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フランツ・グリルパルツァーの「接吻」をテーマに、アリエッタ×被験者イオンver
お礼小話:フランツ・グリルパルツァーの「接吻」でアリエッタ×被験者イオンver
「・・イオン、様・・抱きついても、いいですか?」
「どうしましたアリエッタ。珍しいですね。勿論かまいませんよ。どうぞ」
就寝前、何時の間にか習慣になったアリエッタとの一時。
魔物の女王に育てられたという彼女は、主席総長であるヴァンが連れ帰ってきた新しい守護役だ。育った環境上言葉遣いや人間の常識に疎くはあるが、嘘がなくまっすぐに他者を見る眼差しが美しい少女だ。虚飾に満ちた讃辞や本音を隠した建前だけの会話などに疲れていたイオンにとって、アリエッタはその存在自体が何よりの支えであった。
・・・既に兆候を見せ始めている己の病を治すすべを今更望む位に、大事な存在になっていた。
「どうしたんですか?アリエッタ。何か不安なことでもありましたか。」
「何でも、ない、です。・・ただ、イオン様の傍にいることを確かめたかった、です」
そうっと壊れものでも扱うように腕に力をこめてぴったりと張り付く少女のぬくもりが、イオンの心を穏やかにさせる。けれど、もうすぐこの場所に自分はいなくなるのだと考えると、胸の奥がすうっと冷えた。
最早治す術のない己の病を消し去ることが出来るなら、・・彼女のそばに居続けることが叶うなら、魂すら売り渡しても構わないのに。ぐりぐりと獣がマーキングをするかのように首筋に顔をこすりつけるアリエッタの髪を梳きながら、中空を睨んで内心で吐き捨てる。
「(魂を代償に運命を歪めてくれる悪魔すらこの世界には居ない。
・・いるのは忌々しい預言とそれに盲従する人間だけだ。)
ふふ、アリエッタが甘えてくれるなんて嬉しいですね。
いつも僕のことを守る為に気を張ってくれていますから少し疲れたんでしょう?
今日はこのまま眠ってしまっても構いませんよ。ちゃんと明日の朝早くに起こしてあげましょう。
・・おやすみなさい。」
内心で吐きだした侮蔑をアリエッタには決して悟らせないようにやさしい声音で少女の体を寝かしつける。
恋とか愛とか、そんなはっきりと区分されるような感情かどうかはわからない。
けれど彼女の心を守るためならば、自分の全てを捧げても良いと思ってる。
例えそれが、己の居場所を自分以外の存在に明け渡すことであっても、彼女が泣かずに済むのなら構わないと言いきれた。
・・心の内が嫉妬で荒れ狂っても、全てを抱えて綺麗に消えて見せようと決めていた。
己の死が免れない運命ならば、その程度の歪みくらいは残してやると決めたのだ。
だから、ヴァンやモースの下らない計画に従ってやったのだから。
「・・・イオン、様。・・アリエッタの傍から、居なくなったり、しませんよね?」
「・・・大丈夫。僕は、ここにいます。だから、安心して、おやすみなさい。」
首筋に彼女の吐息を感じて、ああそういえばキスを落とす場所には意味があるのだと詠った詩人がいたなと思いだす。確か、その一節で、腕と首へのキスは欲望を表すと言っていたか。
・・・・彼女の欲望の、なんと純粋なことかと密やかな声で笑った。
眠った少女のあどけなさが一層笑みを誘う。
「首へのキスは、欲望、ね。
・・・ねぇ、アリエッタ。貴方は、僕に生きてそばに居てほしいと、そう望んでくれているのですね。
僕も、あなたの傍で、生きていたい、です。」
窓の外には月の光に照らされた木々がそっと梢を揺らす。
静かな風がどこか甘い香りを運んでくる。
膝に眠る少女のぬくもりが、イオンの心を癒す。
・・・もうすぐ自分が失ってしまう全てを瞳に焼き付けて、きつく瞼を閉じた。
「・・・僕も、あなたの傍で、生きていたい、です。」
もう、叶わなくなるけれど。
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