忍者ブログ
Admin / Write / Res
主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
<< 03   2024/04   1  2  3  4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18  19  20  21  22  23  24  25  26  27  28  29  30     05 >>
[92]  [91]  [90]  [89]  [88]  [87]  [86]  [85]  [84]  [83]  [82
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


 *『物語前夜』(惣流アスカ)→から続いてる二部目→(碇レン)に続きます。

*本編前の過去編
*レンと二人の幼馴染
*第一夜に少しだけリンクするレンの過去話



*レン以外のエヴァキャラが性別逆転して登場します





幼馴染二人へのイタチの想い


 

 

 

 


ふ、と目が覚める。
辺りは既に暗い。薬の調合法の書付を整理しているうちに寝入ってしまったようだ。少しだけ開かれた木戸の隙間から見える月の位置から計るに夜の11時くらいか。夕焼けに赤く染まった空の色をふと見上げた記憶から途切れている事を考えると、少なく見積もっても5・6時間は眠っていたらしい。ここ一週間で合算の睡眠時間が10時間弱だったと言う事を差し引いても寝すぎである。幾ら正式な戦忍ではないからといっても情けない位の己の体力の無さを実感して軽く落ち込む。
 


「あぁ、もう!!
 だからひ弱だとか、軟弱だとか馬鹿にされるのかなぁ。はぁ。
 ・・・まぁいいか。一回寝ちゃったんだから、少し食事とかして頭切り替えようかな」



深い溜息を溢しながら少しだけ愚痴を言って気分を変えようと勢いよく立ち上がる。柔らかな月の光に気持ちよさ気に目を細めつつ手早く書類や筆記具を片付け、書庫を出るため戸に手をかけた。

 


その時、静かな夜の空気が幽かに揺れた。獣ではない。巧妙に隠されてはいるが、誰か人間の気配だ。この屋敷が建つ土地は里の外れで、数年前から疎遠となった親戚連中を含めても用がある者等片手に満たない場所だ。しかも時間が時間であるから、普段であるなら誰か他人の気配など感じる筈もない。けれど、少女はちらりとも視線を向けることなくそのまま書庫を後にする。誰が訪ねて来たにしろ、急を要するなら気配を消して忍んできたりせず正面から入って来ればいいことだ。ならばどうせまた分家の人間が嫌がらせを兼ねた監視でも寄こしたのだろうと無視を決め込む。例え大事な用事であっても、自ら出迎える気にはならず、お茶でもいれようと台所に向かう。
 

と、途中で足を止めて振り返る。空気に混じる血臭に気付いたからだ。
同時に訪問者が誰かを悟り顔を顰めて方向をかえる。恐らく仕事の帰りで自分のか敵のかは知らないが、少し離れても匂いが届く程度には血で汚れているのだろう。そのまま家に入ればいいものを、室内を汚すのを躊躇って律儀に外で待つ彼の姿を思い起こして溜息を吐く。
 

普段は冷徹と言われるほど他者の存在など視界に入っていないかのような態度で気ままに振舞っているというのに、身内にカウントした相手に対しては変な気遣いを発揮する。その癖時間など気にせず訪ねてくるからわけがわからない。本人にとっては明確な基準があって行動しているのだろうが、そういうちぐはぐさが周囲の言うところの近寄りがたさを演出しているのだろうか。最もレンにとってはアカデミー入学前から付き合いのある幼馴染と言える相手だ。同僚や里人が彼について何と言っているかは知っているが、彼女に言わせれば只単に周囲に合わせたりするのが面倒で、態とぞんざいに振舞っているようにしかみえない。感情の機微が分かり難い性質であることも手伝って無意味に威圧感を与えるのは事実だが、一度理解してしまえばそれ程付き合いにくい相手ではないと思う。
 


(確かにとっつきにくいけど、そんなに怖がる必要もないと思うんだけどなぁ?
 まぁ、本人が気にしてないんだから別にいいけどね。
 ・・・まったく。何回言っても聞かないんだから。今更遠慮も何もないと思うけど。)


「おかえりなさい。・・汚れてても気にしないでいいから、早く入って。
 その血は自分の?敵の?
 自分のなら何処を怪我したのか正直に言いなさい。・・・・イタチ。」


 

言うと同時に、庭先に漆黒の影が降り立つ。
黒い髪を後ろで束ね感情を何処かに置き忘れたかのような鉄面皮。レンと同じ年の筈なのに、どこか老成した空気を纏った少年が、一目で任務帰りだと知れる姿で立っている。一見しただけでは何処も汚れていないように見えるが、更に強くなった血臭を感じて言葉が少しきつくなる。だがイタチは動じることなく静かな仕草で否定して縁側から室内に上がりこむ。



(動きに淀みはなし。
 血の臭いはするけど、多量、ではない位。・・返り血、かな)


視線だけでざっと確認して、イタチに向き合う。
真っ直ぐ見据えるレンに視線を合わせたイタチは、口元を隠していた布を下げると少しだけ笑ったようだった。

 

 

 

 

 

 

縁側に上がりながらイタチは苦笑する。
怪我の有無を確認するように体を見渡す少女の視線に目を合わせて口を開いた。



「怪我はない。少し梃子摺って返り血を浴びてしまっただけだ。
 ・・・すまないな、今回の任務で薬を使い切ってしまったんだ。
 同じものを用意してもらえるか?」


「了解。丁度新しいものも補充して整理し終わったところだから。
 いつものと同じ量でいいの? 
 (・・珍しい。そんなに大変な任務だったのかな? 何時もより疲れてるみたいだし。)」



抑揚なく淡々と話すイタチの静かな表情に、レンは少しだけ心配を滲ませた声で返す。だがイタチが口にしないことを無理に聞き出すようなことはせず、レンはにっこりと笑いながらもう一度最初の言葉を繰り返した。


 

「それより、おかえりって言ったんだけど?・・・返事は、イタチ?」


「・・・ただいま、レン。」



妙に迫力のある笑顔のレンに、呟くように言葉を返すイタチ。変わらない表情の中で、硬質な赤みを帯びた漆黒が僅かに和む。彼が、小言を聞き流すでも無視するでもなく拝聴して大人しく従うなど、一族や同僚の人間がみたら目を疑って自失するだろう程珍しい光景である。実力や忍としての才能には恵まれたが、人間性には多大な問題が山積していると評されるうちはイタチが、そんな風に接する相手などわずか数人しか居ない。その内の一人であるレンに対しては、イタチも素直に振舞う。どう繕った所でお互い無駄な事を良く知っているからだ。


 

「はい、おかえりなさい。今日もお疲れ様。
 じゃあ救急キットを貸してくれる?補充するから。その間、お風呂入って着替える?
 帰るのが面倒ならそのまま泊まっても良いし。寝間はいつもの客間ね。
 お腹空いてるならすぐ夜食も用意するけどどうする?」


「ああ、そうだな、」


「どしたの?何かおかしい事言った?」

 


矢継ぎ早に問いかけるレンに、イタチの口元も綻んだ。
滅多に表情を変えないイタチの苦笑が珍しかったらしいレンが、言葉を止めて見上げてくる

 


「いや?お前は変わらないな、と思っただけだ。」

「は?」

 


そのあどけない表情に気が抜けて、今更疲労が蓄積された体が重く感じた。
アカデミー時代から変わらない少し幼げなレンの笑顔を見ていると、気を張る方がばかばかしくなるのだ。


そしてその笑みに、初対面の時怯えたように目を逸らした少女が、修行中の傷を放置して情けなくも発熱した事に気づいた時の怒りの表情を思い出す。自分のほうが怪我をした様な顔で怒りながらイタチの傷を治療して、ぶつぶつと小言を言ってイタチを無理矢理救護室に引っ張り込んだ。手際よく寝かしつける優しい掌に気を抜いて半日寝込んだイタチが目覚めた時に、傍で覗き込んでいた紅味を帯びた漆黒の瞳に驚いた。気がついたイタチに体温計を押し付けて熱を測り、平熱になっていた事を確認した時に浮かべられた満面の笑みが、ただイタチの回復に対する安堵だけだったことに、どれ程衝撃を受けたのか、レンは知らないのだ。
・・・レンがイタチに向ける視線に、”うちはの嫡子”も”うちはの天才児”も映らない事が、どれ程イタチに安らぎを与えたのか全く気づかず、変わらない笑顔で笑う。
 

本当に、こんな風に手放しがたい存在を作るつもりなど無かったのに。
レンの気遣いをありがたく受け取りながら、自嘲を隠して返事を返すイタチ。



「気にするな。・・では、お言葉に甘えよう。食事は要らない。ありがとう。」

「うん?あ、じゃあお風呂温めてくるね。
 着替えは客間の箪笥に入ってるから。」

「ああ」

 

ぱたぱたと駆けて行く背中を見送って、客間に向かうイタチ。アカデミー時代は無かったが、下忍として任務に就く様になってから終了が遅くなった時など自宅に戻るのが面倒でそのまま互いの家に泊まりあうのが日常だった。だからうちはの家にも惣流の家にも着替えやその他の私物が置いてある。だが矢張り家人の要るうちはよりも、一人暮らしをしているレンや本宅ではなく離れやに自室を持つアスカの所に泊まるほうが圧倒的に多かった。

 

「・・・しかし、そろそろ不味いだろうか」


 

勝手知ったる、とばかりに殆どイタチの自室扱いになっている客間に入りながらぽつりと呟く。
特に己の血族に思うところがあり自宅すら敵地に近い感覚を持ってしまうイタチにとって、本当に気を抜けるのはレンの家とアスカの部屋だけなのだ。だからレンの好意に甘えて今でも頻繁に通ってしまっているが、幾ら幼馴染でも相手は女だ。自分にその気が無くても周囲はそう考えない。実際、アスカが最近レンの家に泊まるのを回避するようになったのは、それを意識し始めたからだろう。ならば、自分も遠慮するべきだったか、と思い立ったのだ。同時にこんな風に何気なく他人の恋路を心配して見せる自分に気づいて可笑しく思った。父や母に、今の内心を吐露したならば、きっと正気を疑って医師でも呼ばれかねないと思うほど、普段周囲に見せている自分とはかけ離れている事がとても可笑しかった。そんな己が、嫌いではないことが、何よりも可笑しいと、表情に出さずにイタチは笑った。
 

こうやって無表情を保つイタチに、もっと顔の筋肉を動かせと詰め寄ってきたもう一人の幼馴染の強気な笑顔を思い浮かべる。始めて会った時に忌々しげに睨んできた少年が、レンに仄かな想いを抱いている事を知っている。そんな他人の機微を気にする自分の変化に気づくたびに新鮮に思う。そんな”人間らしい”感情が備わっていたなんて、己を含めて両親すら考えもしなかったのに。
 

気づかせたのは二人の幼馴染で、下忍班の班員で、今では掛替えのない友人だなどと、最初は想像もしていなかったのだ。アカデミー時代、事ある毎に煩く関わろうとするアスカを忌避していた。スリーマンセルを組んでからも、多少は交流は持ったがそれでもあくまでただの班員でしかなかったのに。変わったのは、いつだろうと考える。

切欠は思い出せない。けれど、イタチを睨むアスカの視線が、酷く真っ直ぐだったから。アスカが負かそうとするのが、”うちはの嫡男”ではなく、アスカと対等の実力を持った”気に入らない同級生”でしかなかったから。
・・・アスカに見据えられるのが、嫌いではない自分に気づいた、その時が多分変化の瞬間だったのだ。

最近のイタチの楽しみが、アスカの一喜一憂する姿を見る事だなんて本人は知らないに違いない。素直になれずにからかいが過ぎてレンを怒らせるては後で肩を落とすアスカの姿は見ていて微笑ましいものだった。ついそんなアスカをまじまじと眺めては、八つ当たり気味に突っかかるアスカを宥めるのが実は楽しいのだなんて、
考えもしていないだろう。アスカとイタチがそうやって小さな諍いを起こすのを見て、喧嘩をするなとレンが怒る姿に、感じているのが二人と一緒に居る自分への安堵だなどと。

 

 

「不思議なものだ。」

「なにが?」

「っ、・・レン、か。」



突然背後から問いかけられて、本当に珍しいことにイタチが声を詰まらせた。
振り返る時には元の無表情に戻っていたが、当然気づいていたレンが目を丸くして見上げていた。その手にはタオルが抱えられている。

 


「ほんとにどうしたの。そんなに疲れた?」


「あ、ああ、そうだな。
 ・・・・いや、なんでもない。悪いな、では風呂を借りる。」


「ふぅん?じゃあ、お風呂入ったらそのまま寝てていいからね。救急キットは朝ごはんと一緒に置いておくから。
 あ、朝早いの?」
 

「午前中は非番だ。」


「そ、なら私が仕事行く時間に合わせても良いよね。
 起こさないからゆっくり寝てけば?」


 

どこか歯切れの悪いイタチの口調に、心配が不安に切り替わったらしいレンが、何気ない口調ながら休息を勧めてくる。余程疲れているのだと判断したらしい。イタチは少しだけ逡巡したが誤解をそのままに好意だけをありがたく頂戴する事にした。


 

「・・・そうするか。」


「うん、おやすみイタチ。」


「ああ、おやすみ。レン」

 



大人しく返事を返したイタチに一先ず安堵した様子でレンが調合室に向かう。これから頼んだ薬の用意をするのだろう。先ほどまで考えていた事の結論を先延ばしにする。・・・直ぐに結論を出せない事が、既に答だな、と笑いながらイタチは浴室に向かう。きっと、明日共に任務に就くことになっているアスカには不機嫌に睨まれて、詰め所で少しの小競り合いになるのだろう。それが後でレンの耳に入って二人揃って人前で騒がないようにとお小言を貰って、そのまま一緒に夕飯でも食べて。アスカが翌日の弁当でも強請って、了承したレンがまた三人で修行でもしようと言い出して、他愛ない話に興じて夜を明かす。
そんな心地の良い平穏に、もう少し浸かっていたいと思ってしまった。


この里で、うちはの嫡男として産まれた意味を思えば、きっとこれは許されない甘えなのだと、自覚しながら。

 

 

 

 

 


・・・・あの時の、自分の答を、今でも後悔できないことは、間違いだろうか、と考える。

 

 

 

 

 

 

 


明るすぎる月の光が照らし出す、里の闇の残骸を見下ろした。
立ち込める血臭。水滴の滴る音は全てが”里で最も尊い”と自称していた妄執の塊だろう。
深い夜の中で、それはただ黒い水にしか見えずに哂う。

倒れ付す影達に心を動かすほどの愛着をもてない事が、己の冷徹さを浮き彫りにする。
死に絶えた血族たちに、嫌悪しか抱けない事にも、何も思えないのだ。

なんて、薄情な。


けれど。




かたり、と背後で小さな気配が動く。
少しだけ口角を歪めて月光が作った影を見やる。
振り返った自分は、どれ程に冷酷な表情を浮かべられただろうか。

 

 


「愚かなる弟よ、----」

 

 


こんな茶番に、知らぬ内に巻き込んでしまうだろう、二つの特別を想った。

自分の人間としての心を、あの二人だけが、光に照らしてくれた。
この記憶だけがあれば、この身が泥濘に沈んでしまっても、”イタチ”という魂だけは残るだろう。

 


「十分だ。」

 


一度だけ、里を振り返り、そのまま闇に紛れる。

弟が、この命を奪いに来るのは、あと何年後だろうと考えて。


残されたのは、涼やかな夜の風だけ。

闇の中の惨劇を知らず、里の夜は更ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・イタチ?」

 


かさり、とゆれた気がした木立にレンは怪訝な声をかける。
けれど、そこには何の気配もなく、多分風が木の葉を揺らしたんだろうと室内に戻る。
何でイタチだと思ったのか疑問に思いつつ、連動してそろそろイタチに渡した救急キットの中身がなくなる頃だと思いついたから、その所為かと頷いた。思い出したなら今のうちに新しい物を用意しておこうかなと考えながら障子を閉めた。

 

 


何も変わらない、いつもと同じ夜だった。
少し月が明るくて、任務に出たアスカは大丈夫かと、思考に過ぎらせて普通に眠った。


何も、知らなかった。


変わらない明日が来ることを、疑ってもいなかったのだ。

 

 


そんな、夜だった。































拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
Name
Title
Color
Mail
URL
Comment
Password   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
secret(管理人のみ表示)
この記事へのトラックバック
この記事にトラックバックする:
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
性別:
女性
自己紹介:
ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



二次創作サイト様に限りリンクはフリーです。ご自由にどうぞ。








このサイトを少しでも気に入ってくださったらぽちっと押してくださると嬉しいです。
また、何か御用が御座いましたらメール代わりにご利用ください。返信は雑記でいたします


現在の拍手お礼:一ページのみ(ティアに厳しい。ちょっと賢く敵には冷酷にもなれるルークが、ティアの襲撃事件について抗議してみた場合:inチーグルの森入り口)
カウンター
フリーエリア
最新トラックバック
バーコード
ブログ内検索
P R
アクセス解析
Copyright ©  鶴群の一鶏 All Rights Reserved.
*Material by Pearl Box  * Template by tsukika
忍者ブログ [PR]