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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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注記:♀シンジ(=碇レン)in N/A/R/U/T/O のクロス作品です
    スレナル設定でお送りいたしております。

更に注記:このシリーズは、ナルト×碇レン傾向基本のお話です。
       苦手な方はご覧にならぬよう、お願いいたします。



幼い頃のイノ・シカマル・チョウジにとって、世界に必要だったのはお互いと辛うじて両親を含めた8人だけだった。3人は互いが共にあれればそれだけで良いと思っていたし、それ以外はただ義務として守らなければならない対象でしかなかった。

里も生まれた一族も大切なものだとは理解していたが、実感はしていなかった。
忍の義務を果たす覚悟はあったが、里に対する愛着はなかった。
必要に応じて他者との協力の必要性は分かっていても、信頼も信用もしなかった。
なまじ高い能力を有していた為に、それが許されてしまっていた。
両親や火影は三人の在り様を危ぶんでいたようだが、何が悪いのかはわからなかった。

ずっとそのまま生きるのだと思っていた。義務さえ果たせばそれでいいと考えていた。

 

・・・それを変えるきっかけをくれたのは、眩く気高い金色と、深く優しい漆黒だった。

 

 

 

 

小さな世界しか知らなかった幼い子供はもう居ない。

 


自分の意思で未来を選んだ子供たちが、今を笑って生きている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 

 

 

 


さてアカデミー新卒業生班分け翌日。
爽やかな春の風が吹く気持ちの良い広場にて、三人の子どもが苛立ちながら一人の大人に食ってかかった。

曰く。


「「「遅い!!!」」」


「先生!いま何時だと思ってるんですか!
 (ふざけんな!しゃー!んなろー!乙女の貴重な時間をなんだと思ってんのよ!)」

「朝六時集合つったの誰だってばよ!
 朝飯抜きでこんな時間まで待ちぼうけってどういうことだってばよ!」

「フン・・・、ウスラトンカチが。」

 

まあ、朝六時集合の筈が、待てど暮らせど担任は現れず。空腹も手伝い苛立ちが最高潮に達した4時間後。既に太陽も中天にかかりかける時間になってようやく現れた担任が、罪悪感の欠片もなくのんきに挨拶などしてきたならそれも当然だ。だが子ども達の抗議など柳に風と聞き流す担任である畑カカシ。しかもマイペースに演習の説明を始める。全く堪えてないカカシの姿に三人は諦め混じりの吐息をついて説明を聞く。ようやくサバイバル演習の始まりである。

 
「よし、12時セット完了!」


おもむろに目覚まし時計を取り出してセットするカカシ。子ども達は疑問符を浮かべてそれを見ている。次にカカシが取り出したのは二つの鈴だ。大人しく説明を待つ三人に淡々と話す。

 

「ここに鈴が二つある。これをオレから昼までに奪い取ることが課題だ。
 もし昼までにオレから鈴を奪えなかった奴は昼メシ抜き!
 あの丸太に縛り付けた上に目の前で俺が弁当を食うから。」


それを聞いて空きっ腹を抱えて嘆息する三人。鳴り響く腹の音が空しい三重奏を奏でる。
意外と律儀なナルトも涙を飲んでレン作成の美味な朝食を諦めて出てきたというのに、下らない罰ゲームに半眼になった。余り喜怒哀楽を表情に出したがらないサスケも眉をしかめて空腹に耐えている。サクラはあからさまに嫌そうな顔をした。

 

「鈴は一人一つで良い。2つしかないから・・必然的に一人丸太行きになる。
 ・・で!鈴を取れない奴は任務失敗ってことで失格だ!
 つまりこの中で最低でも一人は学校に戻ってもらうことになるわけだ・・・」

 

ナルトは表情を取り繕いながら、少しだけカカシの言い様に感心した。
流石下忍担当教師。子どものツボを心得ている。今の一言で確実にだれていた空気が締まった。サクラとサスケの気合が伝わる。巧みな演技で合わせながら面白そうに目を煌めかせるナルト。これなら二人を合格させるのは楽そうだ。

 


「手裏剣も使っていいぞ。
 オレを殺すつもりでこないと取れないからな。」


「でも、危ないわよ先生!」

 

そこでサクラの抗議が入る。
互いの実力差を見極める目を持たない下忍らしい反応である。

 

「そうそう!
 黒板消しもよけらんねぇようなどんくせー教師じゃ、本当に死んじまうッてば・・・よ!」

 


サクラに便乗するように笑っていったナルトはそこでいきなりクナイを投げる。いきなりの行動にサスケも僅かに目を見張る。不意打ちされたカカシは下忍では追い切れない速さでナルトの背後に回って受け止めたクナイを突き付けた。それを見て唖然とするサクラ。上忍の実力の一端に驚嘆するサスケ。落ち着き払ったカカシは話を続けた。

 

「慌てんなよ。まだスタートとは言ってないだろ。
 ・・・しっかし先制攻撃で不意打ちとはね。意外と冷静じゃないかナルト?」

「へへ!ったり前だってば!俺はこんなとこで躓くつもりはないんだってばよ!
 大体上忍のカカシ先生が、下忍の俺らの攻撃くらいで死ぬわけねーってば。」

 

ナルトの台詞にハッとするサクラ。今の攻撃は先の自分の抗議に対する実演付きの答えだと知る。サスケも昨日の宣言に続いての意外な一面に、ナルトの評価を少しだけ改める。成績は確かにドベで騒がしい奴だが、それだけの人間ではないようだ。カカシの視線にも感嘆が混じる。急所に武器を突き付けられても本気で怯えてはいない様子にも感心する。


「(ドベだと聞いてたんだがな
 ・・教師が生徒を殺せないと思っているからか?それでも良い度胸だ。面白い。)

 ククク・・・なんだかな。やっとお前らを好きになれそうだ。
 ・・・じゃ、始めるぞ!・・・よーい・・スタート!!」

 

 

号令と同時に三人が姿を隠す。

 

「忍びたるもの--基本は気配を消し、隠れるべし」

 

という基本を忠実に守ったわけだ。だが、上忍相手に下忍が完璧に隠れるなど不可能。いくら手加減してるとはいえ、隠れるだけ、では時間の浪費だ。ならどうするかが勝敗の鍵を握るわけだが

 


「って、わけで!いざ!尋常に勝負!」

 

叫びながら牽制の手裏剣を投げてカカシに突撃してみせるナルト。
事前に聞いた前評判通りなら、そうなると予想していたのであっさり攻撃をいなす。

 

「(予想通り・・・が、さっきの事がマグレじゃないなら、なんかしてくれるかな~?)
 お前ね・・・ちょぉっと、ずれてるとは思わない?」


「先生の髪型ほどじゃないってばよ!」

 


反論しながらポーチからクナイを出してカカシに切りかかる。手甲で受けるカカシ。
スピードは遅くない。身のこなしも下忍としては中の上。手放しで良いと評価はできないが、別段悪いというレベルではない。成績がドベと言うのは知識面で足を引っ張ったのかと思いつつナルトを投げ飛ばすカカシ。

 

 

「あんま舐めてると、痛い目見るってばよ!」

 

投げ飛ばされる瞬間手の中のクナイをカカシの足もとに投げる。
単純に狙いが外れたかと思った瞬間、クナイが眩い閃光を発してはじけた。

 


「な・・・!!(くっこれは本当に予想外!)」

 


流石に驚いたカカシが咄嗟に目を庇うと、ナルトの気配が近づく。
完璧に位置を把握して瞼を覆ったまま向きを変えたカカシの前で、気配が、増えた。

 


「忍法!影分身の術!」

 (これ一つでも高等忍術を使えるってのはかなりマシか。ある意味ミズキに感謝だな。)

 


「へぇ。分身じゃなく影分身か。残像ではなく実体を複数作り出す術・・・

 (これはミズキの一件で持ち出された封印の書の禁術か。
  閃光弾を仕込んだクナイといい、本気で評価を改めるべきかな。)

 ・・けど、まだ甘いね。今のお前じゃオレはやれない・・」


言いながら複数方向から繰り出されるナルトの体術を流す。次々消される分身。
その攻防を見て焦りと驚きを浮かべたのは隠れているサスケとサクラだ。
まさかドベのナルトが、自分達の知らない術を使い、いなされたとはいえ的確に計算された攻撃を繰り出すとは。

 


「・・大見得切っても所詮はナルト・・・ってなにぃ!」

 


内心を隠して挑発するカカシの言葉が途切れる。
主に前方に集中していた影分身に気を取られたカカシの背後に生れた気配。
影分身に囮をさせたナルトがカカシの背後をとったのだ。

 

「だから言ったってばよ!忍者は後ろ取られちゃ駄目なんだろ!」

 


得意げに笑うナルトに一瞬本当の表情を晒すカカシ。ナルトはカカシを押さえたまま影分身に攻撃をかけさせる。それを見たサスケとサクラも素直に感心して見守る。うまく成功するかと思ったが、そうは問屋が卸さない。

 


「いってーーーー!」

 

影分身が渾身の力で殴ったのは、同じ影分身だったのだ。

 

「ちっ!変わり身かよぉ!」

(ま、こんなもんだろ。
 とりあえずドベのナルトでも、戦闘が出来ないわけじゃないって
 ことをアピールできればOKっと。)

 

作戦が失敗して悔しげに地団太を踏んでみせるナルト。
取りあえず当初の目的のうち一つ目を達成したのだから一回引くことにする。
言葉の端々に、完全な無知ではないことも滲ませる。

 


「クソー!後ちょっとだと思ったのに!」

(さて目的その2の下準備は成功するかな?)

 


頭上の枝に乗ったままナルトを見下ろすカカシは、本気で感心した口調で言った。

 

「ってか、お前本当に意外だねー。
 猪突猛進に見えて細かい計算もしてるみたいだし。こりゃただのドベとは言えないな。

 ・・ま!つめはまだまだ甘いけどね!」


「うわ!何の真似だってばよ!降ろしやがれーー!」


言い終わると同時にナルトを縄で逆さ吊りにするカカシ。滅茶苦茶に暴れるナルト。その子供っぽい姿にサスケとサクラの力が抜ける。

 

「舐めてかかると、痛い目見るってば。・・なんだろ?
 油断しちゃ駄目だぞナルト。じゃ、このあともそれなりに頑張れよーー」

 

 

ナルトの宣言をそのまま返し、気のない声援だけを残して移動するカカシ。憤懣やるかたない様子のナルトを横目に、サスケとサクラはその姿を追う。自分はどうしかけるか、と緊張する二人を余所にカカシは木の下に座るとおもむろにポーチから書物を取り出した。何かの術書か、と目を凝らす三人の目に映った表紙には、「いちゃいちゃパラダイス」という文字と成人指定のマークが。緊張が脱力に変わる。

 

「「「(どこの世界に任務中成人指定小説なんぞを読む教師が居るんだ!
  こんのウスラトンカチが!)」」」

 

今まで一度も足並みの揃ったことのない三人の心境が奇跡の一致を見せた。目の前では締まりのない顔で桃色小説を熟読するカカシ。表裏共に本気で呆れるナルトと、力いっぱい項垂れるサクラ。が、此処で今期アカデミー最優秀者の意地をみせたサスケ。

 

「(・・だが、これはチャンス!隙を見せるのを待ってたぜ!)」

 

座り込む瞬間のカカシにクナイを打ち込む。三人の目前で血を噴いて倒れるカカシ。驚き慄くサクラと、慌てる表情を見せながら双方がどうでるか観察するナルト。攻撃成功を確信したサスケは次の瞬間悔しげに口を歪めて飛び退る。

 

「(変わり身か!
 クナイから位置がばれたな。・・・あれは罠かよ!ざまあねぇ)」

 

倒れかかるカカシが丸太に変わる。あからさまな隙はこちらを誘う罠だと悟り自嘲する。

そのサスケ失敗を見て慌てて手助けに走り出すサクラ。
自分一人では無理でも、サスケと協力し合えば合格できるかもしれないという計算も働く。
同時に見下していたナルトの意外な実力への焦りもあった。このままでは自分だけが不合格になるかもしれない。消せない不安に常より動作が荒くなる。途中木の葉を派手に揺らしてしまう。慌ててカカシを探るが微動だにしないと知って安堵する。だから背後からの声に無防備に振り向いた。


「サクラ。」

「え?」


目の前には、今当に駆け付けようとした愛しいサスケの変わり果てた姿が。切り刻まれた身体から流れ出る血が地面を染める。擦れて聞き取りにくい声で名を呼ばれた。動かしずらい手を必死に伸ばすサスケを完全に認識した途端サクラは

 

「ぎゃ・・・ぎゃあああああああ!!」

 

絶叫を上げて卒倒した。

 

 

「(サクラか・・・・あいつ本当に成績優秀だったのかよ?
  なんであんな音たてて本気で見つからないと信じられんだよ。)」

 

さくさくと影分身と入れ替わり残り二人の様子を見にきたナルトが内心呟く。幾ら下忍とはいえ、些か問題じゃないのかと思いつつ嘆息した。それはカカシも同じだったようだ。


「いやーここまで上手くかかるとは思わなかったんだけど・・・
 下忍候補生にいきなり幻術はきつかったかなぁ?

 ま、いいか。しかし、色気がないなぁ。・・」


むしろ問題はお前だと言いたいナルト。まさか本気ではなかろうが、セクハラ発言はやめてくれないだろうか。聞いていて微妙な気分になる。さしあたっては、レンをこいつに近づけるのだけは絶対阻止だと思いながらサスケの方へ移動する。例え冗談だろうと、セクハラ紛いのセリフなどレンの耳に入れるつもりは毛頭ない。万が一そんな事態になったら、言葉が終わる前にカカシを潰すだけだが。ヒナタやイノが聞いた日には、半分どころか9割殺しにかかるだろうなと考えて少し涼しい気分になった。


「(ま、そうなったらなったで自業自得だけどなー。
  ・・・・しかし腹減った・・・・早く終わりやがれー・・・)」

 


涙を飲んで背を向けた朝食を思って切ないため息を吐くナルト。
イノ達が泊まり込み人数が多い為、いつもより品数が多かった食卓。
頬を緩めて夢中で食べる友人たち。・・それらを頭に思い浮かべて拳を握る。

 

「(くっそー。これで昼まで食いはぐれたらカカシの野郎を影でボコる。
  レンー。昼は野菜煮込みラーメンと炒飯と卵スープがくいてぇなー。
  ついでにデザートは杏仁豆腐でよろしくー。)」


切なさのあまり電波を飛ばしてみる。流石にリクエストの為に鳥を飛ばすことは自重したが。


「(まあ、アイツの作る飯はなんでも美味いからいいけどな。
  ・・・本気で早く終わらそう。うっかりカカシを手加減なしで殴ったりしないうちに。)」


無意識で惚気て、演習に意識を戻す。
・・・締めに呟いたナルトの言葉に突っ込める人間は不幸な事にいなかった。
 つくづく食べ物の恨みは恐ろしいものである。

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++++

 

 

 

 


「・・あれ?」

「どうしたんですかレンさん?何かありました?」

 

順調に演習を終わらせて帰ってきたイノ・シカマル・チョウジと4人で買い物に出ていたレンが、道の真ん中でふと空を見上げて呟いた。今日のお昼と夕飯は何がいいかと話していたのを中断してさり気なく辺りを窺うシカマルとチョウジ。二人の動作から気を逸らす為に殊更にこやかにレンを覗き込むイノ。


「(またどっかのストーカーの視線でも感じたのかな?)」

「(伝令鳥の呼び出しはねぇ筈だからな。おかしな気配もないみたいだけどな。)」

 

どんな些細な事からでもレンを危険から遠ざける、というのが彼らの不文律である。

例えばレンに告白しようとする身の程知らず。
例えばレンに懸想してストーカー行為に及ぶ変質者。
例えば有能なレンを妬んで難癖をつけに来る暇人共。
その他諸々、平穏な日常を送る為には不要な輩が多すぎる。

そんな不届き者如きにレンの手を煩わせるな、という共通認識のもと闇から闇へと葬る子ども達。同時に、その活動をレンには悟らせてはならない、というのも不可侵の掟であった。

 


「あ、ううん。ごめんねイノ。そうじゃなくて、
 ・・・えーっと、今日のお昼は野菜煮込みラーメンで良いかな?
 あと炒飯と卵スープとかどうかなって。そうするとデザートは杏仁豆腐が合うかな?」


「はい!勿論オッケーです!中華系は久しぶりですね~♪
 じゃあ、足りないのはー・・・」


「チョウジとシカマルもそれで良い?」

「「はい」」

 


何事もなく視線を下に戻して笑うレンの表情に、憂いが無いことを確認して安堵する三人。
レンの腕にじゃれ付きながら歌うように答えるイノと、声をそろえて返事を返すシカマルとチョウジ。彼女の提案に否やがあろうはずもなく快く同意して買い物の内容を決める。ほのぼのしい幸せ家族の一コマであった。

 

 

 

 

 

 

「ところで何でいきなりラーメンなんですか?」

「ああ、うん・・う~ん?
 ・・・なんとなく、それにしなきゃいけない気がした?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++++++

 

 

 

 


先ほどの広場からは少し離れた木立の合間に佇むサスケ。突然聞こえた絶叫に振りむく。
 


「・・・今の声・・(サクラか・・・)」



気づいても動揺はない。サスケには己が同級生達とは一線を隔した実力があるという自負がある。だから、背後に現れたカカシにも静かに相対した。
 


「忍戦術の心得その2。幻術・・・サクラの奴簡単にひっかかっちゃってな・・・」

「(幻術か・・・・あいつならひっかかるのも無理ねぇな・・・しかし・・・)
 俺はあいつ等とは違うぜ・・・・」
 


吹き抜ける風が木の葉を散らす。静かな場に緊迫感が満ちる。カカシも、サスケにはあからさまに気を抜いた様子は見せずに向かい合った。それでも手から文庫本を離さないのはある意味見上げた根性だったが。
 


「そういうのはスズを取ってからにしろ。

 ・・里一番のエリート、うちは一族の実力・・・楽しみだな・・・」
 

 

正面から向き合う二人。間。・・・そして始まる攻防戦。
まずは、とばかりにサスケが手裏剣を放つ。当然その位は軽くよけるカカシ。
 


「バカ正直に攻撃しても駄目だよ!」


 

それを見て口角を上げるサスケ。
よけた手裏剣が隠されていた縄を切る。その音に気づくカカシ。着地した場所を正確に射抜くトラップに仕込まれた小刀。これもまたよけるが、そこをサスケが体術で追撃した。鮮やかに繰り出される攻撃にカカシも文庫本をしまって両手で防ぐ。両手をふさがれた一瞬を狙ってサスケが鈴を狙う。流石のカカシも、一瞬焦って距離をとった。


 

「(・・・なんて奴だ・・・「イチャイチャパラダイス」を読む暇がない・・・)」


 

まさか下忍相手に上忍の実力を出す訳はないが、手を抜きすぎてここで鈴を奪われたら試験の意味がない。カカシも素直にサスケの実力に感心した。そして木陰に隠れて様子を窺うナルトも同じようにサスケの攻撃を見守る。
 


「(へぇ、さっすがうちはのエリート・・・天才、の名は伊達じゃないってか。
  ・・・けどなぁ・・・・)」



そう、確かにサスケの実力は下忍としてなら破格のものだ。だが、・・・



「(下忍、としてだけなら十分なんだけどな・・・・。)

 ま、あの二人と違うってことは認めてやるよ!」

 


カカシの賛辞にも浮かれず真面目な表情で次の攻撃に移るサスケ。手早く組まれた印と正確に練り上げられたチャクラ。



「フンッ・・・(馬・・虎ァ!・・ 火遁!豪火球の術!!)」



これには本気で驚愕するカカシ。



「な、なにぃ!!(その術は下忍にできるような・・チャクラがまだ足りない筈だ・・!)」

 


そして繰り出される巨大な炎。勢いよく目の前の地面を抉ってクレーターを作る。やったか、と目を凝らすサスケだが・・



「・・(いない!・・後方・・いや上か!?・・何処だ?!)」



残された空のクレーターによけられたことを知って慌てて周囲を警戒するサスケ。だがカカシの居場所は分からない。気配だけではなく視線も彷徨わせる。


 

「下だ。」

「!!」



静かにかけられたカカシの声に驚いて足元見やる。が、



「土遁心中斬首の術・・忍戦術心得その3!忍術だ。」



あっという間に地中に引きずり込まれて生首状態にされるサスケ。憮然、と見上げる先には余裕面のカカシが、変わらずにヤル気のなさそうな表情で自分を見下ろしている。


 

「・・・に、してもお前はやっぱり早くも頭角を現してきたか。
 でも、ま!出る杭は打たれる、っていうしな。ハハハ!」



声だけは愉快そうに笑うカカシに苛立ちを募らせるサスケ。再び手にした文庫本を読みながら立ち去る背中を睨みつける。上忍との実力差に本気で歯噛みしているようだ。ナルトもサスケの術の完成度には感心する。が、サスケの問題はそこではないのだ。


 

「(・・・・自分が下忍だって頭では理解してるっぽいんだけどなー。
  本気で真正面から上忍に仕掛けて勝てると思い込んでるあたりが馬鹿正直すぎるっつーか。


  ・・・・一族唯一の生き残りってんで大事にされ過ぎじゃねぇのか?
  血継限界保持者があの猪突猛進っぷりは不味いと思うんだよな・・・。
  相手との実力差の見極めとか、引き際の心得方とか、その辺を教える奴はいなかったのかよ。)」

 


つまり、自分の実力が優れているという自負があるせいか、今一相対的な実力差を見落とし勝ちなのが当面第一の問題なのだ。今のサスケの様子を見るに、相手が里の忍だから大丈夫だと考えた上で向かったわけではない。サスケにとって相対した敵は、すべからく倒すべきものなのだ。そして、己ならば全ての敵を倒すことが出来ると信じ切っているのが伺える。下忍なりたての子どもにはよくある微笑ましい自信である。一般の下忍ならそれでも良い。これから教師が少しずつ教えて行けば良い話だからだ。しかし、サスケがそれではまずいのだ。
 

これが里内の試験で相手が教師だから良いのだが、もしも他里の敵相手にも同じように向かって行くような事があったりしたら不味いどころの話ではない。里に属する忍の術を他里へ漏らす位なら、その術を使う人間を殺してでも秘密を護るのが忍の里である。数年前の日向一族の問題と同じだ。いくらうちは唯一の生き残りといっても、万が一サスケが他里に捕まるような事があったら最悪ナルトやカカシが手を下さなくてはならない可能性もある。そのための護衛でもあるのだ。本来なら一族の先達者がそういった事情を教え込む筈なのだが・・・


 

「(やっぱ、うちは唯一ってのがネックか。
 日向あたりに預けるって話も出たって聞いたけど・・・結局お互いに秘密が露見する方が問題だってことでぽしゃったんだよな。 で、うちは一族以外で、サスケに写輪眼の扱いを教えられるのはカカシだけっと。サスケ本人も頑な過ぎて視界が狭くなってるし・・
 
 ・・これ全部おれが解決すんのかよ?・・・・うがぁ~~~!めんどくせぇ!
 余計な隠し事すっから後々問題が山積すんだっつぅの!)」
 

 

里内でもそれぞれに秘密を守る役割がら柵も多く、そのしわ寄せがきている、というわけだ。ナルトでなくても頭を抱えてしまいたくなる。

そしてカカシにも問題がないわけではない。カカシ個人は悪い人間ではない。忍びとしての実力も申し分なく、教師としても悪くないと思う。今までの彼が行った下忍選定試験のテーマが「チームワーク」であることを考えても、木の葉の里に所属する忍の中では嫌いではない方に属する珍しい人間だった。

 

「(カカシもなぁ・・・。
 偏見とか無いみたいだし、俺の事を九尾と同一視するとか、
 ドベだから人間性ごと否定するとかしないし、嫌いじゃねぇんだけど・・。
 
 ・・・まぁいいや。とりあえず今はこの試験だろ。
 ・・・サスケもサクラもそろそろ気づいたかな。)」

 

 

サスケがやられたのを見てさっさと本体と入れ替わるナルト。とりあえず目前の問題だと縄を切って木陰の中に潜んで思考を打ち切る。それぞれの戦闘中に仕込んだ仕掛けに二人が気付いたなら、こちらに向かってくるはずだと場所を移動する。


 

「(さってと、さくさく試験を終わらせて帰るか!今っ日の昼は何かな~♪)」

 


制限時間まで一時間を切った時計を横目に見つつ鼻歌交じりに歩くナルト。
誰も見ていないのを良い事に、その姿は小憎たらしい程に余裕であった。

 



で、


「あっれ~?
 ナルトなら、誰も居ないうちに弁当を取りに来るかなと思ってたんだけど・・・・」



丸太の前には、少し宛が外れて肩すかしをくったカカシが日差しの下で佇んでいた。

 


「(・・・そういや、この暖かい気候で弁当を日光に晒して二時間とか
 ・・普通に腐るんじゃねぇの?)」


 

・・・それは実際食べてみた時のお楽しみ、という事で。

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ここは女体化シンジ(碇レンorシオン)溺愛サイトです。クロス・逆行・分岐に関わらず、レンorシオンが贔屓・溺愛されてます。(クロス作品では他作品のキャラと恋愛有(むしろメイン))
書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)



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