰一人口を開かない。重い沈黙が部屋の中を支配する。

 



「・・・・・・・・なによ、あれ。」


「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 



呻くように搾り出されたアスカの言葉に答えるものはいない。
アスカの様子に気遣わしげに視線を向けるが何を言ったら良いのか分からない。ミサトは四人の様子を黙って見ている。

 



「・・・なによ、あれ。 どういうことよ!?なんで初めてエヴァに乗った奴があんな動きできんのよ? ATフィールドだって、あんな簡単に・・!!」

 



激昂してミサトに掴みかかるアスカ。その目には激しい怒りと嫉妬が渦巻き、髪を振り乱して問い詰める。

 



「・・・・・・わからないわ。彼は確かに初号機への高い適正を見込まれて選抜されたけど、
 あれ程の動きが出来るなんて完全に想定外のことだったのよ。ましてやATフィールドを使いこなすなんて--」


「ATフィールドを使いこなす・・・・?どういう、こと?」

 



ミサトの言葉を聞き咎めて問いかける。一瞬如何答えようか逡巡していたミサトだが真直ぐに見詰めるアスカに負けて正直に答える。

 



「サード・・碇シンジ君というのだけど、彼はATフィールドを完全に使いこなしていたのよ。
 使徒との戦いを見たでしょう?最後に使徒の身体を切り裂いたのはATフィールドを応用した攻撃だそうよ。なんでもフィールドを片手に収束させて掌を刃に見立てて使用したとか言ってたらしいわ。

 もう一つ言っておくわ。彼ね、初号機とのシンクロ率・・・・99.89%、よ。 」



「きゅうじゅうきゅうてんはちきゅう・・・・?」

 



告げられた事実にショックの余り言葉を失くす。
今のアスカのシンクロ率は70%強だ。調子の良いときでも75%に届くか届かないか位である。それでもチルドレンの中ではずば抜けた成績だった。それを、初めてエヴァに乗った少年が軽々と追い越したのだ。
 

感情が飽和して表情が抜け落ちる。俯いて微動だにしないアスカの様子に、やはり止めれば良かったかと後悔し始めるミサト。マナ達三人も黙ってアスカを見詰める。

 



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃない。」


「え?」



「・・・・・・・・・・・・・・上等じゃない。やってやるわよ。
 アタシは惣流・アスカ・ラングレーよ!!アタシに不可能なんてないわ!
 ぽっとでの素人サードに誰が本当のエースパイロットかすぐに思い知らせてやる!!」

 



何時までも動かない姿にどうしたものかと目を見合わせて無言で相談していたところで突然宣言すると勢い良く部屋を飛び出すアスカ。唐突な行動に唖然として見送る一同。乾いた風が吹き抜けた気がした。

 



「・・・・・・・・アスカさん、タフね~~」


「「ああ(うん)、そうだな(ね)」」

 



ミサトの執務室にマナの呟きが落ちる。開け放たれた扉を見たまま相槌を打つムサシとケイタ。ミサトは面白そうに笑って言った。

 



「さっすが、アスカってとこかしら。
 あの調子なら心配いらないかな?エースの面目躍如、期待してるわよ~」




先程までの張り詰めた緊張が霧散した部屋に、三人の子ども達の疲れた溜息とミサトの楽しげな笑いが響いた。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 














 

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