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主人公総受け至上主義サイトです。特にエ/ヴ/ァの・碇・シ・ン・ジ・の女体化verが贔屓されてます。EOE後女体化したシンジが他世界へ渡る設定のクロス作品がメインです。(で、他作品キャラに物凄く愛されてます。)
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長すぎて一件では収まらなかったので前後編になりました。


*拙宅で連載しているエヴァ×ナルト「月色の御伽噺」設定流用で、スレナルと碇レンが、ルークの護衛設定です。
*シュザンヌ様捏造。
*キムラスカ・ダアト・マルクトに物凄く厳しいです。PTは勿論イオン様にも厳しくなりました




*ちなみに前編はほぼレンの独白に寄る経緯説明というかただの前振りなので読まなくても余り支障はありません。メインの糾弾は後編からです。














 

「(これで、後は、)」

 


「・・・もう、何がなんだか分かんないよ・・・!アクゼリュスが・・・!それにここって何なわけ!?」
 

「・・・ここは魔界。貴女たちの住む場所は外殻大地と呼ばれていて、ここはその・・・ある意味地下とも言える場所よ。外殻大地はこの魔界から伸びるセフィロトツリーという柱に支えられている空中大地なの」


「・・・全然、意味が分かんないんだけど」


「昔、外殻大地はこの魔界にあったの。
 けれど二千年前、オールドラントを原因不明の障気が包んで大地が汚染され始めた。この時ユリアが七つの預言を詠んで滅亡から逃れ、繁栄するための道筋を発見したの。 それが地殻をセフィロトで浮上させるという計画だった・・・」

 

「それが、外殻大地の始まり・・・ですか。途方もない話ですね」
 



ぴくり、とルークが肩を震わせる。レンは素早くルークを下がらせて、話し込み始めた面々を睨む。ナルトが戻る前に彼らが目覚めてしまった事に舌打ちでもしたい気分だった。散々神経を逆撫でられて、そろそろ本気で始末するべきかとナルトと話し合っていた矢先の惨事である。シュザンヌ様からの指示がなければさっさと片付けておいたものを。


だがそんなレンにも、冷めすぎる程に冷めたルークの表情にも気づかずに勝手に盛り上がる彼らは話題を展開させていく。その後ろに庇われた導師イオンが顔を青くして辺りを見ているが、気にもしていない。

 



「(大した守護役ですこと。道中散々ルーク様を蔑ろにしてまで気遣いを要求したくせに)」

 

「ええ。この話を知っているのはローレライ教団の詠師職以上か魔界出身の者だけのはずですから」


「じゃあティアは魔界の・・・?」


「ええ・・・」
 

 


沈痛な表情でアニスに答えているティアを一瞥して、ああだから世間知らずなのかと吐き捨てる。ナルトと交代で護衛を務めながら集めた情報でユリアシティについてのものもあったので、ティアの告白は既知のものだ。それを知ったから、いざという時の案内役にするため同行を受け入れることにしたのだ。その程度の重さしかない事実を、ああも悲壮ぶって話している姿を見ていると失笑しか浮かばない。馬鹿馬鹿しい、悲劇のヒロインでも気取っているのだろうか。

 



「へぇ、道理で我侭で傲慢な態度を当たり前に貫き通した世間知らずだってばね。納得だってば」

 


そのレンの呟きに重なるように、新しい声が響く。
朗らかに言い放たれた毒の篭った台詞に、ティアが激昂する。

 


「なんですって?!」


「五月蠅いってばよ。似非軍人。邪魔だってばよ。
 ・・・・遅くなりまして申し訳ございませんルーク様。お部屋の準備が整いましてございます。 どうか、こちらへ。まずお体を休めなければ。
 

 ・・・此度の失態お詫びの仕様もございません。キムラスカに戻りましたら必ず償わせていただきます。ですからどうか、お帰りになるまでの間、ルーク様の御身を護ることをお許しいただけないでしょうか。」


 

艦内を見回りにいっていたナルトだ。丁度扉の前を陣取っていた面々を乱暴に押しのけると、恭しくルークの前に跪く。それにあわせてレンももう一度深く頭を下げた。どれだけ謝罪しても許される事ではないが、ここでルークを一人にすることの方が問題である。せめてシュザンヌの手の者が新たに派遣されるまでは傍を離れるわけに行かない。

 

 


「良いから顔を上げろ。お前らの責任じゃないだろ?!」
 

「そのような!」


「なら命令だ!レンもナルトも俺を護ってくれただろ。これは純粋な事故だ。お前達の所為じゃねぇよ」


「・・・・は!ありがとう、ございます!・・・では、まずお部屋のほうへご案内いたします。こちらへ」
 

「ありがとうございますルーク様。今度こそ、その御身を我が一命に代えましてもお守りする事をお誓い申し上げます。」

 


跪くナルトを見下ろして慌てたように必死な声で「命令」するルーク。その幼げな表情に、いけないと想いつつ苦笑が漏れた。その顔を隠すように更に深く頭を下げたナルトが礼を述べ、案内を申し出る。レンも、改めてルークへ謝辞を示してその後ろに就きなおす。だが、ほっとして歩き出そうとしたルークの動きを遮る者がいた。先ほどナルトに押しのけられたティアだ。冷徹に排除しようとしたナルトが一瞬ルークの前で血を見せる事を躊躇った隙に、聞き苦しい声で騒ぎ始めた。

 



「待ちなさい!」


「なんだってば?邪魔だから退くってばよ犯罪者。高が死刑囚がルーク様の歩みを遮ろうなんて、身の程を知るってば。ああ、三歩歩いて忘れる鶏以下の脳みそで理解できるわけないってばね。これは失礼。なら簡潔にいってやるってばよ。

・・・・邪魔だ、退け。」



「な、なんですってぇ!」

 


冷え切った声でつらつらと吐き捨てるナルト。確かに苛立ちしか感じない彼女に優しく話しかける義理はないが、あんまりといえばあんまりな内容に、流石のレンとルークも頬を引きつらせた。当然怒りに顔を赤くしたティアが更に声を高くする。レンは疲れきった溜息をはいたルークの前に出て、騒音から少しでも遠ざける。ルークの慈悲とシュザンヌの指示がなければ既に首を落とされて然るべき犯罪者が何を言うつもりか知らないが、扉を塞がれては前に進めない。眉を顰めるルーク達三人。まったく気づかないティア以下四人。いや、イオンだけは不安げに視線を泳がせているか。だが、邪魔なのは事実だ。


 

「扉を塞がれてはルーク様をご案内できません。退いてください。全員邪魔です。」

 


淡々とレンが言った。今まで一行の中でも温和で大人しいと思っていたレンが、まさかそんな言葉を発するとは思わなかったらしい。面食らった顔で注目されたが、更に怒りを募らせたティアが怒鳴る。


 

「貴方達、この情景をみて、何も思わないの?!」


「そーだよ!全員って事はイオン様も?アンタ馬鹿?!なんてこと言うのよ!
 大体なんでこんな事になったわけぇ?」


「本当に、キムラスカの人間は礼儀を知らないようですねぇ。」

 


追従してアニスが喚き、嫌味たらしくジェイドが続けた。だがルークもナルトも表情を変えない。レンも同様だ。
こいつら相手に一々怒る労力すら無駄である。

 


「邪魔は邪魔だってば?大体、救援の最高責任者で在らせられるルーク様が正式に同行を拒否した導師に礼を払う必要が何処に? こんな事態になりはしたけど、まだキムラスカに帰還していない以上、責任者はルーク様。それとも、・・・・ダアトは導師自らキムラスカ国王名代のお命を危険に晒すお積りか。マルクト皇帝名代も導師と同意見だというなら、二国は揃ってキムラスカに喧嘩を売る積りかってば?」


「そんな積りは!」



業とらしくナルトが言うと、イオンが顔を青ざめさせて反論し、ジェイドが無言で眼鏡を押し上げる。

 


「貴方いい加減にして!ルークも、黙ってないで何とか、・・っが、は!」

 


矛先をルークに向けたティアを反射的に殴ってしまったレン。流石に我慢し切れなかったのだ。動いてしまってからはっとしてルークに謝罪する。後で纏めて裁くから、余計な制裁は加えるなとシュザンヌに言われていたのだ。それをルークも共に聞いていたはずである。後悔に顔を青くするレンだが、ルークはティアを一瞥するとレンを宥める事を優先した。流石にティアを庇う気にはならなかったのだ。


 

「も、申し訳ございません、ルーク様!出すぎた真似を、」


「えと、まあ、、俺のためだろ?気にすんなよ、」


「あ、アンタ何してんのよ!サイッテー!」


「アニス!」


「イオン様は黙っててください!だってこいつら、」

 


レンとルークを等しく睨みながらアニスが騒ぐ。先ほどのナルトの指摘に、アニスの態度がどれ程不味いものなのかおぼろげでも理解し始めたイオンが止めるが、それを遮って続けるアニス。ナルトが呆れたように眉を顰めるのにも気づかない。この態度で誰の守護役の積りなのか。


 

「そうよ!大体、アクゼリュスを崩落させた罪人は、ルークでしょう!」

 


そこで叫んだティアの発言に、空気が、凍った。

 



「貴方が兄さんに騙されてアクゼリュスのパッセージリングを壊した所為で、こんな事になったのよ?それを棚に上げて、こんな」


「な、なにそれ、サイテー!アンタ、なんてことしたのよ?!」


「・・・・それはそれは、大した親善大使様ですね?その癖、先ほどの態度ですか。キムラスカこそ、マルクトに喧嘩を売りたいと見える。」


「・・・俺は、悪くねぇ、よ。」

 


絶対零度の空気の発生源である金髪の少年をそろり、と窺いながら、ルークが端的に事実を言ってみる。
目の前の本職軍人三人が、これほどの殺気に、全く気づいた様子がない事にむしろ驚嘆する。殺気の矛先ではないルークやレンすら寒々しい想いをしているというのに。呆れるばかりの鈍感さである。まあ、今更かと諦める。
 

ルークの変化にも気づく素振りも見せないティア達は更に激昂して暴言を吐き続けている。言い逃れするつもりかと言われたが、実際に悪くないのに罪を被れとでもいうのだろうか。ヴァンは確かにルークに超振動を使わせてリングを破壊したかったみたいだが、レンとナルトがそんなことを許すわけがない。以前から怪しいと睨んでいたヴァンを一先ず生け捕りにしろとシュザンヌに命じられていたため、殺さない程度に手加減をして戦っていたところ、瘴気を吸って限界が早まっていたらしいリングが勝手に壊れ始めたのだ。それをみて、超振動を使うことに見切りをつけたヴァンが、せめてルークを此処でアクゼリュスと共に消滅させることだけは叶えようとして譜術でリングを壊したのだ。・・これはルークのついでにレンが護衛をしていたイオンも見ていたはずだが、一言の証言もせずにティア達に庇われ続けるというのはどういうことだろうか。

 


「大体お前の言うとおり、俺が壊したにしても、ヴァン師匠に「騙された」ってんなら、悪いのは、ヴァン師匠、だろ?」
 

「貴方兄さんの言う事を鵜呑みにした所為でアクゼリュスの一万人もの人たちが死んだのよ?!」

 


ヴァンに「騙された」と口にする瞬間視線を落としたルークの手を握る。冷え切った指先が一瞬強張って、縋るように力強く握り返された。ルークがヴァンを慕っていたのは此処に居る全員が良く知っていた事だ。ナルトとレンから見れば胡散臭い事この上ない態度だったため多少の警戒は促したが、七年間の付き合いのある剣術の師匠と、俄か護衛のレン達とどちらを信じるかと聞かれればヴァンに傾くのは当然だ。だから、ヴァンが何をしても対処できるようにレン達が護衛として目を光らせたのである。そのお陰で、超振動を利用する企みだけ
は阻止できたが、目の前で態度を豹変させたヴァンの姿に、ルークが傷つかない訳がない。それをこんな風に詰るなど、本当に他者の心情を省みる事の出来ない「傲慢」な態度に腸が煮えた。


 

「黙ってください。・・・貴方方全員、ヴァンに「騙された」のは同じでしょう。ルーク様を不当に貶めるのは止めていただきたい。」

 


レンが冷え冷えとした声で反論すると、ティアが目を吊り上げ、ジェイドが皮肉気に口角を上げる。

 


「何言ってるのよ、私は最初からヴァンを信用してなんか、」


「おやおや、私達も「騙された」とはとんだ言いがかり、」



「「外殻大地は存続させるって言ったじゃない」
 「海へおとりの船を出港させて、我々は陸路でケセドニアへ行きましょう。」
 「宜しいでしょう、どの道貴方を信じるほかにはありません。」
 
 ・・・ティアとジェイドが口にした事ですよね?」
 

「そうよ、だから何だと、」



「だから何?本気で言ってるんですか。「外殻大地を存続させるって言ったじゃない」?つまり、貴方は、ヴァンが外殻大地が存続出来なくなるような何かを計画していた事を知っていた。にも拘らず、「存続させる」と「言った」から、そのヴァンの言葉を「信じた」んですよね・・・・けど、ヴァンは実際にアクゼリュス崩落なんて計画を立てて実行したわけですが・・・誰が騙されてないんですか?」


「な、ん」

 


繋いだ手を引き寄せてルークを庇いながら、レンがティアを強く睨む。己の言葉がどう意味を持つのか、本気で気づいていなかったらしい彼女に業とらしく笑って見せた。口ごもって顔を俯け始めたティアの動揺が滑稽すぎる。後ろのイオンと隣のアニスが唖然とティアを見上げる。


 

「ジェイド?貴方もですよ。バチカルを出発する時、和平妨害を画策しているらしいモースの差し金で神託の盾騎士団の船が監視しているという報告に「おとりの船を出航させて」敵の目を欺くことにしましたよね。その時に、おとりを申し出たヴァンにたいして、「どの道貴方を信じるほかありません」って言ったのはどの口です?それとも、ジェイドはヴァンが信用できないと知った上で、「信じるほかない」なんて言ったわけですか。それはつまり、貴方は私達にヴァンを信用させるために誘導した共犯者だった、と判断しても宜しい、ということですね?」


「・・・・・」

 


無言で眼鏡を押し上げる。ジェイドが内心を気取らせないために表情を隠すための癖だ。そんな分かりやすい態度で、自分はこの場で誰より物事を見透かしている積りの上から目線を貫いた彼の態度には嘲笑しか浮かばない。

 


 

「百歩譲って俺に責任があるってんなら、教団の最高機密であるセフィロトに、部下の指示だけで安易に他国の人間である俺を招いた導師にも責任が発生するって理解しての発言だろうな、それは?」


 

ルークも流石に一歩的に詰られて苛立ったのか、道中少しずつナルトとレンに教えられてきた「常識」に当てはめて責任問題について言及してみる。内容に間違いがないかとレンの方に視線で問うたルークに肯いて見せると安堵したように前に立ち塞がる四人に視線を戻した。


 

「あ、アンタ・・・!イオン様に責任転嫁するつもり?!」

 



わなわなと怒りに震えるアニス。だが、その後ろのイオンは、ルークの言葉を理解したようだ。はくはくと声にならない言葉を吐こうとして震える両手で音叉を握り締めている。少し酷だったか、と目を泳がせるルークだが、事実は事実である。庇いようがない。


 

「それだけでは治まりません。導師イオン。貴方にとって部下であるはずの主席総長ヴァン・グランツの今回の不祥事ですが、」


「イオン様は悪くないでしょ!」


「黙れ職務怠慢守護者。本気で言ってるんですか。悪くない?冗談でしょう。確かに一番悪いのは、事件を起こしたヴァンですが、 例え「騙された」にしても、この場で誰より責任が重いのは導師に決まっているでしょう。」


「そんなわけ」


「ありますよ。・・・貴方達、導師がどんな立場か本気で分かってないんですね。導師って言うのは、ダアトの最高権力者で、同時に最高位の責任者でしょう。責任者っていうのは、有事の際に責任を取るために存在するんですよ。・・・で、ヴァンはまだダアトの主席総長ですね?」


「そう、です」

 


喚きたてるアニスに視線を向けず、レンは冷然とイオンを見つめて問いかける。
恐る恐る答えるイオンの様子に今更憐憫も感じない。この期に及んで自分だけを被害者に置くことなど許す積りはなかった。


 

「当然ですね、これまで散々主席総長直属の六神将が度重なる妨害行為を働き続けた事を知りながら、何故彼らの責任を追及して捕縛なり何がしかの対処を取らなかったのか、今更聞いて差し上げる気はありませんが、」


 

つらつらとイオンの職務怠慢の一端を上げ連ねるに従って顔を青ざめさせるイオンとアニス。だが、本当にあれ程の暴挙を繰り返した人間を神託の盾騎士団の所属のまま放置したのはイオンの怠慢以外の何者でもない。本当に彼らが敵だというのなら、さっさと破門にでもして斬り捨てておくべきだったのだ。今更理解しても後の祭りだが。


 

「今でも、ヴァンが主席総長として、導師イオンの部下である以上、その部下の不始末は、上司である導師の責任でもあります。 「騙された」なんて理由にはなりません。ヴァンはアクゼリュスまでダアトの主席総長として行動してたんですよ。その結果、起きたのがこの崩落、ならば、アクゼリュスを滅ぼしたのは、ダアトの総意だと判断するのが当然の成り行きですね。
・・その場合導師の真意など関係ありませんからね。「騙され」ようがなんだろうが、責任者として、きっちり責任を取っていただこうじゃありませんか。アクゼリュスまでの道中、本来なら一味の最高責任者であらせられたルーク様を蔑ろにしてまで導師を立てていた貴方方にも、勿論一緒に責任を取っていただきます。」



「そんな?!」


「当然です。あ、勿論貴方方がそうやって「キムラスカ国王名代」を言動全てで貶め続けた行為は、洩らさずキムラスカに報告済みですから。 ・・・帰国した暁には、どんな結論が出ているか、楽しみですね?」


 

俯いていた顔を勢い良く跳ね上げて反論しようとしたティアをばっさり斬り捨て、朗らかに笑いかけた。
脳裏には神々しい笑みを湛えたシュザンヌ様が、悠然と玉座に座る姿が浮かぶ。・・・多分これは現実に起こる(起こっている)情景だろう。傍らに冷や汗塗れのインゴベルト(元)陛下と、悄然としたファブレ公爵もいたが、下らない妄想だとかき消した。
現実に視線を戻すとレンの言葉を余さず理解したらしいイオンが動揺の余り汗を滲ませて視線を泳がせている。

 


 

「それは、理不尽よ?!なんで私達は何もしてないのに、責任を取らなきゃならないのよ!」


「そ、そーだよ!アクゼリュスを壊したのはそこのお坊ちゃんじゃん!イオン様やアタシ達は悪くない!騙されてたんだから仕方ないでしょ?!」


「そうです、私達に落ち度はなかった。グランツ謡将に従った貴方方の行為がなければ起きなかった事故だ。それを棚上げして此方にだけ非があるように仰るのは見苦しいですよ?」

 



もう滅茶苦茶である。これほど丁寧に、「何もしなかった」事こそが一番の問題点だと説明したのに、「何もしなかった」自分たちは悪くないと言い切る彼らの思考回路が本気で理解できない。
先ほどの動揺を何処にやったのか未だに己の潔白を確信しているティアも。先ほど「騙された」ルークが悪いと決め付けた口で、「騙された」自分たちは悪くないなどと言うアニスも。ティアとアニスの勢いに突破口を見つけた積りか、余裕ぶった態度を取り戻して、ルークを鋭く見据えてみせるジェイドも。
イオンは限界まで顔色を失くして居るが一言の謝罪もないし。
 

これ以上は何を言ったところで無駄だと見切りをつけるレンは諦めた溜息を吐いて口を閉じた。
せめて此処で彼らが黙ってくれていれば、ナルトが止まったかもしれないのに。無言で肩を落として成り行きに任せる事にする。
 

先ほどのティアの発言から一言も発さずに、無言で顔を俯けているナルトの背中を、ルークとレンが恐々と見つめる。
 

・・・これは、不味い。


デオ峠で、ルークに対し「出来損ない」などと吐き捨てた瞬間、ナルト十八番の螺旋丸でたっていた大岩ごと粉砕されたリグレットの惨事を思い返して血の気が下がるレンとルーク。峠の道ごと粉砕するわけにはいかないぶん手加減したため辛うじて避けていたが、それでも骨折数箇所では留まらない位の重症に追い込まれたリグレットの姿を、ティア達も見ていたはずだが・・・・三歩歩いて忘れたか。流石己に都合が良いことにしか発揮されない記憶力。此方が黙っているのを良いことに、口々にルークへの暴言を吐き続けるティア達。どんどんと温度が下がるナルトの殺気。


そっと、レンとルークが視線を合わせる。が、



「(どうにかならないか?)」


「(申し訳ございません。・・無理です。)」

 


一瞬で結論が出た。沈うつな表情を浮かべたまま視線を前に戻す。
騒ぎ続ける面子に向けてそっと黙祷すると、二人揃って素早く後退した。

本当なら艦内に避難してしまいたいが、変わらずに扉の前には五月蠅い犯罪者が陣取っている。その前に立っているのは、今現在最も危険人物と化したナルトだ。瘴気に汚染された魔界の外気に触れ続ける状況であっても、今は少しでもナルトから距離をとる事が先決である。再びナルトが顔を上げた瞬間が惨劇開始の合図だろう。固唾を呑んで身構えるレンとルーク。


「艦橋に戻ります。・・・ここにいると、馬鹿な発言に苛々させられる」


「サイッテー。イオン様、行きましょう。こんな奴放っておけば良いですよ!」


「少しは良いところもあると思ったのに、私が馬鹿だった。」

 


そして好き勝手にルークへの罵倒を尽くして満足したのか捨て台詞を残して踵を返そうとする三人。顔色が土気色にまでなって倒れる寸前のイオンの腕を引っ張って艦内に入ろうとする。先頭のジェイドが取っ手に手をかけようとした瞬間


カッ



「へぇ?面白い事いうってばね?」



甲高い音を立てて扉に突き立ったクナイが動きを遮った。投げたのは勿論ナルトだ。
口元に薄く笑いを湛えて、顔を俯けたまま呟く。忌々しげに振り返るジェイドの視界に入るよう、業とらしくクナイを弄んでいる。


 

「馬鹿な発言ねぇ、サイテー?良いところもあると思った?・・・ふぅん?
 アンタらが言えた台詞かってば!ざけんな!  火遁、業火球!」



「きゃあ!」
「熱、ちょ!」
「くっ何を!」

 


前触れなく火遁を仕掛けるナルト。だが十分すぎる位手加減はされている。実戦経験皆無の17歳(実年齢7歳)の少年に護られなければ譜術の一つも唱えられない未熟者が三人だ。彼らが避ける余裕を残している辺り理性を蒸発させきったわけではないらしい。シュザンヌから受けた生け捕りの指示をきちんと覚えているのだろう。そもそもナルトが本気だったなら螺旋丸位ぶちかましている。あの技だったなら、幾ら手加減しようとタルタロスごと三人は木っ端微塵だ。
 

それに比べればましだな。多少の理性は残してるみたいですねー。よかったよかった、とレンとルークは肯きあった。


幾らなんでもイオンまで制裁は出来ないので、火遁が収束した一瞬の隙にさり気無く避難させる。最初に引っ張らなかったのは、多少のお仕置きは必要だよね、迷惑かけられたのは事実だし、とひっそり立腹していたからである。勿論レンとルーク両方の意見だ。

 


 

「さあ、覚悟は良いってばね?」

 



口調は表用の明るい少年のものながら、青く光る瞳は任務中の暗部のソレだ。
冷たい笑みを貼り付けて、鋭くナルトの利き手が翻る。


 

そして三人分の絶叫が、瘴気渦巻く魔界に響いた。

 




 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



 

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