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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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*本編前の過去編

*でも微妙に原作様第一部と第二部の空白期間にリンク。
最後に少しだけで、ナルトの出番も数行だけですが。


*碇レンと二人の幼馴染(うちはイタチと惣流アスカ(♂))でスリーマンセル時代の日常風景
*シリアスほのぼの半々位

*三人とも自分の家に対して辛口です。
*時々木の葉にも辛辣です。





 

御題配布サイト「age」(管理人吟さま) http://pick.xxxxxxxx.jp/からお借りした

「さるしばい家族の10題」 より、「4、ソファは満員」


 



 



レンの住む屋敷は基本的に和風の造りだが、幾つか洋風に改装された部屋もある。
うち一つが、日当たりの良い南向きのリビングだ。


レンがこの屋敷に住むようになった当初、ただ大きいばかりで古い屋敷はあちこちがぼろぼろの状態で、かなりの補修を必要とした。その分安かったので文句はないがそのままでは住めない。ならば、ついでに己の住みやすいように改築してしまおうと手をいれたのだ。この世界に転生して数年経ったが、未だに”過去”の十四年間の記憶がある所為か純和風の碇家の生活は少し窮屈だと感じていたためだ。


「多分、生活様式だけの所為じゃないけどね。」


「あ?なんか言ったか?」
 

「ううん。なんでもないよー。アスカは何飲む?」


「?まあ、良いけど。そーだな、コーヒーにすっか。」


「OK。じゃあ、お茶請けはお土産にくれたチョコケーキで良い?」


「おう。」

 



リビングで日向ぼっこをしながら本を読んでいたのだが、そろそろお茶でも淹れようと立ち上がりながらの呟きにアスカが顔を上げた。実際大した内容では無い為、笑いながらお茶のリクエストを聞く。アスカもなんとなく聞いただけらしく、素直に希望を答える。平和だな、と思いながらリビングをでてキッチンに向かった。

背中を見送ったアスカが、注意深くレンの空気を伺っていた事には気づかなかった。

 

 

 

 

「あ、イタチ。お帰りなさい。アスカ、コーヒー此処に置くよ?・・イタチは緑茶だよね?」

 


お茶を淹れつつ感じ取った気配に追加した湯飲みを新しい客人の前に置く。家にレンしか居ない時は律儀に許可を待つのだが、アスカが先に来ている時はイタチを無理矢理引き込むのが常だ。だからレンものんびりとイタチの分も用意して戻ったのである。ソファの両側に其々座る少年二人の間に腰を下ろしながら、イタチに話しかけた。

 
 

「ただいま。・・頂きます。」


「はい召し上がれ。任務お疲れ様。予定より早かったね?」


「船が順調に進んだからな」


「そっかぁ、海が荒れなくて良かったね」


「ああ、それは安心した。それよりも、すまないな、勝手に上がりこんで」

 


置かれた湯飲みを手にとって口に運びながらイタチが答える。ほのぼのと会話するレンとイタチ。だが、最後に加えられた謝罪を聞いて、イタチ同様にカップに手を伸ばしていたアスカが雑誌から視線を上げた。

 
 

「サンキュ、頂きます。・・てかイタチよ。お前一々こいつ待つ必要ねぇだろ、今更」


「アスカもどういたしまして。
 って、そうそう。アスカの言うとおり、直ぐに入ってきて良いのに。」

 


イタチとアスカの答えに其々返しながら、イタチに向かって首を傾げるレン。実際ほぼ日参して、客室二つはアスカとイタチの私室同然の状態で、今更遠慮しても、と思ったのだ。だがイタチは真面目な表情で首を振る。

 
 

「親しき仲にも礼儀あり、というだろう。女性の家に遠慮なく足を踏み入れるのはな」


「こいつが女って柄かぁ?」


「アスカに言われると腹立たしいけど!・・・本当に遠慮しなくて良いのに」

 


アスカの茶化した物言いに頬を膨らませて睨むが鼻で笑ってあしらわれる。レンも別に本気で怒ったわけではないのでイタチに言葉を返した。言いながら、イタチの生真面目さも今更だしなーと思ったのでしつこく繰り返しはせず話題を変える。

 



「ま、イタチらしいね。・・ところでそろそろ買い物行くけど。夕飯何がいい?明日のお弁当のリクエストもあったら聞くよ?」


「では俺も手伝おう」


「え、イタチはゆっくり休んでて良いよ?任務の後でしょ?」


「馳走になるんだ。その位手伝わせてくれ。アスカ、行くぞ」

 


ふと時計を見て、買出しに行く時間かと腰を上げた。ついでにアスカとイタチに食事の希望を聞く。基本的に食卓の主導権はレンのものだが、二人の希望も取り入れた上で決定するのが常である。特に今日は珍しく三人でゆっくりと過ごせる時間が取れた事だし、多少の我侭も聞いてやろうと思い立ったのだ。レンの言葉にイタチがすかさず立ち上がり手伝いを申し出る。だが、任務後であるイタチに手伝いを頼むのは気が引ける。そのレンの気遣いにイタチは首を振って、ソファでくつろぐアスカを見下ろして声をかけた。

 
 

「面倒くせぇな。イタチが行くなら、俺はいらねぇだろ。」


「アスカ」


「へーへー」


「二人とも、本当に大丈夫だよ?折角なんだから、ゆっくり休んでてってば」

 

 


読んでいた雑誌をマガジンラックに投げ入れながら気だるげに立つアスカ。口では文句を言うが、本心ではない。単に素直にレンの手伝いをするのが気恥ずかしいだけだ。それを知っているからイタチが誘って促してやっているのだ。・・レンは気づかず、慌てて遠慮しているが。

 
 

「あんだよ、オレじゃ頼りないってか?」


「そんなことはないよ?アスカもイタチもいつも助けてくれてるし!」


「は、当然だな。」


「・・行くぞ」

 


アスカがわざとらしくレンの顔を覗き込む。レンが慌てて首を振って否定すれば、満足そうに口角を上げた。その表情に紛れもない喜びを見出して、イタチが内心の笑いをかみ殺し声をかける。アスカの言動は、いつでも素直で微笑ましい限りだ。伝えたい相手には全く伝わっていないが、今の二人にはこの程度が丁度良いのだろうと一人肯いてさっさと外に出る。

 
 

「あ、ごめんイタチ。じゃあ、アスカも行こう?」

「おう」

 

 

 

 

 

 

「なんか、二人と一緒に買い物行くと、おまけ一杯もらえるよね・・・
 食費が助かるな~♪」


感心しきったレンの呟き。向けられた二人はあからさまに嫌そうな表情で振り返った。両手には重そうな袋が握られている。

 


「・・・・・うるせぇよ。」

 

覇気がない声で言い捨ててアスカがレンを睨む。アスカの脳裏には黄色い声でおまけを押し付ける八百屋や肉屋の小母さんの姿が甦って疲労が増した。

 

「・・・・役にたてたなら何よりだ。」

 

心持肩を落としたイタチが、レンには穏やかに返しつつ、熱の篭った視線で周囲を取り巻いていた野次馬を思い出して溜息を深くする。

 


「えと、・・・ごめんね、やっぱり一人で行けばよかっ」

「「気にするな。オレ(俺)が好きでしたんだっつーの。(事だ。)」」

 
 

二人の重い空気にバツが悪そうな表情でレンが謝るが、アスカとイタチはすかさず否定する。確かに無駄に体力を奪われた気がするが、レンを一人で出すほうが、後々精神的な疲労が溜まると分かっているのだ。

 


「(・・・・・こいつ、全く気付かねぇとか、どんだけ鈍い・・まあ良いけど。)」

「(・・・牽制の効果はあったようだな。)」

 
 

アスカが呆れてレンを見下ろし、イタチが呟く。・・・里中の女性の人気を集める眉目秀麗な少年二人に隠れがちだが、可憐で華奢な容貌と体躯が保護欲をそそる、と密かに評判のレンに懸想する者もおおいのだ。増して、レンは家事万能で控えめで気遣いが上手くアカデミーでは、将来嫁にしたいランキングで不動の一位を誇っていた。・・・実際、必要以上ににこやかに対応していたスーパーの店員や、常以上に熱くお勧めを説明していた魚屋の店番からガードしていた二人が同時に苦笑を零した。

 


「・・・そーいや、スーパーで話してたのが新しい班員か。」

「ああ、見てたの?うん、トウジとケンスケ。」

「上手くやれているようだな」

 


しかしアカデミー時代、学内新聞で目玉記事だったランキングには、本気で苦労させられた・・・と更に疲れる記憶が甦り、それをかき消すために違う話題を、と考えているうちに思い出して問うアスカ。軽く挨拶するだけで通り過ぎたレンを、名残惜しそうに見送っていた少年二人を思い浮かべて軽く眉間に皺を寄せる。
そんなアスカを見て呆れつつ、イタチがレンに当たり障り無く言葉をかける。レンの人当たりの良さならば、普段は余程のことがない限り人間関係で問題を起こす事はない。だが、レンだけが中忍昇格を一年遅らせなければなかった原因が尾を引いてはいない事を己の目で確認して安心したのだ。

 

「うん、心配してくれてありがとう。・・・大丈夫、今度の試験ではちゃんと受からなきゃねー。」

「ま、頑張れよ。後輩君?」

「・・・・ありがとう、先輩。」



イタチを見上げて苦笑を滲ませるレンが明るく言えば、アスカがからかい気味に混ぜ返す。それに少し頬を膨らませて上目遣いで乗るレン。

 

 

「レン君」

 


そこで、突然声がかけられた。

 


「・・・・冬月、先生」

 

数秒前の明るい笑みが消え、感情を読ませない仮面の表情で立ち止まるレンが、ゆるりと首を巡らせる。その先には、渋い色の和服をきっちりと着こなした人物が柔和な笑みで立っていた。

 
 

「お久しぶりです。冬月先生、このような所まで態々お越しくださらなくとも、お呼びくだされば直ぐに伺いましたのに。」
 

「いや、久しぶりに君の顔を見たくてね。普段の生活の様子も直接見ておきたかったし」


「お気遣い頂きありがとうございます。ええ、恙無く過ごさせていただいております。」

 


イタチとアスカを視界にも入れていないかのような態度でレンに笑いかける冬月。
だが、少年二人は自分たちへの無礼より、レンが表情を偽らなければならない相手の出現に苛立ちを募らせる。


半年前の中忍試験最終試験前の準備期間に起きた、碇家当主の「乱心」による傷害事件の詳細を知るイタチとアスカは、明確な敵意を冬月に向けた。・・・里の上層部の都合による建前上「乱心による傷害事件」で片付けられたが、その事件で、レンが、碇ゲンドウに何をされたのか、今は全てを知っている。

 
 

最終試験の本戦前の準備期間に修行中、突然担当上忍に呼び出されて向かったのは木の葉病院の一室だった。真っ白な部屋の中央に寝かされた、真っ白な包帯に全身を包まれたレンの寝顔が脳裏に過ぎる。


人の気配に目を覚ましたレンが浮かべた、感情の伴わない空っぽの笑顔。
静かに微笑んで、「不注意な事故」で負傷した所為で試験を棄権する事になった、と告げた細い声。
誕生日にとイタチとアスカが共同で選んで贈った髪飾りを着けてみたいからと、最近伸ばし始めた髪がまた以前の様に短く切りそろえられていた。


動揺を押し殺して笑ったアスカと、無表情ながら穏やかに言葉を掛けたイタチが、枕元に近づこうとした一瞬、確かに震えた肩。
赤みを帯びた漆黒だった瞳が、深紅に変わったことを隠すように常に目を伏せたままの静かな微笑。


・・・・以前ならありえない速度で完治していく傷痕を、怯えた表情で隠そうとしていた。


何度も何度も名前を呼んで、無理矢理にでも手を繋いで、普通に笑えるようになるまでやっと回復してたのに。


そのレンが、また事件直後に浮かべたのと同種の表情を見せた。
その事実がアスカの怒りを掻き立てた。隣のイタチも穏やかだった瞳に苛烈な光を浮かべて冬月を見据える。少年二人にとって、大事な幼馴染を傷つけるだけの存在に成り下がった碇家の人間は、全員が敵だった。特に碇ゲンドウが「乱心」によって当主を退いた後当主代理を務める冬月はその筆頭だ。そんなアスカ達の敵意と殺意を察しているくせに、そ知らぬ表情でレンに話しかけるその態度に更なる嫌悪を募らせた。

 

 


「レ、」
 

「ごめんね、お待たせ、二人とも。
 ・・では、冬月先生、お話がそれだけでしたら、そろそろ失礼させていただきます。」

 

 
だが、限界を迎えたアスカとイタチが行動を起こす前に、レンが動いた。
穏やかな笑みで手に下げた荷物を持ち直して帰宅を促す。
柔らかいのに、温度のない笑顔が、アスカとイタチに向けられる。


レンは、酷く凪いだ己の心情に首を傾げた。あの事件以来碇家の指導者達とは顔を合わせていなかった。入院中に、レンが碇家の籍から外されたと告げに来たのも伝令を努める下男の一人だった。
碇ゲンドウが、「父上」が、自分に向けた視線に一喜一憂しては今生でこそ認められようと必死だった時は、冬月達の向ける感情の一つ一つにももっと敏感だったのに。今目の前で、レンの表情を冷徹に観察する視線で見下ろす老人の笑みを目にしても感情は動かない。ただ、目上の人間に対する礼儀を守って当たり障りのない返答を返す。中身のない社交辞令を交わして相手の気まぐれを満足させるだけだ。だがそろそろ切り上げても良いだろう。何が目的だったか知らないが、夕飯の準備が遅くなってしまうし、と暇を告げた。



「ああ、元気そうで安心したよ。
 ・・・先日長期任務から無事帰ったと聞いたときもだが。流石、碇とユイ君の娘だ。」


「、光栄、です」



「てめ、」


「では、失礼いたします」

 



それでも碇ゲンドウの名を出した瞬間、微かに感情がざわめいた。
早く帰って三人で夕飯を食べようと考えてほわりと暖かくなりかけた胸の奥が引きつる。半年前までは、きっと嬉しいと思っていたはずの賛辞なのに、酷く冷たいしこりが生まれた気がする。
 

耐えかねたように声を荒げかけたアスカを、素早く押さえつけているイタチを視界の端に入れながら、レンは笑みを保ったまま答えた。一瞬詰まってから改めて一礼したレンを見下ろす冬月の視線は穏やかだ。
・・・穏やかに、レンの言動の一つ一つを観察している。

それを見て、成る程、と呟く。

 

 

「ああ、引き止めてすまなかったな。
 では、また暇がある時にでも遊びに来てくれ。歓迎するよ。」


「はい、ありがとうございます。それでは」

 



再度一礼するレンは、穏やかに微笑んだ。


・・・・成る程、ゲンドウが行った実験が、本当に失敗だったのかを、己の目で確認に来たのか。

 


「・・・・なら、もう、会う事はないかな」

 


ちらりと振り返った瞬間目にした冬月の表情に浮かぶ諦念に満ちた苦い笑みを見て、そう呟いた。

今度胸に湧き上がった感情が、安堵であった事に気づいて自嘲するように口角が歪む。
歪んでしまった表情を隠すために一つ深呼吸してから、アスカとイタチに向き直る。目が合った二人の表情に、心配が張り付いているのを見て今度こそ感情が伴った苦笑が浮かんだ。

 


「ごめんね、待たせて。」

 


レンの表情を真っ直ぐ見返した二人は、一つ深い溜息を吐くと手に持っていた荷物を片手に持ち直す。そして両側から同時に手を伸ばすと、力任せにレンの頭を撫でた。髪が絡まると抗議する前に、ぐいっと力を入れた掌に押されて顔が俯く。そのまま軽く掌を弾ませた二人は、其々背中と腕に手を添えて、レンを帰路へと促した。

 
 

「ああ、帰るか。」

「早く帰って夕飯にするぞ。流石に腹が減った。俺の分は大きめで作れよ。」


「・・・・うん。帰、ろう。」

 



当たり前の様に、二人が「帰ろう」と言った。
両側から伝わる温もりに、冷え込み始めた夕刻の外気も気にならなかった。
少し支えてしまった言葉に気づかなかったように、二人はもう一度口を開いた。

 

「「早く帰るぞ。」」

「うん!」

 

 

 

  

 

 

 

 


「・・・い!起きろよ!レン」


「う?」

 

薄暗いリビングに、少年の声が響いた。肩を軽く揺すられたレンが、ぼんやりと目を開く。
霞んだ視界に、僅かな光にも鮮やかに煌く金糸が入る。

 

「あ、れ?・・・ナルト?」

「お前なあ。もう秋になるってのに、こんな時間に何も掛けずに寝てたら風邪ひくだろうが」


「ごめ、ん?・・・・あれ」

「何だ。まだ寝ぼけてんのか。」

 



徐々に覚醒する意識。起こしてくれたナルトに答えながら周囲を見渡すと、そこはリビングのソファの上だった。どうやら非番の午後、たまには読書でもと思っていたのだが、寝入ってしまったらしい。何か自分こんなのばっかりだなあ、と苦笑しながらナルトに視線を戻す。折角ナルトが来てくれたのに、出迎えもしなかった事を申し訳なく思った。

 
 

「ごめんね。起こしてくれてありがとう」

「別に、大したこっちゃねぇよ。それより、お前大丈夫か」

「何が?」

「・・・・・いや、何でもない。」

「ナルト?」

 


ナルトの青い瞳が、思いのほか真摯な光を浮かべてレンの表情を見つめていた。
何時もはっきりと物事を口にするナルトが、珍しく何事か言いよどむ。
どうしたのかと首を傾げるが、次の瞬間には普段どおりのナルトの表情に戻っていた。

 


「何でもねぇよ。それより、夕飯一緒に食う約束だろ。任務が珍しく早めに終わったから買出しも手伝おうかと思ってな。」


「あ、そっか、お疲れ様。お帰りなさい。」


「///た、だいま。・・っほら、行くぞ!」


「うん、ありがとう。少し待ってね、鞄とってくる」

 


予定していたより早い訪問の理由を告げられる。何時も殆どの日夕食は一緒に摂るが、今日はイノ達も一緒にご飯を食べる約束があったのだ。だが皆裏での暗部任務や表での下忍や中忍の任務があった為、全員が揃う時間を合わせた結果約束は夜だった。だからうっかり昼ねしてしまっていたのだが、ナルトは手伝いもしてくれるつもりで早めに来てくれたらしい。無事に帰宅した姿を改めて認識して安堵に微笑んだレンが笑って労うと、頬を染めたナルトがぶっきら棒に手を引いた。どうやら成長期に差し掛かったらしく、身長を伸ばし始めたナルトは、可愛らしさよりも精悍さを増し始めたと評判なのだが、赤く色づく頬が変わらない素直な少年らしさを醸し出して微笑ましく思った。感じるままにくすくすと笑い声をあげると、少し睨まれてしまう。慌てて口を押さえて、財布を取りにと部屋を出た。
 

そこで、さあ、っと穏やかな風が吹き込む。
空気の入れ替えに、と少しだけ窓を開けていたことを思い出して部屋を振り返る。


電気をつけて居ないから夕刻らしく薄暗いリビング。
温かみのある色合いのラグマット。
数冊の雑誌や小説が入れられたマガジンラック。
小さめのローテーブルには、一つだけ置かれたマグカップ。
ひなたぼっこが室内でも出来るようにと、窓際に置かれたソファ。


・・三人が、其々にくつろいでも余裕のある大きさの。


その上には、三つの色合いの違うクッション。
さっきまで自分がもたれていた一つと、使われない二つが仲よく並んでいる。



いつでも満員だったその場所が、夕日に照らされながら少しずつ淡い影に沈んでいく。

 


「帰ろう、って」

 

 


「レン!何やってんだ?」

「あ、ごめんね。直ぐ行くよ。」

 



ぼんやりと落ちた呟きを振り払うように、ナルトの声に応えた。
素早く部屋を横切って窓を閉め、音を立てずにリビングの扉を閉める。

 

 

いつでも両側にあった温もりを夢に見た。

二度と戻らないのだと諦めかけたもの。

 


「でも、諦めるのはやめたから。・・・ごめんねイタチ。」



調べ続けるうちに知ってしまった、うちは一族の闇に思いを馳せる。
もう、情けなさにうずくまって泣くだけ子供ではないのだ。

 



「イタチの意思から外れても、私は私の決めたことをするよ」

 

 


それでも昔は当たり前に差し出されていた掌が、今は、とてもとても遠くて。


寂しさを振り切るように、いつでも満員だったはずのソファを一瞥して、扉を閉める。

 

 


「せっかく、三人で使うからって一緒に選んだんだから、居てくれなきゃ駄目でしょう?」

 


穏やかに微笑みながら、瞳に苛烈な怒りと強い決意を宿して呟いた。

 


自己嫌悪も後悔も未練も何もかもを飲み込んで、

それでも捨てたくない望みを叶えると決めた、18歳の晩夏。

 
 

 

 


 

 

 

 

 


 

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