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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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ええと、本当に物凄くお待たせいたしました!
666666番を踏んでくださったクリム様のリクエストで「ガイ以外の護衛でアクゼリュス崩落後」を書かせていただきました。


えと、物凄くお待たせした上に、本当に申し訳ないのですが、勝手にクロス設定にしてしまったのですが、宜しかったでしょうか・・・・?

本当にすみません。クリム様、もしごらん頂いた後、これはちょっと望んでいたのと違う、と思われましたら遠慮なく申告してくださいませ。本当にすみません!またお待たせするのも心苦しいのですが、もう一度きちんと書き直させていただきますので!申し訳ございませんでした!


*拙宅で連載しているエヴァ×ナルト「月色の御伽噺」設定流用で、スレナルと碇レンが、ルークの護衛設定です。
*シュザンヌ様捏造。
*キムラスカ・ダアト・マルクトに物凄く厳しいです。PTは勿論イオン様にも厳しくなりました




*ちなみに前編はほぼレンの独白に寄る経緯説明というかただの前振りなので読まなくても余り支障はありません。メインの糾弾は後編からです。










 

 

 

 

 

 

 

 


「「ここ、何処(だってばよ)?!」」

 


 


満天の星空の下。白い花に囲まれたとある場所にて、二つの声が響いた

 


「・・・・まぁ、異常事態は異常事態として、まずすむ所探そうか。」


「おま、なんでそんな冷静なんだよ!?」

 


一瞬の驚愕から立ち直り、のんびりと呟いた黒髪の少女に、傍らに立ち尽くしていた金髪の少年が食って掛った。

 


「んん?や、慌てても仕方ないしねぇ。」

「あのなぁ!」

「けど、まあ、流石にちょっとびっくりはしたけど・・・ま、何とかなるって」

「簡単に何とかなって溜まるか!レン!お前本当に現状分かってんのか?!」

「落ち着こう?大丈夫だから。」

 


ヒートアップする少年を落ち着かせようと肩に手を置いてにっこり微笑んでみる。
レンが真っ直ぐ目を合わせると、少しだけ気まずくなったか咳払いして声を平静に戻す少年が唸った。

 


「・・・・お前、変なところで冷静だよな。」


「はは、ま・・(実は二回目だし、とは言えないなぁ)・・・・異世界トリップ、かぁ」


「くっそ、早く帰らねぇと!」


「う~ん。確かにナルトが居ないと、暗部受持ち任務が裁ききれなくて困ってるだろうねぇ。特にSランク系」


「だから、」


「でも、これは不可抗力でしょ。大丈夫だってば、来れたんだから帰れるよ。(本気でどうにもなんなきゃ、ディラックの海使ってみよう。多分イケると思うんだよね。) ・・・・ね?」



「~~~~~~!わかったよ!帰れた後の説教はお前も受けろよ!」


「わかってるって、ちゃんと説得もするから。」

 


軽く肯いてやると肩を落としきったナルトがぶつぶつと呟きながら歩き出す。とりあえず人里・・・できれば流通が盛んな場所が望ましい。賑やかな場所には影も出来やすい。忍びである自分たちにとって都合が良いのはそういった裏社会のほうだ。特に今現在、この世界では戸籍すらない状態で堂々と表側に属すのは難しいだろうし。


 

「う~ん、最初は単にどっか別の大陸にでも飛んじゃったかと思ったんだけどねぇ」


「まぁな。けど流石にあんな生き物が跋扈する地域はねぇだろ。」



ナルトとレンの視線の先には、草陰から飛び出した緑色の生き物が小さな身体で精一杯の威嚇をしている。丸い球根みたいな部分がちまちまと蠢き、上に大きく伸びた葉っぱのような(触手?かあれは)ものがばたばたとはためく。何処から見ても、雑草にしか見えないが・・・動物、らしい。攻撃してくるからには、敵なんだろうが、


 

「えっと、なんかこんな小さい生き物殺すのは、ちょっと・・・」


「相手する必要ねぇだろ。・・・しかも知ってる星座所か、なんだ空のアレ」


「薄く色ついてるねぇ・・・六色、かな。後一色で虹色だね~」」

 


呑気に上を見上げると、明らかに自分たちの住んでいた場所ではお目にかかれない景色が頭上一杯に広がっている。



「まあいい。とにかく先ずは情報収集と現状把握だな。
 木の上伝っていこうぜ。大体の気配は地面に接する場所にしか感じられねぇし。」


「そうしよっか。ん~、とりあえず川沿いに下る?」


「だな。人間に会えたら・・・盗賊にでも追われて身包みなくした、設定でいくか。」


「それが一番無難かなぁ・・じゃ、いこうナルト。」


「レン、一応気をつけろよ。あんまり強い気配はねぇが、何があるかわかんねぇし。」


「うん、ありがとう。気をつけるよ。足手まといにはならないから。」


「・・(そういう意味じゃねぇよ!)・・ああ、いくぞ」

 

 

そんなちょっとしたイレギュラーが発生した日から一年後。

 



 

 

 

 

 

 


アクゼリュスが、崩落した。

 


 

 


視界に映るのは澱んだ瘴気と、どろりとした得体の知れない液体に沈む大地の欠片。辛うじて歩ける場所が点在しているが、タルタロスを発見できなかったらと思うと背筋が冷えた。まさか何時沈むか分からない不確かな足場の上にルークを置いて置けるわけがない。一先ずは気を休める環境にたどり着けた事に安堵する。後は、キムラスカに帰る方法だが、調べた限りではこの場所で唯一存在する街からなら帰るための道があるらしいが。


 

「(けどそのユリアシティとやらの正確な位置が分からないのは不味いな。・・・案内できそうな人間はいるけど・・)」

 

 


厳しい視線で辺りを見回して、視界の端に映った栗色の髪を見下ろして嘆息する。彼女とこれ以上会話するとそれだけで忍耐が限界を迎える確信がある。しかし背に腹は代えられない。


 

「(まあ、先ずルーク様に安全な所に腰を落ち着けて頂いてからナルトと相談しよう。)」



考えを纏めて背後に庇った朱金色の髪の青年・・キムラスカ王国から派遣された親善大使であるルークに視線を戻す。落下中はナルトとレンの術で護ったが、流石に衝撃には耐え切れず気を失っていたのだ。小さく呻くルークの傍らに膝をつく。

 


「ルーク様、ご気分は?何処かお怪我をされたという事は?歩けますか?今ナルトが艦内を見回っております。
お部屋をご用意するまでしばしご辛抱いただけますか。・・ルーク様?」

「・・あ、ああ。大丈夫、だ。レンは?」
 

「私も、ナルトも大した怪我はございません。それよりも、申し訳ございません!ルーク様の護衛を任されながら、このような、」


「何言ってんだ!お前らは悪くねぇよ!・・・悪い、のは、」

 


どこか虚ろな声ではあるが、しっかりとした口調で返事が返ってきた。一つだけ安堵して、改めて姿勢を正しルークの前に跪き深く頭を下げて謝罪する。本当なら土下座するべきだが、気を失っているとはいえ、後ろに並べた面子の存在を思うと、動作が制限されかねない姿勢は出来るだけ避けたい。


だが、真っ直ぐ此方を見つめたその鮮緑の瞳が、目覚めた瞬間に痛みを堪えるように揺れたのを見て、眼前が真っ赤にそまる。これ程の怒りを覚えたのは久しぶりだ。意識しなければ殺気を放ってしまいそうになるのを、一つ大きく深呼吸することで抑える。わざとルークの台詞の後半は聞かぬ振りで答える。もしもルークから口に出してくれるなら幾らでも聞くが、今此方から聞き出そうとするのは余りに無神経というものだ。


 

「ルーク様・・・そのようなわけには」


「レン、これは命令だ!後、その口調を止めろ。」


「それは、」


「レン!」


「・・・はっ、お慈悲を感謝いたします。・・・ありがとう、ごめんね」


「・・・ああ」

 


ルークはきっぱりと首を振ってレンの言葉を遮る。命令だと言いながら、不安そうな色を覗かせたルークの声に思わず顔を上げる。それだけで少し安心したように笑顔を見せたルークの表情を見上げて、レンも肩の力を抜いて口調を戻して見せた。肯きながら眉間に皺を寄せてそっぽを向くのはルークの照れた時の癖だ。口では何を言っても態度に感情が素直に表れるところが微笑ましい。

 



「(それにしても、やってくれる、ヴァン・グランツ・・・!
  失敗した、余計な手を打てないようにぎりぎりまで粘らせすぎたか。)」

 


ルークを不安にさせないように微笑んだまま、内心で己を罵る。例え純粋な事故であろうと、その身を護りきってこその護衛である。にも拘らず、ルークをこんな状況に陥らせておいて許されるわけがない。
だが己に対する罰は、キムラスカに・・いやシュザンヌの元へ戻ってからだ。ルークの優しい気持ちだけを受け取って礼の言葉を返した。そして気を取り直してこれからの予定を組み立てる。
 

先ずはルークを休ませなければ。罪人は逃げてしまった以上、今の最優先はルークの安全確保と休息である。このタルタロスが何処にあったかは知らないが、アクゼリュスと共に崩落に巻き込まれたというのなら、遥か頭上に見える穴から共に落ちたのだろう。中に残っていただろう乗組員が生きているとは思えない。迂闊に中にルークを入れて、凄惨な情景を見せるわけにはいかない。ナルトが戻ってくるのをじりじりと待つ。

 



「(ああ、もうシュザンヌ様に合わせる顔がない。こんな事になるなら有無を言わせず始末しておくべきだった!)」



身内には甘いといわれるが、任務で対峙した敵には容赦のないレンが辛らつに吐き捨てる。
この世界に来て日が浅い事など言い訳にならない。これ程の大失態など、元の世界ではしたことなかったのに。
 

思わず愚痴も混じる。情けないが、その位の弱音くらい吐かないと自分への怒りに暴れてしまいたくなる。
何とか精神を落ち着かせるため、現状を再確認してみることにした。



今回、マルクトとキムラスカというオールドラントを二分する国家間の和平締結のため、選ばれた親善大使であるルーク・フォン・ファブレ様の護衛として雇われたのが、ケセドニアで傭兵をしていたレンとナルトである。


レンとナルトは、本来この世界の住人ではない。別の世界で暮らして、木の葉という忍びの里に属していた人間である。それがなぜオールドラントに存在しているかというと、簡潔に言えば不幸な事故だ。
事故の原因となったのは、ナルトが新しく開発したがっていた口寄せの術の応用で、複数人を一度に遠方の場所へと転移させる時空間系の術である。元々既存の術も扱いが難しい類の術なので下手な人間に協力は頼めず、暗部任務でパートナーも勤めるレンが手伝っていたのだが、組み立てが甘かったのか、別の要因か。突然暴走した術によって目の前が真っ白になり、気がついたらこの世界に存在していたのである。


まあ、来てしまったものは仕方がないし、帰るためにも情報収集その他の準備は必要である。どう楽観しても直ぐに帰れるとは思えなかった為、とりあえず先立つものを得ようと適当な人里で知識を得つつたどり着いたケセドニアという流通都市で傭兵業をはじめたのだ。傭兵という職業が忍の本業にそこそこ似ていたという事もあるし、知った限りでは最も身元を誤魔化しやすく情報を集めやすかった為だ。何時までも戸籍を持たずに居ると後々厄介な事になるだろうと、仕事になれた頃非合法の手段を使って捏造しておいたが。
それでもまだまだ傭兵を始めて一年弱の、はっきり言って身元の怪しいレン達が、親善大使などという雲上人の護衛などという栄誉を賜ったかといえば、純粋な偶然と運の産物である。


ありていに言えば、ルークが軟禁されていた屋敷から不本意に外の世界に連れ出された不幸な事件の後、キムラスカに帰る途中に偶々街道で行き会った、というのが出会いである。その時の事を思い出して、苛立ちが増してしまったレン。折角落ち着くために経過を整理してみたのに逆効果だった。


 

「(けど、あれは、うん、ありえなかったよね。・・・・軍人って言葉の意味が違うのかと、本気で思ったもん)」

 


今でもありありと思い出せる。・・・・ちょっとした護衛任務の帰り道、街道を歩いていて行き会った5人組が魔物との戦闘を開始した瞬間展開された情景に感じた衝撃を。


 

「(正規の軍服来た2人が、なんで私服来た二人を前衛にして呑気に後ろに下がるのよ!?しかも私服来た人間の内一人はどう見ても仕立ての良い衣装纏った上流階級の人間でしょうよ?!キムラスカ王族の特徴失念してて気づかなくても、あんな一目で貴族だと分かる人に戦闘を任せて護られる軍人って、どんな役立たず?!)」


 

慌てて援護して、聞き出した事情に更に衝撃を受けたレンとナルト。
その場で同行を申し出てルークを護る事にしたのは当然の成り行きだった。


最初は警戒されたが、共に過ごす内に心を開いてくれたルークに詳しい経緯を聞いて、本気でこの世界の軍人に失望した。次いでダアトとマルクトにも。

 



「(あんの役に立たないくせに無意味に自信満々な死霊使いが和平の使者名乗ってるのもお笑いだけど、・・・公務放棄して外出し続ける導師ってのもどうなの、本当に。どんな事情抱えてても実質やってる事は職務放棄じゃないの?)」

 

「和平の使者」と名乗りながら、申し込み先の王族のお一人であるルーク様に、あろう事か脅迫なんぞをしやがったらしいジェイドカーティスへの苛立ちにこめかみが引きつった。


封印術とやらで本来の実力が発揮できない、などという理由で非戦闘員の少年に自分の身を護らせるという愚行が許されると本気で考えているらしい「マルクト皇帝の懐刀」・・・マルクトに失望するのに十分すぎる理由である。マルクトの死霊使いは槍術の名手だとも評判だった気がしたが、一度たりともそんな場面を目にしていない。戦闘が始まると当然のような顔で後衛に下がって、TPOも弁えず呑気に譜術の詠唱を始めるからだ。・・・本来後方援護に使うはずの譜術を唱えるための援護を要求するなんて恥知らずが軍人を名乗るな。その程度の戦闘能力しか持ち合わせていない役立たずはさっさと軍服を返上してしまえというのだ。
 

和平の仲介を引き受けたという導師も導師である。
確かに、勢力が二分して己の方針が受け入れられない導師のもどかしさは分からなくもないが、一勢力の最高権力者が黙って抜け出したままで良いわけがないだろう。本気で和平を望んでいて、仲介役を引き受けたいというのなら、最低限幹部達だけでもその意思を伝えて反対意見を抑える程度の事はするのが義務である。それを投げ出して、意見が通らないからと隠れて行動するなど、権力者としての自覚が欠けるにも程がある。しかもその導師には誘拐された疑いがあり、六神将呼ばれる教団幹部が態々迎えに来たというのに、自ら六神将を撃退して逃げてきたらしい。普通にありえない。たとえ六神将側にどんな思惑があろうと、表向きは誘拐された導師の保護である。誘拐が誤解だというのなら、先ずすべきは逃走ではなく説得或いは説明である。教団本部に直接連絡を入れて誤解を解けば良いだけだ。それさえすれば、六神将が堂々と暴挙を働く大義名分を失くせたのに。
 

「(それを導師自ら逃げ出すなんて、・・しかも撃退したのが「和平の仲介を依頼」したらしいマルクトの皇帝名代・・・マルクトとダアトで戦争開始するのが本来の姿じゃないかな・・この世界の常識なのかな、これが・・・わー早く木の葉帰りたい。本気で。)」

 



で、ティア・グランツである。



「(途中からとはいっても、道中の様子をきちんと日付入れて記録した資料付きで報告したのに ・・・シュザンヌ様がいなかったらキムラスカにも見切りつけるしかなかったなーはは、)」


 

最早思い返すのも苦痛な大犯罪者・・・・あろう事か、彼女はルークの家、つまりはキムラスカのファブレ公爵家を襲撃した末に嫡子を誘拐したという。ティア曰く「人には話せない事情」の為「仕方なく」してしまった事で、ルークを誘拐したのは「不本意な事故」だという。


そんな言い訳で犯罪が許されるならこの世界に刑法や軍人なんて必要ない。大体、ティアが事を起こしたのが一般人の家庭であっても捕らえられて実刑は確実な犯罪行為だ。
彼女は、実の兄であるヴァン・グランツを殺すために、ファブレ公爵家の警備を譜歌で眠らせて侵入して、ヴァンに斬りかかり、間に入ったルークを排除するためにナイフを向けて、その攻撃を防ぐために木刀でナイフを受けたルークとの接触で起きた擬似超振動によってマルクトに飛ばされたというのである。


どこからどうみてもティアが悪くないわけがない。どう贔屓目に見ても庇うのは不可能だ。

まあヴァンが実際にアクゼリュスで暴露していった悪事を踏まえて殺す必要があったと訴えれば、ヴァンへの殺人未遂は情状酌量が認められるかもしれないが、それ以外の行いは一から十まで不必要な犯罪行為だ。なんでヴァンを狙うために全くの第三者の家を狙う。もしも自分の家に招いた客人を殺すために不法侵入されたらどう感じるかという程度の想像も出来ないのだろうか。しかも譜歌を使って警備を眠らせるなどという不特定多数への傷害行為を働いておいて、その家の一人息子であるルークに「関係ない」などと言い放つなんて本気で頭がおかしいとしか思えない。さらにはルークと接触した原因は、ヴァンを庇ったルークにも切りかかったティアの所為だ。本当に「関係ない」と思っているのなら、ティアは無関係の人間に切りかかって殺そうとしたという事だ。・・・もしもルークが本当にティアの言う「傲慢な貴族」だったならその場で首を落とされて、キムラスカに帰還した直後一族郎党処刑されても文句の言い様がない。貴族としてでなくとも、刑法に通じている人間なら一般市民であっても即座に軍部に駆け込んで捕縛を依頼されて然るべき救いようがない大犯罪者だ。

ティアが生きてキムラスカにたどり着けたのは、偏にルークが記憶喪失を患った所為で基本的な生活の知識しか持ち合わせていなかった「世間知らず」で在ったためである。



「(それをああも悪意を持って見下すなんて、恩を仇で返すってこういうことだよね。
  ・・・あの位の反発程度で見逃すルーク様は、まあ、少し甘すぎるとは思うけど・・・)」



ティアへ取っていたという反抗的な態度は、ある意味当たり前の反応だ。何せ相手は七年間剣術の師匠を努めたヴァンに突然切りかかった初対面の犯罪者である。更には目覚めた最初にあるべき謝罪もなく、「迂闊だった」などと口走る人間にどんな好意を抱けというのか。まるで間に入ったルークが悪いかのような口ぶりだ。事情を聞いても「関係ない」「説明しても分からないとおもう」等と馬鹿にされて優しく接してやる義理が何処に存在したというのか。


 

「(・・考えれば考えるほど、ティアに対するルーク様の甘さって、典型的なストックホルム症候群って奴じゃないのかな・・・)」


 

実質的に七年分の記憶しかないという事は精神的には七歳くらいという事だろう。ならばティアのような強引な人間相手に意見を押し通されてしまえばそちらが正しいと思い込むのも無理はない。その七年間も屋敷に軟禁されていて初めてみた外が、他に人間の居ない他国の領土で不安も大きかったろうし・・・その様子を想像するだけで涙が禁じえないくらい痛々しいが。

 



「(せめて、途中からでも同行できて良かった。・・・本来ルーク様を護るはずの使用人は職務怠慢も甚だしいし!)」

 


ルークと共に前衛を任されていたもう一人の私服の人間の身元を問えば、なんとファブレに雇われている使用人だという。何の冗談だと本気で問い返したレンとナルトは悪くないだろう。・・・よもやまさか、何を置いても最優先で護るべき己の主を、他国の軍人の盾に使われて呑気に笑っていられる人間が、ファブレ公爵嫡子の御付なのだという。ファブレの質も知れたなーと遠くを見てしまったのは不可抗力だ。


 

「(しかも、他国の(一応)要人の前で、自分の主を呼び捨て?!他国の要人に対しても敬語なし敬称なし!
 本当に、この世界には私達の知ってる常識人は存在しないの?!)」

 


更には、ティアの襲撃現場に居合わせたというガイが、そのティア相手に友好的に話しかける場面を見て、もう言葉も出なかった。
なんで捕まえないのか聞いたら帰った答が「ティアにも事情があったんだろうし」とはどういう事だ。己の主を殺されかけておいて、襲撃犯の事情を矍鑠してやる使用人。なら事実のみを通報して軍人に捕縛を依頼しようかと考えていると、ガイの言葉に導師も肯くし!



「(導師に擁護された人間を勝手に突き出したりしたら国際問題になるかもと思って見送るしかなかったんだよね・・・)」

 


ルークに念のため聞いてみたが、その時にはもうティアに多少の情が移っていたらしく、とりあえずバチカルには連れて行くというので、道中傍に寄らせない事とルークを戦闘から切り離す事だけに集中したのだ。少しずつ同行者の行為が非常識な問題行動だらけであることを説明しながらバチカルへの帰路を歩んだ。説明を進めるにつれてルークがショックを受けていたが無理はない。元々親しい人間と、親しくはないがそれなりに付き合いを経た旅の仲間である。だが、ルークの思い違いを放置するほうが問題だろうと想ったのだ。



その最中もなにやら「ルークを甘やかすな」とか「剣を持つものは戦うべきだ」とか喚いていたが、自分もナイフを装備しているくせに、攻撃に参加せず呑気に後衛に甘んじているような人間の指図を受ける義理はない。本職軍人が非戦闘員を護る事は義務だが、非戦闘員が軍人を護る必要など微塵も存在しないのだ。そんな「常識」を全く理解していない「世間知らず」の戯言である。一応軍人の義務含めて説明もしてみたが、全く理解していなかった。ティアにとってルークはあくまで自分の前に出て前衛を努めるべき戦闘要員であるらしい。


 

「(戦闘技術の持ち合わせがない人間が軍人になろうとするなんて、なんて迷惑な。その能力不足を非戦闘員のルーク様に責任転嫁して八つ当たりとか、軍人以前に人間としてみっともないと思わないのかなー)」


 

流石にこれ以上信じ難い存在に遭遇する事はないだろうと願っていたレンとナルトの期待むなしく更に不幸は重なった。
導師守護役のアニスだ。なんでもタルタロス襲撃の時、「マルクトの親書」を「護る」為に、導師からはなれて一人先行していたらしい。導師を護るのが本分のはずの守護役が、「マルクトの皇帝名代」の「命令を受けて」である。


 

「(カイツールで見つけたアニス見て、ある意味納得したけどね。・・・ダアトがどれだけ信用できないか。今更だけど。)」

 

軍人でありながら、国境を越えるために不可欠の旅券を無くしたけど無条件に通らせるよう要求するなんて。あれが軍人。軍人で、多分上級職のはずの守護役。・・・ありえない。しかも主である導師の安否そっちのけでルーク様に媚を売ろうとする「導師守護役」。そして全く気にしてない導師。


 

「(で、奇襲かけてきた六神将・・・しかもルーク様に聞いた限りじゃ二回目!どういうことなの!?
 その奇襲にまったく動こうともしない「和平の使者」も、主の危機に剣を抜きもしない使用人も、
 その襲撃犯を捕らえようともせずルーク様への謝罪もない導師も、叱責の言葉だけで見逃す主席総長も!)」


 

最初から権力者の自覚がないとは思っていたが、導師の言動は、ちょっと頼りない、で片付けて良い範囲を超えている。職務怠慢はダアトの内部事情だから放置するとして、ルークに直接危害を加えた六神将を抑えることもせず、危害を加えられたルークへの謝罪もないなどと。部下の統制も出来ない人間が、他国の事情に口を出そうなんておこがましいにも程があるだろう。



カイツールというマルクト・キムラスカの国境で殺人未遂を犯した直属の部下を見逃す主席総長ヴァン・グランツも、実行犯の特務師団団長アッシュも、カイツール軍港で襲撃事件を起こしたアッシュと第三師団長アリエッタも!それほど両国に損害を与えた軍人の所属する団体の最高権力者が、和平の仲介。ここは笑うところだろうか。


しかも、ナルトが十八番の螺旋丸をぶちかまして魔物を一網打尽にしなければ、アリエッタの使役する魔物は明らかにルークを狙っていた。直接母の仇とも宣言していた。・・・それでもまだルークへの謝罪が一言もない導師。そんな導師に仲介を頼んだままのマルクト皇帝名代。


そんなありえない非常識の具現者たちとの苦痛に満ちた旅路で、ルークとの会話だけが心の癒しだった。


ルークの言動は確かに王族としては多少自覚が欠けているかとは思ったが、聞けば誘拐されて記憶を全てなくしてから七年しかたっていないという。零になってしまった記憶を取り戻すために、文字の読みか書きから生活に関する知識等を学びなおしたのだと。つまり学力だけを考えれば七歳児相当(最も貴族としての英才教育でもう少し水準は上だろうが)だということだ。ならば、貴族としての在り方などを学ぶのはこれからなのだろう。まだ公務に就いている訳でもないようだし、実務についてから追々身に着ければ良い事だ。実際に導師としての立場に立っていながら全く自覚を持たないイオンより、これからの成長に期待をもてる分遥かにマシである。

実際ルークの姿を見ていると、基本的な能力値は高いほうだと思う。
屋敷では嗜み程度の剣術しか習っていなかった彼が、レン達と出会った時には既に複数の敵を同時に捌いて同行者全員の動きに気を払う余裕すら見せていた。初めての実戦から数ヶ月でそこまで独学で(同行者の言動を見るに、まともな指導などしているわけがない)技術を磨く能力があるのなら、本格的に経験を積めばあっという間にマルクトの死霊使いなど追い越すだろう。思考が柔軟で応用力があるのが勝因だろうか。
何故か隠したがっていたが(後で聞いたら知らないことがあると、その度に同行者に馬鹿にされた為らしい。どこの苛めっ子だ一体。幼児位までだろうそんな嫌がらせが可愛い戯れで済まされるのは。)知識欲が旺盛で、興味を引かれた事についてはとことん知りたがるところがある。出来る限りは説明したがレンもナルトも
まだまだこの世界の知識には疎いため、教えるというよりも一緒に勉強するような形になることが多かった。それが親近感を生んだのか段々と素直に笑ってくれることも増えた。まるで、ナルトとふざけあいながら手合わせをする姿は兄弟のようで微笑ましい限りだ。


 

「(うん、ルーク様って、凄く幼いよね。素直で元気でちょっと反抗期って、まんま七歳くらいの男の子だなあ。木の葉丸君とかがそんな感じだし、アカデミーの初学年の子とか。)」



態度はぶっきら棒であるが、表情とか視線とかを見ていれば単に素直になれない反抗期の少年そのものである。一々目くじらを立てる方が大人気ない。いつでもルークから離れようとしないチーグルの子どもが無心に慕っているのを見ても、本当に優しい子どもなのだと思う。ミュウの扱いが乱暴なのは手加減の仕方を知らないだけだろう。小さな子どもが、綺麗な昆虫を捕まえようとして傷つけてしまうのと同じ事だ。幸いチーグルは丈夫な
種族だったので、後は少し力加減を覚えれば良いだけである。


 

「(まあ、見た目が少しかわいそうだったけど・・ミュウは全く気にしてないしなぁ・・・アレは本人達の自由にさせたほうが良いんでしょう。 嫌がってないなら、微笑ましいだけだし。)」



そんな苛立ち9割、唯一の癒し1割の大変な旅路だった。バチカルに到着した時は本気で安堵した。迎えに来ていたジョゼット・セシル将軍らがまともな軍人であった事も安心した理由のひとつである。これなら、ガイのような非常識人はただの迷惑な突然変異なのだと自分を納得させられる。
・・・まさかその場で「見直した」などとルークを見下すティアを咎めもしない導師がTOPのダアトや、自国の勝ち戦を話の種にしてキムラスカを見下す人間を皇帝名代にするマルクトよりはキムラスカの方がマシなんだろうと思うしかなかった。


 

「(内心を全く表に出さずに職務に望んでたバチカル港の軍人は偉いと思っちゃったよ・・・本来それが軍人のあるべき姿なんだよね。)」

 


ティアの発言に対する殺気がセシル将軍以下の警備の人たちから漏れたの感じた時は寧ろ安心したのだ。
やっとまともな軍人の存在を知ることが出来て。



本来ならば、そこで別れるはずだったのだが、バチカルに到着した後、是非にと屋敷に誘われたのだ。まさか王族のお屋敷に足を踏み入れるわけには、と固辞しようとしたら悲しげに見つめられて三秒で陥落した。


 

「(シュザンヌ夫人は優しい方だったし。本当に安心したよ。)」

 


そこで、ルークとシュザンヌの二人に、お礼を兼ねてと数日間の滞在を勧められたのだ。実際旅に同行してなんとなく弟みたいだな、と思ったルークともう少し話してみたいと思ったのは事実だったのでありがたくお話を頂いたのである。今になって、その判断を自賛する。そのまま帰っていたら、ここに居る事も出来なかった。



やっとバチカルについたと安心していたルークが突然登城を命じられ、シュザンヌ様のお誘いでお茶に同席させて頂きながら待っていた所に届いたのがルークの親善大使任命の報である。驚くなというほうが無理だ。レンもナルトも、道中のマルクト・ダアトの犯した数々の失態を詳しく報告しておいたのだ。俄かとは言え、護衛を努めた人間の義務だから当然だ。それを目にしたらしきシュザンヌ様が、優しい微笑で毒を吐きつつ労いの言葉を下さったのだから、実際に許されざるこういだったはずだろう。
 

なのに和平。しかも昨日の今日で。


誰であっても裏があると分かる。・・・・まともな常識と最低限の政治知識を持ち合わせていれば。


だがキムラスカ上層部は和平を受けるという。


長年の敵対国であるマルクトとキムラスカの和平である。
確かに渡りに船、という向きもある。重なる戦乱に両国は疲弊しているし、名目だけでも平和の保障が欲しいのだ。だから話に飛びついた、という考えも出来るが・・・・違うのだ。


その理由を、シュザンヌから聞いた時、本気でキムラスカ上層部を残らず暗殺したくなった。
実行しなかったのは、隣で無言のまま立ち上がろうとしたナルトを抑える為に余裕がなかったことと、シュザンヌの神々しいまでの笑みをみたからだ。あれは、・・・色んなものをお腹に抱えた人間が、何やら画策して実行しようとした時に浮かべる類の笑みだった。


「(三代目が時々浮かべる笑い方にそっくりだったよ、うん。ナルトが冷や汗かいて動きとめるって、どんだけ?)」



そこで直々に、ルークの護衛を依頼されたのである。


表側だけの事情から推し量っても、この和平がどれ程重要なのかわかる。同時にその困難さについても懸念された。互いにこの十数年間だけでも大規模から小規模まで死傷者を出す戦闘が繰り返された国家間なのだ。例えマルクトから申し出があったといっても、マルクト国民の末端まで同意しているとは言いがたいだろう。キムラスカ側は言わずもがなだ。そのため、キムラスカが和平受け入れに積極的であることを示し、少しでも民意を味方につけるため、高位継承者であるルークを親善大使に、第一級危険地帯であるアクゼリュスの救援を成功させることでその敵意を少しでも薄めるという目的の元計画された救援隊の派遣だった。

少なくとも、誠心誠意国政に臨んでいる臣民の思惑は、だが。

 



「(だけど、インゴベルト陛下と、・・モースの思惑は違うんだよね。・・・ファブレ公爵も)」

 

 



以前から預言に傾倒して、他国の権力者を事ある毎に重用するインゴベルトやクリムゾンに対し失望を重ねていたシュザンヌが、今回の怪しすぎる和平受け入れと親善大使の指名に堪忍袋の尾を完全に切らしたらしい。あからさまに過ぎるほど手薄なルークの護衛に不安を抱き、ナルトとレンに護衛を依頼したのだ。シュザンヌの本音としては私兵を一部隊つけても足りないと思っていたらしいが、流石に王命で編成された救援隊にねじ込むのは数人が限界だったのだ。そこで、僅かの期間でもルークと直接接する機会があり親交を深めていたレン達にお鉢が回ったという事だろう。同じように同行を申し出たガイが、笑顔のシュザンヌ様の口撃で再起不能にされたのも当然の結果だろう。寧ろその場で首を切られなかった慈悲に感謝するべきだ。


 

「(最も、あれは多分何か考えがあるんだろうけど。
 ・・・帰国する頃にはキムラスカの改革も終わってるだろうし。)」


 

例え病身であっても、王宮内で生を受け降嫁するまでその身を守り抜いた伝手が、容易く消え去るものではあるまい。貴族の奥方というものは、どんな社会の中であっても、見た目ほど美しいばかりの生活を享受できる身分ではないのだ。それはこの世界でも同じなのだろう。自信に満ちたシュザンヌの微笑みを見れば勝算がどの程度か推し量れる。


・・・何よりも、愛する子どもの為に力を尽くす母親ほど、強い生き物など存在しないのだ。



どんな手を使ってもルークの安全を確保して欲しい、といった時の必死な声を思い出す。

 


「(ルーク様は、良いなあ。あんな風に本気で想ってくれるお母さんがいて)」

 


詮無いことと想っても少しだけ羨ましかった。シュザンヌの優雅な仕草も威厳に満ちた物腰も損なわれる事はなかったが、それでも護衛を、と口にした時の声は、とても切実だった。美しく微笑みながら、その瞳は怖いくらいに真剣だった。だから、ナルトとレンは依頼をその場で受けたのだ。本当ならば、この世界の深い事情には立ち入る積りはなかった。確かにルークの事は一個人としてとても好ましく想っていたが、それでもそのまま別れてしまうのが正しいあり方だった。それでも、シュザンヌのあの目をみたら、断ろうとは思えなかったのだ。



そしてレンは、此処に居る。

 







 














 

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