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*これはこれから連載しようと思っている『An anti-pieta』(碇レン(=女性化シンジ)IN Seed」)のIf番外です。
平時は食堂で手伝いをしているレンは余り忙しくない時間帯にブリッジや整備班など、自由に動けないシフトや忙しくて食堂に来れない人達のために差し入れにいくことにしていた。その日も何時通りにブリッジ勤務のクルーへの差し入れにいったところ、丁度勤務にあたっていたラクスとミリィに誘われ一緒お茶を飲んでいた。流行の服や化粧やおいしいお菓子など、少女達の話題は尽きることがない。余りそういった話題に熱心ではないレンも二人の華やかな笑顔と声に楽しげに聞き入り、時々相槌を打ちながら取り留めなく雑談に興じていた。と、そこでふと思い出したようにミリイが話題を振った。
「そういえば、カガリのドレス素敵だったわねぇ」
「ええ、とてもよくお似合いでしたわね。」
「やっぱりウエディングドレスは憧れよね!!ねえねえ自分が着るならどんなの着てみたい?
私はやっぱりシンプルなデザインで飾りはあまり無い方がいいわね。いっそ光沢のある無地のドレスとか。だけどヴェールのレースは複雑で華やかな物で白い鈴蘭とかのコサージュがアクセントのものとかがいいわ。」
少し遠くを見るような目で自分の理想のドレスのデザインを語るミリィ。
応えるようにラクスも語る。
「そうですわね、私はマーメイドラインのすっきりしたタイプのものを着てみたいですわ。
裾が後ろに長く広がっていて歩くたびに細波のようにさらさらと布地が揺れて、縫い取りの真珠のビーズが水滴のように光って--」
二人とも憧れのデザインを具体的に説明する。まるで実物を見てきたばかり様に細かな説明は想像力を掻きたてられて、聞いているだけで二人のドレス姿が目に浮かぶようだ。
きっとミリィのドレス姿は、彼女の暖かな雰囲気と相まって清廉な聖母のように美しいだろうし、ラクスのドレスは澄んだ青い海の中で静かに微笑む人魚のように静謐な美しさだろう。
「ラクスなら、スタイルがいいからそういうデザインも似合うわよ!!・・やっぱり相手はキラかしら?」
「ありがとうございます。ミリィの方こそ、きっと素敵ですわ。もちろん、お相手はトールさんでしょう?」
「まあね。あ~でも、ウエディングドレスといえばやっぱり純白だけど、
トールは白って今一似あわないのよね。
その点キラならどんな衣装も似合うわよね。」
微かに照れながらもお互いを褒めあう二人。自然に話は相手の衣装にも及ぶ。
「そうですわね。・・トールさんにはシルバーグレーのタキシードなどは?
きっと、ミリィのドレスにも映えると思いますわ。」
「ああ、そっかあ。グレー系なら良いかもね。少し渋めの色とか素敵かも。
でも本人にもうちょっと大人っぽく成長してもらわないとね。」
「まあまあ、ミリィったら」
軽口を交えながら、目の前で憧れにきらきらと瞳を輝かせて話す二人もとても可愛らしく、どちらもとても綺麗だなと思いながら幸せそうに微笑んで会話に聞きいるレン。そこで、うっとりと虚空に向けて理想の姿を描いていた二人は同時に顔を傍らの妹分に向け、微かに上気した頬のまま熱のこもった声で話しかける。
「ねえ、レンは?レンならレースやリボンで可愛らしく纏めたデザインなんて良いと思うわ! オーガンジーを沢山重ねてふわふわと花のような形のスカートと、すっきりと開いた胸元を繊細なレースで首元まで覆って露出は低く!ウエストには小さなリボンと小さな花のコサージュで飾って、細い真珠の首飾りをつけて、髪にも真珠を編みこむの!!・・・花の妖精みたいで可愛いわよねぇ・・」
「まあまあ、素敵ですわね!!でも私は丈の短いワンピースタイプの物も可愛らしくて良いと思いますわ。
緩やかなAラインのキャミソール型のワンピースに薄いショールを何枚か重ねて細いリボンと真珠を連ねた飾り紐で纏めて。スカートの裾にはレースのリボンで縁取りをして小さな花の飾りを散らして・・ああ・・まるで天使のようですわ・・・」
「うええ!!わ、私の?!」
幸せそうな表情に、この二人の花嫁姿は綺麗だろうなぁ、と少し他人事のように聞いていたレンは、唐突に向けられた矛先に思わず気の抜けた声を返した。そんなレンに構わずますますヒートアップする二人。こうなると彼女達を止められるものは存在しない。
「ああ、でもAラインのシンプルなロングドレスでウエストに飾った大きな花のコサージュから流れるフリルが可憐なのもいいわね!!襟元はレースのフリルで飾ってアクセサリーは使わずに清楚にまとめるのとか!どうかしら?!」
「でしたら、エプロン風のAラインのドレスとかもどうでしょうか?サテンの艶やかな生地と後ろに広がる何十ものレースのフリルが花びらの様に揺れるデザインとか!首もとは複雑なレースの襟で飾って、後ろの切れ込み部分に一つだけ大きめのコサージュを飾るんですの!!・・可憐で可愛らしいと思いますわ!!」
今までも時々ショッピングに誘われては最終的に着せ替え人形よろしく服をとっかえひっかえ勧められたことはあったが、ウエディングドレスともなると完全に想定外のものである。勢いよく詰め寄られても咄嗟に返答を返せる訳がない。どうしたものかと周囲に視線を走らせるも彼女たちに対抗できそうな猛者は存在せず内心で頭を抱えるしかない。といってもこのまま逃げ切れるわけもなく、なんとか話題を逸らそうと試みる。
「え、え~と。二人ならどんなドレスもすっごく似合うよ!
結婚式のときは是非ケーキを焼かせてね!!腕によりをかけるから!!」
「ふふ、ありがとう♪・・でも今はそれは置いておいて、レンのドレスの話よね?」
「ほほほ」
あっさり聞き流されてさらに詰め寄られるレン。万事休す・・・・とそこに
「マリューさん。これ整備班からの報告書---- て、なにやってるの?」
そこで今まで整備に行っていたキラとトールが二人で連れ立って入ってきた。手に持っていた整備班からの報告書をマリューに渡すと、三人の方へ歩いてくる。二人のために新しく入れたお茶を用意したレンに礼をいってカップを受け取ってから、キラは隣のラクスに話しかけた。
「なんの話をしていたの?随分と楽しそうだったね」
話の内容が内容だけにほんの少しだけ頬を染めながら経緯を語るラクス。
その横のトールもミリィから説明を受けて顔を赤くする。
「へえ、ラクスならどんなドレスも似合うよ。凄く綺麗だろうね。楽しみだなあ」
愛しさを込めた笑顔でさらっとそんな台詞を吐くキラと、
「ミミミミ、ミリィ!け、結婚ってっ、あ、あの、その
・・・・ミ、ミリィならどんなデザインでも綺麗だよ!!」
思わずどもってしまいながらもしっかり褒めるトール。
初々しいカップルの姿に室内の空気が再び穏やかさを取り戻す-
---かと思ったその時、ふとトールがもらす。
「・・・・・て、ウエディングってことはレンの相手もいるよな。
なあ、レンはどんな人と結婚したい?」
「ええっ!?え~と、そうだなあ・・・」
矛先をずらしたことに安堵して、ほわほわと大好きな兄と義姉を見守っていたレンに話をふるトール。率直な問いに思わず顔を赤くして俯き、何事か応えようとする。とその時
「へえ・・・」
おどろおどろしい声が聞こえる。途端に室内の空気が凍った。それまでの華やかな熱気も初々しい柔らかな雰囲気も一気に吹き飛んで重苦しい空気が充満する。発生源は勿論エターナルの最高権力者カップルである。
「・・・そういえば、そうだよね。結婚相手か・・・・」
「・・失念しておりましたわ。レンの、お相手・・・・」
変わらぬ優しい笑顔なのに纏う空気が180度違う。口を滑らせたトールがミリィの手を掴んで思わず後退る。レンも思わず背筋に悪寒を走らせて二人を見た。腰が引けていることを自覚しながらも恐る恐る声を掛けるトール。・・・・一瞬で後悔したが。
「あ、あの・・キラ?ラクス?」
「「なに?(なんですか?)」」
怖い。優しく麗しい笑顔は変わらないのに、その瞳は雄弁に語る。
----曰く、「邪魔をするな」---と。
「い、いえっなんでも!!」
「そう・・・」
二人はくるりとレンの方を向くと両方からレンの手をがしりと握る。と、同時に勢いよく捲くし立てた。
「レン!!君が結婚なんてまだ早すぎる!!お兄ちゃんは許さないからね!!だいたいこんなに可愛くて性格が良くて料理が上手くて家事が得意なんだから、そりゃあ引く手数多だろうけど、そこらの有象無象にみすみす大事な妹をくれてやるなんて絶対駄目だ!!レンが欲しいなら、最低でも僕を倒すくらいの事はしてもらわないと!!」
ノンブレスで言い切るキラ。・・・MSを操らせたら宇宙最強。全くの素人であるにも関わらずZAFTの紅服4人を赤子のようにあしらった元連合の白い悪魔。新たなる剣であるフリーダムを手に入れ、更なる進化を遂げた彼を倒すことが最低条件・・・・他にどれだけの条件がそんざいするのか。
「ああ、なんてこと!!うっかりレンのドレスに心を奪われて大切な事を見逃すところでしたわ!!私とキラの大切な大切な可愛い妹をみすみす他の男にくれてやるなんて・・・百万年早いですわ!!レンを幸せにするためには、そうですわね、最低でも私が納得できるだけの経済力と才覚と甲斐性を持ち合わせて頂かないと。」
一気に言い切るラクス。プラント評議会前議長の息女。平和を歌うピンクの妖精の呼び名も高い才色兼備の至上の歌姫。評議会とZAFTすら手玉にとって戦艦と最新型のMSを容易く強奪し、クライン派始めとする反戦主義の者たちを一手に統べる影の女帝ラクス・クライン。・・・彼女の納得するレベルの経済力や甲斐性とは如何程のレベルなのか。・・・もし、そんな人間がそこらに存在したら、そちらの方が吃驚である。
両方から詰め寄られて目を白黒させるレン。息も吐かせぬ勢いで言い募るキラとラクスの必死な姿に思わず口元に笑みが浮かんだ。すでに、自分がどういう生き物なのかを明かしたというのに、当たり前に”大切な妹”として扱ってくれる二人の優しさと好意が嬉しくて笑い声が漏れる。それを聞きとがめた二人がさらに詰め寄った。
「「レン!!笑い事じゃないよ!!(ないですわ!!)」」
そんなキラとラクスにさらに軽やかな笑い声を上げると、つかまれていた腕を軽く引いて二人一緒に抱きしめる。抱え込んだぬくもりが、ここに存在する証のように心の奥まで暖める。魂が浮き立つような幸せな気持ちを込めて、満面の笑顔を浮かべて二人に向けた。
「ふふっ。二人とも、大好き!!」
いきなりの言葉に呆気に取られた顔をした二人もすぐに頬を緩めて可愛い妹を抱きしめる。おどろおどろしい凍りつくような空気は綺麗に払拭され、幸せの具現のように柔らかい空気を振りまく三人。見目麗しい男女が輝かんばかりの笑みを湛えて抱きしめあう光景に、仕方なさそうに溜息を吐いたミリィとトールが呟いた。
「本当にキラもラクスもレンが大好きなんだな。・・・でもちょっと盲目過ぎないかあの二人。」
「そうね。・・今からあれじゃあ、本当にレンの恋人でも出来た日には血の雨が降るわね。」
「うわぁ、怖いこというなよミリィ。唯でさえ戦争中で物騒なんだから」
「まぁいいんじゃないかしら。レンも幸せそうだしね。その時は、その時よ。何とかなるでしょ
・・・・・・ああやって笑えてるなら大丈夫、よ。すぐにこんな戦争終わらせて、皆で帰るんだから。ね」
可愛らしくウインクしながら言われた言葉に微笑みながら何処か真剣な光を湛えて何事か告げようとするトール。
「・・・なあミリィ・・・そしたら、・・いや、やっぱり全部終わったら言うよ。」
「・・・・ばーか。待ってるからね。生きて帰りましょうね。」
が、やっぱり思い直したのか途中で止める。そんなトールを愛しげに見詰めてから面映そうに微笑んだミリィがそっと傍らの手のひらに指を絡ませた。
それは、戦争中でありながらほんの少し訪れた平穏な日常で交わされた約束。
何時までも、何時だって、大切な人と当たり前に笑いあいたいという、
当たり前で難しい願いを胸に戦い続ける彼らの一時の安らぎだった。
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書きたい物を書ける時に好きに書き散らしてます。文頭には注意書きをつける積りですので、好きじゃない、と思われた方はこのHPを存在ごとお忘れになってください。(批判とかは本当勘弁してください。図太い割には打たれ弱いので素で泣きます)
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