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こんにちは暁です。影羽様大変お待たせいたしました。
影羽様に頂きましたリクエスト「PTメンバー断罪でオリイオ様とアリエッタに溺愛されるルーク」を書かせていただきました。場面設定はありませんでしたので、今回は崩落後のユリアシティで書かせていただきました。
お気に召していただけるかはわかりませんが、どうぞお納めくださいませ。
勿論イメージと違う、とか、もっと別の展開を期待してた、ということがございましたら、どうぞお申し付けください。
改めて書き直させていただきます。
何はともあれキリ番45000hitありがとうございました!!
*PT+アッシュ+若干キムラスカとマルクトきびし目。
レプリカイオン様は糾弾する側です。被験者イオン=イザナで表記されてます。
「------ですから、何度も言いますが、ルークは何もしていません。」
「イオン様ぁ!そんな奴庇う必要ないんですよぉ!!」
「そうです、導師イオン。悪い事をしたなら、きちんとわからせることも必要です!」
「なあ、ルーク、いい加減に素直に謝れよ。」
「導師イオン!罪は罪です!ルーク自身に償わせなければいけまんわ!」
「それよりも早く行きましょう。」
瘴気と呼ばれる害毒大気に包まれた薄暗い世界で、ローレライ教団の最高指導者である導師イオンは、これ以上ないくらいうんざりと疲れきった声で何十回も繰り返した言葉を再び告げた。途端沸き起こるのはキンキンと耳に痛い騒音の五重奏。すでにイオンの中で彼らの言葉は言葉ですらなかった。ただ、イオンの後ろで無理矢理使わされた超振動の負担によって、意識が朦朧としているルークに負担をかけるだけのものだった。
「(ああああ、もういい加減纏めて始末してしまいましょうか。
・・・お二人とも早く来てください。)・・ですから、」
ここは、アクゼリュスという名のマルクト帝国領にあった鉱山発掘によって生計を立てていた町の崩落によって落ちた先に存在していた地下の世界。外殻大地と呼ばれる現存する大多数の者達が生活する大地の下に隠された、オールドラント本来の大地がある場所だ。二千年前、聖女ユリアと呼ばれた女性が、瘴気に蝕まれる大地からの避難処置として人間達を保護するために造り上げた外殻大地に隠されて殆どの人間達は存在すら忘れてしまった本当の星の大地の上だった。
瘴気に蝕まれるアクゼリュスの救援にと送り込まれたキムラスカの親善大使ルーク・フォン・ファブレ率いる一行は、パーセージリングと呼ばれる外殻大地を支える音機関の消滅によって崩落したアクゼリュスと共に、この魔界に落ちてしまったのである。偶々付近に落ちてきたマルクト誇る最新鋭陸上装甲艦タルタロスに避難する事ができた一行は、なぜこんな事態になったのかを話し合った。結果、これは外殻大地崩落を企んだ神託の盾騎士団主席総長・ヴァン・グランツ謡将に唆されたルークが超振動と呼ばれる特殊能力によってリングを壊したためだと結論付けた。
・・・・リング崩壊を直接目撃した唯一の第三者であるイオンの言葉を無視して、である。
「(ルークを疑っているから彼の言葉を信じられないというだけなら、納得できなくても理解はしますが、ならば、僕の証言を無視するというのはどういう意味なんです!!)・・・ルークは自分の意思でリングを壊そうとしていたわけではなくてですね、」
「-----とことん屑だな!出来損ない!!」
疲れきったイオンを余所に、何とか魔界唯一の安全地帯であるユリアシティにたどり着く。そこでタルタロスを降りながら再びルークを非難する一行に、繰り返しかけたイオンの言葉を遮って、新たな人物が声を割り込ませた。
「お、おまえ・・・」
「くそ!俺がもっと早くヴァンの企みに気づいていれば、こんなことには!」
「・・・アッシュ。」
何やら自己完結しつつ煩悶する真紅の髪の青年・・・ルークの被験者である、神託の盾騎士団特務師団団長を務めるアッシュ・鮮血のアッシュという二つ名で呼ばれるヴァンの腹心六神将の一人だ。そのアッシュの業とらしい独白を耳にしたイオンはどんどん目が据わってくるのを自覚する。最早”慈愛に満ちた心優しい少年導師”の仮面など消失寸前である。
「(・・・・こいつもですか。と、いうより、こいつの所為ですか。)・・・貴方は此処で何をしているんです?ヴァンの子飼いの六神将が」
「イオン様!アッシュは敵ではありません!!」
「イオン様ぁ!!アッシュよりルークから早く離れてくださいよぉ!」
辛うじて浮かべた上辺のみの笑顔で淡々と問いかける。そのイオンの言葉に反応したのは、何故かアクゼリュス到着直前までこちらを本気で殺しにかかってきた敵であるアッシュに笑顔まで浮かべて信頼の視線を向けるティアだ。しかも他の四人も当然の様な表情でアッシュの存在を許容している。アッシュが参加していたタルタロス襲撃によって己の直属部隊であるマルクト帝国第三師団の部下達を皆殺しにされた筈のジェイド・カーティスや、自国の軍港を襲撃された筈のキムラスカ・ランバルディア王国の王女ナタリア。国境でアッシュがルークに直接斬りかかる場面を目撃し、カイツールでは人質までとってルークの身柄を要求してきたことを知っている筈のルークの護衛であるガイ・セシルも。あまつさえ、イオンを誘拐して危険な場所を連れまわしたと知っているはずの、導師守護役のアニスに至っては、イオンの方を諌めようとすらした。・・・敵に対して警戒するイオンが間違っているとでもいうように!
「・・・師匠、は?」
疲労困憊しつつも声を搾り出したルークに、アッシュはこれ以上ないくらいの侮蔑を含んだ視線を向けた。イオンがぎりぎりと音を立てそうなくらい音叉を握り締めて殺意を抑えていることに気づきもしない。
「は!裏切られてもまだ”師匠”か!!てめぇがヴァンの口車にのってほいほいと超振動を使った所為でこんなことになったってのに、反省もしやがらねぇとはな!!レプリカってのは脳まで劣化してやがんのか?!」
「・・・裏切った、のか。・・本当に?」
暗い声で呟くルーク。労わるように腕を支えるイオンと、肩にのってルークの頬を嘗めるミュウの存在だけを頼りに辛うじて保たせた意識が再び暗転しそうになっている。そんな様子を見て取ったイオンはますます表情を強張らせてルークの前に立った。アッシュに向ける視線には既に温度などない。これまでの同行者への関心など微塵も浮かべず、ルークを守ることだけを考える。
「(そろそろ、彼らが来てくれる筈。・・・早く、早く!)・・・黙りなさい、”鮮血のアッシュ”。
その”裏切り者”の腹心がどの面下げて此処に現れたんですか。」
「は!俺をヴァンなんかと一緒にするんじゃねぇよ!!」
「・・・・・ほう?では、貴方は何だというんです?アッシュ。
・・・死ぬのが怖くて自国を逃げ出した臆病者の王族が。」
いきり立つアッシュの言葉を、穏やかな声が遮った。その声の持ち主がアッシュに向けたのは、絶対零度というのすら生ぬるい、触れただけで凍傷を起こしそうなほどに冷え切った侮蔑の視線と言葉。一斉に視線が集中する先には二つの人影と、彼らを守るように構える数匹の獣の姿が。
「・・・イザナ様、アリエッタ!!お待ちしていました!!」
「・・・イザナ、アリエッタ?」
喜色満面でその人物に走り寄るイオン。その手に引かれるルークが呟きながら走ろうとして足を縺れさせる。それを見て慌ててアリエッタと呼ばれたローズピンクの髪の少女が傍らの獣・・彼女の兄妹であるライガに指示を出す。気づいたイオンが申し訳なさそうにルークを振り返る。イザナと呼ばれた少年がそのイオンの後頭部を優しく叩いて諌める。アリエッタが苦笑してルークの髪を梳く。ライガはルークが楽なようにを身を屈めて穏やかに喉を鳴らした。ミュウが主人の味方が増えたことに喜んで、天敵であるはずのライガの足元に下りると無防備にルークに擦り寄った。
その平和な光景を無粋に遮ったのは、無視される状況にあっさり切れたアッシュと同行者達だ。
「てめえら!俺を無視するんじゃねぇよ!
しかもお前、導師と同じ顔、ということはそいつと同じレプリカか?!」
「イオン様!危険です。彼らから離れてください!」
「最低ぇ~~!アンタ、六神将と繋がってたんだ?!そんなイオン様のレプリカまで、」
「ルーク!!早くこっちにこい!今なら間に合うから!!」
「やれやれ・・騙されたのではなく、最初から裏切っていた、ということですかね?」
「・・・・・ルークが、レプリカ?どういうことです?!」
喧々囂々と好き勝手に喚く。
イオンは煩そう眉を顰めて、ルークの耳を優しく塞ぐ。そろそろ本当に限界だろうルークを、このまま休ませようとライガの背中に安定させてミュウを寄り添わせた。不安げな瞳には安心させるように微笑んで、イザナとアリエッタに懇願の視線を向けた。イザナとアリエッタも同様に、ルークの頭を優しく一撫でしてその背に庇った。安心したように眼を閉じたルークが、ライガに守られて後ろに下がる。そしてアッシュ達に対峙するために前に進み出た二人を包むのは、これ以上ないほどに激しい怒気と威厳。
「ああ、五月蠅いですね。少しは己の頭で考えてから物を言ったらどうなんです?」
「静かにしろ、です。
ルークを傷つける事も、この方を侮辱することも、許しません、です」
「は!てめぇもどうせレプリカなんだろ?!被験者様に口答えすんじゃねぇよ!!
さっさとその屑をこっちに寄越しやがれ!!」
荒んだ口調でイザナに凄むアッシュ。その粗暴さに心底呆れた、というように肩を竦めたイザナが口を開く。
「本当に粗略な言動ですね。しかも単純で浅慮。
・・・これが10歳までは神童と呼ばれた誉れ高きファブレの御曹司の末路とは、ね?
キムラスカ王家の方々はさぞかし失望なさることでしょう。」
「・・・10歳まで、神童と呼ばれた?・・ファブレの御曹司?
・・・アッシュが?・・・では、では?!」
そのイザナの言葉に食いついたのは先程もレプリカというアッシュの発言に疑問を浮かべて戸惑っていたナタリアだ。途端ティアは痛ましそうに表情を歪め、残された同行者の内二人は疑問を浮かべ、ジェイドが納得する。イザナとアリエッタが冷え冷えと見守る先で、下らない三文芝居が展開された。イオンは只管ルークの安息確保にのみ意識を向けて同行者など視界外だ。ミュウも同様に、うとうとし始めたルークの眠りを妨げぬようにそっと身体をくっつけている。
「では、まさか?! 貴方が、ルーク、ですの?」
「・・・今の俺はアッシュだ。」
「ですが、貴方が七年前のルークであるのは本当なのですね?!ああ!」
戸惑いから歓喜の表情に変わるナタリアを複雑そうに見つめるアッシュ。ティアが眉を潜めつつも言葉を挟む。
「アッシュ、止めて頂戴。何もここで言うことは、」
「何?どういうこと?」
「アッシュ、が、ルーク?」
「・・・・」
「・・・・教えてやるよ、俺が何故そこの屑と同じ顔なのか。」
疑問を浮かべるアニスとガイに説明するためか、声を高めるアッシュが語り始める。一見ルークに配慮して止めようとしてみたティアも再び制止はしなかった。
「俺はなバチカル生まれの貴族なんだ。七年前にヴァンって悪党に誘拐されたんだよ。」
「・・まさか」
「そう、俺が元”ルーク・フォン・ファブレ”。
その屑は、ただの俺の劣化複写人間なんだよ!」
「な?!」
「・・ルーク。」
「ってことは、」
「・・・・ふぅ」
「ルーク!!」
驚くアニスとガイが、イオンに守られ、イザナとアリエッタに庇われるルークに視線を向ける。ティアは心痛を堪えるように視線を落とす。ジェイドは肩を竦めて小さく息を吐いた。ナタリアが表情を輝かせてアッシュに駆け寄った。勝ち誇るアッシュの表情。
「なに?!ってことはそいつ偽者なわけ?!しかも人間じゃないんだ?!
最低ぇ~~!イオン様!危ないですよ、早くこっちに戻ってください!」
「ルークが、レプリカ・・・アッシュが、ルーク?」
更に五月蠅くアニスが喚いた。ガイは只管戸惑ってルークとアッシュを見比べる。
「・・・・で?気が済みましたか、鮮血のアッシュ。」
「くだらない、です」
ひと段落ついたと見たイザナが淡々と言った。続けてアリエッタも吐き捨てる。対するアッシュは激昂のあまり顔を真っ赤にしてがなる。
「てめぇ!!何聞いてやがった!俺は、」
「アッシュでしょう。ご自分で名乗ったはずです。「今の俺はアッシュだ」と。
数分前ですよ。もう忘れたんですか。」
「だからそれはヴァンの野郎が!!」
「・・・”ルーク”、キムラスカに生まれた赤い髪の男児に詠まれた預言通りに死にたくないなら、私が助けてやる、というヴァンの甘言にのってダアトに逃げたんですよね。」
「レプリカルークを、”ルーク”の身代わりにすれば、アッシュは生き延びられるっていう、総長の言葉に賛同して、ルークに”聖なる焔の光”を押し付けた、です。」
「[ND2000、ローレライの力を継ぐ者、キムラスカに誕生す。
其は赤い髪の男児なり。名を聖なる焔の光と称す。
彼はキムラスカ・ランバルディアを新たなる栄光へと導くだろう。]」
[ND2018、ローレライの力を継ぐ若者、人々を引き連れて鉱山の町へ向かう。
そこで若者は力を災いとし、キムラスカの武器となって、街と共に消滅す。
しかる後にルグニカの大地は戦乱に包まれ、マルクトは領土を失うだろう。
結果キムラスカ・ランバルディアは栄え、其れが未曾有の繁栄の第一歩となる。]」
「・・・これを信じたキムラスカが、”聖なる焔の光”を国のために殺すのだといわれた貴方はそれが嫌で逃げ出した。」
「”ローレライの力”と目される超振動の実験が辛かったアッシュは、もうキムラスカにいるのが、嫌だった、ですよね。」
「だから、ヴァンの言葉に、己の意思で従った。
・・・で?ヴァンがなんですか?まさか自分からヴァンの手を取っておいて、都合が悪くなったら全責任を押し付けて被害者面?とんだ恥知らずですね。」
「しかも、なんにも知らないルークが悪いって、言いに来て、どうするつもりだった、ですか。」
交互に続けられる言葉に口を開閉させるだけで反論のタイミングがつかめなかったアッシュが更に血を上らせる。周りで聞くだけの立場に身をおかざるを得なかった面々も表情を険しくイザナとアリエッタを睨む。ガイだけはその後ろに守られているルークに視線を向けるが、到底ルークを気遣っているとは言いがたい物だった為イオンが背中で遮った。
「うるせぇうるせぇ!!その屑がいなきゃ俺はキムラスカに、」
「一度捨てた物を拾いに行くつもりだったとでも?図々しい。」
「なら、なんでアクゼリュスにルークが着く前に、名乗らなかったですか。」
「なんでそこまでその偽者を庇うのです!ルー、アッシュは被害者ではありませんか?!」
ナタリアがアッシュに加勢しようと声を張り上げた。イザナが冷笑で答える。
「はは!被害者、ねぇ?偽者、ときましたか。
・・・貴方が言って良い台詞でしょうか。」
「どう意味です?!」
「ああ、これはどうせその内知れることですから、まあ良いか
・・・ねぇ、死産したナタリア王女の偽者、メリル・オークランド殿?」
きょとん、とした表情で戸惑うナタリア。
「・・・これも預言に詠まれたことだったようですが、本当のナタリア王女は生まれると同時にお亡くなりになりました。ですが当時乳母として王妃についていた者・・貴方の本当の祖母ですよ・・が身体の弱い王妃が精神まで弱らせかねないと考えて、己の孫を死んだ王女と摩り替えたのです。明確な反逆罪ではありますが、自分の孫は王女として生きるのだという預言に従ったためでもあったので、罪として断罪されるかどうかは知りませんけどね。
・・・なにせ国の繁栄のために、敵国とはいえ民間人しかいない街を一つ壊そうともくろんでいたキムラスカですから。」
「キムラスカは兎も角、貴方も偽者、です。ルークを偽者、というのなら、自分のことも偽者だと、自覚するべき、です」
ナタリアが段々と不安そうに口元をゆがめるのを見たティアとアッシュが庇う。
「・・・それが本当の話でも、ナタリアが赤子の時なら仕方がないのじゃないかしら。そんな風に言うのは間違ってるわ。」
「嘘つくんじゃねぇよ!そんな屑庇うために、出鱈目並べやがって!」
「本当ですよ。」
ルークの傍に寄り添っていたイオンが言い添えた。険しい視線が分散される。
「・・レプリカの分際で、何を根拠に、」
「「イオン様!」」
アニスとティアが、信じられない、という表情でイオンを見るが、視線を向けないまま穏やかに告げる。
「イザナ様の言ったことは本当です。」
「レプリカの言うことなんざ、信じられるか!!」
「・・・どうやらまだ誤解があるようですね。」
「誤解だと?」
怪訝に聞き返すアッシュに、イザナが微笑んだ。
「ええ、誤解です。
貴方方は僕をレプリカだと思っているようですか、それは勘違いです。」
「なんだと?」
「・・・・イザナ様が被験者イオンなんですよ」
イザナに続いて暴露したのは、今まで面々が被験者だと思い込んでいたイオンのほうだった。イオンの言葉を理解したアニスはたちまち顔色を失くす。自分が言った言葉が、イオンにも当てはまってしまうと気づいたからだ。必死にイオンに視線を合わせようとするが、イオンはアニスに一瞥もしなかった。
傍らでさすがに二の句が告げないアッシュが固まるのを見て可笑しげに笑ったイザナも続ける。
「その通り。貴方方が今までいたイオンは、僕が二年前に後任に指名した僕のレプリカです。」
「・・・な、てめぇら騙しやがったのか?!」
真っ赤な顔で怒鳴るアッシュ。
「おやおや、人聞きが悪いですね?
元々導師の後任は先任者の指名と教育によって資質を目覚めさせた者に任されます。イオンは僕のレプリカで、能力の資質は同じですし僕直々に教育も施しました。何一つ問題ない立派な後継者だと思いますけど?」
「は!劣化レプリカのどこが立派だと」
「・・・その劣化レプリカ、っていう偏見に満ちた差別発言を止めてくれませんか。聞き苦しくて耳が腐りそうです。」
「・・ですがレプリカが劣化するのは本当でしょう。」
そこで今まで興味なさ気に佇んで会話を聞き流していたジェイドが言葉を挟んだ。イザナはジェイドに視線を向けて笑い飛ばす。
「くだらない。それはどんな根拠に基づいた発言ですか?ジェイド・バルフォア。」
「知っていたんですね。」
「ええ、勿論です。僕は元導師だと言ったでしょう?
各国の著名な人間のデータくらい頭に入っています。で?質問に答えてくれますか。」
「・・・だったら判るでしょう。私は元々レプリカの研究を専門にしていました。その時に作ったレプリカのデータは廃棄しましたが忌々しいことに私の頭の中には残っている。・・・レプリカは、被験者よりも劣化します。造り上げたレプリカの能力をどう測定しても被験者を上回るものは存在しなかった。おまけにその身体は脆く、些細なきっかけで容易く乖離する脆弱なものです。そんなレプリカが劣化でなければなんと言えば良いと?」
「能力の測定、ねぇ?正確な比較もしていない癖に言い切れるその神経を疑います。仮にも元研究者がね。」
「そちらこそ何を根拠にそんな事を、」
流石に苛立った様子のジェイドに言い聞かせるように話し始めるイザナ。
「だって正確な比較なんて出来たはずはないでしょう。
貴方がレプリカの研究をしていたのは何年ですか?」
「・・・大体14~5年位、ですかね。フォミクリーの前身になる譜術を合わせて。」
「じゃあ、やっぱり正確な比較なんて無理でしょう。」
「ですから、何を根拠にそんな事を、」
「・・・貴方方研究者は、被験者にそんな幼い子どもを利用してたんですか?随分な外道ですね。」
「「「「「は?」」」」」
そろって呆然とする同行者とアッシュ。
「おや?正確な比較が可能だったというのなら、そういう事でしょう? 比較、というからには測定の時には比較対象を同一の条件下の元においた上で行うのが当然ですね?」
「その通りですね。」
「その同一条件下の測定が可能だったということは、被験者が余程幼くなくては無理でしょう。同じ条件、なのですから、レプリカと被験者が最低でも同じ年数を生きたうえで能力を測らなければ意味がありません。」
「「「「「あ。」」」」」
「レプリカは生誕時すでに被験者と同じ外見で生まれますが、実年齢は当然0歳です。例え刷り込みをしたところで与えられるのは知識だけ。 被験者が経験蓄積した上で身に着けた技能をそのまま継承できる訳ではないでしょう。」
「・・・例え、技術書や教科書を丸暗記したって、直ぐに実戦でその知識を使いこなせるかどうかとは別問題、です。」
「アッシュやジェイドだって、剣や槍の使い方を生後直後から今の様に使えたわけではないですね?勿論ティアやアニスやガイやナタリアだって同じです。」
「で?ジェイド、貴方が比較したという被験者とレプリカはどうだったんです?」
「・・・・・少なくとも、被験者よりも幼いレプリカしかいませんでした。」
「ですよね。つまり、今まで貴方方が言っていたレプリカ劣化説とやらが何の根拠もない差別発言であったと認めますね?」
イザナに続くアリエッタとイオンの言葉に唖然と固まる中、ジェイドはしぶしぶ答える。更に重ねて確認するイザナから悔しげに視線を逸らすしかない。その態度が答えであった。
「貴方方もわかりましたか?」
アッシュ達にも言うイザナ。アニスは未だ蒼白な顔で立ち尽くす。
ガイやティアは口を噤んで答えあぐねるが、ナタリアとアッシュが尚言い募った。
「実際そいつが屑だってのには変わりねぇだろうが!ヴァンに騙されて超振動使ったのは事実だしな!」
「そ、そうですわ!!その偽者がいた所為でアッシュが帰ってこられなかっただけでなく、”ルーク”の名で遣わされた親善大使がアクゼリュスを崩落させるなど、」
いい加減うんざりしてきたイザナが表情を取り繕うことも面倒そうに答える。
「しつこいですね。ナタリア姫、貴方も偽者の癖にルークを責めるのは止めなさい。見苦しいです。」
「・・ルークが、”ルーク”になったのは、ファブレにレプリカを返したヴァンの企みと、人違いに気づきもしなかったキムラスカの人間の所為、です。」
「レプリカルークが身代わりに死ぬかも知れない事を知りながら口を噤み続けたアッシュが文句を言うなどお門違いなんですよ。」
「大体、先程も言いましたが、アクゼリュス崩落はキムラスカの本意です。預言に詠まれた繁栄を得る為に、”聖なる焔の光”を”鉱山の街”に送り込んだのはキムラスカなのですから。」
「預言の内容を知っていた癖に、ルークがアクゼリュスに着く前に何も言わなかったアッシュが怒る理由がわかりません、です。」
「それに、僕は何回も言ったはずです。崩落はルークの責任ではありません、と」
「・・だ、だから、」
イザナ、アリエッタ、イオンが交代で答える。キムラスカの本意、で反論しようとしたナタリアも、お門違い、で喚こうとしたアッシュも、三人の放つ殺気に気圧され始めて満足に声が出せない。
「・・・だったら、誰の責任だというの?」
そこで無謀にも口を開いたのはティアだ。
「これも何度も言いました。崩落を実行したのはヴァンです、と。」
「そんな、!兄さんは!」
「だから、ヴァンに唆されて、その屑がやったんだと、」
イオンの言葉に反論したティアに触発されてアッシュが繰り返す。
「現場を見ても居ない人間が、何を根拠に言い切るんですか。アッシュもティアも、ルークに追いついたのは崩壊が始まってからでしょう。」
「しかも、ティア。貴方も良くアッシュの言葉を鵜呑みに出来ましたね。
そいつは鮮血のアッシュですよ。ヴァンの腹心。散々道中を妨害した僕達の敵」
「・・・アッシュが、総長が差し向けた刺客じゃない保証もない、です。」
「アッシュは、本物のルークなのですよ!!そんなわけ」
アッシュの事を庇うためにナタリアも参戦する。
「ナタリア姫、貴方もアッシュを庇う理由などないはずですが。
・・というより、本物のルークであるとかは兎も角、現在ダアトで師団長まで務める他国の軍人を何故そこまで信じるんですか。しかも、アッシュは、貴方の守るべき国であるキムラスカの軍港カイツールを襲撃して数多のキムラスカ国民を虐殺した人間ですよ。・・まさかもう忘れていたとか言いませんよね?」
「な、な、・・それは!」
忘れていたのだろう。イザナの言葉を理解したナタリアが顔を青ざめさせてアッシュを振り返った。アッシュも目を見開いて固まる。
「アッシュも、本当に貴方が元”ルーク・フォン・ファブレ”であっても、そこまで自国に被害を与えた人間が、今更どの面下げて名乗り出るつもりです?」
「・・タルタロス襲撃にも、アッシュは参加してた、です。」
「おや、つまりアッシュはマルクトにとっても敵ですね。
しかもジェイドは直属の部下を皆殺しにされた。 ・・・おやおや、そういえばジェイド、貴方もアッシュの事を当然の様に許してますが、何故ですか?」
「・・・・」
続けていったイザナとアリエッタから目をそらしたジェイドが無言で眼鏡を押し上げる。
今更思い出しましたなどと口には出せないが、全員が悟る。
・・こいつも今までアッシュの所業を忘れきっていたのだと。
「アニス、貴方もです。アッシュは僕を誘拐したり、タルタロスを強奪してキムラスカを走り回ったりと散々暴挙を繰り返していたわけですが、先程僕が彼を警戒したときに、僕のほうを咎めた理由を聞かせてくれますか。・・・まさか、守護役の貴方が導師である僕より、敵だった六神将の言葉を信じていた、なんてことはあるはずないですね?」
「そ、それ、は・・・」
うろたえて視線を泳がせるアニス。答えはない。
「で、ガイ。タルタロスでは譜術付の奇襲、国境でも頭上からの不意打ち、カイツールに至っては人質を取ってまでルークの身柄を渡せと脅迫してきたアッシュですけど、・・・ルークの護衛でありながら、アッシュに対する態度が随分と柔らかいですね。タルタロスの上ではルークに対して散々追い詰める言葉を言っていたくせに。」
「・・・・・」
無言。暗い目で足元を見るガイ。
「最後ですから、もう一度教えて差し上げます。
・・・アクゼリュスの崩落は、確かにルークの超振動が原因です。」
「だったら!!」
「「・・黙れ(です)」」
ドガ、と鈍い音を立てて崩れ落ちるアッシュ。
イオンの言葉にしつこく反論の糸口を見出そうとするアッシュを、とうとう実力行使で沈めたイザナとアリエッタの蹴りが決まったのだ。慌てて駆け寄るナタリアの回復譜術の効果が現れるのを待たずにイオンが続ける。
「ですが、ルークの意思は介在していませんでした。
超振動が発動したのは、ヴァンが、ルークにかけていた暗示の所為です。」
「「暗示?!」」
「に、兄さんが、そんなこと」
驚愕の声を揃えるガイとジェイドは気まずげな視線を泳がせる。流石にその事実を踏まえてルークに責任を問うことがどういうことかは理解したらしい。ティアがなおもヴァンを庇おうとするが、ここにきてティアに同情するものはいなかった。
「暗示をかけられてしまった人間が、自力で打ち破るのは至難のわざです。そもそも騙されていただけだとしても、一番悪いのはヴァンに決まっているでしょう。何処の世界に騙した人間よりも、騙された人間の方が悪いなどと判断する理屈が存在するんですか。」
「ティア、貴方が最初にファブレ襲撃などという犯罪史上に残るような大犯罪を犯したのは、ヴァンを疑っていたからでしょう。何を今更初耳ですみたいな顔で驚くんです。貴方がヴァンに対する疑いを、そこのジェイドにでも話しておけば防げた事態だとは考えかったんですか?」
「しかも、ルークを責めた理由は、”敵であったアッシュが言ったから”・・・馬鹿ばっかり、です」
とどめにアリエッタの溜息。あどけない表情を侮蔑に染め上げて落とされた言葉は、遅すぎる理解に及んだ男二人の精神を引き裂く。反論の余地は無くとも往生際悪く視線を泳がせる女性陣にも等しく侮蔑は向けられた。
「ま、一つ安心して良いですよ?」
「アクゼリュスの人たちは、無事、です。
アリエッタが、お友達に頼んで避難させました、です。」
「元々、僕とルークの役割は、ヴァンに対する囮だったんです。
・・・暗示の発動を防げなかったのは僕の失態ですが。」
一転して業とらしい朗らかさで言い放ったイザナ。アリエッタも笑って言った。最後のイオンが悔しげに零した言葉まで聞いた者達は目を白黒させている。
「ははは!ま、貴方方にとっては唯一の朗報ですから喜んだらどうですか?」
「・・・どういう意味です、か」
辛うじて問い返したジェイドに、三人がそっくりの表情で笑って言った。
「「「どうって、当然でしょう?」」」
「貴方方がルークに対して行った不敬や侮辱を、ありのままに両国に報告しただけです。」
「ティア・グランツがルークを誘拐したにも関わらず、守るべき民間人を無理矢理戦闘させたことや、王族のルークにたいする敬称なしの呼び捨て、道中繰り返された侮辱発言、とか」
「マルクトの大差殿が誘拐された被害者を連行して己の任務に無理矢理協力させるために行った脅迫、 軍人の癖に訓練を受けても居ない民間人に己のみを守らせた事とか」
「アッシュが参加したタルタロス襲撃に虐殺、国境での戦闘行為、キムラスカ軍港襲撃、導師誘拐に和平妨害、王族の殺人未遂」
「ナタリア殿下の、王命反逆、・・行くなという命令に逆らって、城を出たこと、です。親善大使への脅迫、・・総長からの言葉に悩んでいたルークに、連れて行かなきゃばらすっていった、こと、です。」
「ガイは、公私の分別なく道中通して主のルークの言葉を聞き流して他国の軍人であるジェイドを立ててたこととか、ルークの護衛の癖にルークを守ることを全くしなかったこととか。・・・貴方の出自、とか、ね?」
「アニスは、僕の護衛の癖に何回も傍を離れたり、不寝番もせずに誘拐を見逃したり、ルークに対する不敬もありますし、 後は・・・・(スパイ、の件ですよ)わかりますね?」
三人の言葉が続くたびに顔色を失くしていく面々。
アニスは、イオンが唇の動きだけで伝えた言葉に卒倒寸前で立ち尽くす。ガイは、出自、の言葉で己の素性・・ファブレに復讐するために名を偽っていたマルクトのガルディオスの嫡子であることを知られていると悟って身体を震わせた。犯罪者の自覚が無かったティアの反論はジェイドが辛うじて抑えるが、ジェイド自身の罪を列挙されて今更立場を認識したため背筋の冷や汗は止まらない。アッシュとナタリアはその場で呆然と寄り添うが、犯罪者の傷の嘗めあいにしか見えずにイザナたちの失笑をかった。
「ふふふ、ルークを散々傷つけてきたんです。
・・・これから、その罪の重さを思い知ると良い。」
「アリエッタも、ルークの敵に、容赦はしません、です」
「貴方方を両国がどう扱うのか、ゆっくり見せてもらいますね♪
僕も道中散々苦労させられたことですし」
顔面蒼白で固まるもの達に、少し溜飲を下げた三人が朗らかに言い放った。そしてくるりと踵を返すと、今までの殺気はなんだったんだと聞きたくなるくらい柔らかな笑みで、ライガに守られているルークに歩み寄る。
「さて、ではさっそく外殻大地に戻りましょうか」
「はい、です。やっと総長を処分できる、です。」
「では、キムラスカとマルクトは了承してくれたのですね?」
宣言したイザナにイオンが勇んで問いかける。答える二人も満面の笑みだ。
「ええ勿論。・・・ふふふ、抜かりはありませんよ。」
「これで大地降下作戦を成功させたら、ルークは自由になれる、です」
「やりましたね!イザナ様、アリエッタ!!
これで晴れて一緒に暮らすことができます!!」
更に笑顔を輝かせてルークの髪を梳く。ライガも嬉しげに喉を鳴らした。
「ええ、可愛い僕らのルークと、誰憚ることなく家族として暮らせるようになります。」
「新しいお家も、準備万端、です」
「では早速帰って作戦を終わらせましょう!!
僕ルークと一緒のベッドで寝たりしたいです!」
「安心してください、一部屋占領するくらい大きなベッドを買いました。全員で並んで寝たりもできますよ。」
「アリエッタも一緒です。シンクとディストも待ってる、です。」
「はい!楽しみです!」
年相応の顔で嬉しげに笑うイオンの頭を撫でながらイザナが言った。アリエッタも楽しそうに、今頃証拠を揃えて自分達を待っているはずの仲間の名を上げて笑う。そして三人が覗き込むのは、安心したように眠るルークの可愛らしい寝顔だ。
「「「癒されます(です)」」」
揃う溜息。ほんわりと空気が緩む。
「僕、ルークの平穏のためなら世界統一しても構いません。」
「アリエッタも手伝う、です」
「あ、良い考えですね。
キムラスカはどうしようもないですし、マルクトも頼れないことが今回のことで良くわかりましたから。」
「「「・・・やっちゃう(です)?」」」
にやり、と笑う。
「では、まずは予定通りの作戦を終わらせて、」
「両国には、今までの失態を突きつければ、OK、です。
抵抗しても、アリエッタ達に叶う軍などありません、です。」
「僕キムラスカなら一人でも潰せる気がしてます。
なんせルークを殺そうとしてた国ですから!」
「じゃあ、僕はマルクトいきましょうか。
ジェイドの態度は影で見ていて腸が煮える所か沸騰して蒸発するかと思ってましたから」
「シンクとディストとお友達がいれば、怖いものなし、です」
「いざ、参りましょう!!僕らの明るい未来の為に!」
「「「おーーーー!!」」」
物騒な会話が遠ざかっていく。
後に残されたのは、現実逃避しか出来ない元親善大使一行と神託の盾騎士団の特務師団長のみ。騒ぎに気づくが物騒な雰囲気に慄き隠れて様子を伺っていたユリアシティの住人が、去り行くイザナ達を恐る恐る見送る。
その後、無事外殻大地を降下させて指し当たっての世界崩壊は免れたオールドラント。
が、今までどおり、三国が無事に歴史を重ねることが出来たかどうかは
・・・貴方の心の中で。
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