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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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こんにちは暁です。

60010 番 リクエストを下さった方、大変お待たせいたしました。
「「現実からの転生」で主人公最強のPT厳し目、できればゲームシステムを流用した戦闘もの」のssでございます。

まず、申し訳ございません。やっぱり戦闘場面は無理でした。そして、現実転生設定なのですが、完全なオリキャラにするべきかどうなのか迷いまして、現実世界のルークがゲーム世界に、という形にしてしまったのですが、よろしいでしょうか・・・?

PT厳し目はクリアできたと、思うのですが・・・・本当にすみません。こんな話では嫌だと仰るなら、なるべく頑張って書きなおさせていただきます。どうぞお申し付けください。


では、現実世界のルークが、ゲームの中で目覚めた場合のPT厳しめ話です。
セントビナーをでてカイツールに向かう途中の道中のお話。イオン様は少し贔屓気味。







 

 

 

 

 

 

 


”ルーク”は、とても疲れていた。

趣味の一つに剣道と鍛錬があるだけあって、体力には自信があった彼が、高々半日道を歩いただけで、もう二度と外の道なんか歩きたくないと思うほどに。


 

「(・・・・丈夫さと鍛えぬいた体力が、俺の唯一の自慢だったんだが。・・・・さすが、異世界)」

 


・・・・その疲労の原因を、とりあえず己の意思が介在しえない超常現象に求めるくらいに、精神が限界だった。

 


「(つーか。・・・・・・・・・・なんで、この!俺が!
 ・・・・・・・・・・・・・・・ゲームの世界なんかに飲み込まれなきゃなんねぇんだよぉ!!!!!!)」


 

音にはできない絶叫を、空に向かって吠える。

 

・・・・ルーク・ファブレ。17歳。在日独逸人の祖父母の血を引くおかげで、朱金の髪と鮮緑の瞳という派手な色合いで生まれはしたが列記とした日本国民。少し体が弱いけど若々しく優しく芯が強い母と、不器用ではあるが母と子どもへの愛は誰にも負けないと豪語する父と、ひたすら口が悪いが生真面目な双子の兄をもつ、勉強が嫌いで剣道と鍛錬と友人との遊ぶこととゲームが何より大好きな高校二年生。・・・・・そんな彼は、只今人類史上他に類に見ない厄介事に現在進行形で巻き込まれ中。


 

{(・・・・・・・他に同士がいたら是非会ってみたいね!!
 ・・・・・んで、俺だ!?・・・ローレライの、馬ーーーーーー鹿っ!!)」


 

この世界の神的存在を罵倒してみる。・・・・・・彼は、なぜかある日突然に、ゲームの世界・・・テイルズ オブ ジ アビスの中の登場人物、しかもゲームクリア後、この主人公の立場にはなりたくないと思わず呟いた「ルーク」(これも厄介極まりないことに同姓同名だった。興味を持ったきっかけでもあったが、余計に色々複雑だ)として、目が覚めてしまったのである。



「(なんでだ?!前日やっとゲームをクリアしたと思って寝たのが朝方だったのは覚えてる。で、たたき起こされたと思ったら、そのゲームの中だったとか、どんな悪夢だよ?!)」

 

 


「ちょっと、ルーク?あまりぐずぐずしないで頂戴。
 唯でさえタルタロスがなくなって日程が遅れているのよ。
 早くキムラスカに辿り着かなければならないのだから」


「ルーク、どうした?なれない旅で疲れてるかもしれないけど、ティアやイオンだって頑張ってるだろ?
 わがまま言わないでちょっと我慢しろって。」
 

「おやおやお坊ちゃんには少々きついですか?
 でも此処はあいにく温室の中ではないので、我儘を聞いてくれるご両親はいませんよ?」

 


・・・・さらには、目が覚めたときに周りにいた彼ら。ティア・グランツ、ガイ・セシル、ジェイド・カーティス。この三人が、何よりルークの精神を削り取る元凶であった。


 

「あの、ルーク?大丈夫ですか?疲れたなら少し休憩でも・・」


「ご主人様ー?」



この二人はまだいい。方や癒し系の年下少年。方やちょっとうざいが純真な小動物だ。17歳のルークには少々もてあまし気味の幼い直向きさが眩しいが、一行唯一の和み要素である。気恥ずかしいからぶっきらぼうにしか言えないが、この二人となら会話をするのもそれなりに楽しいと思える。だが

 


「導師イオン!ルークを甘やかすことはありません!!
 優しくするとすぐ調子に乗るんですから。」


「まあ、ちょっと休憩には早い時間だし。・・・まだ少しくらい頑張れるよな?ルーク」


「本当に困ったものですねぇ。私たちは急いでるんですよ?」

 


こいつらである。

偉そうに調子に乗るなとか言いやがったティア。・・こいつは確か神託の盾騎士団の師団長に特別訓練まで受けた士官候補生とかいう設定だったはずだ。今は新兵に毛が生えた程度の一兵卒でも最低1・2年位は専門に教育を受けた軍人が、ゲーム初期の時点で「ルーク」と同レベルってのはどういうことだろうか。しかも、屋敷内で嗜みの剣術しかしてなかった非戦闘員を、あろうことか守ると嘯いた次の瞬間に魔物の前に押し出して前衛での戦闘を押しつけやがった女である。ゲームプレイ時には、まあゲームだし・・・と流したが、実際本人と面と向かってこきおろされると苛立たしいことこの上ない。厚顔無恥な駄目軍人その一という認識しか持てなくなった。


 

「(調子に乗るなとかお前に言われる筋合いはねぇよ。
 どこの世界でなら非戦闘員に守られなきゃまともな攻撃も防御もできねぇ軍人の存在が許されンだよ?!・・・・魔弾のリグレットの特別訓練とか士官候補生としての学校入学とか・・・つくづく無駄設定だよな・・・どこら辺にその設定が生きる要素があったんだ?)」


 

胡乱な視線をティアの隣に移す。こいつもこいつだ。
「ルーク」の親友設定のガイ・セシル・・・確か現時点ではまだ一族の復讐を諦めていない筈だが、それにしたって仮にも公爵家で十数年も過ごしておきながら、此処まで「公爵子息」を使用人の己と同等・あるいは格下扱いできる神経を疑う。あくまで「ルーク」は復讐の対象でしかないにしたって、ガイの態度はあり得ない。本気で復讐をやり遂げる気があるって言うならもう少し本音と建前の使い分けくらい覚えろというのだ。本当に「ルーク」を友達だと思ってるならもっとありえないが。互いが対等の身分だとしても、最初から最後までルークを「我儘坊ちゃん」呼ばわりし続け「ルーク」の言葉を全て子どもの我儘だと切り捨てる行為を繰り返しても尚「親友」を名乗れるあたり、こいつも厚顔無恥その2だと認識するしかない。

 

「(・・・で、こいつだよ。)」

 

最後にマルクト国軍大佐のジェイド・カーティスに視線を移す。

こいつが一番あり得ない。徹頭徹尾「ルーク」を見下し切っていやがるが、それは仮にも職業軍人の成人男性がとっていい言動だろうか。こうつにこそ本音と建前の使い分けを覚えろと言いたい。・・・・・ルークは確かに頭が良くない。ゲーム世界の「ルーク」もだが、自分だって趣味である剣道とか遊びとかに夢中で学校の成績は常に赤点を辛うじて免れる程度のレベルだ。(赤点を免れる程度には勉強している。補習や追試なんて面倒な事に時間を浪費するなんて無駄の極みだからだ。そんなことする位なら、剣道の練習時間や鍛錬の時間を増やしたいし、友達との約束も儘ならないではないか)
しかし、である。仮にも一国の皇帝から名代を任され、今の今まで小規模から大規模なものまで延々争いを繰り返してきた敵国へ、和平を申し込みに行く使者の態度として、あり得ないほどに致命的な言動だということくらいはルークにも理解できた。何故、ルークにしか理解できないのかが、現時点で最大の謎であるが。

 



「・・・・・・・あの、なぁ。かなり疑問に思ってるんだが・・・・ジェイド。聞いていいか」

 


どんな理屈でゲーム世界の登場人物になり替わる、などという現象に巻き込まれているのか知らないが。もうなるようになれとヤケクソで開き直ったルークは、取りあえず口に出して疑問をぶつけてみることにした。腹の内で吐き出していた厚顔無恥その1その2への愚痴は無理やり飲み込む。苛立たしいが、面倒だからだ。

 



「おや、なんです?お坊ちゃんの教師は、そこの従者殿にお任せしますよ。私は忙しいのでね。」


「なんだよルーク?俺にこたえられることなら教えてやるぜ?」


「俺はジェイドに聞きたいんだよ。」


「ちょっと、ルーク!あなたそれはガイに失礼よ?」



途端口を挟む二名を黙殺する。ジェイドにのみ視線を合わせていると、面倒そうに肩を竦めてこちらに向き直った。

 


「・・・なんですか?急いでいるので、手短にお願いしますね。」

 


無視されて不満げな二人がルークを睨むが、ジェイドの言葉は遮れないのか黙った。イオンは唯首をかしげて成り行きを見つめ、ミュウはルークの傍に近寄ろうと地面を転がる。

 



「・・・・・ずっと、思ってたんだが。ジェイド、お前、なんで俺を馬鹿に出来るんだ?」


「は、なんです、お坊ちゃまは私の態度が気に入らないと?ですが生憎・・・」


「お前が個人的に俺を嫌ってるのはどうでもいいんだよ。
 俺だってお前なんかに好かれようと思ってねぇし。

 そうじゃなくてだな。・・・・お前、俺の身分を言ってみろ。」


「なんです、今さら。キムラスカ王国の第三位王位継承者、ファブレ公爵家のご子息でしょう。」


「ルーク?」

 


呆れきった眼差しに侮蔑まで乗せるジェイド。不思議そうなイオンとミュウ以外の二人も、またか、とでも言うように見下す視線でルークを眺める。「我儘お坊ちゃん」をジェイドが言い負かすのを待てばいい、とでも思っているのが丸わかりだ。

 



「それを知っていながら、全く理解していないようだな。
 ジェイドはこれから、元敵国のキムラスカに和平を申し込みに行く筈だな?」


「そうですね。」


「なのに、何故、俺をあからさまに見下す態度をとり続けるんだ。」


「なんです?私が貴方に丁重な態度をとらないのがそんなに気に入りませんか?」


「・・・・・・・・・・お前、そんなにキムラスカと戦争を起こしたいのか。」



「「「ルーク!!?」」」

 



冷めきった眼差しでジェイドに吐き捨てると、途端耳障りな声で呼ばれる。

 



「貴方、いい加減にして頂戴!
 大佐に向かってその態度を改めなさいと何回言わせるつもり?!
 戦争を起こさないための使者に失礼でしう?!」


「ルーク、あんまり困らせるなよ。何が気に入らないんだ?」


「ルーク、どうしたんですか?」

「ご主人様ー?」

「・・・・・」

 


うんざりする。とりあえず純粋に疑問だけを浮かべるイオンに向きなおりながら、すり寄ってきたミュウを肩に乗せる。

 

「イオン、敵国と和平を結ぶってことはだな、分かりやすく個人の問題に当てはめると、喧嘩してた相手に謝りに行くとかして和解するってのと同じようなもんだよな?規模に天地の差があるが。」
 

「ええ、そうですね。」


「でだな。例えば、俺が・・・・ガイでいいか。ガイとものすごい喧嘩をしたとする。で、顔を合わせればその喧嘩の原因を持ち出して、延々といがみ合いを続けたとするな?」


「はい。」


「で、例えば俺がいい加減喧嘩を止めたくなって、仲直りするために、イオンに仲裁役を頼むとするな?」


「はい。」


「仲直りするには、片方からだけでも謝るのが一番だ。それをガイが受けてくれれば喧嘩は終わりだ。
 そう考えて謝罪をしようとした俺が、ガイのところへ謝りに向かう途中で、ガイの大切なもの・・・コレクションの音機関とかを、偶然拾ったとするな?」


「?はい」



「俺はガイとどうしてもすぐに仲直りがしたくなっている。
 だがずっと喧嘩をしていた所為で流石のガイも気分を害しているだろう。
 謝っても直ぐには許してもらえないかもしれない。」



「はい。」


「でだ、最初はイオンが仲裁してくれるからと二人でガイのところに向かっていた俺だが、途中で偶然ガイのコレクションを手に入れたわけだ。」


「はい」


「俺がそこで、「このコレクションを無事に返してやるから、俺と仲直りをしろ」とか、いったとしたらだ。・・・・どうなると思う?」


「・・・・それは、ガイはさらに怒ってしまうと、思いますけど・・・」

 


ルークのたとえ話を聞いていたイオンが自信なさ気に答える。傍らでルークを馬鹿にしきっている三人も同様に頷く。



「当然だな。仲直りを申し出ておいて、相手の大事なものを盾にとるような事をするなんて、さらに喧嘩を売っているようなものだ。ましてやそのコレクションを乱暴に扱ったり、馬鹿にしたりしたとしたら、ガイはもっと怒るだろうし、その場で絶交されても文句は言えない」
 

「そう、ですね・・・・?」


「・・・・このたとえ話だが。・・・・・・今の状況と、全く同じだと思わないか。」


「「「「・・・・・・は?」」」」

「みゅうう?」


唐突に現状に話が戻って間抜けな相槌を打った四人が首を傾げる。
話事態を飲み込むのに時間がかかっているのか首をかしげて落ちそうになるミュウは、とりあえず肩から下して道具袋に入れてやる。少しおまえは休んでろと言いつけて、面々に向きなおった。

 

 

「喧嘩してた俺とガイは、それぞれ、マルクトとキムラスカ。
 謝りたくなった俺はマルクトと同じ立場だな、和平を申し込むのはマルクトなんだから。
 ・・・そうだな、ジェイド?」


「まあ、そのたとえ話に当てはめるなら、そうですね。」

 


だからなんだとでも続けたそうなジェイドを無視してイオンに言う。

 


「で、仲裁役のイオンはそのままの役割で、今此処にいる。」


「はい」



頷くイオンからティアに視線を移す。



「謝りに行こうとする俺とイオンは、和平を申し込もうとしてキムラスカに向かう俺たちと同じだな?ティア」


「そうね。」



ガイにも確認するように問う。



「でだ。たとえ話の中で、俺が拾ったガイのコレクションは、
 ・・・・偶然マルクトに飛ばされた俺と同じだと思わないか?ガイ」



「・・・・・ああ、まあ、そう、なるか?」



そこで、四人を見回してルークは言葉を重ねた。

 


「・・・・此処まで聞いて、まだわからないのか?」


「・・・・・・・・・?・・・・・!!!!る、ルーク。あの・・」

 


じっと考え込んでいたイオンが、一瞬で顔色を蒼白に変えてルークを見上げる。
それを見ながら、ジェイドを睥睨するルーク。これで理解できないなら、此処がゲーム世界で、自分が本来よそ者だろうと関係ない。もうすぐ辿り着くはずのカイツールで兵士に捕縛を命令しようと思う。仮にも「公爵子息」なら、その程度の権限はあるだろう。



「イオンしか、わからないのか?

 ・・・・・ジェイド。お前は、俺が公爵子息で第三位王位継承者だと知っているはずだな。
 どちらの身分であっても、結構な国の重要人物だとは思わないか?」



「そうです・・・・・・!!!・・・そういう、意味、ですか?」

 


面倒そうに相槌を打とうとしたジェイドが、言葉を途切れさせてルークを見た。
確認する声は動揺に罅割れて、余裕に満ちた態度が揺らぐ。

 


「そういう意味だ。・・・・で?俺の最初の質問に答えてもらおうか。」


「・・・・・大変、失礼いたしました。申し訳ございませんでした。
 これまで重ね続けました無礼は私個人の不始末でございます。
 どうか、咎は私個人にお願いいたしたく・・・」


 

ただ呆れきった表情で腕を組むルークの面前に進み出ると同時に平伏したジェイドが恭しく告げる。プライドがどうこう言っている場合ではない。一度気づいてしまえば、数分前までの己に対する殺意しか浮かばない。イオンもジェイドの態度を当然と受け止める。・・・理解できなかった二人が騒ぐさまを、珍獣でも眺める視線で凝視する。



「大佐?!・・・・ルーク、貴方本当にいい加減にしなさいよ?!」


「おいおい旦那?どうしたんだよ?・・ルーク、お前も見てないで、」

 


深く、ため息。

 


「イオン。・・・・ティアは、神託の盾騎士団の所属だそうだが・・・・・」



「いえ、・・・どうぞご存分に処分なさってください。僕は、・・ダアトは、ティア・グランツを庇いません。」


「そうか、感謝する。で、ガイはファブレの使用人だから、俺の一存で決めても問題ないな。(身分重視の王政国家なら、無礼討ちとかそれに相当するもん位あんだろーし・・・・実際に生きて動いている人間でありながら、都合のいいことに、こいつらは、「ゲームの登場人物」で「主人公PTのメンバー」なんだよな。)」

 



そこでルークは騒がしい二人に向き直る。ルークがいるこの世界には、非常に都合のよい「ゲーム世界」の要素と、実在人物故の便利な法則が存在するのだ。それは、

 


「つーわけでだ。・・・・烈破掌!」


 

徐に技をガイに叩き込む。まさかルークが攻撃するなどと思ってもみなかったガイは、まともに受けて後方にふっとぶ。この技は初期で習得可能なだけあって、いくらガイが物理防御が低めといっても一撃で戦闘不能にはならない。しかし、


 

「うわぁ!!」「きゃあ!!」

 


狙い通り、ガイの体がティアにぶつかって重なって倒れこむ二人。

 


「でぇ・・・くらっとけ!鷹爪豪掌破!」


「「ああああ!?」」

 


続けて技を重ねて放つ。
初期のため、レベルが然程高くない二人は一たまりもなく膝をつく。


「ゲーム世界」要素と、程よく現実的な要素が重なっているからこそ可能な二重攻撃。ゲームプレイ時はこんな滅茶苦茶なコンボで二人一緒にダウンさせるなど不可能だ。そもそもどちらの技も単体攻撃用である。少なくともルークには無理だ。だが、ルークは今この世界に「実在」しているのである。

実際に吹っ飛ばされた時、その射線上に他者がいれば普通はぶつかりあって転倒なりする。ましてやティアだ。あの非力さでガイを支えて受け身をとるとかいう技能が備わっているはずがない。・・・・ゲーム初期に何回詠唱を中断させられたと思ってやがる。と吐き捨てつつ二人を見下ろす。案の定まともに技のダメージをくらっているのが分かった。ゲーム設定そのままなら、戦闘不能にしなければHPが一桁を切ろうが普通に戦闘続行が可能なはずだが、ガイもティアもそんな余裕は見受けられない。ご都合主義万歳。
ついでに、何故か勝手に備わっていた経験知10倍の恩恵にも感謝しておく。・・・1週目クリア程度で買える品ではなかったはずだが有り難いので素直に享受する。お陰でPT中一人飛びぬけたレベルを誇っているルーク。程よい現実要素にモノを言わせて夜中一人で魔物を退治しまくった甲斐もあるというものだ。

 

 


「・・・・・俺はな?何時までも何回言い聞かせても物事を理解しない様なお前らに言葉を重ねてやるほど親切じゃねぇんだ。」


 

つかつかと二人に歩み寄ると凄味のある笑みを浮かべて見下ろす。
いくらダメージを受けても、戦闘不能にならない限り、普通に動くことが可能な体。
多少の現実要素故見るから瀕死一歩手前の様相だが、起きて動けるならルークは構わない。



「でだ、取りあえずイオンとジェイドが理解できてるならもう良いことにした。
 ・・・・・馬の調教だって鞭を使うものだし、人間相手にも「飴と鞭」っつー言葉もあることだし。
言葉が通じないなら、体に覚えこませるだけだよな?」

 



にこり、と笑う。たったいま、仲間の筈の二人に容赦なく攻撃技を繰り出しておいて、その神々しいまでに晴れやかな笑顔。向けられたガイとティアは、戦慄しか感じられない。ルークの背後で平伏したまま頬が真っ青になっているジェイドと、何故かうっとりと頬を上気させているイオンの姿が対照的すぎて一層の恐怖を煽った。


 

「これから、俺たちは一緒にキムラスカに向かって和平の申し込みという重要任務を成功させるわけだが。 ・・・・・それを成功させるために、邪魔もの(つーか、俺の精神を消耗させる障害物)は徹底排除、の方針で行くから。敵、味方、関係なく。」


わかったな?


 

何やら不穏当な副音声が聞こえた。
が、ガイとティアに、拒否権は許されていない。それだけはよくわかった。

・・・ルークの目は、マジだ。もし逆らったら、再び容赦のない制裁を加えられることを確信する。
本能的にレベルの差も感じ取ってしまった二人は、反射的に上げかけた反論を飲み込んだ。

 


「・・・・まだ分からねぇようなら、もう一回、(体に)教えてやろうか・・・・?」



「「はい、いえ!!とてもよく理解できました!」」

 



黙ったままの二人に、微笑んで可愛らしく首を傾げるルーク。今までの数分で骨の髄までこの場での上下関係を思い知らされた二人は、屈辱など感じるより先に良い子のお返事を返していた。

・・・だって、その笑顔、超怖い。わざとらしく構えようとする右手も恐怖材料だ。一瞬でも返答が遅れていたら、もう一度二人を沈めるつもりだったとわかる残念そうなため息。


 

「(ちっ。もう一回位今度は全力でぶちのめしてみたかったのに・・・)
 ・・わかれば良いんだよ。わかれば。」


 

それを数秒眺めて、内心で舌打ちしつつも仕方なく肩の力を抜く。いくら鬱憤がたまっていようと、流石に無抵抗で恭順を示した相手を更に殴り飛ばすのは気が引けたためだ。

・・いくら「ゲーム世界」要素の特権として剣で切っても本当には死なないといえ、ルーク的に後味が悪いからと打撃系の技を選んでやったのだが・・・・「ルーク」の通常攻撃である剣よりも、「技」でのダメージのほうが遥かに大きいことは丸ッと無視した。どうせ本当に戦闘不能になっても蘇生可能な「主人公PTメンバー」だ。目覚めた初期知らん顔で彼らが戦闘不能になった時どうなるのか観察したため、本当に死なせるほどのダメージは与えられないと確信していたから出来る荒療治である。

 



「よし、じゃあ行く、・・・・・ぞ?」

 



ため続けたストレスを一時的にでも発散出来て、この世界で目覚めてからの日々の中で一番清清しい気分だ。よし、じゃあ先進むかーと、振り向く。わざと放置していたジェイドを取りあえず立たせて先に急ぐかと声をかけ掛けて不自然なものを発見する。振り向いた先には平伏したままのジェイドと佇むイオンが視界に入る。それは良い。が、顔色を青ざめさせたジェイドの横に、立つイオンが、何だかものすごく

 



「ルーク!!」


「あ、ああ、なんだイオン?」

 



周りに花でも飛ばしそうな満開の笑顔で、頬を上気させてルークを呼んだ。勢いに押されて口ごもるルークに駆け寄ると、ぎゅう、と手を握られる。

 

 

「ええと・・・どうした?」


「あの、ルーク!お願いがあるんです。」


「ああ、俺がきける範囲なら構わないが・・」

 


きらきらと輝く目で見上げるイオンが、可愛らしく強請る。常に遠慮がちなイオンには珍しい事だと思いながらも、子どもには基本的に優しいルークが頷いてやる。するとますます瞳を輝かせたイオンが、元気よく言い放った。

 


「あの、ルーク!!これから貴方を、師匠と呼ばせてください!!」


「は?」


「僕今まで、未熟な自分が考えるよりは、と思ってなるべく周りの人たちの意見を取り入れて行動しようと思ってたんです。 アニスも良く僕が世間知らずだって言ってましたし、無知ゆえの行動で迷惑かけるよりは、と思って・・・でも、良く考えたら僕って導師じゃないですか。つまり僕がダアトのトップなんですよね。・・・・ならば本来なら、例え僕が多少無知でも、それを補佐してこその部下であるはずですよね?!アニスは勿論ヴァンやモースも!!」


「・・・まあ、そうだな?」


「それを、僕が黙って従っているのを良いことにどいつもこいつも好き勝手しくさって、特に大詠士モースは部下の癖に偉そうに・・・!ヴァンなんか直属の腹心ともどもあからさまに僕を軽んじるし、アニスなんか守護役にも関わらず、僕をまともに守ったことがないことにも気づいてしまいまして!」」


「・・・ああ~、まあ、タルタロスでは六神将のラルゴやリグレットは命令口調だったし、アッシュに至っては・・・なあ?」


「そうなんです!!ですから!僕もルークを見習ってみようと思うんです!
 世の常識である身分階級職業における相対的な上下関係というものを、有象無象に覚えこませる術を、是非!!実践してみようかと!」


「あ~~~~~~、そうか。・・・まぁ、頑張れ?」


「ありがとうございます!!そこで、是非、ルーク師匠にご指導いただきたいのですが!!
 取り合えず練習を兼ねて、守護役の癖に導師の僕を放って一人安全圏に逃げやがった失格軍人を血祭・・げふっ、いえ、教育してみようと思いますので!!」


「ああ、・・・・良いんじゃないか?(確かにアニスが守護役っつーのもどんな無駄設定かとずっと思ってたことだしな)」


 

勢い良く物騒な決意を述べるイオンに気圧されていたルークだが、段々と口元に笑みが浮かび始める。確かにイオンの扱いはどう見ても一組織のtopとしてあり得ない位に蔑ろだった。個人としての好意は持っていたようだが、上司としては全く敬うことをしなかったアニスの行動が良い例だ。モースもヴァンなど論外で、神託の盾騎士団の一般兵ですらタルタロス襲撃中にイオンを保護しようとする素振りもなかった。それを吹っ切ったイオンが変えてやると張り切っている。


 

「(・・・ちょっと、良いかもしれない。)よし、わかった。」

 


幼いころから剣道を嗜んできたルークは、武道を学ぶものとして、先達者は敬うもの、後輩は可愛がりつつ面倒を見てやるものだという思考が根付いている。そして目の前には、純真な眼差しで憧れと尊敬を伝えてくれる年下の少年であるイオンがいる。


 

「(一応、異邦人としての節度は保つ積りだったんだが・・・・どうでもよくね?今現在「ルーク」は俺だし。「ルーク」が主人公のゲームなんだし。したら、主人公の行動如何でEDがどう変わるかっつーのが、物語の醍醐味だよな・・・?)・・・イオン。」


「はい!」


「気が済むまで存分にやれ。可能な限り手助けしよう。変わりにお前も、俺を助けてくれ。」


「勿論です!ルーク師匠!!僕頑張ります!」


「ああ、頑張ろうぜ!
 先ずは己の立場をわきまえないアホどもに、身の程を思い知らせてやることからだ!!


「はい!」

 



とっても良い笑顔で熱く語るルーク。戦々恐々と二人を見上げる外野など総無視で、突然出来た可愛い弟子に色んな事を教える、という行為に張り切っている。その内容が、所謂武力制裁と呼ばれるものだという事実も無視だ。

 



「よっしゃ!じゃあ、早速行くか!」


「はい!師匠!!」


 

夕日に照らされた浜辺に置きたい位に、熱血青春漫画なのりで、何かに目覚めちゃった少年導師と、不幸にも異世界トリップなんぞを実体験中の現公爵子息は熱い握手を交わす。そして意気揚々とキムラスカに向かって歩き始めた。もの凄い早足で。道具袋から頭を出してルークを見上げようとしていたチーグルの大きな耳が、風圧に靡く。・・・競歩並みの速さだ。イオンの病弱設定はどこに行ったのだろうか。

 

それを、呆然と見送ってしまった三人が、ルークたちの背中が小さな点になる位離れてしまってから、はっとあわて始める。

 


「・・・・!!!お、お待ちください!!」



まず更に顔色が悪化したジェイドが追いかける。
己の立場を正しく認識した彼は、自国の皇帝にも使ったことがない敬語で叫びながら二人を止めようと走り出した。・・・・あの二人を暴走させたら、色々恐ろしすぎないか?!

 

 

「ま、待ってくれルーク!・・様!!それは、それはちょっと不味いんじゃぁ?!」

 


次いでガイが追う。
先ほどの”教育”が余程こたえたのか、ルークを敬称付きで呼びながらも慌てるあまり普通の口調で叫ぶ。だが構っていられない。二人に先ず思いなおして貰わなければ、なんだか先々怖すぎることになるんじゃないかと思うのだ。・・・取りあえず自国のキムラスカも、本来の自国のマルクトも、中立のはずのダアトも!!

 

 


「待ちなさ、・・待ってください!イオン様、ルーク?!・・・様!
 お願いですから落ち着いてーーー!!」


 

ティアも満身創痍のまま必死に走り出した。
理論立てた思考を浮かべるよりも、本能的な恐怖に後押しされて、二人を制止し様と声を張り上げた。

 

 

 

 

「「「和平は?!」」」

 


「任せろ!(どーせ一度は受け入れんだし、後はそれを撤回させないように見張って操作しとけば万事解決だから!もういっそキムラスカ制圧してもいいし!) ちゃんと、説得してみせっから!(道中あげまくったレベルにものを言わせて!)」
 

「万が一モース辺りが邪魔するなら、僕がちょっとアカシックトーメ、げふ、お話して説得してみせますからーーー!」

 


そろって叫んだ三人に、遠くからルークとイオンの答えが返る。全く、安心できない朗らかすぎる口調で。

 


「「「違う!もっと穏便にーーー!!」」」


「「十分穏便だろ(でしょう!?)」」


「「「どこが!?」」」


「「ははははは」」

 

 

色々突き抜けてしまった少年二人の笑い声がフェードアウトする。それを決死の形相で追いかける三人。

 


・・・・オールドラントの未来を賭けた、壮絶な鬼ごっこの開始、である。

 








 

 

 
















 

 

 









 

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ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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